「姉さん機嫌悪そうですね」
「まぁね……って私顔に出てた?」
「ハイ。 でもリオにいさんは気付いてないみたい」
「そう……」
私はほっと胸をなでおろす。
「ゴメンねクリス。 アンタにまで気を使わせちゃって」
「いえ。 ボクも分かりますから其の気持」
そして視線を送った先には一台の装飾つきの豪華な馬車。
馬車の周りには数人の従者と、そして真横にはリオ。
そして馬車から身を乗り出しリオに向かって話し掛けてるのは一人の小娘、もといナタリー。
事の発端は数日前。モンスターに襲われていたこの馬車を助けたのが事の始まり。
助けた直後の感想としてはもうね、嘗めてるのかと問い詰めてやりたい気分だったわ。
こんなご時世この程度のお供と、しかもお供の武装も見た目ばっか派手で全然実戦向きじゃなくて。
モンスターから見れば鴨がネギ背負って歩いてるようなもの。
まァ相手が何者だろうと困ってる人を助けるのは当然のこと。
で、この連中、聞けば保養地――別荘からの帰り道だとか。
それも素直に来た時と同じ道通れば良いものをたまには別の道を通りたいだの……。
温室育ちのお嬢サマがこんな所にのこのこと出てくるなっての!
まぁ、そこまでは良いとして、問題は其の後。
私達の腕前を見込んで護衛をしてくれと――。
冗談じゃない! 世間知らずのお嬢様の火遊びになんかつきあってられるかっての!
だから私はそんな頼みうけるつもりは毛頭無かった。
でもリオは人が良いから、優しいから。 困ってる人がいるのなら助けてあげましょうって……。
リオにそんな風に言われたら私が反対できるわけ無いじゃない。
そして私が受けたくなかった、そして今現在苛立ってる何よりの理由。
それはナタリーが明らかにリオに惚れてるってこと。
当然リオはあんな小娘なんかになびきやしない。
仮とは言え婚約者がいるのだから。 それはそれでまた私を苛立たせる。
例えその婚約が幼馴染としての付き合いの深さと親への義理立てから来てるのだとしても。
それでもやっぱり面白くない。
リオもあんな小娘――ナタリーなんか無視すればいいのに。――って言うか無視して欲しい。
でも従者の人達に『お嬢様のお相手して差し上げてください』って半ば強引に拝み倒されて。
それで律儀にもお喋りとかに付き合って。
そりゃリオのそう言う優しいところや頼まれて断われない所とか私も好きだけどさぁ……。
でもやっぱり面白くない!
そんなんでも未だどうにかやってられるのはクリスのお陰が大きい。
やっぱりこういう時不満や愚痴を吐ける気の置けない相手がいるのはありがたい。
今ではすっかり私の可愛い妹分。
それに比べてナタリーの――あの小娘のうざったい事と言ったら!
あぁもう! さっさと目的地まで送り届けておさらばしたいわよ全く。
そして旅は続く。その後も道中モンスターの襲撃も度々起こったが何れも私達の敵じゃなかった。
お供の兵士は予想はしてたけどまるで役に立たなかった。
恐怖に耐え切れず逃げ出したものもいた。 まァ居ても足手まといだから別に良いけどね。
そして其の戦闘のたびにナタリーは馬車から顔を覗かせて歓声を上げてる。
挙句戦闘が終わるたびにリオに抱きついたりして! 本当いい加減にして欲しい!
でもこの腹立だしい道中もやっともう直ぐ終りという所まで来た。
途中戦闘も何回かあったが被害らしい被害も出なかった。
だけどすんなり事が終わると言う訳には行かなかった。
「姉さん……」
「どうしたのクリス。 怖い顔しちゃ……」
言いかけて私は腰のものに手をやる。 そしてクリスの視線の先に注意を払いながら小声で訪ねる。
「……モンスター?」
「はい……」
次の瞬間近くの茂みから踊りで出る複数の影。 すぐさま私は鞘から刃を抜き放ち応戦する。
現れたのは血のように真っ赤な体毛と狼に似た姿、そして額に角のような突起が生えた獣。
其の姿から赤鬼狼、或いはクヴァルフと呼ばれるモンスター。
群を組んで現れたのは姿かたちが狼に似てるだけあって習性も似通ってると言う事か。
しかもかなりの数で動きに統率が取れててなんともやりにくい。
円陣を組んでコチラを包囲し牽制してる。
ギリギリコチラの刃が届かない間合いを保ってきてる。 代わりに向こうの爪牙も届かないが。
おかげでリオも魔力を集中させられず魔法を発動できない。
コチラの披露消耗を狙ってる? それにしても――。
「うざったいわねコイツラ……!」
「まともに相手すると埒があかない相手です」
そう言うとクリスは私とリオに視線を送り言葉を続ける。
「リオにいさん! 魔法攻撃でコイツラの機動力をそいでください。
姉さんは詠唱中のリオにいさんの集中の為のサポートをお願いします」
私は頷いて直ぐにリオの元へと駆ける。 そしてリオも直ぐに詠唱に入った。
やがてリオの詠唱が終わると複数の火球が現れそれぞれ正確にクヴァルフどもへと命中する。
命中率と数を重視した為威力は弱め。 だがその機動力を殺ぐには十分だった。
動きが止まり、或いは鈍ったクヴァルフのその隙を衝き私は斬りかかる。
同様にクリスのグレイブも次々とクヴァルフを蹴散らしていく。
形勢が一気にコチラに傾くやクヴァルフどもは逃げ出していった。
逃げ去る赤鬼狼――クヴァルフの背を眺めながら私は刃を下ろ――。
「未だです!」
クリスの声に私は刃を構えなおす。 瞬間赤い影が襲い掛かってきた。
「な……?!」
危なかった。 クリスの声が無ければ油断を突かれていたかも。
影の正体――それは先ほどまでと同じ、いや種類は同じクヴァルフなのだろう。
だが其の体躯は二周りは大きい。
体が大きい分さっきのほど素早くは無さそうだが攻撃力ははるかに高そうだ。
「クリス。 これって?」
「コレがコイツラ赤鬼狼――クヴァルフのやり方です。
最初小回りの利く脚の速い小型の亜成体が獲物の足止めや牽制を。そしてその後大型の成体が――」
「止どめを刺さしに襲い掛かってくるって訳ね」
クリスはコクリと頷いた。
次の瞬間クヴァルフは雄叫けびを上げた。 大気を震わせ相手の気力をも削ぐような凄まじい咆哮。
だがそんな凄まじい雄叫びにもリオもクリスも全く動じてない。流石は私の愛しい想い人と妹分。
それに引き換え馬車の周りのお供連中は皆腰を抜かしてる。
ま、別に最初ッから連中のことなんか期待しちゃいないけどね。
ナタリーも今の咆哮にはビビッたのか顔を引っ込める。
流石に今回はいつもみたいに馬車から身を乗り出すような命知らずな真似する気になれないってか。
賢明な判断ね。
目の前の赤鬼狼――クヴァルフは先ほどまでの亜成体と違い虎やライオンに迫る大きさと迫力。
決して油断など出来ない手強そうな相手。
数は三。 私とクリスで一匹づつ――二匹までは相手に出来るが残り一体は――。
そう思いリオのほうに視線を送るとリオの傍らに炎の竜が出現してた。
火精竜召喚――リオが一対一で強力なモンスターに対処しなきゃいけない時の為習得してた術。
強力な反面使用中は他の術が使えないと言うデメリットもあるので今まで使った事無かったけど。
どうやら丁度一人につき一匹づつ相手って事みたいね。
じゃ、気を引き締めていきますか。
そして一対一×三の形で戦闘は進行する。
実際向かい合うと其の圧力といい並みのデーモン系等よりずっと手強いが勝てない相手じゃない。
いくらか手傷も負わせ、焦らず油断しなければもう少しで仕留められそう。
目の前の相手に注意を向けつつも二人の方へちらりと視線を送る。
リオの方は発現させた炎の竜を操りその炎の爪と牙を持って圧倒してた。
そっちも仕留めるのは時間の問題みたいね。
そしてクリスの方は――え?
「クリス?!」
クリスが相手をしてたクヴァルフがクリスの隙を突いて馬車に向かって走り出してた。
嘘?! あのコがこんな隙を突かれるようなヘマをするなんて――。
でもクリスも直ぐに追い駆ける。 グレイブを放り投げ矢のように飛び出し馬車に向かう。
成る程、重たいグレイブを持ったままでは追いつけず手遅れになりうる。
そして馬車に入り込まれたらあの長さは逆にデメリットになる。
それにこのコの強さの源はあの重い武器を振り回すだけの豪力とそしてブーストアップ。
グレイブが無くともどうにかするだろう。 あの鉈のような短剣もあるし。
でも――。
「――!!」
咄嗟に私は後ろへ飛び退く。そしてさっきまで私がいたその空間をクヴァルフの爪が切り裂く。
危なかった。 クリスも気になるが先ずは目の前のコイツを片付けないと。
クヴァルフは私の隙を付いたつもりだったのだろう。
実際ヤバかったし肝も冷えた。 ヤツにとっては起死回生の一撃のつもりだったのだろう。
だが其の一撃も私に寸前でかわされ逆に今度はヤツが隙を晒す形に。
当然私が其の隙を見逃すはずが無い。
「ハアァッ!!」
私は渾身の力を込めて刃を打ち下ろした。
純白の刃を受けクヴァルフの頭部は真っ二つに割れ、脳味噌と血を撒き散らしそのまま崩れ落ちる。
目の前のクヴァルフを仕留めた私はすぐさま踵を返しクリスの元へ駆ける。
同じ頃リオもまた相手にしてたクヴァルフを火達磨にし馬車に向かってた。
そして私が馬車に辿り着く直前。
馬車から断末魔の如き凄まじい叫び声と、絹を引き裂くような悲鳴が響く。
おそらくはクリスがクヴァルフを仕留め、そしてそれを目の当たりにしたナタリーの悲鳴。
心配するまでも無かったか。
そして目の前に馬車から下りたクリスが現れる。 其の姿は全身血に塗れてた。
「クリス! 大丈夫なの?! 血塗れじゃない」
「平気です全部モンスターの返り血ですから」
「じゃぁアンタ自身は怪我してないのね?」
私が問い掛けるとクリスはコクリと頷く。
「良かったぁ……」
安堵した私はクリスを其の身に抱きしめた。
このコの強さは十分すぎるほど知ってる。
でも今回はグレイブも無しでしかも目の届かない所での戦闘。
それもあんな強力で獰猛なモンスター相手に。
だからこうして目の前で無事を確認してからやっと心から安心できた。
「ナタリー!」
その時リオの声が耳に飛び込んできた。 そうだナタリーは?
本音を言えばクリスが無事だった今あの小娘なんか知った事ではないがそうも言ってられない。
でも多分大丈夫だろう。 何せクリスが護ったのだから。
そう思いながら馬車の中に入ろうとして思わず私は口元に手を当てた。
「うぷっ……!」
鼻をつくは凄まじい血の臭い。 それは常人なら卒倒するか吐き戻してしまいそうなほどの。
私だってコレまで数多の修羅場を、死線をくぐりぬけてきた。
戦場で付いて回る血の臭いにも臓腑が放つ死臭にも慣れてるつもりだった。
だが今私の鼻を付く其の悪臭はそうした今までの経験したそれらすら比較にならないほど。
密閉空間と言うのも手伝ってか立ち込める血の臭気、臓腑の発する死臭の濃度は半端ではない。
そう、人の正気を失わせそうなほどに。
血生臭いのを堪えつつ見渡して絶句した。
以前見せてもらった時この馬車の内装は華麗に彩られ贅を尽くした豪華絢爛なものだった。
壁紙、カーテン、中の調度品。 何れも贅沢な逸品で占められてた。
尤も正直私はこういうまるで成金みたいに派手なのは悪趣味で嫌だったけど。
しかしそれも今や見る影も無い。
視界に飛び込んできたのは目を疑うほどの惨劇。一面を染める赤――すなわちおびただしい血の量。
それはまるで阿鼻叫喚の地獄絵図をそこに凝縮したかのようだった。
壁も、床も、天井も、其の全てが飛散した血と臓腑で真っ赤に染まってた。
そして其の惨状の中心にある肉塊と化したモンスターの死骸に私は自分の目を疑った。
屈強な体躯を誇るクヴァルフ――それも狼ほどの亜成体じゃない。
獅子や虎にも迫るほどの体躯に成長し重武装の戦士ですら屠るほどの堂々たる成体。
それが上顎と下顎から引き千切られ無残な屍を晒してた。 まるでボロ雑巾のような。
そして無残に引き裂かれた断面からは臓腑が四散し床一面、そして壁や天井までぶち撒けられてた。
その広がり様はそれが元はモンスターの体内に納まってたとは思えないほどに。
とても人間業とは思えない。 コレをクリスがやったと言うの? あ、ブーストアップか。
確かにクリスは超重量のあの長柄武器を自在に振り回す程の豪力を持ってる。
その豪力をブーストアップによって更なる超パワーに増幅できる事も知ってる。
――そう、頭ではそう推察できる。 が、それでも目の前の光景は信じ難い程のものだった。
そしてこの血で染まった室内の隅にナタリーは居た。
彼女のその良く手入れされた髪も、透けるような素肌も、きらびやかなドレスも、
其の全てが見る影も無く血で穢れてしまったナタリーはうずくまりガタガタと震えていた。
そして室内に充満する咽返るような血の臭いの酷さに気付かなかったが、良く見れば失禁もしてる。
其の姿はまるで捕食者を前に最早逃げる事すら叶わずパニックを起こし脅える哀れな小動物の様。
「大丈夫ですかナタリ……」
心配したリオがそっと語り掛け近づくが――。
「イヤアアアアアァァァァァ!!!!」
すっかり脅え錯乱して取り付く島も無い。
この惨状だ。 無理もないか。
脅え震えるナタリーにどう接していいか困惑してるリオに向かって私はそっと耳打ちする。
「スリープの呪文で眠らしちゃったら? 取り乱してて普通になだめるの無理そうよ?」
「そ、そうですね。 では……」
そしてリオは呪文の詠唱を始める。 やがてナタリーの口から悲鳴は消え瞼も下り眠りに付いた。
ナタリーが眠りに付くとリオはホっと一息つく。
そして今度はクリスに向き直り少々厳しい口調で口を開く。
「クリス。 もう少しほかにやり方が無かったのですか? 何もこんな惨い殺し方目の前で……」
「リオ!」
私はリオの言葉を遮るように叫んだ。 幾らリオでも今の言い方はカチンと来た。
「そんな言い方無いんじゃないの? クリスだって頑張ってくれたし危なかったのよ?!
こんな狭い空間でちゃんとモンスターを仕留めナタリーも其のお陰で怪我せずに済んだんじゃない!
それになんでグレイブも無しで素手でモンスターを仕留めなきゃならなかったか分かる?!
重たいグレイブを持って追いかけたんじゃ手遅れになるかもしれなかったからなのよ?!
その為に武器を手放すなんて危ない真似してまで!!」
思わず私はまくし立てた。
「い、良いんです姉さん……。 リオにいさんの言う事も尤もな事ですから……」
クリスは私とリオ、二人に気遣うように申し訳無さそうに口を開いた。
「いえ、セツナの言うとおりです。 スミマセン、危険な状況でよくナタリーを護ってくれました。
ご苦労様でした」
そしてリオもまたすまなさそうにクリスに向かって頭を下げた。
私も次いで口を開く。
「私もちょっとキツイ言い方しちゃったかな。ごめんねリオ。
クリスもそう言うことだからあまり気にしないでね。 じゃぁさっさと行きましょうか。
モンスターも片付いた事だし。 ナタリーが起きる前に到着できるように、ね」
そして私達は移動を始める。
ナタリーはお供の一人に負ぶってもらうことにした。
流石にこの血と臓腑の臭いが充満する馬車に乗せておくのは可哀相なので。
その時私の袖を引く手があった。 クリスだった。
「あの……姉さん。さっきはありがとう……」
私はクリスの頭を撫でながら笑顔で応える。
「イイのよ気にしなくって。 さ、行きましょ。 着いたら血も洗い流して綺麗にしようね」
町に着くと直ぐにナタリーを両親の家に向かい引き渡す。
リオはナタリーの両親の前で始終謝り頭を下げ恐縮しっぱなしだった。
だがナタリーの両親は状況を察し逆に良く護ってくれたと礼を尽くしてくれた。
世間知らずで考え足らずな小娘とは正反対な良く出来たご両親だった。
まぁ何はともあれコレで本当にやっと一段落。
もう二度と世間知らずなお嬢サマのおもりなんかゴメンだからね。
――そして夜。
「何て言うか今日は本当に疲れる一日だったわね。 クリスもお疲れ様」
「いえ、姉さんの方こそお疲れ様でした」
私とクリスは二人で湯に浸ってた。
あの日以来時々こうしてリオが寝静まった後二人っきりで風呂場等でのお喋りが恒例になってた。
クリスが『女』に戻る数少ない時間。 そしてリオにも話せない本音の会話が出来る時間。
「しっかし凄かったわね、あのモンスターの死体。あれってヤッパ素手で真っ二つに引き裂いたの?」
「ええ、まぁ……。 素手とは言ってもブーストアップも使いましたが」
「それでも凄いわよ。 だってブーストアップ後の強さって基本筋力が左右するんでしょ?
そう言う意味ではやっぱクリスの豪力あってのものよね」
私の言葉にクリスは黙ったまま照れ臭そうにしてる。
そんなクリスの頭を私は撫でた。
どうにも最近クリスの仕草の一つ一つまでもが愛しくて可愛くてたまらない。
「でもさぁ、リオの言ってたことじゃないけど他にやりよう無かったの?」
言った瞬間クリスの顔がこわばる。
「わざと、でしょ?」
「あ、あうぅ……。 だ、だってあの女リオにいさんに馴れ馴れしくして、
其のお陰で姉さんも嫌な思いして……」
私は戸惑いを隠せない口調で話すクリスの頭を撫でながら口を開く。
「良いのよ、別に責めてるわけじゃないの。
世間知らずで調子に乗ったお嬢サマにチョットお急据えてやろうと思ったんだよね。でしょ?」
私がそう言うとクリスは少しバツが悪そうに頷く。
「それにね、むしろ私としてはスカッとしたかな」
私がそう言って笑うとクリスもつられて笑顔になった。
「だからね、全然気にしなくていいから。 逆によくやってくれたって気分。 ありがとねクリス」
「いえ……」
そう答えたクリスの頬が赤く染まって見えたのは湯の温度のせいだけじゃないかも。
其の姿に私は思わずクリスを抱きしめる。
「それにしても……」
「何?」
ぼそりと呟いたクリスの声に私は問い返す。
「いえ、姉さんがかばってくれた時嬉しかった反面チョットビックリしたかな、って」
「そう?」
「うん。 だって姉さんってリオにいさんにベタ惚れでしょ?」
「エヘヘ。 まぁね」
「それがあんな風にリオにいさんを咎めボクをかばってくれるなんて思いもしなかったから」
「そりゃね、好きなヒトだって……、ううん好きな人だからこそ許せない事だってあるの。
だってリオのこと大好きだけどクリス、アンタだって私の可愛い妹分なんだもの」
私がそう言うとクリスは私の肩に頭を乗せてきた。
そして私は其の頭をそっと手繰り寄せ抱きしめた。 |