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ESPER

第1回 第2回    


1

この世界には特殊なチカラを持った者たちが存在する。
サイコキネシス、パイロキネシス、サイコメトリー。
人でありながら人の領域を踏み越えたチカラを持つ者たち。
そんな彼らを人々は畏敬の念を籠めてこう呼んだ。
―――――超能力者、と。

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「よぉ九条クン。昨日は俺のツレが随分お世話になったみたいだなぁ?
  今日はさ、そのお礼に来たんだよ。
  ありがた〜く受け取ってくれたまえ」
そう言った男の周りにはナイフだの鉄パイプだの何やら物騒な物を構えた不良さんたちが
5人ほど待機している。
俺、ただいま絶賛大ピンチ。
「いやいやいやいやちょっと待ってくれよ!昨日のアレはアイツから絡んできたんだぜ!?
  むしろ俺被害者!!」
「うるせぇ!テメェよくもまあそんな口利けたモンだなおい?聞いたぜ。
  テメェあの時女と一緒に歩いてたらしいなぁ?
  アイツや俺たちにとって、女といちゃいちゃラヴラヴしてる奴は皆悪魔の手先!
  人類の敵なんだよぉ!!」
「はぁ!?何言ってんだお前アレのどこがいちゃいちゃラヴラヴなんだよ!?
  一緒に下校してただけだろうが!!?
  つーか琴乃はただの幼馴染!それ以上でも以下でもねぇよ!
  いくら自分たちが彼女いない歴=年齢だからって勘違いで
  八つ当たりしてんじゃねぇぞこの腐れお馬鹿さん共!!」
「この野郎・・・!もう我慢ならねぇ。素直に土下座して可愛い女の子でも紹介してくれんなら
  許してやろうと思ったがもう許さん!!おいお前ら、こいつぶっ殺せ!!」
彼のその言葉を合図に不良たちはいっせいに襲い掛かってきた。
「あーもう!ついてねぇな俺!!」

瞬間。俺の心臓が一際大きく跳ねた。

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ゴンッという鈍い音が路地裏に響き渡った。それでおしまい。
俺を取り囲んでいた不良たちは仲良く地面に転がっている。
俺はと言うと・・・・・かすり傷ひとつ無かったりする。当たり前だけど。
「さてと」
不良たちに目を向ける。彼らは俺とは違って体のあちこちに傷を負っていた。
「ごめんな。できる限り手加減しておいたから、それで許してくれ」
どうせ気絶してるので聞こえていないだろうけど、それでも一応謝っておかないと後味が悪い。
ケンカを売ってきたのは彼らだけど、そのケンカを買って超能力なんてモノを使って
彼らをぶちのめしたのは俺なのだ。
もっと言えば昨日彼らの仲間に絡まれた時、もっと平和的な解決策を見つけていれば
こんなことにはならなかったのだ。
だから、ごめんなさい。

俺は心の中でもう一度彼らに謝罪して、そのまま路地裏を後にした。

路地裏を出てしばらく歩いたところで今回の原因(のひとつ)とばったり遭遇した。
「あ、恭介くん発見です」
「よう琴乃。今帰りか?」
「はいです」
そんなちょっと変な口調で返事を返してくれるこいつの名は白川琴乃。
さっきも言ったかもしれないが俺の幼馴染だ。
どうやら買い物帰りのようで、手には学校指定のかばんの他にスーパーのビニール袋を持っていた。
琴乃は少し俯いてこんなことを聞いてきた。
「恭介くん、今日大丈夫だったです?」
「大丈夫って・・・何が?」
「上山くんから聞いたです。恭介くんが恐いひとたちにどこかへ連れてかれたって」
次郎の奴、余計なことをベラベラ喋りやがって。明日学校で会ったらとっちめてやる。
「ああ、大丈夫大丈夫。かすり傷ひとつねぇし」
「本当です?」
「本当だって!それよりもさ、一緒に帰ろうぜ」
「え・・・いいんです?」
「いいも何もお隣同士なんだから嫌でも一緒になんだろ・・・・ってちょっとぉ!泣かんとってぇ!!
  今のは言葉のあやで別にお前と一緒に帰るのが嫌とかじゃないから!!な!?」
「わ、分かりましたです。グスン」
俺の懇願が通じたらしく、彼女はどうにかこうにか泣き止んでくれた。
・・・・・ほら通行人の皆さん。この子ちゃんと泣き止みましたよ?
だからそんな敵意剥き出しの目で俺を見ないで!?
お願いしますから!!
「こ、琴乃。早く行こう」
何だかすごく居心地が悪いので俺は琴乃の手を強引に引っ張ってこの場から離脱することにした。
「きょ、恭介くん!?」
それから数秒遅れて、琴乃がそんな素っ頓狂な声を上げた。
見れば琴乃の顔は真っ赤に染まっていた。一体どうしたんだろうか?
「琴乃?どうした、何かあったのか?」
「い、いいえ何でもありませんです!ほ、ほら早く帰りましょうです!!」
「ん、ああ」
何か気になるけど、まあ琴乃は何でもないって言ってるし大丈夫だろう。
「そうだな。帰るか」
「はいです!」

こうして今日も俺、九条恭介の日常は慌しく過ぎていった。

2

「眠い・・・・」
朝。学校に向かっている途中に俺はそう呟いた。
何しろ昨日は嫌な夢を見たせいで全然眠った気がしないのだ。
「恭介くん、昨日眠れなかったですか?」
そんな俺を心配してくれたのか、琴乃が聞いてきた。
うう、また余計な心配を掛けてしまった。
「そうなんだよ。実は・・・」
そこまで言って口ごもる。あの夢の内容は琴乃にとっても嫌な思い出でしかないはずだ。
下手なことを言えば彼女の心の傷を抉ってしまうことになる。
それだけは絶対に避けなければならない。絶対に。
「・・・実は昨日夜更かししちゃってさ。あんまり寝れてないんだよ」
「むぅ。恭介くん、夜更かしなんてしちゃだめです。健康に悪いです」
膨れっ面で俺に注意をしてくる琴乃。なんとかごまかせたようだ。
「悪い悪い。今日は早く寝ることにする」
すると琴乃は膨れっ面をやめて、代わりに満足そうな笑顔を浮かべてこう言った。
「分かればよろしい。です」

その後も色々と雑談しているうちに、俺たちは学校に到着した。

「じゃあな。昼休みにまた会おうぜ」
「はいです」
俺たちはいつものように階段のところで別れてそれぞれ自分の教室へと向かう。
その途中、俺は昨日見た夢のことを考えていた。

俺が超能力者だと判明したのは7歳のころだった。

突然だった。突然、男が教室に乱入してきた。
男の名前は中林龍二。全国指名手配の凶悪犯にして超能力者。
当時の自分にはよく分からない言葉だったがそれでもこの男が悪い奴だということだけは分かった。
中林は警察の追跡から逃れるためにうちの小学校のうちのクラスに立て篭もった。
俺は何も考えられなくなった。ただ恐くて、恐くて、泣きそうになった。
――――でも、ないたらきっところされる。
そう幼心に思ったのだ。だから必死に涙を堪え、恐怖を押さえ込んだ。
と、その時だった。
「ウ・・ヒック・・・グス・・・・・・」
琴乃が、泣き出したのは。
「おいうるせえぞガキ!静かにしやがれ!!」
中林が怒鳴る。しかし彼女の泣き声は止まらず、
むしろ中林が怒鳴ったことで余計大きくなってしまった。
そしてそれを引き金に、俺と担任を除いたクラスの全員が泣き出した。
「この・・・・!黙れっつってんだろうが殺すぞ!!」
それでも泣き止まない彼女たちに耐えかねたのか、中林は一人の少女に手を突き出した。

その突き出された手の先にいたのは、琴乃だった。

気付いたら俺は彼女の元に向かって走り出していた。
すでに恐怖心なんてものはどこかへ消え去っていた。
俺は彼女のすぐ目の前にいた中林に思いっきり体当たりした。
「痛っ!っのガキィ!!」
その一撃で中林は標的を俺に変えたらしく、今度はこちらに手を突き出してきた。
よく見るとその手のひらの中心には、風が小さな渦を巻いていた。
それを見た瞬間、

――――心臓が、ドクンと大きな音を立てた。

世界から音が消えた。
琴乃が何か言っているが、聴こえない。聴こえるのは、自分の心臓の鼓動だけ。
中林が指を曲げた。どうやらそれがあの風の塊の発射準備らしい。
恐らく発射されるまでもう0.1秒も無いだろう。――――それでも、『遅い』。
俺は素早く身を屈めた。その直後に頭上を真空の弾丸が掠めた。
中林は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに構え直して攻撃を再開した。
――――俺はその攻撃全てをかわした。
今度こそ彼は完全に硬直した。その無防備な腹に、渾身の頭突きを打ち込む。

ここに事件は解決した。僅か7歳の子供が、犯人を昏倒させたことによって。

中林を倒したと同時に俺は元に『戻った』。そして、理解した。
自分もまたこの男と同じ、超能力者なのだと。

「超能力者、か」
超能力者。それは普通とは違うチカラを持つ者たちの総称。
19世紀末にその姿を現し始めた彼らは徐々にその数を増やしてゆき、
今では30人に1人は超能力者だと言われるまでになった。
実際この学校の生徒の何割かも超能力者だったりする。
「・・・・・」
でも、時々思う。
本当は超能力者なんて、いない方が良いんじゃないだろうか、と。
超能力は確かに人間離れした凄いチカラだ。しかしそんなチカラを持つ者たち
誰もが善人という訳ではない。
例えば中林のように、そのチカラを悪事のために使う者も決して少なくはないのだ。

そんな柄にもないことを考えていると、不意に声をかけられた。
「九条君、ちょっといいかしら」
「はい?」
俺は声のした方向に振り返った。そして、心の底から驚いた。
何故ならそこにいたのがこの学校の生徒会長にして学校一の美少女、如月楓だったからだ。
その顔立ちは同じ美少女でも童顔で綺麗というより可愛いといった感じの琴乃とは正反対の
まさに『美』少女だった。
また生徒会長なんてものに任命されるだけあって外見だけではなく中身の方も非常に優秀で、
おまけに超能力者ときたもんだ。
もう凄いなんてレベルじゃないくらい凄い。

その如月楓が俺のようなパンピーの顔を覚えていてしかも話しかけてきているのだ。
俺じゃなくても普通は動揺するだろう。
そんな俺の動揺をよそに如月会長は淡々と話を進める。
「今日の昼休みに生徒会室まで来てほしいんだけど」
「せ、生徒会室にですか?」
「そうよ」
昼休みか。琴乃と一緒に昼飯を食う約束をしていたんだけど生徒会長直々の呼び出しとなれば
やっぱり行かねばならないだろう。
「分かりました。昼休みに生徒会室ですね?」
「ええ。待ってるわ」
会長は伝えるべきことを伝え終えると、さっさと自分の教室に帰っていった。
「・・・俺も教室行くか」
このままここに突っ立ってても仕方が無いので俺も自分の教室に向かうことにした。

2009/01/09 To be continued.....

 

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