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カゴメ、カゴメ(仮)

第1話                  
                 


1

突然の出来事というのは恐ろしいものである。
例を出すなら、火事、地震、台風といった天災、そして事故などによる人災。
どうやら俺も後者の方で巻き込まれたらしい。
数分前、ベッドで目を覚ました、見たことのない景色、周りは白い部屋、白衣の人がたくさんいる、
口元に何か機械みたいなのがついてるらしい頭がボーっとしていてよくわからない、
起きようと思っていても体が動いてくれない、白衣を着た人が驚いている、何があったのだろう、
とりあえず状況を整理しようとするが頭が締め付けられるように痛い、
とりあえず現状を整理しなくては。
ここは白い部屋で白衣の人が多いことから病院だろう、
状況から察するに俺は何かしらの要因でここに運ばれてきた、
それで俺が目を覚まして医者でも呼びにいったのだろう、なぜ俺はここに運ばれてきたのだろうか。
考えようとする、しかし現状は把握できたのにも関わらず運ばれた要因を考えようとすると頭が痛い、
わけがわからない、とそこでさっきの白衣が呼びに行ったのであろう、
もう一人白衣の男性が部屋に入ってきた。色々と話をしているらしい、
上手く聞き取れないおそらく大事なことをいってるのだろう、今は少しでも情報がほしいところだ。
そう思った時機械が外された。

「こんにちは」
ああ、まず会話は挨拶からだ、基本だな。
「こんにちは」
ものすごいかすれたような声、俺はこんな声だっけ?、まあいいや。
「声は出せるようだね、君は今なぜここにいるかわかるかい?」
少し時間がたったあと、「いいえ、わからないです」と返事する俺。
「君は約1ヶ月前ここに運び込まれたんだ、それからずっと意識がなかったんだよ」
一瞬思考が止まる、この人はいったい何を言っているんだ?
「君は両親と車に乗っているところでトラックと激突したんだ、
それで君は命にかかわるほどの大怪我をしたが息はあった、そしてこの病院で手当を受け、
さっき目覚めたってわけさ」
ふむ、なるほど、それで体が痛いわけだ、頭のほうもずっと意識がなかったんだ、痛いはずだろう。

 

「一条 孝太君、君の両親は即死だった、君だけが生き残った。」
ふむ一条孝太という人の両親は死んだわけか……。ん?話の流れがおかしいな?
「もっと悲しむと思っていたんだが、意外と普通な表情だね。」
「あの、一条孝太って誰ですか?、俺の話をしてるんじゃ?」

その瞬間表情を変える医者らしき人、名前を名乗ってくれない限りずっと医者らしき人物と呼ぼう。
「……君のことなんだが……」

 

 

理解不能、思考が一瞬止まる、俺の事?そもそも俺の名前はなんだっけ?両親が死んだ?両親の顔は?
「頭が混乱してるようだね、まあ無理もない1ヶ月という間は大きいまずは少しずつ頭を動かそう、
今日はあとは検査をこの部屋で行うから君はゆっくりお休み。」
「はい、わかりました」
「ああ、そうそう妹さんが毎日ここにきてるよ、ある程度たったら面会できるようになるから、
あってあげなさい、すごい泣いてたよ」
またも理解できない、俺には妹がいたのか、なぜ両親が死んだのに、妹が生きてるんだろう?
その謎は解けぬまま医者はでていく、なんか、すごい頭も混乱してるもう休もう…。

それから数日後、事態は急変した、いつまでたっても何も思い出せないのだ、両親の名前、顔、
妹の名前、顔、そして自分の名前、それだけじゃないありとあらゆることが思い出せない。
「記憶…………喪失?」
そうある医者、おっと中野と名乗った医者はこう話した。
「事故の影響で頭を強く打ち、記憶に障害がかかっているようだ」
「思い出すことはできませんか?」
「厳しいだろう、何らかのショックやきっかけで思い出すことはあるだろうが…
無理に思い出そうとすると脳に負担がかかり君が壊れてしまうよ。」
何もいえなくなる俺、頭が混乱する、記憶喪失?わけがわからない、思い出すのなんて簡単だろう、
すぐ思い出せる。だがその瞬間頭痛が襲った。
「ダメだよ、無理したら」
そういわれ医者に止められる。理解はしたくないがどうやら本当なのだろう頭のことに関しては。
「とりあえず少し質問していくからどれくらい覚えてるか、確認しよう」
「……はい」
力なく返事、こうして中野さんとのマンツーマンでの質問が始まったが何一つ答えられない、
唯一答えられたのが、
「君の名前は?」
「……一条 孝太……」
「よく覚えてるね、それだけでも十分収穫だよ!」
「初日に先生がいいましたよね?」
「あ……、まあ事故後のは覚えていると…」
だめだ、この人天然はいってる早くなんとかしないと…、いやなんとかするのは俺の頭なのだろう。

その後の質問、年齢、出身地、家族の名前、家族構成、
etcetcなど質問されたがひとつも答えられなかった。
とりあえず最低限の情報は教えられたところで
「今日は、ここまでにしようか…」
「わかりました」
「一度に詰め込むと頭が痛むからね、ゆっくり休みなさい」
そういってでていく中野医師。
とりあえず、 俺の名前は一条孝太(いちじょう こうた) 年齢12 ここは北海道 S市
  家族構成は4人 父(故) 母(故)
  そしてひとつ下の妹 名前は杏(あん)公立小学校に通っている。
今日わかったのはここまで、もう寝るとする。
ベッドでふと思う、なぜ両親が死んだのに悲しくないのか?
「顔が思い出せないからなんだろうな……」
実感がないといってしまえばそれまで、だが……
身近な人が死んで悲しめないのもよっぽと悲しいことなんだろう。
そう思うとなんだがむなしくなってきた…、というか12歳でなんでこんな考え方なんだろう俺。

 

いっそのこと死んだほうがよかった。

それから1週間後ある程度の情報は頭に入ったが、過去のことはいまだに思い出せないでいる。
進歩はないが、面会が許可された。 許可された瞬間一人こっちをドアの隙間から
覗いてくる女の子が一人、黒というより栗色の長い髪を後ろでまとめてある。
入ってこない、おずおずと覗いている、そしてこっちをみている、すごい気になる、
「……にいさん………ですよね……?」
にいさんと呼ぶということはこの子が妹の杏なのだろうか?
しかし記憶がない俺にはわかるわけもなく。
「? どなたでしょうか?」と返してしまった。
「…………!」ビクっとした後涙目になる妹らしい人物、
そして数秒後泣き出す、まずい、実にまずい。
「…杏…で…す…にい…さん」泣きながらグズリ声でいう妹らしき人物。
「ごめん思い出せないんだ……」
油に火を注ぐとはこのことなんだろうか?そもそもなんでこんな難しい言葉を覚えてるんだろう?
俺 さらに泣きが強くなる杏。
「にいさん…………杏だ……よ…妹だ…よ、わ…かる…でし…ょ?」
「ごめん」それから10分間ほどなきつづける杏、その間の杏の言葉はききとれずあらわすなら、
「ふぁhdjsfはkjlsfはうけうあlkjんかshふぇあwlk」としか表現できない、
要するに解読不能

その後落ち着いた杏と少し話す、どうやら本当に妹らしい、といっても理解できないが、
理解するしかないのだろう。
「にいさん、会いたかったです…」まだ少し泣きが混じったような声、
だがそれでも一生懸命に話そうとしてくれてる、それだけで好感が持てる子だ。
「杏ちゃんのことは覚えてない、でもね、けして悪い子ではなかった気がするよ」
そういうと、また泣き出す杏、また俺は地雷を踏んだのだろうか?
「ちゃんなんて要らないです、いつもどおり杏って呼んでください…」、
と上目使いでなきながら頼まれる、世の男性(特にロ○コ○)はこれをされたら
とんでもなく弱いものだ、特にそれがかなりかわいいと女の子となると。
「杏?」
「はい!」また少し泣き顔ながらも返事する杏。
「にいさんに話したいことがいっぱいあります、でもその前に…」
「?」
「もう少しだけ泣かせてください……」、といい横になっている俺の近くまできてなきじゃくる杏。

無理もないだろう、両親がいない、兄は入院、その孤独はとても小学生には耐え難いものだろう。
自分は記憶がないからまだいい、だがこの子はしっかりと覚えているのだ。
この子を襲った苦しみは自分の比ではないのだろう。

時がたつのは早いものだ、杏との会話は朝から面会終了時間まで続いた、
杏は今祖父の家に引き取られているらしい祖父と祖母は面倒見がよくて
杏は大切にしてもらっているという。自分も退院後そこに引き取られる予定だという。
場所は同じS市だが少し離れるK区からS区に変わるらしい。
杏は自分のことも話してくれた、事故のあった日杏は風邪を引いていたらしい。
その日は授業参観で帰り道に親の車で帰っているときに事故にあった。
そして、病院から連絡があって、祖父が家に訪れ杏を乗せ病院まできたという。
そして俺のことも教えてくれた、元来人前ではあまりしゃべることはないが実行力は非常に高い。
料理が得意で小学生ながら妹によく作ってあげたらしい、そのほか本もよく読んだという。
そんなこといわれても俺は覚えてないわけだが、こうやって会話するのは楽しかった。

この時間がもっと続けばいいのに

「面会終了のお時間です」
と看護師さんがよびにきた、ああもうそんな時間だったのか。
「また明日もきていいですか?」すっかり泣き止み笑顔でこちらをみてくる杏、
「兄弟なんだから遠慮することないよ、今度はおじいちゃんやおばあちゃんにも会いたいな」
「はい!」
本当にいい子だ、こんなもったいない子が俺の妹なんて信じられない。大事にしてやらねば。
たった一人の肉親として。
「また明日、にいさん体をお大事に」
「うん またおいで」
そういってでていく杏、たった一人でいる病室は実にさびしいものだ、杏の印象としては実にいい子。
泣きやすいのは初日だからだろう、そして笑顔がかわいい。
少しドキっとしたのは内緒である。

それから毎日ほとんど学校帰りに杏はきた区が違うのに公共交通手段で病院まできてるらしい。
そしてそのたびにたくさんの話をしたりしている。たまに祖父や祖母もきて果物をおいていく。
そのたびに杏は自分が皮をむこうとするが不器用なのかすぐに失敗してたまに指を少し切ったりする。
一度だけ血をなめてやったことがあるが杏は顔を真っ赤にして遠慮した。不思議な奴。
杏の切る果物にはたまに血が付着してるがきにせず食べる。
妹ががんばっているんだ、これくらいきにすることはない。
くるたびに話を聞くが状況がかわらず、まったく記憶が戻る気配はない。
そのたびに杏は暗い表情をするが、大丈夫だといってやると杏は表情を元に戻し笑ってくれる。

中野医師との話でとりあえず病院に通いながら通常の生活に戻ることになった。
何かしらいつもの生活に戻ればきっかけがつかめるかも知れないということである。
それをきいた杏は喜び抱きついてきたほどだ、傷が癒えたとは言えまだ相当いたいのだが、
妹がうれしがっている、喜んであげなくては。そしてこのとき俺は気づいた、

 

記憶をなくす前はシスコンだったということを。

○月○日 
にいさんがたいいんするらしいです、これほどうれしいことはないです
またにいさんといっしょにいれます。にいさんは前いじょうに私を大事にしてくれます、
血を出したときににいさんは指をなめてくれました、いっしゅん頭がこんらんしました、
前はめったにこんなことしてくれなかったのに。
さやちゃんはにいさんに甘えすぎだといいますが私はそうは思いません、
にいさんに甘えるのはふつうのことです、にいさんのためならなんでもします
あのほかの人には笑わないにいさんが私の前では笑ってくれます。
私はにいさんのためならすべてをささげられます、これもふつうでしょう。
にいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさん
にいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさん
にいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさん
にいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさん
にいさんにいさんにいさんにいさんにいさん

 

ずっといっしょにいましょうね。

それから数年後
彼は記憶がないまま新たな生活を送っている、高校2年生になり生徒会に所属している。
無愛想になってはいるが妹の前で笑うのは変わらない。
祖父と祖母は1年前に死に今は二人暮らし、遺産とバイトで生活している。
「準備できるか?杏?」
「………」
朝食を作り終わった後杏を起こしにいく、日課というやつだ、杏は殺人的に朝が弱い。
たとえるなら吸血鬼、ものすごい夜型である。
「はいるぞ」
ガチャ  部屋は暗い片付いてはいる、カーテンをあけるとぬいぐるみを抱えながら
くまさんパンツがちょっと見える格好で黄色のパジャマをきている、
ついでにいうと大きめの胸もはだけている、世の男どもがみたら(ry
「さっさと起きてくれ、飯が冷める」
けりおこす、この方法が一番なのだ、前に某ゲームでやっていた「死者の目覚め」だが
したときも起きなかった、肉体に刺激をあたえてやると起きる
「ひゃう!?」といいながら反応やっと起きたらしい、

「あ、おひゃようございます、にいひゃん」
まだ寝ぼけてるのかさっさと飯を食ってもらわないと冷める、ちなみに飯>妹である
「もう一発蹴ってやろうか?」
「いえ、にいさんの痛いですから、起きます」そういってゾンビが起きるごとくおきる杏、
「じゃあ出て行くから着替えろよ、入学式に遅れたら話にならんぞ」
「にいさんになら見られても平気ですが?」
「恥を知れ、さっさと着替えろ」
ガチャン
「にいさんになら何されてもいいのに………」

そう杏も高校1年生後輩になる、天然入ってるこいつがどうにかなるのか不安だが
兄としては見守ってやりたい。そう思いながら階段を下りる俺。

飯が冷めるさっさと食うか。

2007/12/09 To be continued.....?

 

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