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FOOTBALL SCRAMBLE(仮)

第1回                  
※こちらの作品は、『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!5』の二次創作作品です。※

1

「…で交渉は成功です。来週に本契約という運びでよろしいでしょうか?」
「はい青沼さん。それで大丈夫です」
「了解しました。それでは」

電話での報告を受けた後、くるりと椅子を反転させる。
窓の向こうには完成間近のスタジアムが見え、しばし感動に浸る。
父さん、もうすぐ完成です。父さんの夢見たサッカー場が…

僕の名前は酒造吾郎(さかつくごろう)。現在21才の大学生である。
しかし、僕にはもう一つの顔がある。Jリーグ・アウローラ立川のオーナーというもう一つの顔が。

僕の父さん、酒造周吾(さかつくしゅうご)は、
親の遺産と株式投資で得た財産をあるサッカークラブに注ぎ込んだ。

当初は資金繰りだけではなく、様々な面で苦労したらしいが設立10年
を過ぎた辺りから運営も安定し、リーグ有数の優良クラブへと成長した。
だが三年前…。

交通事故でこの世を去った。

クラブのカリスマたる父さんの突然の死は、クラブに大打撃だった。
オーナー兼業で何役もこなし、選手にも良い兄貴分として慕われていた父さんの代わりが務まる人材は
他になく、一時は解散も噂された。
だが当時強化部長を務めていた青沼さんの一言がクラブを救い、僕の人生を大きく変えた。

「吾郎君にやって貰う」

あれから三年。
僕は青沼さんを始めとした、多くの人に助けられながらオーナーをなんとかやって来れている。
父さんのライバルだった三吉野さんも毒舌ながら僕を助けてくれる。
本当に感謝だな…

「代表、失礼します」

おっと、その中でも最も感謝してる人が。

「代表、時間です。会見場の方へ」

秘書を務める、氷室麻耶(ひむろまや)さんの声に導かれ、僕は会見場へと向かった。

会見も無事終了したのは昼をだいぶ回っていた。
「ふぅ…疲れた」
やはり、会見は緊張する。何度やっても慣れる物じゃない。
「お疲れですか?」
麻耶さんの口調は、からかい半分に心配半分といった所。
「大丈夫です麻耶さん」
「…辛かったら言ってよね」
きゅっと背中から抱きついてくる。

背中から麻耶さんの形の良い胸の感触が伝わると同時に、麻耶さんのいい香りが鼻孔をくすぐる。

「麻耶さん…」
「吾郎君、いつも無理してるから。たまには甘えて欲しいな」
一旦背中から離れて僕の正面に回り、優しく唇にキスされる。
「お姉さんとしては」
麻耶さんは父さんがオーナーを務めていた頃からの秘書だ。
僕より五才年上でショートヘアの長身美女。
サバサバした姉御肌だが、時に見せる色っぽい表情がなんとも魅力的なお姉さん。
オーナーに成り立ての僕を文字通り叱咤激励し、鍛えてくれたまさに教師でもある。

「ね、吾郎君」
「何ですか?」
「…しよっか」
にじり寄る麻耶さんの唇が妙に艶っぽく―

その時突然ドアが開いた。慌てて僕と麻耶さんは離れる。
「抜け駆けは禁止ですよ!!」

もう一人の秘書、星さおり(ほしさおり)だった。

「びっくりするじゃないの!!ノック位しなさい!!」
「抜け駆けしようとしたオバサマに言われたくないですぅ」
舌を出して反論するさおり。僕と同い年なのに、そういった仕草が
妙に子供っぽい。
「お、おばさまですって!!お尻の青いのが取れてないガキが!!」
「さおりには蒙古班はないですよ。ピンクの大人のお尻です〜」
「胸はお子様だけどね〜」
「言ってくれますね…」
「何よ、やる気?」

ああ、また始まった。
二人の口喧嘩をぼんやり見つめながら、僕は空腹を訴える自分の胃にこういい聞かせたかった。
『あと一時間半我慢してくれ』と。

 

その後、料理で揉める二人を連れてディナーに近い時間に昼食を取り、
極上デザートとして二人を美味しく頂いた事はまた別の機会に語るとしよう。

2008/03/02 To be continued.....

 

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