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走馬灯に至るまで

第1回


1

何故こんなことになってしまったのか。
体内に潜り込んでくる硬質で冷たい感触とそれに反する焼け付くような熱を感じながら、
ふと思い出すようにオレは思った。
本来、こんなことは有り得なかった筈だ。
当たり前に自分の暮らす家で、いつも空を見上げていた屋上で、あの病院の一室で、
オレは変わらない日常を送っていたはずなのに。
それは決して脆いものではなく、ましてや懐かしいなんて感じるはずもないものなのに。
今、手の届かない過去のように、忘れてしまった夢の記憶のようにそれを遠く感じるのは
どうしてだろうか。
此処に来るまでにも散々考えたはずなのに、此処に来てもまだ答えは出ない。
オレが、愚かなせいなのだろうか。
何が誤りだったのか、何処で違えてしまったのか、何時間違えてしまったのか、
それさえもオレにはわからない。
ただ。
この瞬間のオレに理解できることは、自分の胸に刃が突き立てられていること。
そして、今なすべきことだけだった────。

オレの名前は蒼間 灯(そうま とう)。
私立三角(みつかど)学園の高等部に通う二年生だ。
アイデンティティの形成に苦しむ思春期まっさかりの人間としてはどうかと思うが、
自己紹介で特技や特徴を述べよとか言われてもちょっと困るタイプの、
まあ自分に自信があるとかは別にして際立った個性のない人間。
学力は平均、運動はまあまあ得意、部活を止めた今では特に趣味も無く、
しかし暇に任せて反社会的な迷惑行為や危険なことをしたりもしない程度には常識人。
真面目と言うのは言い過ぎだが、不良と言うにはちと足りない。
そんな何時でも何処にでもいる、誰にでも代替可能な一学生。それがオレ。
の、はずである。

私立三角学園の有する広大な敷地面積においてその一角を占める高等部校舎に、
どこか間の抜けた音が響き渡る。
正午より少し遅れて鳴らされたそれは校舎の隅々と内部に存在する生徒一人一人にまで
授業の終了と昼食の始まりを告げ、余韻を残しながら消えていった。
黒板の上部に備え付けられた、たった今役目を果たしたばかりのスピーカーの横の時計を見ると、
長身と短針がそれぞれ12と8を差していた。自分の腕にはめているデジタルの時計を見ると、
表示は12:40。

「・・・では今日はここまでとする。各自、しっかりと復習をこなしておくように」

そろそろ頭髪とか腰とかが心配になってきた年齢の男性教師がオレと同じ動作をした後に
授業終了の旨を告げると、さっと教材を纏めて出て行った。
残された生徒たちはその背を見送ると共に席を立ち上がり、ある者は学食や購買へ疾走を始め、
ある者は友人と駄弁るために移動を開始し、またある者は動かずに弁当やコンビニのパンを
机の上に広げたりと、それぞれが思い思いに行動を開始する。
昼休み。
学生にとっては一・二を争う人気タイムの始まりだった。
行き先は購買でも学食でも自販機前でもないが、
オレも毎日の習慣に倣い、弁当の包みを持って席を立つ。

「今日も愛妻弁当を持って愛人候補の下へ直行とは、
  相変わらず修羅場の下準備に余念がないな、同志よ」

「モテる男は辛いね、灯君? いひひ。行ってらっさーい」

「だから違うっての。ま、行ってくるわ」

声をかけてくる級友2人に軽く返し、
教室の後ろ側にあるロッカー付近で立ち話をしている女子のグループを避けて廊下へ。
学食や購買へ突撃する連中が過ぎ去った廊下では人がまばらで、
立ち止まってちょっとした会話を楽しんでる連中がいたり、
どんな裏技を使ったのか既に購買でパンと勝利をもぎ取ってきた奴がほくほく顔で歩いていたりする。
それらを避けてリノリウムの床を歩いて行き、階の中央部で各階を繋ぐ階段を上って行く。
階を上がるにつれて擦れ違う生徒も減り、その数が0になると同時に目の前に鉄の扉が現れた。
最上階の更に一つ上。学生が昼休みを過ごすポイントとしてはベタな場所だ。
呼吸一つ。ノブを捻って強めに引くと、立て付けの悪い扉が重い音と共に開く。

「うっ・・・」

今日は良く晴れているせいか、一歩屋上に踏み出すと、
採光用の窓の代わりに階段に設置された薄暗い人工灯に慣れた目を強めの日光が射す。
堪らず目を細めること十数秒、視界には見慣れた光景が映っていた。
教室2つ分くらいの奥行きと幅があるコンクリートの地面に、
全体を取り囲む転落防止用の柵とそれ越しに見える他の校舎や施設、
町の風景に様々な形の雲が点在する蒼穹。
今時は屋上を開放しない学校もあるそうだが、我が校は比較的自由な校風故か、
生徒の利用を前提にわざわざベンチまで置かれている。
もっとも、その割には専ら告白か番長対決に使われるらしく、今は誰も腰掛けていないが。
後にはコンクリートにはめこまれた扉がある。
一通り見回してみたが、どうやら誰もいないらしい。

「・・・て、おい。それは変だろ」

いや、それはおかしい。
今オレがここにいるのはオレの自由意志だが、
それも人と会う約束────厳密には昼食を共にする────があるからだ。
その相手が約束の場所、つまり屋上にいないのはおかしい。
待ち合わせの相手はオレより一つ学年が下であり、
学年が上に来るほど在籍する教室の階が一階の購買や学食に近くなる我が校においては、
授業が同時に終わるなら相手の方が屋上には早く来れるはずなのだが。
と言うより、相手がオレより遅れてきたことなんて今まで一度もない────、

「先輩、こっちっすよー!」

横から声。振り向くと、今閉じた扉のはめこまれたコンクリの壁で遮られている死角部分から
首と手がにょっきりと生えている。
こんな真昼間から新手の学校妖怪かと反射的に身構えるオレだったが、
すぐに隠れている部分が出て来た。
見知った、と言うよりそいつこそが約束の相手なので緊張を解くと、相手も弁当片手に近寄ってくる。

「いつも通りベンチに座ってないからどうしたのかと思ったぞ?
  驚かすなよ、小戌(こいぬ)」

「いやあ、すいませんっす。先輩とうちの間もそろそろ倦怠期と言うかマンネリと言うか
  関係の進展が欲しいと言うか、まあそんな現状を打開するためにここはささやかな変化を演出」

「んなことせんでよろしいっ!」

「きゃいん!」

ちょうどいい位置にある頭に拳骨をお見舞いする。
腐れ縁と言うのは違う気がするが、少なくともコイツとマンネリや倦怠期を迎えるような関係に
なったつもりはない。

「うぅ・・・先輩の愛は痛いっす。でもいつかはこれも新しい快感に」

「なってたまるかっ! 今のは躾だ躾。ふざけたことを言う後輩に対する鉄拳制裁。
  ったく、何ならもう一発いくぞ?」

「流石にそれは勘弁、つーか普通に痛いっすよ・・・」

殴られた位置を両手で抑えて、こちらを咎めるような上向きの視線を向けてくる。
たが、小柄なせいなのかどうかは知らないがイマイチ迫力が無い。
むしろ飼い主に叱られた子犬のように見えた。

大神 小戌(おおがみ こいぬ)。
私立三角学園高等部一年・・・何組だったっけ? まあいい。
取り敢えず、年はオレより一つ下。性別は♀。
オレより軽く頭2つ分は小柄で、
本人曰く癖毛という、野良犬みたいにごわごわでぼさぼさの赤髪と、少しだけ犬歯が長いのが特徴。
瞳は茶色。
制服の覆いきれない部分から覗く部活で引き締められた細い手足は実にエネルギッシュで、
それを表すかのように性格は活発で落ち着きがなく、
懐いているかと思えばあっさりどこかへ行ったり、
大勢で騒ぐのが好きかと思えばふらりと一人でどこかへ行ったりと、
狼と子犬を足して割ったような奴だ。
懐かない相手には噛み付くし・・・実際、オレも噛まれた事がある。
ちょっとした事故というか縁のおかげで昼食を共にする間柄だが、まあ未だに読めない奴である。
女臭さがないのは、付き合い易く────変な意味ではない────もあるのだが。
ちなみに、オレが先輩と呼ばれるのは学年の違いのせいもあるが、
主に以前籍を置いていた部活のせいだ。その時の後輩の一人がコイツである。

「うー。痛い。痛い、マジに痛いっす。先輩、幾ら何でも年下相手に拳骨はないっすよー」

オレからすればコイツの上目遣いは飼い主に甘える子犬っぽく見えてしょうがないんだが、
本人はそうでもないらしい。
不満たらたらな様子でぶちぶちと抗議の声を上げている。
所属が運動系の部なのでどつき合いには慣れていそうなものだが、
コイツは正当な理由の無い暴力とかには結構五月蝿い。

「悪い悪い。この通り、謝るから許してくれ。すまなかった」

ので、素直に謝るついでに殴った場所を撫でてやる。
時に子犬オーラを発揮するせいなのかはわからんが、
コイツが文句を言い出したときにはこうやって宥めるのが、部の女性先輩方のお約束だった。
人付き合いは苦手ではないが、それでも不思議に人気のあった小戌である。

「むぅ。分かればいいっす。あ、あとそこをもうちょっと右に・・・そう、そこを撫でて欲しいっす」

あっさりと謝罪を受け入れ、態度から険が消える。
と同時に撫でる場所を要求され、やけに侵入を阻む髪を分けてお望みの場所を撫でてやる。

「ふむぅ・・・やっぱ先輩に撫でられるのはいいっすね。女の先輩達とはまた違った手つきが、こう?
  これは愛全(あいぜん)先輩に匹敵する気持ちよさっすよ・・・くぅん」

あの先輩と比較されるのはそこはかとなくおぞましいと言うか、
学園でも悪名高い、あの歩く高機動官能小説にコイツが撫でられるのは汚されたような気がするのは
何でだろうな。
まあいいか。本人は喜んでいるんだし。
さっき文句を言っていたのとはうってかわって、今は何ともふにゃけた顔をしている。
つーか撫でる手を掴んで頬とか鼻とか擦り付けるなよ。無意識か? マーキングなのか?
やはりコイツは子犬とか小動物っぽいな。
撫でるとか、構ってやったらすぐに機嫌直すあたり。
まあ、この切り替えの速さと言うか素直さと言うか、
後に引き摺らないさっぱりした感じは正直助かる────

「────あぐっ」

「って、痛ててててて手痛ぇえ!?」

と思ったら噛まれた。つーか噛み付かれた。
いきなり首を後ろに振ったかと思ったら、急な動きについていけず外されたオレの右手(の中指)に
犬歯を突き立てやがった!?

「あぐっ、ぐるるるるるるるぅ!」

「ちょ、おま、何しやがる! 放せ、はーなーせーっ!」

「ぐぅ。ぺろぺろ」

「舐めるな! つか痛いホント痛い痛いから放せって!」

「うぁ」

余りの痛さに、反射的に手を引っ込めようとするも逆に食い込み、
何か痛みとは別の熱を持った柔らかな舌のくすぐったい感触に反応する余裕も無い。
鮫の場合は引かずに押し込んだ方がいいと言うが、
この場合はどうか分からないので殆ど無我夢中で引っ張っていると、
小戌がこれまた急に顎を開いて開放する。

「ぅ、ぅぉぉおおおおお、痛ったー・・・うわ、何か唾液ついてるし。じゃなくて!
  おい小戌、いきなり何しや」

「先輩、今うちのことを動物っぽくて単純とか思ったっすね?」

「ぉ・・・おう」

メチャクチャ痛かったので思わず怒鳴りつけようとするが、
相手の剣幕と予想外の反応に思わず頷いてしまう。
つーか小戌さん、目が据わってるんですが。

「動物っぽいとはよく言われるのでうちも気にしないっすが、
  撫でれば機嫌直すとか単純とか思われるのは心外っす。
  先輩には、これからはそこら辺に注意して欲しいっすね」

「りょ、了解。でもどうしてわかったんだ?」

いや本当、言葉にもしてないのにどうしてわかるんだよ。
実は学園を護るエスパーとかいうオチか。

「乙女の勘────まあ、そういう匂いがしたってことっす」

「勘・・・つーか匂いってお前」

心理状態でホルモンの分泌量とかは変わるらしいが、嗅覚でそれが分かるのか?
仮に分かったとしても、それってまさにどうぶ────、

「・・・あー」

いや、わかったオレが悪かったから、頼むから口開けて犬歯を見せ付けるなよ。

 

数分後。
取り敢えず本来の目的のためにまた小戌を撫でたりしながら、オレ達は持参した包みを解いた。
オレと小戌が学生にとっては貴重なことこの上ない昼休みにわざわざ屋上に来て一緒に果たす約束。
そう、昼食である。

「にしても、相変わらずお前の弁当箱はでかいなあ」

「まあ、陸上部っすからね。体は資本、健啖さは実力の証っすよ。
  加えて成長期・・・ということで一つ」

小戌の体のどこに収まるのやら。何せ重箱である。
と言っても、重箱の中身全てがコイツの胃袋に消えるわけではない。
一部はオレ用だ。

「じゃあ先輩、どうぞお納め下さいっす」

「おう。サンキュ」

小戌が重箱の蓋を外し、更に一段分を取ってオレとの中間に置く。
その真ん中には仕切りがあり、半分はオレ、半分は小戌の分である。

「じゃ、悪いけど。いつも通り、いただきまーす!」

「うい、どぞっす」

これが、オレとコイツが昼食を共にする理由である。
原因は、二つ。
一つは、オレの側。
オレの両親は今時珍しくない共働きで、しかも職業柄、
年中いつでも国の内外を問わず飛び回っており、
加えてオレは料理は食う専門なので、家の台所は必然的に妹────と言っても
血の繋がりは無いのだが────が掌握している。
で、この妹。オレには勿体ないくらいに良く出来た奴なのだが、
如何せんその性能の高さ故か性格が厳しい。
いや、実は甘えたがりだったりと可愛い所もあるのだが、生活に関わるあれこれ、
特にオレが口にするものに関しては非常にうるさい。妹の料理に不満があるわけではないのだが。
だが、思春期の人間なら偶には敢えてコンビニ弁当やスナック菓子を頬張りたくもなる。
それに、妹は健康のためとかで、余り焼いたり揚げたりしたカロリーの高い物を作ってくれない。
逆に、妹が自作したドレッシングを使ったサラダやら秘伝の調合比のダシによる汁物だの漬物だの、
そういう、こう何と言うか食べたい盛りの人間には辛い内容のことが多いのだ。

そこで、サイフの紐さえ妹に管理されていて外食も厳しいオレに救いを与えてくれるのが小戌である。
原因の二つ目は、小戌側。コイツがかつて起こした事故。
と言っても規模は小さかったし、被害者はオレだけ。
部活の片付け中にちょっとミスってしまったという程度のことである。
が、こう見えて責任感と言うか思い込みの強いコイツは責任を感じ、
何か償いが出来ないなら部活を止めるとまで言い出したのを、
どうにかこうにかオレが丸め込んだわけだ。
その結果の、互いの妥協の産物が今の状況。
小戌の弁当のオカズをオレが分けてもらっている、
と言うよりもむしろオレのためのオカズを用意してもらっているということだ。

仕切られたこちら側に並ぶ種々様々、色取り取りのインスタントなオカズ達。
一つ辺りの数は少ないが唐揚げやらハンバーグやらシュウマイやら、
特に全国の成長期を控えた少年諸君には垂涎物のオンパレード。
感動ものである。いや本当に。
一つ一つ噛み締めるように口に運び、ゆっくりと咀嚼する。
おお、この手作りには無い油っぽさが堪らない。
この幸運を与えてくれる小戌を感謝の面持ちで見遣ると、

「あぐ・・・ぅんっ!」

何故か焼肉を食べていらっしゃった。しかも骨付きカルビを。
骨の部分を指で摘んで、肉を犬歯で挟んで噛み千切って。
ワイルド、とだけ言っておこう。
少なくとも全国一千万の女子諸君はこんなことはしないと信じている。
と言うか重箱に焼肉かよ。それも学校で食う昼飯で。
畜生、自由に使える小遣いをもったブルジョワめ。

「がぅ・・・うん? 先輩、どーかしたっすか? そんなにうちに熱視線を送って。
  もしかしてこのお肉が食べたいとか?
  だとしたらこれって結構いいお肉使ってるんでうちとしても簡単には答えられないところっすが、
  先輩が後輩であるうちのお願いを愛とラブとハートで叶えてくれるんなら考えないでも」

「いやいいよ。気持ちだけ受け取っておく」

「そうっすか? それは残念っす」

言って、あぐあぐと肉を胃袋に送り込み続ける小戌。何だろうな、この敗北感は。
今ならorzの字を体現できる気がする。

「あ、そー言えば先輩。そのオカズの味はどうっすか?
  うちのリサーチの結果、先輩の好きなオカズベスト5のものを詰め込んでみたんすけど」

「・・・ああ。いや、色々突っ込みたいセリフはともかく普通に美味いぞ。
  人の手じゃ出せないこのレンジでチンのインスタント感が最高」

「いやん、先輩。突っ込むだなんて卑猥っす。オカズだけに」

「おい」

コイツの行動って本当に読めないのな。
抗議の視線を送るが、相手はしれっとしている。

「冗談っすよ。でも正直、うちは先輩の鈍チンぶりにちょっぴり落胆気味っす」

「あ? オレがなん」

「それ、レンジでチンの後にちょっとだけアレンジを加えてるんすけどね」

箸で指され、つい今しがた口に運ぼうと取った唐揚げを見詰める。
アレンジ? なんだろうか。せいぜい、衣が少し水っぽいというかふやけている程度だと思うが。
それは弁当箱の内部で時間が経ったせいだろうし。

「何か変わった所とか、ないっすか?」

探るような視線で見詰められ、促されるように唐揚げを口に放り込んだ。

「む・・・うむ・・・」

良く。注意しながら良く噛んで、丹念に入念に味わってみる。
小戌はふざけることは多々あるが、ああいう言い方をする場合には何かあるはずである。
意味も無くあんな思わせぶりな言い方はしないはずだ。
だから、細心の、馬鹿馬鹿しいまでの注意を以て味わう。

「むぐ・・・うーむ」

「・・・・・・」

横から注がれる視線が痛い。
その何かを期待するような顔には応えたい、のだが。
如何せん、どうにもこの唐揚げは普通の濃い肉と油の味しか────ちょっと待てよ。

「うん?」

違う。いや違わないけど。濃い。そうだ、それは間違いない。
が、味付けが濃いなかに肉や油のものと微妙に違う味がある。
何だこれ?

「えーと、これは。苦味・・・酸味・・・いや、しょっぱい?」

そう。そんな感じなのだが。

「おお! 話を振っておいて何すけど、ぶっちゃけ先輩が気付いてくれるとは思わなかったっす!
  じゃあ、見事クイズに正解した先輩には後輩のうちから愛を込めて、
  この購買で1日限定三個の超限定激レア珍品『ナバナチョコパン』を────」

この味は。どこか慣れ親しんだ、いや毎日食べている感じさえする味は。
ほぼ毎日、家で口にするサラダのドレッシングや味噌汁や漬物に微妙に入っているこの味は。

「妹が料理に使う隠し味の味だ」

「・・・・・・・・・へ?」

時が、止まった。

2007/04/30 To be continued.....

 

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