彼女編
○月×日
今日、ずっと片想いをしていたあの人から告白された。もちろん、返事は即OK。
桜舞う入学式の頃から私はあの人のことが大好きだったの。
Aさんと一緒ならこの先の学園生活が楽しくなりそうです。えへへ。
帰りは腕を組んで帰りましょうね♪
○月×日
付き合って間もないのにAさんは家族に私の事を紹介したいと言ってきた。
もし、家族の方に認めてもらったら、家族公認のカップルですね。学生結婚も夢じゃない。
ようし、Aさんの両親と姉妹の方に気に入ってもらうように猫被らなきゃ。
○月×日
Aさんの家族の交流は上手く行ったと思っていた。
少なくても、Aさんのおじさんとおばさんには好印象だったはず。
しかし、お姉さんは違う。そう、私に明らかな殺意をぶつけていた。
なんてわかりやすい。お姉さんはきっと弟のAさんのことが大好きなのだ。
そう、実の弟を異性として愛している。私も同じ恋する女の子だから簡単に見抜いてしまった。
Aさんに対するお姉さんの異常すぎるまでの愛。その愛はいろんな意味で危険すぎます。
だけど、私はAさんの彼女なんですよ。これからはたっぷりと時間があることですし。
Aさんの中からお姉さんを忘れさせてあげます。
○月×日
Aさんとデートの日々が続いている。お金がなくてもAさんと一緒に公園を散歩したり、
私の家で何もない事で談笑するだけでも私はとても幸せですよ。
だって、お姉さんからAさんを独占できるんですもの。
毎日、帰宅時間が遅くなるほど、あのお姉さんとの時間を奪うことができる。
休日もAさんを私のことを大切に想っているから、デートに誘ってくれる。
お姉さん♪ 一人で寂しく孤独死してください。
私はAさんと幸せになりますから。
○月×日
散々な一日だった。学校で憎き将来の義理の姉と廊下で鉢合わせした。
相変わらずの殺気を私に向けてくる。
焦ることはないんですよね。
私は恋人としてあなたごときが立ち入ることができない領域にいるんだから。
姉じゃあ、絶対に恋人なんかになれないんだからね
だが、お姉さんは私の予想を裏切る事を言ってきた。
『私、A君は一緒に寝ているのよ。ベットの上で激しくね』
えっ? A君が私以外の女と肉体関係を結んでいる。そ、そんなバカなっ!!
○月×日
Aさんの童貞は私が貰う予定だったのに。あのお姉さんと毎晩一緒にヤッているなんて……。
Aさんが私の事を好きだと言ったのは嘘なの。もしかして、ただの遊びだったのかな。
そんな風に落ち込んでいたせいか、A君にちょっとだけ不愉快な気持ちにさせてしまった、
ごめんね。Aさん。私は強くなるから。
とりあえず、憎き姉を殺していいように剣道でも始めます。
○月×日
今日はAさんの妹に私の事を紹介するというので妹さんが入院している病院にやってきました。
嫌な予感がしています。
あのお姉さんのことを知っている今では妹さんにもいい印象が浮かびません。
その予感はもう見事に的中しました。
この世の悪を孕ませている不吉なオーラーを周囲に振り撒いています。
外見は気弱で貧弱なかよわい女の子を演じている。
思春期な男の子には保護欲をそそられるが、騙されてはいけません。
人を油断させるため、Aさんに自分の事を守るために、妹さんがそう演じているだけです。
恐らく、本性はあのお姉さんを遙かに上回る腹黒い妹。敵には容赦しないのか、
Aさんが花瓶の水を替えている間に、小さな声で呟きました。
『お兄ちゃんと別れなさい。さもないと……』
『無限地獄に突き落とします』
○月×日、
妹さんの病院へ行ってから数日以上経ったある日、Aさんの連絡は途絶えた。
普段ならメールを10通以上を私が送り、Aさんは丁寧に返事を送るという日常的にあったというのに。
一体何があったんでしょうか、ちょっと、気になります。
あっ。メールが来たようです。もう、本当に待ちくたびれましたよAさん。
しかし、私はメールの内容を見て、思わず凍り付いた。
『○○さんへ もう、別れよう
詳しい話は指定の場所、時間で話しよう。』
どういうことですか!?
○月×日
私は急いでAさんの携帯に電話をした。ただいま留守にしていますと冷酷な機械音が流れるだけ。
私は留守番電話に自分の想いを、Aさんに伝えたかった。
すでに私の頭の中はAさんに捨てられないために必死にあがいていた。
「もしもし、Aさん?
メールを見たよ。もしかして、本当に私と別れるつもりなんでしょうか?
嘘だよね。だって、Aさんと私は結婚しようと約束までしたんだよ。悪い冗談だね」
「彼女です。大丈夫、Aさん?
私のメールの返事が返ってこないってことは、Aさんはきっと交通事故に遭ったりと
いろんな大変な目に遭っているはずだもん。
じゃないと、どうして、私のメールの返事を返してくれないんですか?
もしかして、私に飽きたの? 私に悪いところがあったら正直に言って。頑張ってなおすから
「いい加減にしてください!連絡ぐらいしてよ。
電話くらいできるはずでしょ!
私、心配してるんですよっ!」
「彼女です。Aさん?電話に出て。
そこにいるんでしょ?
ホントはこれ聞いてるんでしょ?
電話に出てよ。お話しようよ。
私の相手して」
「どうして来ないの?
どうして電話出ないの?
どうして返事くれないの?
どうして?
どうして黙ってるの?
どうして?」
捨てられたの? 私?
○月×日
待ち合わせの場所に向っていた。
Aさんと別れるつもりは全くなかったが、
Aさんに拒絶されたりすると悲しいのでいろいろと道具を持ってきているの。
とりあえず、Aさんの身柄を拘束して家で飼うことにしよう。
だって、恋人同士だもん。離れ離れになる方がおかしいもんね。
でも、Aさんは待ち合わせの時間になっても来ないな。どうしたんだろう?
代わりにあの邪魔者、お姉さんがやってきた。
狂気に満ちた瞳で私を見つめていた。手には鉈を持っている。
そう、私は今回の件について全てを悟ったのだ。お姉さんが仕組んだこと。
Aさんの彼女である私を殺害して自分がAさんの彼女になるために。
なんて、女だ。
姉弟同士で結婚すると生まれてくる子供は
血が濃くて五体不満足で生まれる可能性が出てくるというのに。
お姉さんは奇声を発しながらこっちに襲い掛かってくる。
私は冷静に物事を対処していた。通信教育で剣道をやっていることが役に立ちそうです。
縦から下へと振り落とす鉈。
私は隠し持っていた凶器を取り出した。
鞘から取り出すのはよく磨かれた日本刀。
漫画でやっていた見様見真似で抜刀した勢いでお姉さんの体を切り刻む場所を一瞬だけ考えた。
腕。
狙う箇所を見定めると私は躊躇なく切り落とした。
両腕が無くなったお姉さんは倒れると、私はゴミを捨てるように言葉を投げかけた。
無様ですね。おねえさん。
○月×日
障害は取り除きました。後はAさんの家に行き、Aさんを誘拐するだけで私達は幸せになれます。
両親に挨拶しているし、私とAさんがこのまま学生結婚しても文句はないでしょ
私達は愛の住処でイチャイチャな生活を送るんですから。
さてと、Aさんの家に辿り着くと玄関にはあの女がいた。
おねえさんとAさんの妹が。
いいだろう。姉と同じように切り刻んでやろう。
お姉さんは両腕を切り落としたから、妹さんは足を切り落としてやろう。
一生、車椅子の生活を送って、兄を奪われたショックで失明してください。
抜刀許可。
殺害目標はAさんの妹。
日本刀を取り出すと、神速の速さで間合いに入った。
これで妹さんの両足は……頂いた!!
予想外の銃声が鳴り響いた。
○月×日
弾丸は私の胸を貫通し、音もなく倒れた。傷口から溢れ出す血は妙に生温かい。
同時に自分が生きているという実感が徐々に失ってゆく。
痛みよりも、血が失うことで起こる脱力感の方が深刻であった。
「お姉ちゃんを殺害してくれてありがとうにゃー。でも、あなたはここで消えなさい」
妹さんが持っている拳銃の銃声が数回に鳴り響いた。
痛みという感覚はない、体のあちこちに穴が空いている。
急所を避けて、徹底的に体を損壊させているのは私を苦しめるためであろう。
妹さんは躊躇なく拳銃を私の体に打ち込む。
「さてと、粗大ゴミは処分しないと」
チェーンソーで、頭から胴体を切り離すと私の首をバックの中に入れる。
妹さんは二つの頭を所持して、
Aさんの元へ勝ち誇った笑みで王者のようにがり股歩きで家の中に入っていた。
○月×日
ミキサーで粉々に切り刻まれて、Aさんと私は一つになる。体は拒絶反応を起こさない。
だって、Aさんのことは私大好きだから。一つになれて嬉しいよ。 |