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危険な男

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1

 私のクラスには危険な男がいる。
  別に何か問題を起こしているわけではない。一見人畜無害などこにでもいる男だ。
  しかし危険な男だ。ただクラスのみんなは気づいていない。
  でも私だけわかる、彼のもつオーラが私の第六感を刺激する。
  あいつが近づいてくると落ち着かなくなる。話しかけられると身構えてしまい返事がうまくできない。
  私は勘がいい方だ。あいつはきっと近いうちに何かしでかす。私には分る。
  何かしでかした時すぐに対応できるよう可能な限り監視することに決めた。
  やはりあいつを見ていると落ち着かなくなる。それでも細心の注意をはらって瞬きさえ止めて監視する。
  別の女の子と話している。私の第六感を激しく刺激する。
  ――そうか、こいつのやろうとしている事は婦女暴行か。
  よし殺そう――いけない論理飛躍しすぎた。
  いくらなんでも十数年間は人畜無害に問題なく過ごしてきた人間だ、
  話しぐらいは普通にできるはずだ。話せばわかるかもしれない。
  しかし話す内容が内容だ。できれば二人きりで話そう、そう食事でもしながら。
  性的欲求が原因なら――まあ私でなんとかできるだろう。
  でも、それが駄目だからといって殺すというのは倫理的にはよくない。
  体を縛り付けてしてしまえばもう悪いことが出来ないだろう。
  でもそのまま放っておいたら死ぬに違いない。いくら悪人だからといって
  野垂れ死にさせれるほど私は非常にはなれない。
  だからきちんと面倒を見よう、最後まで、一生かけて。

2

 私は人ごみが嫌いだ。今私がいる食堂などその典型的一例だ。
  正直言ってこんな場所など来たくない。だがしかたない、あの男の監視の為だ。
  しかし今もう一つの問題点がある。席が空いていない。

 いや正確には一つだけ空いている、あの男の隣の席だ。

 あの男は向かいの席の女と仲良さそうに談笑しながら食べている。
  この女は違うクラスの筈なのによく一緒に話しているのを見かける。
  やはり胸の奥で何かが警告している――
  しかたないので相席がいいか尋ねてみたら二つ返事で了承された。
  尋ねた時何か変なところはなかっただろうか、なにか警戒されたのだろうか、
  そんな不安感が胸に湧き出していた。
  監視としては近い方がいいのかもしれない。
  しかしここまで接近していいものなのだろうか、少し落ち着かなくて顔を見れない。
  隣の男はそんな事おかまいなしに向いの席の女と談笑をしている。
  邪魔だ――何かが言った。
  隣の男は食事がすんだらしく席を立った。
  ここでようやく私は自分の食事に殆ど箸がついていないことに気がついた。
  早く後を追わなければならない、急いで食事を詰め込む。
  そうだ席を立つ前に、あまりにも無防備な彼女に警告しておこう。
  被害者を出さない為、加害者を作らせない為に。
  一言だけ、一言だけ「彼には近づかない方がいい」と彼女に教えてやった。
  彼女は一瞬わけの分らない顔をした後、少しだけ何かに納得して
「大丈夫、私達そういう関係じゃないし、邪魔しないから心配しなくていいよ」と笑いながら言った。
  そういう関係とは、どういう関係のことだ? わからない。
  しかし大丈夫だという人間だという人間ほど大丈夫じゃないことを彼女は気づいているのだろうか。
  多少無理させてでも距離をおかせた方がいいのかもしれない。
  そうこう考えているうち彼女は席を立とうとしていた。
  離れ際に彼女は、あいつ昼はいつも図書館にいると教えてくれた。
  そんな事お前に言われなくても知っている。
  ――いつも見ているから。

3

 最近、少し困ったことがある。実質的な問題はなにもない。
  気にするなと言われて気にすることをやめれたら何の問題も無い程度の小さな問題だけど。
  ここのところ同じクラスの女の子に睨まれ続けられている。
  最初は気のせいぐらいに思っていたが教室を出るときもずっとついてくる。
  さすがにトイレの中までつけてくるってことはないけど――
  名前を知っている。少し話したことがある。同じクラス。
  その程度、友人というよりただの顔見知りってレベルの関係。
  聖人君子として育ってきた訳ではないが特別人から恨まれるようなことをした覚えもない。
  もちろん彼女に何かした覚えもない。した事といえば消しゴム拾ってもらってり
  ノート貸して上げたりしたぐらいの極々日常的な行動のみ、何をどうやったら恨まれるのかわからない。
  尚現在、自分は図書館で本を読んでいるが今斜め後ろに彼女がいる。
  自分の背中に目はついていないが、きっと彼女は本を広げていてはいても
  目はこっちに向いているのに違いない。
  ついさっき食堂で相席を頼まれた時何か言われるのかなと思ったが彼女は何も言ってこなかった。
  だから自分も彼女を無視し目の前の友人と話し込んだ。
  ひょっとしたら自分が気にしすぎているだけなのかもしれない――でも気になる。
  ちゃんと話してみれば解決するようなものかもしれない。そう思い席を立ち後ろを向くと
  彼女は慌てて目線を本へと移していた。
  「何読んでいるの?」とかさりげない会話から始めてみよう。
  そう思い彼女の隣に立ち話しかけ始めた所で彼女は急に立ち上がり小走りで図書館を出て行った。
  追いかけちゃ――マズイかな?

 一人悶々と悩んでいた帰り道で、都合よく中学時代からの友達と合流した。
  自分一人で考えていても解決できそうにない。そこで彼女に昼一緒に食堂にいた
  女の子から嫌われていると相談してみた。
  そうすると彼女は笑いながら「その子と遊びに行ったら解決すると思うよ」
  と言って僕の背中を強く叩いた。
  遊びに行く?
  でも何か嫌われているっぽいんですけど僕。

2006/04/23 To be continued...

 

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