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メイド・レヴォリューション!!2(仮)

第1回
初代


1

主な登場人物

木ノ下椛(きのしたもみじ)
ヒロインその1 家事全般を完璧にこなすスーパーメイド。
何時も笑顔を絶やさない明るい性格だが、橡とは犬猿の仲

林田橡(はやしだくぬぎ)
ヒロインその2 陵が成人になるまでの後見人。
常にスーツを着て日本刀を帯刀しているが、事務処理能力は完璧
家事はまったくダメで、そこを椛につっこまれるとキレる

鷹崎陵(たかざきりょう)
主人公 陰謀により家族全てと両足の自由を失う
そんな境遇でも、椛や橡の愛情を一杯貰っている為寂しくはないようだ

 

 

とある暖かい、春の晴れた日―――
何時もは騒がしいこの屋敷も偶には静かな日もあるようだった。

「う〜〜〜ん、静かだわ――」

庭で洗濯物を干している木ノ下椛(きのしたもみじ)は、大きく背筋を伸ばし、深呼吸した

「あーあ、毎日こうならいいんだけど―――」

だが、案の定そんな平和を破るかのように白い屋敷から突如爆音が響き渡った。

「きゃ!!ど、どうしたの??」

響き渡る爆音
空に立ち上る黒煙
スピーカーから流れる警報

「警告!!警告!!第一調理室にて爆発発生。近くの人は至急避難して下さい。
繰り返します。―――」






「ゴホッ、ゴホッ……」

所変わってここは第一調理室。
先程まで料理という名の化学実験をしていた林田橡(はやしだくぬぎ)は、突如起こった爆発に
反応しきれず、爆風に吹き飛ばされその衝撃で柱にぶつかり呼吸が出来ないでいた。
だが、さすがに普段から体を鍛えているおかげか、呼吸困難も一瞬だけで、直ぐに
冷静な自分を取り戻して現状の分析に取り掛かった。

これは一体どうしたというの?
私はただ、料理をしていただけだというのに……
う〜〜ん、材料の配合ミス?……いえ、それはないわ。
この自動電子計量機で寸分の狂いも無くこの本の通りの量を用意したのだから、これは問題ないわ。
あとは、椛の仕業?……それはありえるし、動機もあるわ。
でも私がここで料理をすることは誰にも言ってないし、もし本気で殺るなら更に追撃するはずだわ。
後は、ただの偶発的な事故?……それは一番可能性があるわ。
たとえばこの電子レンジの漏電による爆発、ガス漏れによる引火、そんなとこかしら。
全く、しょうがないわね……

決して自分の料理の仕方が悪いとは考えず、責任を
他にすり替えたことによってやっと納得した橡。
だが―――

タッタッタッ……

ん?誰かが走ってこっちに向かってくるわね。
……って私以外だとヤツしかいないか!!

素早く走り出した橡は、急いで出入り口の鍵を掛けた。
そして次の瞬間

ガチャガチャガチャ!!
ドンドンッ!!

「ちょっと橡!!何してんのよ!!ここを開けろ!!」

ちっ、もう来やがったか……、この惨状を見られると五月蝿いから、窓からこっそり逃げるか―――

「まさか、アンタ料理してたんじゃ……やめなさい!!アンタの作った物体は
地球人には食えないんだから!!!!」
「失礼ね!!食べれるわよ!!…………あ」

橡は慌てて口を押えたが、時すでに遅し。
すっかり椛の挑発に乗ってしまったのだ。

「やっぱりそこにいたわね……そこで待ってなさいよ!!」

タッタッタッ……

アイツ、どこに行くんだ?……あ!!もしかしてマスターキー持って来るつもりか?

早く逃げなきゃ!!

5分後―――

マスターキーを使って調理場の惨状を見た椛は、怒りで手が震えていた
「あんにゃろ……調理場をこんなにして……ムキーーーー!!!」

部屋は真っ黒こげ
調理器具は散乱し
筆舌に尽くしがたい刺激臭

これを片付ける身にもなれよ……

鼻を摘みながら、爆発の中心部に行って見た。
電子レンジは木っ端微塵
大量の料理の本
そして謎の機械―――

一体アイツはどんな本読みながら料理してたのよ?

「美味しい北京ダックの作り方」
「男を虜にするスイーツ40の方法」

は?アイツが北京ダックにスイーツ?

そして床に無残に転がっている謎の機械。

何?これ。え―――……と、「自動電子計量機」???
あ―――なるほど、これでケーキに使う小麦粉とか食材を計ってたのね。
あったまい――――――…………わけないだろ!!!!このスカタン!!!

自分でノリツッコミをして、思わず床にあった機械を蹴飛ばしてしまった。

はあはあ……アイツのバカさ加減もここまでなんて。
食材の計量なんて棚にある普通の計量計使えばいいじゃない!!
多分0.000000001mgの誤差も許さなかったんでしょーね。100gならきっかり100gに
したかったんでしょうけど……はあ。

疲れたような溜息を吐く椛だったが、ボソッと呟いた

そんなに時間無いけど、間に合うの??
というか人の心配する前に、私も完成を急がなきゃ

それから数日後のある日

 

食堂へ夕食を食べに向かっている陵と椛。
真っ直ぐな廊下を陵の車椅子を押している椛は、ふと陵に

「陵様。今日は体の具合はどうですか?」
「え?いいよ。それがどうかしたの?」

暫く考えた椛は

「陵様。今日の夕食は「見た目」には豪華ですが、もしかしたら……いえ、もしかしなくても
お口に合わないと思われますので、十分ご注意下さい。もし不測の事態の時はこの木ノ下椛、
全身全霊を掛けてお守り致します!!」

車椅子を押しながら、瞳にはメラメラと固い決意を込めた炎が燃え上がっていた。
もちろん陵には何が何だか分からずに、「う、うん……」と生返事しか出来なかった。

食堂まで来ると、椛が

「陵様、ちょっと準備致しますので少々お待ち下さい」
「うん。でもお腹減ったから早くね」
「分かりました」

そう言って食堂の中へ入っていった椛。
しかし、暫くすると皿の割れる音と共に何やら言い合っている声が聞こえてきた。

「貴様!!今ケーキを食おうとしたな!!」
「あったりまえでしょ!!人間が食っても大丈夫かどうか毒見しなきゃ!!」
「大丈夫よ!!私が食べても平気なんだから」
「はっ!!ふざけんじゃないわよ。アンタのバカ舌なんかアテになんないわよ!!」
「そこまで人をコケにするか……今日という今日は赦さん!!」
「へ――――んだ!!誰もアンタなんかに赦してもらおうなんて思わないわよ!!」

暫くしたのち、やっと静かになり食堂の扉がゆっくりと開き

「アタタ……陵様、お待たせいたしました」
「椛!!どうしたの、その傷は!!」

見ると、顔中痣だらけになり髪の毛は乱れ、メイド服もまるで刀で切り裂かれたかのように
ズタボロになっていた。

「いえいえ、大したことはありません。ささ、どうぞ」

椛に車椅子を押され、食堂の中に入ると

「あれ?真っ暗だよ。でも何か美味しそうな匂いが……」

そして車椅子をテーブルの前に止めると

「いいわよ。電気点けて」

後から椛の合図と共に食堂の電気が一斉に点き

「うわ!!眩しい!!」

暗闇だった部屋がいきなり明るくなった為、眩しくて目が開けられなかった。
やっと少しづつ目が慣れ始めて部屋が見え始めると、薄ぼんやりと椛と橡が手に何か
握っているのが見え、それから伸びている紐を引っ張った。

パンパンッ!!

「「御主人様、お誕生日おめでとう御座います!!」」
「え?」

いきなりのことで全く理解出来ていない陵だったが、よく見ると椛と橡が手にしていたのは
クラッカーで、テーブルには豪華なご馳走が所狭しと並んでいた。

「御主人様お忘れですか?本日は御主人様の17歳の誕生日ですよ」

そう、今日は陵の誕生日なのだが、そのことは本人はすっかり忘れていた。

「そっか……すっかり忘れてたよ。ここん所色々忙しかったからな……二人ともありがとう」
「さて、まずは私からのプレゼントですが、テーブル中央にある箱の蓋を取って下さい」

ご馳走が乗ったテーブルの中央に、1つの白い箱が置いてあった。
陵が恐る恐る蓋を取ると―――

「あ、ケーキだ。しかも大きい!!林田さん、ありがとう!!」
「どういたしまして」
「…………」

笑顔で喜んでいる陵と橡に対して、椛は疑惑の眼差しを橡に向けていた。

おかしい……絶対おかしいわ。
調理室を爆破するような料理しか出来ないアイツが、このご馳走やケーキを作れるはずがないわ!!
そんな一朝一夕で腕が上がるわけもないし……何か秘密があるわね。
その秘密……何かは分からないけど、先ずはさっき失敗した毒見をしなくちゃ

だが、椛がケーキに手を掛けるよりも早く陵がケーキを切り分けていて、食べようとしていた。

「それじゃ、いただきまーーす」
「はい、どうぞ」

しまった!!!

「御主人様、そんな毒物食べてはダメです!!」

だが――――

「……うん、美味い!!おいしいよ林田さん!!ほら、椛さんも食べてごらん」
「え?嘘……そんなはずは……」

陵からケーキを一切れを受け取り、橡のニヤニヤした表情を無視しながら椛も一口

「もぐもぐ……え?」

このスポンジの弾力、生クリームのまろやかな甘み、
そして全体のバランス……どれをとってもプロの味だわ。

「椛さ〜〜ん、お味はどうかしら?ん?」
「グッ……ま、まあまあね。アンタにしては良く出来た方じゃない?」
「あらあら、まあちょっと本気だせばケーキ如きちょちょいのちょいですわ。おほほほほ……」

きーーーー!!悔しいーーーー!!

「そういえば椛さん、貴方のプレゼントはどうしたのかしら?」
「もちろんあるわよ。ただ……」
「ただ?ただ何よ」

そこで椛は陵をチラッと見て

「御主人様、ちょっとだけ御足労願っても宜しいでしょうか?」
「もぐもぐ……うん?いいけど……」

そう言って椛は、陵の車椅子を引っ張り部屋を出ようとした。
だが、橡は椛の肩を掴み

「ちょっと!!御主人様をどこに連れて行こうというのよ!!プレゼントだったら
此処にアンタが持ってくればいいでしょ!!」
「橡……」

一言呟いた椛が橡の方を振り返るとその表情は、橡は今まで見たことが無かった。

な、何でそんなに悲しい表情なの?

「そんな簡単にヒョイヒョイと持ってこれるような軽い物じゃないから……」

橡は、部屋を出て行く椛と陵を止めることも、追いかけることもできなかった。

「ここは……」
「はい、ここにあります」

ここは、別棟にある絵画などを制作するためのアトリエ。
椛は、鍵を開けて中に陵を入れた。

「最近ここをお借りして、ちょっと絵を制作していたんですよ」
「へーー、そうなんだ」

月明かりが窓から入り、部屋を薄ぼんやりと照らしていた。
その部屋の中央に、布が被されている一枚の絵がイーゼルに立て掛けられていた。

「さ、陵様。その布を取って下さい」
「う、うん……」

どうしたんだろ……何か変だ
この部屋に入ってから、心臓の鼓動が早くなってきた……
それに椛のその悲しい表情……
俺は、この絵を見た方がいいのか?見ない方が……
でも……

だが、何かに憑り付かれたかのように、自分の意思とは関係なく手が絵に掛かっていた
布を取り払った。
その絵は――――

「こ、これは……」

それは、陵の両親と陵本人。それと一人のメイド服を着た女性が幸せそうに微笑んでいる油絵だった。

「今現在、写真などの画像は全て失ってしまいましたので、私の記憶からイメージして
書きました。……そう、幸せだった頃を」
「………」

陵は、反射的に絵から目を背けてしまった。
しかし、椛は優しく語り掛けた。

「陵様……確かに辛い記憶は忘れてしまいたいものです。旦那様や奥様のことは
忘れてしまいたい、思い出したくない……そう思うことはごく自然だと思います。
ですが、それですと同時に楽しかった記憶、幸せだった思い出までも忘れてしまいます。
私はそれではいけないと思います」
「椛……」

椛は静かに陵の前でしゃがみ、そっと手を握り

「ですから、陵様にはこの絵を見て楽しかった記憶、幸せだった思い出「だけ」を
心に留めておいてもらいたくてこの絵を描きました。
イヤな記憶は橡にでも押し付けちゃえばいいんですよ」
「それは……ちょっと林田さんに悪いよ……」

ああ……暖かい……
椛の手ってこんなに暖かいんだ……
もし俺に姉さんがいたらこんな感じなんだろうな……

陵は、溢れ出る涙が抑えられなかった

「椛……ありがとう」

父さん……母さん……そして蓬さん……
向こうでは元気にしてますか?
俺は……今とっても幸せです

一方その頃―――

プルルルル……プルルルル……
もしもし、林田だけど……ええ、料理は無事受け取ったわ。
帰りは、裏の勝手口から静かに出て下さい。
……それは大丈夫です。出てすぐの目の前にタクシーを着けておきました。それに
乗って帰って下さい。
……料金の方は既に口座に振り込んであります。
ええ……、ええ……そうです。もしウチの強欲メイドが探りを入れてきても
知らぬ存ぜぬで通して下さい。では

ピッ

ふう……どうやら上手くいったわね。
しかし、ケーキを食べた時のあの椛の顔ったら……もう……
面白すぎだったわ!!!!!
あはははははははは!!!!

2007/04/21 To be continued..... ?

 

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