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敵との遭遇

第1回    


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私には我慢ならないことがある。大好きなあの人に最近変な虫がついたこと。
あの女が来るまで登校のとき私たちは子供のころから遊んでいた公園で落ち合って、
二人で40分ばかりの道を歩いた
それが忘れもしない4月21日の月曜日、
いつものように7時30分の補習に間に合うよう6時35分に件の公園でまっていたときだ。
いつも彼が出てくる曲がり角を待ち遠しく見ていると影が二つくることに気がついた。
この時間帯は人通りが少ないのだが、二人組みということで彼ではないとそのときは思った。
だが、予想は裏切られた。見慣れない女が彼と一緒に現れたのだ。
そのときはあまり真剣には考えなかった。理由があるのだろう。
どういう事情かは知らないが、彼が私から離れることはありえない。
今思えば根拠のない自信があった。
だから私は特に怒るでもなく戸惑うでもなく彼に事情を聞くことができた。
彼によると、家を出たら待っていてくれたらしい。
特に困ることもないので一緒にいくことにしたが突然のことで少し迷惑しているとのことだ。

だが私は気づいてしまった。彼の色素が薄めの頬が嘗て見たことがないほど上気していることに。
私は戸惑った。そしてその頬に彼は気づいてないのだろうが
少し興奮したような声にハッと思い当たった。
本当に忌まわしい。口にするのも、こうやって考えるのもはばかられるような。
まさか彼はこんな見るからに根暗な女に恋をしてしまったのでは。
いや、そんなありえないことだけれども。そんなことは絶対にあってはならないことだけれども。
それに類似した感情を抱いてしまっているのではないか・・・と。

私には衝撃。いや、こんな言葉では足りないほどのなにかをうけた。
この陰湿そうな女などよりはるかに健康的な体つきをしているし。
自分で言うのもなんだが性的魅力だってそこいらのグラビアアイドル風情よりあると自負している。
そして何より、そして何よりも、幼いころから私は彼のみにすべてをささげてきた。
彼にのみ心を尽くしてきた。これからもそうするだろう。
今まで幾多の男が私に迫ったが、心が揺らぐことなどなかった。彼以外の人間などありえなかった。
にもかかわらず彼は私以外の女に気持ちが向いている。もちろん確証があるわけではないが。
だけど、私には分かる。
彼の顔を見て、しぐさを見て、声を聞いて・・・彼の心が手に取るようにつかめてしまう。
私が人生をかけて自分に向けさせようとしていまだに得られていない気持ちが、
こんなどこの馬の骨も知らない女に向けられている。
それがどういうことなのか理解したくなかった。何かの間違いだと思いたかった。

だがどうだろう。三人で歩き始めるとその考えが的中していると考えざるを得なくなった。
あの女に言葉を放つとき、私との会話では決して出すことがなかった感情が
こもっていることがわかる。
あの女の言葉を聴くとき、私が一度も引き出すことができなかった表情をしたのがわかる。
私がこんなにも恋い慕ってきたというのに。私にはただの友への言葉を放つ。
夢だと思った。悪夢だと思った。まやかしだと思った。
だが、現実は受け入れねばならない。
このときからこの女が、打倒すべき敵となった。

終わり

2008/05/16 完結

 

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