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Sweet ☆ Magic(仮)

第1回


1

コンコン

「大丈夫か?開けるぞ?」
「ゴホッ…ゴホッ……うぅ、ごめんねお兄ちゃん」
「バカ、気にすんな。それよりお粥持ってきてやったぞ。食うか?」
「それお兄ちゃんが…?」
「まあな。一応食べられる味だとは思うぞ」
「う、うん!食べる食べる!」
「っておい、そんなに急いで食ったら……」
「熱っ!?」
「たく、言わんこっちゃない…ほら、水」
「うぅ……だって、本当に嬉しかったんだもん……」
「なんだ。そんなに腹減ってたのか?」
「そ、そうじゃなくて!その、お兄ちゃんがわざわざ私のために作ってくれたのがだよ」
「なんだ、そんなことか。妹がぶっ倒れたんだ。それくらい、当たり前だろ?」
「でもそのために学校休んでまで……」
「学校よりお前の体の方が大事だろ」
「お、お兄ちゃん…………」
「まぁ今日はゆっくり休んでろよ。
また晩飯のときにでも呼びにくるから。それまで大人しくしてろよ」
「うん……お兄ちゃん?」
「ん?」
「…大好き」
「はは、ばーか」

数時間後

「ん……うん……ふあぁ…お兄ちゃん…?
なんだ、夢か……ふぅ、一眠りしたら、大分楽になったかな。
って、うわっ、もう夕方なんだ……
お兄ちゃんは…いないのかな……?
そういえば冷蔵庫の中何もなかったし……買い物とかかな……
ふふふ…でも嬉しいなぁ。お兄ちゃんがわざわざ看病してくれるなんて……
しかも、今日、丁度この日に熱がでてくれるなんて、運がいいなぁ。
毎年この日は苦労するもの……
登下校中でも休み時間中でも、ほんの少しも気が抜けないんだから。
だって、大事な大事なお兄ちゃんに、毒物を食べさせるわけにはいかないもの。
お兄ちゃんったら鈍感だから、そういうのは私が気をつけてあげないと。
あ、勿論、そんな鈍感なところも大好きなんだけどね……ふふ……
大丈夫だよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんには今年も私のを好きなだけ食べさせてあげる。
甘い甘い、私の愛がた〜っぷり詰まった美味しい……」

ピンポーン

「あれ、誰だろ…お兄ちゃんじゃないよね…?」

ピンポーン

「どちら様ですか?」
「あ、こんにちは。○○……くんのお宅ですよね?」

 

(誰……こいつ?)
「あ、あたし○○くんのクラスメートなんですが……
あれ、もしかしてあなた○○くんの妹さんかな?
あの…○○くん今いる?」

(お兄ちゃんの名前を軽々しく呼ばないでよ)

「そっか……いないんじゃしょうがないなぁ……
それじゃ妹さん、これ○○くんに渡しておいくれるかな?」

(ドウシテ、ホオヲソメテイルノ?)

「え、何かって?あ、あはは…いや、その今日はそういう日なわけだし、その、○○くんにーーー」

 

 

 

「ただいまー……って、おいおい起きてて大丈夫なのかよ?」
「あっ、お帰りなさい!
うん!もう大分楽になったし、あと……はいっ!」
「ん?なんだこれ」
「もぉ!チョコレートだよ!
今日はバレンタインでしょ?これを渡そうと思って」
「あぁ…そっか。今日は十四日だっけか。いつもサンキュな」
「ふふ…どういたしまして。
あげるのお兄ちゃんだけなんだから、よ〜く味わってね?」
「はいはい……ん、なんだこれ?ゴミ箱に…」
「あ、それはただの“ゴミ”だから気にしないでいいよ」
「ん…?失敗したやつか?
まぁいいや。とにかく、また熱が出ないように、飯まで部屋で寝てろ」
「は〜い」

「あ、そうそう言い忘れてた」
「え?」

 

「お兄ちゃん……大好きだよっ!」

END

2008/02/14 完結

 

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