INDEX > SS > ハピネス

ハピネス

第1話 第2話 第3話 第4話
     


1

登場人物

月緒 志乃 (つきお しの)   二年生。綺羅の幼馴染。独占欲が強くヤキモチ妬き。
                  美人系でお姉さんタイプ。綺羅絶対主義者。

大川 桜 (おおかわ さくら)  一年生。綺羅のクラスメイト。元気で活発な性格。
                  可愛い系。綺羅絶対主義者。

アトリ              一年生。綺羅の幼馴染。天然のように見せておいて
                  実は腹黒な金髪外人。綺羅絶対主義者。

葉津木 京 (はづき きょう)  三年生。綺羅の先輩。ツンデレタイプ。

流 綺羅 (ながれ きら)    一年生。元の人と同じでモテモテ君。ツッコミ役。

苗字を見てわかるようにこの話は生きここのIFです
生きここを読んでいなくても大丈夫です
IFとはいえ初期の設定でしたから
しかし・・・・最初の二人と綺羅はまんまかも・・・・まんまです

 

 いまこの屋敷には三人のそれぞれ違った魅力を持った美少女が居る
  それどころかプロポーズ・・・・・もとい
  まぁ、その前に状況の確認だ・・・・
  そうあれは半月ほど前だ
「なんじゃこりゃーーー!」
  前の前にそびえたつ大きな屋敷に向かって俺は場違いな発言をした
  不満?当たり前だ!
  ポケットからケータイを取り出し電話を掛ける
〈こんちは、母です〉
  なんだこの軽いノリは・・・・・
「母よ、言っていた物よりもずいぶんと大きいのだが」
〈だって物置ほどの大きさでって・・・・・〉
  なんだその基準は・・・・たしかに実家に比べればこんなの倉庫だよ
  ええ、認めますとも・・・・
「あんた、俺が一人で暮らすって理解してるのか?」
〈ひどいわ!私のことが信じられないの!?・・・・・もう恋人には戻れないのね〉
「恋人じゃないから・・・・母だから」
〈あ、ちなみは実の母ではないぞ〜、あなたのほんとの母と父は・・・・〉
  シリアスだ・・・・・
〈16年間の長きに渡って新婚旅行を続けているのです・・・・・ぐすん
  聞くも涙・・・・語るも涙・・・・・以下略、そしてのこされた綺羅は
  母の妹の私こと超絶美女の聖子ちゃんが面倒見てるわけです〉
  説明ご苦労・・・・だれに?
「本題に戻るぞ・・・・聖子ちゃん」
〈あいよ!〉
「この屋敷は一人で暮らすには大きすぎないか?・・・・・」
〈親心よ・・・・・息子〉
「親心なら掃除とか考えてくれ」
  この屋敷を一人で掃除・・・・気が重い
  俺は目の前にどかんとそびえたつ大きな屋敷を見てため息を付いた
〈どう?気に入った?〉
  気に入るか・・・・・ボケ母
〈ぐすん、ひどいわ・・・・親心なのに〉
「なぜ心の声がわかった・・・・・」
〈読唇術?〉
「唇の動きですごーい・・・・・って!電話だろこれ!」
〈細かいことを気にてしたら大きなことには気づけないのよ・・・・勉強なさい〉
  細かいことに気づけなければ大きなことにも気づけないと思います
  逆もしかりだが・・・・
〈まあ、じゃれあいは置いておいて・・・・・ママからプレゼントです!〉
  じゃれあいだったのかよ!しかし・・・・プレゼント?
「それはなんだ・・・・・」
〈わ・た・し・・・・・・チュ♪〉
  ブチ・・・・・・
  電話を切った
  消えてしまえ・・・・そのまま音と共に
  しかし、状況は変わらない
  せっかく自立心をつけようと思って一人暮らしを決めたのに・・・・
  先行きが不安でしょうがない

「して、一人暮らしはどうじゃ?」
  一日目から最悪だ・・・・・ボケ
「これでお前も彼女を連れ込んでウハウハだな」
  この妙に桃色トピックスの好きそうなのは本人は親友だと言い張っているが
  悪友の恭二だ・・・・苗字?知らん
  自慢じゃないが人の名前を覚えるのは不得意なんだ
「恋人なんていないよ・・・・・・・ボケ」
「なになに〜?恋人〜・・・・・やだ、綺羅ちゃんったら!照れるじゃない♪」
  恥ずかしげに両手を頬にあわせ身体をくねくねさせている
  そして俺の背中をひじで軽く突っつく
  この子は大川桜・・・・
  俺のクラスメイトだ・・・・
  しかし・・・・いつ見ても変な生き物だな
  自称美少女の聖子ちゃんといい勝負だ
「どこに突っ込んでいいのやら・・・・」
「やだ、綺羅ちゃんったら・・・・突っ込むだななんてそういうのは二人きりのときに   して♪」
  なにを言っているんだこの子は・・・・
  クラス中が仰天しているのがわからないのか?
「自分の発言には責任を持ってくれ」
「責任取るよ?だから・・・・結婚しよ?」
「16で結婚はできないだろ」
  ああ、もう・・・・・慣れてるとはいえ俺も仰天だよ
  なにをしている?なぜ俺の手を取る・・・・・
「もう、綺羅ちゃんの・・・・は・ず・か・し・が・り屋さん♪」
  なぜか俺の手を胸元に近づけていく
  はっ!
「てい!」
「むぎゃ!」
  手を引くと簡単に攻撃は防御できた
「なにを考えている・・・・・」
「あなたのことです・・・・・」
  恥じらいもなく・・・・しかし、この子は俺をからかうのが好きだな
「ほれほれ〜、触りたいでしょ〜、一年で一番の巨乳を〜」
  胸を寄せてそのご自慢の胸を震えさせる
  例のごとく顔は真っ赤だ
  恥ずかしいのならやめれ
  俺の日常はこんな感じだ
  だが静かにしかし一歩ずつ近づいてきていた

「綺羅くん、一緒に帰ろう?」
  お、もうそんな時間か・・・・
  俺は枕代わりにしていたクソ硬いカバンを手に持って立ち上がる
「む、でたわね!巨乳魔人!」
  挑発の言葉を無視して彼女は俺の横までやって来てニコっと笑んだ
「無視ですか?無視なんですね?・・・・わかりましたよ!」
  がつがつと足音を立てて桜が俺の手を取った
  そしてまたその手を胸元に持っていこうと・・・・
「てい!」
「させるか!」
  いつものように手を抜こうとするが今回は断固拒否らしい
  しっかりと握られた手は抜けることなく・・・・
  やわらかい・・・・・あれ?
  もう片方の手も・・・・・って!
「二人とも・・・・なにをしている」
  平常心だ・・・・平常心
  今の状況の整理だ
  うん・・・・なぜ俺は二人の胸を掴んでいる?
  正確には掴まされているだな
「志乃?・・・・なんだ志乃まで?」
  長い赤みがかった茶髪をかきあげて志乃は小さく笑むだ
  答えになってないぞ・・・・
「綺羅ちゃん困っていますよ?離したらどうなの?」
  俺は志乃に声を掛けたのが気に入らなかったのか桜は不満げだ
「あら、いたの?小さいから近所の子供が迷子でここまで来ちゃったのか思っちゃった」
  か細い声はまるで本などに出てくるお姫さまを連想させる
  しかし・・・・そんなに恥じらいもなく手を抑えないでくれ
「チビ言うな・・・・」
  平均より・・・・小さい
  違うな・・・・彼女の身長は145cmほど・・・・小さすぎだ
  これは言われてもしかたないとお父さんは思うぞ
「ねぇ、綺羅ちゃん身長はともかく、胸は私の勝ちだよね?」
「そんな貧乳なんかより私のほうがいいよね?」
  もう胸を触られているという羞恥心はは彼女らにはないらしい
  幸いなことに教室に残っているのは女子だけなので・・・・
  そのせいかも・・・・
「うむ、先に離してくれたらほうが勝ちにしよう」
「だめ〜!」
「ダメですよ・・・・綺羅くん」
  もうどうとでもなってくれ

 そんな感じで翌日
  俺は早速不眠不休の重労働の身体をねぎらうべく居眠り中だ
「突然ですが転校生です」
  なんだよ、俺の眠りを妨げるな・・・・ボケ教員
  こつこつ・・・・足音が俺の前で止まった
  無視・・・・無視・・・・・
  ん・・・・なんかデコになにか触れた
  狂気の叫びと嫉妬の声・・・・
「な・・・・なんでここに」
  いつもアホなことしか言ってない恭二がめずらしく驚いている
  しかし!俺の眠りは妨げる奴は・・・・ゆるさん!
  誰だ?俺の安息を奪う愚か者は・・・・
  あれ?開けた視界に浮かぶのは外人の超絶美少女だった
  ほう、キミは謀反を起こした人物かね・・・・?
  あれ?二度目・・・・
  この子・・・・どっかで!
  少女は俺を見てニコっと笑んだ
「お久振りですね・・・・・綺羅さま」
  どうやらこの子と俺は知り合いらしい
「な、なにするかーーーーー!!!!」
思考回路が復活する前に桜の狂気の声が教室中に響いた
  うるさいな・・・・俺はすぐに寝たいのに・・・・
「姉ちゃん・・・・あんたいま綺羅ちゃんになにをしたんだ?えぇ!?」
「どこの国の人間だよ・・・・・」
  どうやら寝起きでもツッコミ能力は健在らしい
「キスですわ?」
「外人だからか?」
  素で返してるよ俺・・・・
「いえ、私がキスするのは綺羅さまだけですわ」
  そうですか、俺のことをそこまで気に入ってくれましたか
  ありがとう、俺は・・・・
  寝る・・・・
「ぐがーーーー」
  もうどうでもよくなった
「寝るなや、こら!」
  しかし桜さんは俺を安眠するのを許してくれないらしい
「どうしたんだ?可愛い顔が台無しだぞ?」
「いやん♪」
  はい、お休み・・・・・

 悲しいかな人は睡魔と食欲と以下略には勝てんのだ
「・・・・野暮天」
「誰が野暮天だと・・・・!」
  無意識な反応で俺は起き上がり声の主を探した
  犯人は・・・・?
  桜じゃないよな・・・・?
  恭二は・・・・寝ている・・・・自分だけ・・・・あとでお仕置きだ
  しかし、野暮天?どっかで聞いたことあるな
「ああ、アトリの口癖だな・・・・」
  謎は解けた・・・・寝よ
「綺羅ちゃん・・・・あんたすごいよ、惚れ直したよ、こんな状況なのに寝れるなんて」
  ありがとよ・・・・
「思い出してくれたの?綺羅さま・・・・?」
  ああ、俺のこと?俺は綺羅さまだよ?
  でもね忠臣蔵とは関係ないよ・・・・字が違うし
  俺はね、殺されるような偉人ではありません
  では・・・・
  あれ?三度目・・・・
  俺をさま付けする人間なんて一人だ・・・・
  冷汗が俺の背中を何筋も伝っていく
「まさか、アトリ・・・・?」
「はい♪」
  穏やかな笑みが俺を昔に戻した
  今やこの町のプリンセスの志乃
  そして志乃と並んでも見劣りしない少女アトリ
  二人とも俺の幼馴染だ
  なんでここに?
  キミは・・・・・
  死んだって聞いた・・・・不治の病で
  このときからゆっくりと俺の時間は動き出した

2

 おかしい・・・・おかしいぞ
  だが・・・・睡魔に勝てるほど俺は出来た人間じゃない
  明日は明日の風が吹く・・・・・お休み
  がつがつ・・・・
  無視だ・・・・・
  がつがつ・・・・
  痛だい・・・・・
  ごんごん・・・・
  音が変わった・・・・
  痛だい・・・・・
「・・・・・・」
  半開きの瞳でゆっくり起き上がる
  ブス・・・・・っ!
  額に何かが刺さった
「・・・・・・」
  額に刺さったものを抜くとちょろちょろと小さな小さな血の滝が俺の前に現れた
「・・・・・・」
  手にあるボールペンを握り締める
  ひどいわ・・・・親父にも刺されたことなかったのに!
  足元を見ると消しゴムのカスと不法投棄されたゴミの山が転がっている
  まず俺は犯人を恭二だと断定し、後ろを振り向いた
  寝ている・・・・
  ゴン!
  一発殴ってやった
「・・・・・むにゃ」
  さすがだ恭二だ・・・・本気でやったのにまだ寝ている
  もう一発・・・・ゴン!
  どうしてそこまでするのかって?
  さっきは狸寝入りなんてして逃げたからだ
  気持ちはわからないでもないがな・・・・アトリが突然現れたんだ
  現実逃避したくもなる
  次に・・・・桜は勉学に勤しんでいる
  若いもんはそうでなくては・・・・老体にこの状況はつらいの〜
  次は・・・・
  ニコリ♪
  アトリの笑顔・・・・机には消しゴムのカスとイスの横にはゴミ箱
  ニコリ♪
  我ながら会心の笑みだ
  怖いから・・・・寝る
「綺羅さま?少しは構ってくれてもいいじゃないですか・・・・鈍感」
  寝る・・・・

「は、初恋!」
「しーーー!」
  慌てて口元を抑える
  誰にも・・・・聞かれてないよね?
  よし・・・・
「初恋って・・・・綺羅ちゃんの?」
「・・・・・」
  私は黙ってうなずいた
  正直すごく驚いた
  まさか彼女が生きていたなんて
  最後の言葉を思い出す
『わたし・・・・病気なの・・・・もう治らないの・・・・だから綺羅をおねがい』
  まだ7歳の時だった
  幼いながらに親友の言葉に一晩中涙した・・・・
  しばらくして彼女がいなくなった時、私は綺羅くんと毎日のように泣いた
「それで、志乃さん続きを・・・・」
  昔を振り返っている私を桜ちゃんの声が現実に引き戻す
  正直触れたくない内容だった
  綺羅くんの初恋の話なんて・・・・
  思うの・・・・・私の初恋は綺羅くんのなのに・・・・ずるいって
  それよりも今は話の続きを
「して、根拠は?」
「女の勘!」
  桜ちゃんは少し肩を落とした
  あ・・・・れ?
  向こうに見知った二人の後姿を見つけた
「綺羅くん・・・・アトリ」
「え!どこどこ!」
  桜ちゃんも二人を見つけたようだ
「羨まじいーーー!!!」
  ハンカチを噛んで涙を流す桜ちゃん
「尾行よ・・・・・うん」
「あなたの女の勘・・・信じてみましょう!」
  同盟を結んでしまった・・・・でも仕方ない、今回は綺羅くんのために我慢です
「名づけて!巨乳綺羅ちゃん好き好き同盟!」
  その名前はやめてください

 本日二度目の・・・・おかしい・・・・おかしいぞ
  これは本当にあの・・・・アトリなのか?
  穏やかな笑み・・・・そして柔らかな物腰
  まさにこの世の美!
  うむ、キミはこの町のプリンセスとうたわれる志乃と肩を並べられるぞ
  いや、そうじゃない・・・・子供の頃の恐怖が鮮明に蘇る
  しなる鞭・・・・研がれたナイフ・・・・・子供だけでの蛙の・・・・
  山の中での火遊び・・・・・滝をいかに早く落ちるか・・・・・
  強制お医者さんごっこ(俺が患者でメスの変わりにナイフを持つアトリ)・・・・
  その他もろもろ
  いやーーーーー!!!
「・・・・・・」
  俺が汗を拭うとすかさずアトリはハンカチで拭ってくれた
  そして会心の笑み・・・・
  ひ・・・・・・!
  条件反射で後ろに引いてしまった
「空が綺麗ですね・・・・・」
「ええ・・・・そうですね綺羅さま」
「ご趣味はなんですか?」
「綺羅さまと一緒に居ることですわ」
「それは趣味ではありませんから!」
  まずい、思わずツッコミを・・・・
  こ、殺される・・・・・
  自称超絶美少女聖子ちゃん・・・・・志乃・・・・桜・・・・ガ○ダム
  私はもうこの世に未練はありませんです・・・・
  どうかお幸せに・・・・・
「綺羅さま?」
「ごめんなさい!もうしません!どうかお許しをーーーー!」
  嘘です!まだ未練があります!
  さあ、笑うがいい!この醜く生にに執着する姿を!
「どうして謝るのですか?・・・・それよりもデートに行きませんか?」
  ほへ?セーフ?アウト?よよいの・・・・・
  どうやら俺の思考回路も限界らしい
  あ、はは・・・・・お空に天使さんが見えるよ・・・・
  デートか・・・・どんな拷問が待っているのかな?
  アイアンメイデン?磔刑?電気椅子?13階段?おもちゃの数々?
  俺は今にも己に降りかからんとする恐怖にその身を震わせた

3

 うわー、なにこの一面にひろがるお花畑は・・・・
「変わりませんね・・・・ここも」
  どこなの?・・・・ここは?
  あ・・・・あ、がががが!
  まさか、ここは・・・・禁断の地・・・・・
  近所の公園!・・・・
  意味もなく汗が出てくる
  ここで俺は・・・・
『死ねやゴラぁ!』
  そして私は命を全うした
『あの崖の真ん中辺りにあるお花とって来い』
  私はそのときお花畑と川を見た
『私が切り刻んであげる・・・・・あなたを狩ってあげる』
  刀を持った美少女が見えるよ・・・・あ、はは
「再会してから、綺羅さま・・・・どこか変ですわ?」
  小さな声が弱々しく俺の耳に響いた
  か細い手がゆっくりと俺の顔に近づいてくる
  しばらくしてその手が俺の頬に触れた・・・・
  俺は・・・・・・恐怖で脚がすくんだ
  な、なにを考えている・・・・あなた様は
「ど、どうもしませんことですよ・・・・」
「やっぱり・・・・変ですわ」
  お花を背景にどこぞのお姫様風の少女は笑んだ
  間違いなくこの笑顔に100人中100人の男が一発でノックアウトだろう
  しかーし!この生き物・・・・あ、わわ
  生き物とは神様のことです
  いまから生き物は神様です・・・・理解できましたか?
  決して言い訳している訳じゃないですよ?
「誰に弁解している!」
「はい?」
  しまった俺の頭もとうとう自己制御ができなくなり始めている
  ここは勝負だ!
  聞け!この男の勇士に満ちた声を!

「お飲み物でも持ってきましょうか?それとも食べ物でも」
  どうだ!言ってやったぞ!見たか!
「いいえ、それよりもどこか休める場所はありませんか?」
「どうぞ!」
  俺は間髪入れずにベンチにハンカチを乗っけた
  労働ご苦労・・・・俺
「どうしてそんなに気を使うのですか?」
  悲しげな瞳を俺に向けるアトリ
  気を使いますよ・・・・それは
  あなたは私の親分です・・・・
「いえいえ、そんなことはないであります!」
  敬礼するとアトリはくすくすと笑んだ
「相変わらず綺羅さまは面白いですね」
「そう言ってもらえると嬉しいであります!アトリ殿!」
「どうしたのですか?昔のように気を使わずに・・・・・接してください」
  悲しい笑みを浮かべてアトリは俺の手を握った
「ふふ、カチカチです・・・・」
  あれ?俺・・・・ときめいてる?
  ち、違う・・・・言葉が微妙にエロかったからだ
  うむ・・・・

「むぐー、ここらだとなにを話しているのかわからない!」
  桜ちゃんが恨めしそうに木の陰から二人の様子を伺っている
「大丈夫、綺羅くんには超小型盗聴器が・・・・あ!」
  しまった・・・・・桜ちゃんが目を細めて私を見ている
「ストー・・・・」
「さ、早速聞きましょう!」
  私はカバンから装置を取り出すとスイッチを押した
〈そ、そうでありますか?〉
  軍隊口調の綺羅くんの声がした
〈そうですか?・・・・綺羅さまがそう言うのなら〉
  え・・・・なにこの口調?
  昔は・・・・・もっと男の子っぽくて
  なんだか測りしえない違和感を覚えた
  でも・・・・手なんか握ちゃってさ・・・・
  が、我慢できません!
「綺羅くーん!!!!」
  そんな親密ムード壊してやる!
  私以外の女なんかといいムードになんてさせない!
  驚きで顔を強張らせる綺羅くんにダイブ!
「綺羅ちゃーん!」
  右からの私に対してすさまじい俊足で左に回った桜ちゃんが綺羅くんに抱きついた
  そのまま三人でその場に倒れる
「げふ!・・・・・俺がなにしたって言うんだよ・・・・酷い」
  綺羅くんがクッションになってくれたので私たちは無事だけど
「だ、大丈夫ですか?綺羅さま・・・・」
  アトリが心配げに綺羅くんを見つめた
「だ、大丈夫・・・・・」
  少し不安げな答えにアトリは瞳に涙を浮かべた
「ほんとに・・・・?」
  え・・・・どうしてそんな顔・・・・
  記憶にない親友の顔に私はまた不安を覚えた
「本当に大丈夫です・・・・」

4

 綺羅さまが二人をどけてズボンをはたいた
  まったく・・・・・なんですか?この蚊は二匹・・・・・
  ああ、そういえば見たことある
  小さい頃から綺羅さまの周りをちょこまかしていたのと・・・・もう一匹は知らない
  いまはどうでもいいか、こんなのほっておいて・・・・
「お怪我はありませんか?」
  ケガは無いみたいね・・・・
「ごめんね、綺羅くん」
「ごめんなさい、綺羅ちゃん」
  うるさい、すっこんでろデカ乳ども・・・・
  あんたらはそのまま地べたにへばり付いてろ
  志乃が軽く解釈してきた・・・・
  いけない、いまここには綺羅さまが・・・・
  私はスカートを軽くつまんで
「お久しぶりです・・・・志乃」
  まだ綺羅さまの周りをうろちょろしてたのね、醜女さん
  5年で腐敗したと思ってた
「は、はじめまして・・・・桜です」
  黙れ・・・・消えろ、アホカス
「綺羅さま?」
  不思議そうな顔で私を見る綺羅さまに意識を集中する
  やっぱり不思議ですか?
  どう女らしくなったでしょ?
「あなたさまは本当にあの・・・・アトリさんでありますか?」
「はい、そうですよ・・・・」
「ほんとに・・・?・・・・だってアトリは不治の病で」
  ふふ、そうですよ・・・・あなたへの愛が病を・・・
  そう言いたい所ですが・・・・
  これは私の五年に及ぶ壮大な計画です
「私は・・・・生きています・・・・綺羅さま」
「・・・・・・」
  目に少しの涙が浮かぶ
  綺羅さま・・・・・
「ほんとにアトリなの?」
  横槍するな・・・・醜女
「俺は・・・・・・・」
  綺羅さまは訳がわからないといった感じで背中を私に向けた
「ごめん、少し頭のなか整理してくる」
  のこされた私たちの間にしばらくの沈黙
「そろそろ、本性だしたら?アトリ・・・・」
  志乃がジト目で私を見た
「なんのことかしら?」
「純粋な綺羅くんならまだしも・・・・私は騙されないわよ」
  さすが醜女さん・・・・
「な、なんのことですか?え・・・・?志乃さん?」
  無視・・・・・っていうか誰これ?
「不治の病ってウソだったのね・・・・なにを考えるの」
「あら、この五年間必死に病魔と戦ってきた友人に向かっていう台詞」
「あんた、いまぴんぴんしてるじゃない・・・・」
  そういえば昔からこの子は勘だけはよかったものね
  勘だけだけど・・・・

「ふ〜、さすがね」
「付き合い・・・長いもの」
  少し疲れた
  気分転換
「で、なにが目的?」
「もちろん・・・・綺羅よ」
  やっぱりと彼女は私を見つめた
「ダメよ、もう綺羅くんは私と相思相愛なのよ」
  それは無いわね
「ふふ・・・・嘘つき」
「どうしてあなたにわかるのかしら?」
  綺羅を見ればわかる
  彼はまだ恋を知らない
  恋を知らない彼がどうしてあなたを想うの
「理由はあなたが一番わかっているのでしょ?」
「く・・・・」
  あら、わかってるんだ・・・・はったりだったのに
  まあいいわ・・・・これからよ、これからが勝負なのよ・・・・醜女さん
  勝つのは・・・・私よ

2006/06/03 To be continued....

 

inserted by FC2 system