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HERO

第1回(原典)
第1回


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正義を守るバイク乗りや五人の戦士たち。
子供たちの永遠の憧れ、僕も小さい頃は大きくなったら彼らのような英雄になりたかった。
小学校高学年にもなり友人はみんな彼らへの興味を失い、僕も番組は見るものの流石に
変身グッズやお面は買わなくなった。

だけど中学時代進路に迷っていた頃、敵は突然現れた。

宇宙人だとか古代人や海底人、挙句はナチスドイツの遺産だとかさまざまな憶測があった。
だけど、結局なにもわからなかった。
わかっていることは敵は個人ではなく組織であり、全国で生物兵器を暴れさせ、拉致した人を
洗脳・肉体改造を施して市民を襲わせたりしていることだけ。(何故か襲うのは日本だけだ)
国は最初こそ後手後手に回って対応に困っていたけど、ついに警視庁、防衛庁、海上保安庁、
その他民間の組織までもが混じってひとつの機関を作り上げた。

防警庁特殊治安維持局

簡単に言えば相手が怪人、それを操る組織の場合にのみ権限を持たされる武装機関。
自衛隊のような対外戦争には参加できない、警察のような通常の犯罪者の逮捕権はない、
対怪人・組織専用の武装機関。そして今の僕の職場だ。

「そこまでだ、植物怪人イエローローズ!」
「グググ、そのスーツ、貴様が噂の…」
「防警庁特殊治安維持局騎手科所属、MR-1115ヒーローネーム、ライダーハチェット!」

特殊治安維持局開発の対怪人用スーツを着込み、同じく局開発の得物の大鉈(手斧)を構える。

「くっ…と、投降する。命は取らないで欲しい」
「投降に応じます。先ずは武装解除として携帯している全ての武器を捨て、
  人間形態に戻れる場合は怪人化を解きこちらの拘束具を身に着けなさい」

言いながら怪人の足元に自動拘束具を投げる。
最近は敵にモラルブレイクが起こりかけているのか、ヒーローに追い詰められると抵抗せずに
投降する怪人も増えている。

「ところで私の処遇だけど…洗脳解除手術を受けたあと投降したヒーローの下で
  ヒーロー見習として働くという噂は本当なの?」
「希望者は罪状と能力によってそうなります。手術後、罪状によって刑に服して貰いますが、
  怪人化が本人の意思によるものでないなど経歴によっては執行猶予もつき、局員として
  治安維持に貢献することによって刑も軽減されます」
「そう…ねぇ、あなたの素顔見せてくれない? 噂のハチェットの素顔を見てみたいのよ」

「「「「ハチェット、危ない!!!」」」」」

話しながら武装解除も進んでいたところ突然の叫び声と共に彼女、イエローローズに
矢やダーツ、手裏剣等が大量に突き刺さった!
怪人化も解いていた彼女の身体からは派手に血が飛び散る!
怪人とは言え無抵抗の相手が殺されたことに怒りを覚え、武器が飛んできた方向を向くと
そこに居たのは…

「「「「防警庁特殊治安維持局戦隊科所属、ジェラレンジャー!」」」」

「ハチェット、ケガはない? あぁ、矢が間に合って良かった」とジェラブラック
「良くない! 彼女は投降し、武装解除中だったんだぞ!」
「騙されるな、あたいたちの場所からだと貴方の死角から怪人が…」ジェライエロー
「武器を出しているのが見えましたの、もぅ、ハチェット様は相手が怪人でも『投降』と
  言うとすぐ油断なさるのですから」ジェラブルー
「そぅそぅ、だからさ、前から言ってるとおりハチェットも戦隊科にきなよ☆」ジェラピンク
「くっ…ほ、本当だとしても、そのことと異動は関係ないだろ…」

いつもこうだ。
彼女たちは担当区域が同じだからという理由で毎回現れては俺の邪魔をする。
そればかりか戦隊科に異動して、殉職して欠番中のジェラレッドになれとまで言う。

「「「「まだ未熟なハチェットが心配なのよ!!」」」」

「今日も彼、異動を承諾してくれなかったわね」

勤務時間も終わり、戦隊科の更衣室で治安維持局開発の特殊スーツを脱ぎながら話し掛ける。
今ここに居るのは私、ジェラブラックとイエロー・プルー・ピンクの4人だけ。

「そうねぇ、やっぱあたいが身体で釣ろうかなぁ…」とイエロー
「あら貴女のような男女にハチェット様が惹かれるとでも?」とブルーが毒を吐く
「そぅそぅ、冗談は顔だけにしてよねっ☆」ピンクも相槌を打つ
「ケッ、お前等のようなえぐれ胸と幼児体型よりはマシだろうけどな!」

イエローがそう言うと彼女の横のロッカーに手裏剣とダーツが何本も突き刺さった。
もし数センチずれていたらイエローの顔には無数の穴が開いていたわね。

「おお怖っ、ブルーもピンクも鏡見てみなよ、般若が見えるぜ」

「貴女こそご覧になってみたら? 化粧をした男が見えますわよ」

「はいはい、3人ともそこまで。あまり行き過ぎると暫定リーダーとして罰するわよ」

各自ウェポンラックから得物を取り出しそうな雰囲気の3人の中に割って入る。
その後数秒間睨み合いは続いたが、それでも各自力を抜きラックから手を離した。

「それに忘れたの? 一時的とは言え私たちは同盟を結んだ仲、内紛で隙を作って
  他の雌豚に彼を盗られてもいいの?」
「よく言うぜ、レッドにとどめを刺したくせによ」
「まぁ、それはそれ、これはこれね。
  兎も角まだ同盟条約は有効中よ、『彼に纏わり就く騎手科の雌豚の排除』
  『彼の下につく可能性のある女怪人の排除』は協力し合うって」
「雌豚ねぇ、あたしとしては3人も"雌豚"に入るんだけどねっ☆」
「それはわたくしも同じですわ、特にキャーキャー五月蝿いロリ豚とかは目障りで」
「いいかげんにしなさい。ブルーもレッドみたくなりたくなかったら少しは自重して」

レッド、ジェラレンジャーの元リーダー。
彼女は表向き怪人との戦いで殉職したことになっているけど本当は違う。
ハチェットに抜け駆けして近づいたので私たち4人が殺したのだ。
あの雌豚、よりによってハチェットに無理矢理キスまでして…
ま、そのムカツク唇もイエローがナイフで切り取ってやったし、最後は敵のウィルスに感染したため
消毒のため焼却処理と称して、生きたまま火葬にしてやったけどね。

「はぁ、恋に戦いに、正義のヒーローも楽じゃないわね」

2006/11/15 To be continued.....?

 

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