「あなた邪魔なのよ!!!血も繋がってないのにお父さんに優しくされて!!!」
香織は目の前にいる義理の妹・由奈に激しく怒鳴る。
「いいよね、香織ちゃんはあとから現れたくせにお父さんに愛されて」
由奈は彼女たちの父親・浩一の再婚相手の連れ子だ。
だが由奈の母親は結婚後すぐに事故で死んでしまいその後ずっと浩一と二人で暮らしていた。
由奈は幸せだった。血は繋がってなくても浩一は由奈を可愛がった。
そんな浩一に由奈も時が経つにつれ浩一を好きになっていった。
そんなとき、香織が現れた。
香織は浩一が中学のときに付き合っていた女性の子供だった。
香織の母親・詩織は有名な財閥の娘で、彼女の親に自分たちが交際していることを
知られないように隠れて会っていた。
だが彼女は身篭ってしまった。
それを隠し通せるわけもなく彼女の親にばれてしまい浩一と詩織は引き裂かれてしまった。
そして今になって香織が現れた。
この不況で財閥は跡形もなく消え去り、行く当てのない香織は実の父親の浩一の所に来た。
香織は祖父から浩一のことを悪く聞かされていたため、浩一を恨んでいた。
だが浩一の優しさと幼い頃に死んだ母が言っていた父のことを思い出し浩一を父親と認めていった。
由奈と香織は最初はどうであれ今は浩一のことが大好きだった。
しかしお互いのことは嫌っていた。
由奈は、『どうしてあとから現れたくせに……』
香織は、『他人のくせに……』
と互いの存在を疎み、憎しみ、そして―――
「あなたは他人なのよ!!!私とお父さんと何も関係ないの!!だから消えてよ!!!」
溜め込んだ憎しみを由奈にぶつける香織。
だが由奈は
「…………クスッ」
冷たく微笑しただけだった。
「何が可笑しいのよ!!」
「だって香織ちゃん、血の繋がりのことしか言わないんだもん」
「だから何よ!!あなたには何もないくせに!!!」
「……あるよ、繋がりなら」
そう言った由奈は口元から笑みがこぼれ、頬は紅く染まり、目は喜悦を感じていた。
香織はその表情に恐怖した。次に出てくる言葉は何故か絶対に聞きたくないと思った。
「私、昨日お父さんに抱かれたの」
香織は由奈の言ったことが理解できなかった。したくなかった。
「嘘」
「うそじゃないよ」
「お父さんがそんなことするわけない」
「お父さん真面目だからね、薬を飲み物に入れたの」
由奈の口から異常な行為が淡々と語られる。
香織は絶望的な表情をし、由奈は勝ち誇った表情をしている。
「私はお父さん……ううん、浩一さんと心も体も繋がったの」
「嫌」
「だけど香織ちゃんは血が繋がってるだけ」
「嫌」
「邪魔なのは、どっち?」
「いやああああああああ!!!!!」
香織は由奈の言葉から逃げるようにして飛び出しっていった。
「……クスッ」
由奈は冷たい微笑をした。
そして香織は―――
「わたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだってわたしだって」
……この日から最悪な形の三角関係は始まったのかもしれない…… |