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おれいまいり

第1回 第2回 第3回 第4回
     


1

「ひぃぃぃぃ!!!」
「ぶっ殺すぞてめぇ!!!」

情けない声を上げ、追いかけられているのは、僕、神谷 尚。
後ろから追いかけてくる、髪が様々な色に染まったお姉さん達は御近所のレディースの方々だ。
て言うか、何で僕は追っかけられてるの?
彼女達は、パチンコに負けて苛立っていた所を偶然通りがかった尚を、
パチンコ代稼ぎがてらにストレス解消のために殴らせて貰おうと思っただけである。
訳も分からず、涙目になりながら逃げ続けるしか僕には出来なかった。

「もう逃げらんねぇなぁ!」
「ひぃぃぃぃ!!!」

気が付くと、行き止まりまで来てしまった。
背後からはお姉さん達が拳をベキベキ鳴らしながらじりじりと迫ってくる。

「いい加減諦めな!」
「ひっ!」

『おめぇら尚に何やってやがんだ糞共ぉぉ!!!』

お姉さん方の一人が拳を振り上げた瞬間、路地の向こう側から聞き慣れた怒鳴り声が聞こえた。

「どけぇぇカス共がぁ!!!」

金属バットを振り回しながら近付いて来たのは、
腰まで延びた綺麗な黒髪に僕と同じ学校の制服を着た長身の美女───僕の幼馴染み、宮川 霞だった。

霞の歩みに合わせて、お姉さん達がモーゼの十戒のように道を開けた。
お姉さん達はみんな揃って、まるで『化け物』にでも会ったような表情をしている。

「ま、まさか……」
「左右で色の違う目……」
「「「「「「「「「宮川霞!!!」」」」」」」」」

お姉さん達が声を揃えてそう言ったのを見て、思わず吹き出しそうになった。
霞は確かに生まれつき左右の瞳の色が違う、所謂金銀妖瞳と言うやつだ。
右の瞳は燃えるような真紅、左は凍てつくような蒼だ。
僕はとても綺麗だと思う。

「大丈夫か尚?」
「あぁ、うん、僕なら、たいじょ、うぶ、だよ……?」

走っていたので、息を荒げながら途切れ途切れに言う。

「……てめぇら、ブチ殺す……!!!」

僕が言った事の意味をわかっているのかいないのか、
物凄く恐ろしいオーラを纏いながらお姉さん達の方へと向かっている。

「ひぃぃぃぃ!」
「ゆ、許してください!」
お姉さん達は、と言うと、さっきまでの僕のような悲鳴を上げながら、腰を抜かしている。

「てめぇらみてぇのが居るから地球が温暖化すんだよ!!!」
「霞!!!」
ガァン!!!

霞がお姉さん達とは無関係の環境問題を無理矢理こじつけながらバットを振り上げ────落ろした。

「……チッ」

霞が舌打ちをしてこっちへ向かってくる。
バットの方は、お姉さんの頭の上、コンクリートの壁に『突き刺さって』いた。
お姉さんは白目を剥いて気絶している。
他のお姉さん達は唖然としている。
『突き刺さっている』と言う事実を信じられないようだった。

「さっさといけ!!!」

霞がそう怒鳴ると、唖然としていたお姉さん達がようやく目の前の人物の『異常性』に気が付いて、
気絶しているお姉さんを抱きかかえて一目散に逃げていった。
お姉さん達の目には『恐怖』しか写っていなかった。

霞は僕の目の前まできて、じっと僕を見つめている。

「大丈夫だった?」

本来なら霞が言うべき台詞を放ったのは、僕だ。
僕がそう言うと、霞は怒りの表情を崩して────泣き始めた。

「……う、うん……ぐす……大丈夫…ヒック…」
「本当に?本当に大丈夫?」
「……うん、うん……」

泣いている霞を抱き締め宥める。
あぁまた、泣かせてしまった……。

「ごめんね?心配かけて……」
「ううん、グスッ、悪いのは私なの、ヒック……
……尚を一人にした、ヒック、あたしが悪いの……」
「……ほら、泣かない泣かない!」

これ以上霞が自虐的な事を言い始める前に、ハンカチで涙を拭いてあげる。

「……はいチーンして。
……霞もさ、いつも僕と一緒に居るわけにはいかないだろ?
だから、心配かけた僕が悪かった。
……わかった?」

ゆっくり、丁寧に涙を拭き取りながら言い聞かせる。

「……うん」

霞はなぜか少し悲しそうな顔をして頷いた。

その後、僕は霞の手を引いて帰った。

 

チクチクと視線を背中に感じる。
そりゃそうだろう。
だって、制服を着た男の子が物凄い美女の手を繋いで歩いていたなら、注目しない方がおかしい。

「み、見られてるね尚」
「仕方ないでしょ」

小声で霞が話しかけてきた。

「なんで?」
「か、霞が綺麗だから……でしょ」

僕の言葉を聴いて、ボッ!と音が聞こえそうなくらい真っ赤になる霞。

「ご、ごめんね?尚」
「謝る事じゃないよ」

シュンとして謝る霞。
みんなの前でもこう振る舞えばいいのに。
あ、そういえばまだ説明してなかったね。

気付いていると思うけど、霞は二重人格、とまではいかないけれど、とても裏表の差が激しい。

さっきの、僕と接している時のような態度は、ごくごく一部の親しい人
(僕や、霞の家族、それに僕の姉さんぐらいかな?)に対してしかとらない。
それ以外の人には、クールな感じで、怒るとさっきのアレだ。
なんで?と霞に聞いたところ、「必要ないから」だそうで。

「どうしたの尚?ぼーっとして」
「いや、なんでもない」

あれ?誰に説明してたんだ?
まぁいいか。

 

霞とくだらない世間話をしているうちに、家に近づいてきた。
ちなみに、僕と霞の家は隣同士である。

「あのね尚……」
「なに?」

霞は何故か恥ずかしそうにモジモジしている。

「あの、あのね……今日!!!」
「「「「「「神谷クン!」」」」」」

霞が次の言葉を発そうとした次の瞬間、どこかから大勢の僕を呼ぶ声がした。
僕はびっくりして、霞と繋いでいた手を離してしまった。

「神谷クンこっちこっち!」

キョロキョロと前後左右を確認すると、後ろに女子大生らしきお姉さん達の団体が見えた。
たぶん、家の向かいにある女子大の学生寮のお姉さん達だろう。
だんだんお姉さん達が近付いてくる

「ちょーどよかった!
神谷クン、はい!」

お姉さん達の中の一人が、謎の箱を手渡してきた。

 

「はい?なんですかこれ?」
「ぷっ!!!」

一人がいきなり吹き出したかと思ったら、みんな一斉に笑い始めた。

「本当に分かんないの?」
「……はい」

突然笑われた事に憮然としながら、正直に答えたらまた笑われた。

「今日は何月何日でしょー?」

今日?
2月の……14日?
……あ!!!

「バレンタインだ!!!」
「「「「「「せいかーい!」」」」」」
「そんな神谷クンに」「お姉さん達からの」「プレゼント!」
「「「「「「義理チョコでーす!」」」」」」

お姉さん達息ピッタリすぎ……

お姉さん達はそう言うと、みんな僕に一つずつチョコが入っていると思われる箱を渡してきた。

「ありがとうございま────」
ガゴォン!!!

お礼の途中で、後ろから物凄い音がした。
何事か、と後ろを見ると、電柱に鉄バットがめり込んでいた。
────霞の鉄バットが。

「……か、霞?」

霞は俯いていて表情は窺えない。
よく見れば、少し震えているようだった。

「な…に……ちか……な」
「……へ?」
「尚に近づくな!!!」

霞からは怒りのオーラがスピリチュアル霊能者じゃない僕でも感じ取れるくらい出ていた。

お姉さん達の方へ行こうとする霞を、お姉さん達と会ってから離していた手を
慌てて再び繋いで引き止める。
こんな風に霞が怒ってる時は死人が出かねないから。

「あ、ありがとうございましたっ!」
「「「「「「う、うん、じゃあね!」」」」」」

お礼を言いながら『早く逃げてください』とアイコンタクトする。伝わるかどうか怪しいけど。
どうやら伝わったようで、お姉さん達は逃げ帰って行った。

「……一体どうしたの霞?」

はぁ、とため息を吐いてから霞に尋ねる。
しかし霞は答えず、体を震わせている。

「いくらなんでも、あれは失礼でしょ?」
「……尚が」
「へ?」
「尚がデレデレするから悪いの!!!」

霞はそう言うと、繋いでいた手をふりほどいて家の方向に走って行った。
僕はボケーッと霞が走り去るのを、チョコの入った箱を抱えながら見送る事しか出来なかった。

2

「……な、何で?」

霞が走り去ってから少しして、僕は一人呟いた。
デレデレはしてない……つもりだけど、もしデレデレしてたからって、何であんなに怒ったの?
うーん……わ、わからない。
でも、霞泣いてたような……。
よくわかんないけど、泣かせてしまったのだから僕が間違いなく悪いのだろう。

「あとで謝るか……」

一人立ち尽くしたまま、結論をだした。

 

「ただいま〜」
「お帰りなさいなーくん!!!」

玄関の扉を開けるなり、速攻で僕に抱きついてきたのは姉さんだ。
姉さん───神谷 奈々は正真正銘僕の姉だ。
僕より1歳年上で、現在高校三年生。ちなみに僕と同じ学校だ。
僕と姉さんはよく似ていないと言われる。
姉さんは美人、僕は凡人だからだ。
なのに、今までのやり取りで分かるとおり、姉さんは弟思い、と言うかブラコン気味だ。
学校では生徒会長で弓道部で全国優勝で模試とかもトップクラスの文武両道な姉だ。
だけど、大学へは行かないらしい。姉さんが言うには、準備期間がほしいんだそうだ。
海外の大学でも狙っているのだろうか?
だとしたら、すこし寂しく感じる。

 

「くんくん……あれ?何か変な匂いするよ?なぁくん?」
「え?どんな匂い?」

姉さんが突然、胸の辺りに顔を押し付けるようにして匂いを嗅ぎだした。
自分でも嗅いでみたけど、別に変な匂いはしなかった。
ただ少しカカオの香りがするだけだ。

「……チョコ」
「……は?」
「チョコの匂いがする!!!」
「あ、あぁ、さっきお向かいのお姉さん達からもらったんだ」
「……出して」

いきなり声を低くして言う姉さん。

「な、何で?」
「いいからっ!!!
出して!!!」

姉さんの迫力に負けて、チョコをしまっていたカバンを差し出す。
姉さんはなんの感情も映さない瞳でそれを一瞥して、それを掴んで台所の方へむかった。
呆然と姉さんを見送る僕。

「ちょっと!どうしたの姉さん!」

遅れて、台所まで姉さんを追いかける。
が、姉さんは既にチョコを持っていなかった。

「ね、姉さんチョコは?」
「しまっちゃった」
「どうして?」
「だって、なぁくん持ってたら、一遍に食べちゃって鼻血出しちゃうかも知れないでしょ?」
「そ、そうだけど……」

なぜかちょっと感情的になってるみたいだけど、
姉さんにそこまで言われちゃったら、ご飯を作って貰ってる僕は反論できない。

「わ、わかった……」
「でも、どうしても食べたくなったらお姉ちゃんに言ってね?」
「う、うん、わかったよ姉さん」

まぁ、そこまでチョコが食べたい訳じゃないけど……。
お姉さん達のチョコ、期待してたのになぁ……。

とぼとぼと歩きながら自室へと向かう。
後ろのゴミ箱にチョコが捨てられている事に気づかずに。

 

「なぁくん!ご飯出来たよ!」
「今行くー!」

階下から姉さんの声がした。
急いで下へ向かう。

「今日も美味そうだね!姉さん!」
「今日はちょっと頑張っちゃった!」

テヘッ☆なんて続きそうな感じで言う姉さん。
実の姉さんなのに、可愛いなぁ、なんて思ってしまう。

「今日はちょっと高い挽き肉で煮込みハンバーグにしてみたんだけど……どう?」
「おいひぃよねぇさん」
「えへへ……ありがと」

僕が一口目を口に入れたところで姉さんが尋ねてきた。
口の中に食べ物が入っている状態で答えるのは行儀悪いが、答えた。
照れくさそうに笑う姉さん。

端から見れば、これは幸せな家庭そのもの。
────両親が居ないことを除けば。

父さんと母さんが死んだのは三年前。
何の前触れもなく、結婚記念日に旅行へ行くといって、そのまま帰ってこなかった。
死因は単純に交通事故だった。
二人が乗っていた車に、対向車線から走ってきたトラックが正面衝突した。
僕たちの両親に、トラックの運転手も即死。
僕らに残されたのは、この家と沢山の遺産だった。

あの時の事は今でも忘れられない。
死体の状態が酷いので、誰の目にも触れる事なく火葬された両親。
葬式では遺骨を手に、弔問客に頭を下げ続けた。
姉さんはただ泣くばかりの僕の代わりに喪主を務めてくれた。
葬式の間中、泣き続ける僕の傍にいて、
「大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと傍に居るからね?」と言って僕を慰めてくれた。
たぶん、姉さんのこの言葉を僕は一生わすれないだろう。

お葬式の事で、姉さんが親戚の人達から信頼されているおかげで、
僕らはこの家に住んでいられるんだ。
姉さんには感謝しても感謝しきれない。

「姉さん、……ありがとう」
「なになぁくん?いきなりありがとうだなんて」
「いや……、お礼が言いたくなったのさ」
「フフッ、変ななぁくん」

二人しておかしくなって、二人で笑った。
姉さんとこーやって過ごすの、好きだな……。
煮込みハンバーグを再び口に運びながら、ぼんやりそんな事を考えた。

 

 

食事の後、お風呂に入って、部屋に戻ってきた。
時計を見ると、もう12時を回っていた。
そろそろ霞に謝りに行くかな……。
そう考え、僕は窓に近づいた。
窓を開けると、すぐ向かいが霞の部屋だ。
窓を開けて呼び掛ける。

「おーい、霞ぃ〜!」

反応なし。

「霞ぃ〜、入るぞ〜」

反応なし、強制突入する。

手を伸ばし、霞の部屋の窓を開ける。
窓の桟の上に乗り、飛び移る。

「ほっ!」
……侵入完了。

ちょっとしたスパイ気分になりながら、霞の部屋に入る。

「霞ぃ〜」

霞の部屋の中は真っ暗で、周りが見えなかった。
霞に小さな声で呼びかける……が返事はない。
とりあえず、机を探し出し、備え付けのライトを点ける。
ぼんやりと照らし出される霞の部屋。
所々に人形が飾ってあったりする、普通の女の子の部屋だ。

ふと机の上を見ると、何やら綺麗にラッピングされた赤色の箱が……。
なんだこれ?

「ん…なお…?」

いきなり後ろから霞の呼び声がして、驚きつつ振り返った。
霞はまだ寝ぼけているようで、僕を見る目の焦点が定まってなかった。

「か、霞……?」
「あのねぇ、そのチョコねぇ……」
「なおにあげるのぉ……」
「それでね、なおにあやまるのぉ……zzz……」

話の途中でふにゃふにゃと枕に突っ伏す霞。
やっぱり寝ぼけてたみたいだ。
ありがとう霞。と心の中で呟く。
やっぱり霞は優しいなぁ。
ま、霞を起こすのも酷だから、仲直りは明日にするか。
そう決めて、霞に布団を掛け直してあげて、部屋を出た。

 

明日、霞から手渡されるであろうあの箱に期待を寄せながら、自室に入る。

「……なぁくん」
「うぉ!!!……って姉さんか……
どうしたの?こんな夜遅くに」

部屋のベッドの上の方からいきなり声を掛けられた。
目を凝らすと、姉さんらしき人影がベッドの上にいた。

「それはコッチの台詞よ?なぁくん?
……霞ちゃんの部屋で何してたの……?」

声を低くしてそう言い放つ姉さんからは、何故か怒りのオーラが漂ってきた。

お、恐ろしい……!!!
僕は姉さんがこれほど怒っているのは一度しか見たことがない。

「ひ、昼間に泣かせちゃって、謝りにいったんだけど……
ね、寝てたよ……はは、ハハハハ……」

姉さんの余りの恐ろしさ乾いた笑いを漏らす僕。
しかし、なおも姉さんのオーラは健在だ。

「本当に……?」
「ほ、本当だよ?」

僕がそう言ったら、姉さんの怒りのオーラは雲散霧消した。
かわりに、僕に媚びるような柔らかく、甘い声で話しはじめた。

「ならいいの……」
「な、なんだか良く分かんないけど、ごめんね?姉さん」
「違うの!
なぁくんは謝らなくていいのよ?
お、お姉ちゃんが悪いの……
う、疑ってごめんね?
お姉ちゃん、疑い深くって……グスッ」
「な、泣かないで姉さん」
「だって、だってお姉ちゃん、なぁくんに嫌われちゃう……ヒック…」

あぁ、姉さんまで泣かせてしまった……。
僕は女の人を泣かせてしまう呪いでもかけられてるんじゃなかろうか。
それは兎も角、姉さんを泣き止めさせないと。
こーゆう時はたしか…

「姉さん、僕はこんな事じゃ姉さんの事、嫌いになんかならないよ?」

と言って抱きしめ、頭を撫でてあげる。

以前も似たような慰め方をしたが、効果は抜群だった。
姉さんの機嫌は瞬時に良くなり、翌日から夕食はご馳走が続いた。
要はそれ位機嫌が 良くなると言うこと。
僕の期待どうりに、途端に姉さんのしゃくりあげる声は聞こえなくなり、
顔を見なくても分かるくらい喜んでいるのが感じられる。
姉さんがもし猫だったら、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしているだろう。

「あのね、なぁくん、お願いがあるの……」
「なに?姉さん? 僕に出来ることなら何でも……」

姉さんからお願い?
も、もしかして……

「あのね、一緒に……寝ていい?」

ぐはぁ!!!
姉さんがたまに頼んでくるこの『添い寝』は僕にとっては地獄だ。
姉さんのメリハリのある肢体が僕に引っ付いてくるのだ。
いくら実の姉と言えども、そんな事をされては息子がハッスルしてしまう。
寝ている間、姉さんが離してくれないので、処理しようにも処理できずに、
一晩中悶々とさせられるハメになるのだ。
だからいつもは断っていたのだけど……。何でもやる、と言ってしまった手前、断る事は出来ない。
仕方ない…今日は完徹だな……。

「わ、わかった」

そうして僕は一晩中、性欲と言う名の化け物と戦うハメになったのだ。

3

「……なぁくん……」

暗闇の中、隣で眠る愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい弟に呼びかける。
返事は無く、なぁくんは穏やかな寝息を洩らし続けている。
暗闇に慣れた目で、なぁくんを見つめる。
寝てるなぁくんってばかわいいな……
そう思うと、自然と緩んだ笑顔になってしまう。

夢を見ているのか、時々震える睫。
どんな夢を見ているのかな?
勿論、お姉ちゃんの夢だよね?
もし、他の女の子の夢なんて見てたら……メッ!だよ?

「……ん、姉さん……zzz……」

な、なぁくんが呼んでくれた!!!
お姉ちゃんの夢、ちゃんと見てるんだ!!!
嬉しい!!!

喜びの余り、なぁくんを襲っちゃいそうになった。
ダメ、だめ!初めてはなぁくんから優しくして貰うんだ!
は、初めての時は、なぁくんから沢山キスしてもらって、沢山愛してるって言ってもらって、
沢山せ、精液を注いでもらうの。
それでね、子供が出来て、ずぅぅぅっと、ずぅぅぅっと仲良し家族で暮らすの。

そんな甘美な妄想をしているだけで、体は完全に発情してしまった。

「……ハァ、ハァ……なぁくん……」

ダメ、こんなはしたない事。
でも、我慢できない!

服を脱ぎ捨て、なぁくんに跨り、体をなぁくんに擦り付ける。

「あ、あ……なぁくぅん!」

こ、声が漏れちゃう!
なぁくんに聞かれたら……。
その緊張感がより興奮を高める。

「あ、あ、な、なぁくぅん」

腰がかってに動いちゃう!!!
なぁくんの腰にすり付けていた腰が前後し始める。

「お、お姉ちゃん、い、イッちゃ、イっちゃうよぅ!!!」

腰の動きが段々早くなってきた。

「……ん、んぅ……zzz……」

その時、なぁくんがいきなり寝返りをうった。

「ん、んくぅぅぅ!!!」

寝返りをうったなぁくんの腕が、偶然胸の突起を擦った。
その刺激がきっかけで、今まで堪えていた絶頂が一気に溢れ出した。
腰がビクビクと震えて、口からは涎が垂れた。

しばらくして、快感が収まり、なぁくんの横に倒れ込む。
なぁくんにイカされちゃった……。
その幸せを噛み締めながら、眠りに就いた。

 

ジリリリリリ!!!
目覚ましが鳴ってる。
目を閉じたまま、目覚ましを手探りで止める。
あ、朝か……。
性欲との戦いに勝って、眠りについたんだっけ……。
ゆっくりと瞼を開くと目の前に広がる肌色の……肌色!?
驚いて飛び起きると────

「んぅ……なぁくん……?」

そこには、裸の姉さんが居た。

「────っ!!!姉さん!!!」
「ふぇ?なぁくんどうしたの?」
「いいから早く服来て!!!」

何故かベッドの下に落ちているパジャマを渡して、部屋を出る。

全く、姉さんの脱ぎ癖には困ったものだ。
いくら姉さんだからって、その、裸を見せられると……
下半身に張ったテントがいつもより大きくなっちゃうよ……。

姉さんに興奮するなんて……、と浅ましい自分を戒めながらリビングへと向かう。

しばらくテレビを見て待っていると、姉さんが降りてきた。

「あ……ご、ごめんね?なぁくん…」

そ、そんなうるうるした瞳で上目遣いされたら怒れないよ……。

「怒ってないよ、ただ、寝てる間に裸になる癖、直さないとね?」
「うん……あ、朝ご飯作っちゃうね!」

そう言って、キッチンへと向かう姉さん。
その間に着替えとこうと思って、部屋に戻る。

ズボンを脱ごうとすると、何だか湿ってた。
顔にも涎のあとが有った。
よっぽど熟睡したのだろうか、ぼくは?

着替え終えて、リビングへ向かうと朝食の用意も丁度終わったようだった。

「あっ、なぁくんご飯出来たよ!」
「あ、今日は鯵の干物?」
「うん、安かったし」

やっぱ朝は和食だ!

「じゃ、行ってくるね〜」
「行ってらっしゃーい!」

瞬く間に朝食を終えた僕は家を出た。

玄関のドアを開けると、丁度隣から霞が出てきた。

「おはよう」
「お、おはよう」

挨拶もそこそこに僕らは歩き出した。
ただ黙って歩き続ける。
朝独特の静けさも合わさって、まるで世界に二人だけのようだ。
好きだな、こんな感じ。
霞も僕も、元々あんまり喋らない方だ。
だから、こんな沈黙は嫌いじゃない。

黙々と歩き続ける事二十分ほどで学校に着いた。

教室へ入ると、大体半分位の生徒が揃っていた。
友達と挨拶を交わしながら自分の席に座る。
窓側の後ろから二番目が僕の席だ。
霞はそのすぐ後ろ。

みんな、何で僕らが一緒に登校していることに対して何も言わないのかと言うと、
入学してからずっと続けていて、いい加減つっこむのもめんどくさくなったのだろう。

僕はどうして一緒に登校するのか、と聞かれても、これが僕らの当たり前だから、としか答えない。
霞に至っては、常に近寄りがたいオーラを纏っていて(友人談)、
聞いても一睨みされて、後は無視するからだ。
いくらなんでも、反応がこれだけしかないのだから、みんな飽きるだろう。

席に着いて友達と話していると、教室の戸が開けられ、
うちの担任───外道(そとみち)先生がやって来た。
外道先生は中年のオヤジで、常に脂ぎった頭とギラついた目を光らせている。

ホームルームが終わって、外道先生が出ていった。

「おい尚!見たか?」

いきなり隣から話しかけてきたのは、華山 和人、僕の男友達の中では一番仲がいい友達だ。

「何が?」
「バカ、見なかったのか?ゲドウのケツ!」
ゲドウとは外道先生の通称である。
「ゲドウのケツがどうしたの?」
「ズボンが破けてて、中からパンツが見えて、それが何とイチゴ柄だったのよ!」

ブハハ、と豪快に笑いながらバシバシ肩を叩いてくる。
ギロリと霞が和人を睨むと、ヒッと呻いて笑うのを止めた。

そうこうしている内に授業が始まった。
一限は……英語か。

英語担当教諭のおばさんのとても流暢とは言い難い英語を聞いていると、睡魔が襲ってきた。
どうやら性欲との戦いの疲れがまだ残っていたようだ。
僕は素直に睡魔に負けて、眠りの世界へと突入した。

 

「うわー!コイツの目の色変だ!!!」
「わーきもちわるー!!!」
「お前なんかどっか行けー!」
「……ヒック……グスッ……」

公園で女の子が石を投げられてる。
あぁ、小学校低学年ぐらいの記憶かな。
この頃、周りのみんなは霞を目の色が違うからと言って、虐めていたんだ。
僕はそれが許せなくって───

「バカ!!!霞をいじめるな!!!」

何て霞の前によく飛び出してた。
で、結局────

「ソイツの味方するお前もきもちわるー!」
「バーカ!」

ガスっ
「う、う、うわぁぁぁん!」

って泣かされるんだ。
改めて見るとカッコ悪いなぁ僕。
そんでもって────

「あんた達ぶっ飛ばす!!!」

って鉄バットを持った霞がいじめっ子を追っ払うんだ。

「ヒック、か、霞ぃだいじょうぶ?」
「う、うん、う、うわぁぁぁん!」

泣きながらも霞を慰める僕。
ここは余り今と変わってないなぁ。
確かこのあと、うちに帰って両親に心配されたりして────「尚!!!」

「うわぁ!!!」

がばり、と突っ伏していた机から飛び起きる。

「な、なんだ、和人か……」
「なんだとはなんだ、それはそうともうお昼なんだけど、よく寝てたなぁ、お前」

お、お昼!?
時計を見ると、確かに十二時の半ばを過ぎたぐらいだった。

「な、何で起こしてくれなかったのさ!」
「いや、俺は起こそうとしたんだけど……宮川が起こすなって……」

慌てて後ろを向く。

「霞、ほんと?」

無言で頷く霞。

「せ、先生とかは何も言わなかったの?」
「それが……」

横目で霞を見る和人。

「何かしたの霞?」
「べつに……ちょっと睨んだだけ」

か、霞……それは授業妨害だよ……
いくら教師と言えど霞に睨まれては何も言えなくなってしまうだろう。

「あぁ……期末も近いのにどうすれば……」
「……尚、これ……」

霞が渡してきたのは午前中の授業のノートだった。

「ありがとう霞!」
「……ん……」

照れくさそうに頭を掻く霞。
ほんのりピンク色に染まった頬が可愛い。

「へぇ……宮川って意外と真面目なんだな……あっ!!!」

言ってから口に手を当てしまったと言うような顔をする和人。

「…………」

無言でそっぽを向く霞。

「ご、ゴメン……」
「霞、ご飯食べにいこうか!」

微妙に気まずい空気を払拭するように、霞を食事に誘った。
食事って言っても、ただ生徒会室でお弁当食べるだけなんだけどね。
あ、ちなみに僕は生徒会長なんだ。肩書きだけみたいなもんだけど。
まぁ詳しい話はまた今度。

「うん」

和人に気にすることないよ、と言い肩を叩いて、霞を引き連れ教室を出た。

 

「はい」

生徒会室に着いて、霞からお弁当を渡される。
なんで僕が霞からお弁当を受け取っているかと言うと、
姉さんに負担を掛けないように、昼食は購買で済ませていたら、
霞がお弁当を作ってきてくれると言うので、去年から霞に頼んでいる。
僕はそれで浮いた昼食代を飲み物に回したり、出来るだけ霞に還元している。

「ありがと」
「うん……」

ただお礼を言っただけなのに、頬を染める霞。
何だかそわそわしてるなぁ……

 

「ふぅ、美味しかった」
「お粗末様でした」

霞が作ってきたお弁当は最高だった。
様々な工夫や、色の取り合わせ、栄養にまで気を配ったお弁当だった。
それにしても、霞も料理が上手くなったもんだ。
一年前までは冷凍食品だらけだったのに……成長したなぁ。

「はい、お茶」
「ありがと尚」

昼食後の一服───と言っても、煙草じゃなくて生徒会室に来るとき買ってきたお茶───
を楽しんでいる時、誰かが入ってきた。

「はぁっはぁっ、やっと、見つけた!」

息を荒くしながら生徒会室に入ってきたのは、生徒会担当の先生、加治 姫子(かじひめこ)先生だった。

「先生、そんなに急いでどうしたんですか?」

僕は姫子先生の様子に驚きながらそう尋ねた。

「どーしたもこーしたも……兎に角、ついて来て!!!」

姫子先生はそう言うと、僕と霞の手を掴んで、走り出した。
姫子先生はサッパリとした感じの美人な先生で、その姫子先生に手を掴まれちょっとドキッとした。
その直後、なぜか霞にお尻を抓られた。一体僕が何したって言うんだよ……。
そのまま僕達は姫子先生に引っ張られながら生徒会室を後にした。

4

「職員室、ですか?」
「そうよ」

姫子先生に引きずられてやって来たのは職員室だった。

「なんでまた職員室なんかに?」

僕の隣でだまって頷く霞。

「あれぇ?忘れちゃったのかなぁ?生徒会長クン?」

にたぁりと笑みを浮かべる姫子先生
あ、あれ?何だか姫子先生の後ろに鬼が……

「さ、サッパリ何の事だか……」
「昨日、生徒会報のまとめ作業、手伝ってくれるって、
  言 っ た よ ね !」

さ、さっきより遥かにハッキリ鬼が見える!
姫子先生は笑顔のはずなんだけど笑顔じゃないみたいだ!

「は、ハイ!!!」
「じゃ、これ宜しくね!」

思わずコンマ一秒ぐらいで頷くと、
ドサリ、じゃなくて、ドガッ、と音がするくらいの紙の束が机に置かれる。
ちょ……天井に届いてるじゃないですか!

「じゃ、後は宜しくね!」

そう言い残すと、姫子先生はどこかへ行ってしまった。

「……どうしよコレ……」

僕はこの圧倒的な質量の紙の前に頭を垂れるしかなかった。

「……尚」

後ろから制服の裾を引っ張られる。
ああ、圧倒的なペーパーモンスターに気を取られて、霞の存在を忘れかけていた。

「……それ、手伝う」

それ、と霞が指差したのは例のペーパーモンスター。
そうか!一人だと絶対的に無理だと思ったけど、霞が居てくれれば完遂は可能だろう。
でも女の子に手伝わせるのは……
でも霞がいないと……

「……よろしくおねがいします」
「……ん」

色々考えた末、素直に手伝ってもらうことにした。

「……どうやって、運ぶの?」
「ああ、そこにある段ボールに分けて入れて持ってこう。
今脚立借りてくるよ」

霞に近くにあった空の段ボール箱の山を指差して言った。
僕は事務員さんに訳を話して、脚立をかしてもらった。

脚立を紙の塔の隣に立てて、上に登る。
幸い、背が小さいわけでは無いので、一番上まで手が届いた。
上から一束ずつ、慎重に取って、霞に渡す。
霞はそれを手際良く段ボールに詰める。
それを繰り返す内に、塔の高さは半分以下になった。

その時突然衝撃があり、脚立がゆっくり倒れだした。
落下地点には霞。
危な────

危ない!と言う前に落ちたと思ったら、ぽふ、と顔が何か柔らかいものに────

 

「あ、か、かす、かすみ!」

そう、柔らかいもの────すなわち、霞のおっぱいだった。
と言うか、お姫様だっこ──脚立の一番上に腰掛けていた僕をキャッチすると
丁度そうなるんだけど──をされていた。
霞って、柔らかいな……。
ついさっき、脚立から落下したと言うのに、僕は霞の腕や胸の感触に感動を覚えていた。

段々と冷静になってきて、自分が今物凄く恥ずかしい格好をしていることに気付いた。

「か、霞!下ろして!」

霞に降ろしてもらおうと身を捩るが、なぜか降ろしてくれない、と言うより、
僕を抱える力が一層強くなった。

「……霞?」

怪訝に思って霞の顔を見ると、怒りの形相で倒れた脚立の向こうを見ていた。
霞の視線の先を追うと、腰を抜かし、顔を青くした外道がいた。

「す、すまんかった」

どうやら、外道が脚立にぶつかったらしい。
周りを見渡すと、職員室内のすべての人がこちらを見ていた。
誰一人として、お姫様だっこされている僕を笑ってはいない。
むしろ、みんな顔を青くして、霞を見ている。

そう、それ程霞から怒りのオーラが溢れだしていた。
右目には燃え盛る紅蓮の炎、左目には見るものを凍てつかせる絶対零度の氷
その両目に睨まれて平気でいられる者はそうそう居ないだろう。
僕は慣れているから平気だ。

いきなり、霞の僕を抱く力が強くなった。
同時に脚にも力が篭もるのが伝わってきた。
あ、ヤバい!外道を『蹴る』つもりだ!
霞の『蹴り』はヤバい、下手すれば死者を出す。
霞を止めるにはどうすれば……仕方ない!

僕は覚悟を決め、霞の首に手を回し……ほっぺにキスした。

「………!!!」
ドサッ
「ぅおっ!」

途端に霞は真っ赤になり、全身の力が抜け、床にへたり込んでしまった。
それと同時に支えを失った僕は床に思いっきり腰を打ちつけた。
その瞬間に、職員室内に広がっていた緊迫した空気は雲散霧消した。
変わりに、何か微笑ましいものを見る目で見られている……。

再び恥ずかしさがこみ上げてきて、霞の手を掴んで職員室を飛び出した。

 

職員室を飛び出してやって来たのは生徒会。
やっぱりここは落ち着くなぁ。なんとなくだけど、自分の部屋にいるみたいで。

「……な、尚!」

呼ばれて振り返ると、職員室からずっと走ってきたからか、顔を赤くしている霞がいた。

「どうしたの?」
「……その……あぅぅ」

何かを言おうとしてるのかな?

「その……何で、チューしたの……?」
「う……」

霞は今一番触れてほしくない話題を出してきた。
あれは僕の人生の中で五本の指に入るほどの恥ずかしい出来事にランクインしている。
今もし、タイムスリップ出来るならば、即座にあれを改竄しに行くほどだ。
下心がなかったと言えば嘘になるけど、あれは霞を止めるためにやったことだ。
下心があったと告げると、『何か』が変わってしまいそうで────

「あ、あれは……そのぉ……」

霞は僕から、紅と蒼の目をそらさない。

「その……か、霞を止めようと、思って……」

僕は『正直に』言った。
だけど、霞はあきらかにスッキリしていないようす。

「尚、ほんと────」
コンコン

霞が何かを言いかけた所で、生徒会室にノックの音が響いた。

「ど、どうぞ!」

僕は神の助けだと思って、即、入室を促した。

 

「し、失礼する」

ドアを開けて入ってきたのは外道を先頭にダンボールを抱えた教師数人だった。
中には姫子先生も居た。
順番にダンボールを積み上げ、外道先生と姫子先生を残し、あとの教師は退室した。

「そ、その……ヒッ!!!」

外道に対して、霞から先程と同質のオーラが発せられる。
しかし、先程よりはその量が少ない。
その証拠に、外道の隣にいる姫子先生は怯えていない。

「その、さっきは済まなかった!
その詫び、と言っては何だが、あの生徒会報をはこばせてもらった
本当に済まなかった!」

外道が必死に僕に────僕を守る霞に────謝る。
それに僕は酷い不快感を感じながら、告げた。

「ああ、僕なら気にしてませんよ。ほら、怪我もしてないし。ねえ霞?」

怪我をしていないとアピールするため、飛び跳ねながら霞を見る。
外道を幾分か恨めしそうに睨んだあと、ゆっくり頷いた。

「お、おおそうか!
それじゃあ、私は次の授業の準備があるので失礼する」

外道は霞にもう自分をどうこうするつもりが無いのを確認すると、そそくさと生徒会室を出ていった。

「……クソオヤジ」

外道が出ていった後、そう呟いたのは霞でなくて姫子先生だった。
これには、外道に呆れを通り越して軽蔑していた僕も驚いた。

「せ、先生……」
「だってそうでしょう?あの人は最後まで『神谷くん』に謝らなかったじゃない!」

ビックリしている僕をよそに、激昂しながら怒鳴る姫子先生。
そこまで感じ取って、僕のために怒ってくれることに感謝しつつ、
先生のその姿が霞と重なって、可笑しくて思わず吹き出してしまった。

「何がおかしいの?」

先生はいきなり吹き出した僕を刺すようにみて、そう言った。
霞も先生と同意見のようで、小さく頷いている。

「いや、先生と霞がちょっと似てるなぁと思って」
「どこが?」

先生は言葉で、霞は目でそう尋ねてきた。
僕が答えようと口を開いた所で、丁度昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

「何となくですよ。
さ、教室に戻ろう霞」

早口にそう言って、霞の手を取り、先生を生徒会室に残したまま教室へと向かった。

2007/03/06 To be continued.....

 

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