「…さん、兄さん起きてください。
もう朝なんです。」
朝のまどろみの中で気持ちよくなっていると体を優しく揺さぶられる
目をあけるとそこにいたのは小さいころから慣れ親しんだ幼なじみではなくてちょっと驚いてしまう
あーそうか。最近は直が俺を起こしにくるんだと思いながらも体を起こす
多分詩織さんも下で朝ご飯つくって待ってるはずである
その証拠とでも言うべきか直が少しじれったそうに僕を見る
まぁ無口な直の考えを読みとれるようになったのは嬉しい事だ
やっぱり家族とは良好な関係でいたいしただでさえ無口な直の事だから
ほっておいたらため込んでしまうのが怖い
それは自分の経験から来るべきものと言うべきか
だけど直一つ言っていい?
いくら家族だからといってさすがに女の子がいるところで着替えるのはちょっときついんだけど…
だからそこ顔を赤らめたようにしないで
恥ずかしいならでてってよ直・・・
「おはよう優磨さん、朝食できてますよ」
下に降りると詩織さんがテーブルの上にはいかにも洋食って感じの奴が乗っていた
席に座ってパンを食べ始めるがちょっと違和感がある
やっぱ僕には朝食は和食って感じなのかも…
とか思いながらも朝食をすすめる
やっぱりこれはこれで食べないといけないし
ふと詩織さんと直の方を見るとなんか食べ方が似ている
そんなところやっぱり親子なんだなと思ってしまう
普段は全然似てないのに
そんなことを思ってると詩織さんは
「優磨さん?何笑ってるんですか」
ってちょっと不機嫌そうに言ってくる
「すいません
あまりに詩織さんと直の食べ方が似ていたので…」
サラダにフォークを突き刺すときなんて本当に同じだったし
やっぱり小さいころから一緒にご飯をとってると似てくるのかもしれない
僕も裕美と似てるところがあるのかも知れない
ご飯を食べ終わると席を立ち外にでる
「行ってきます」
と詩織さんに言って玄関のドアをあけると幼なじみの裕美がいた
「おはよう優磨くん」
そう言いながら僕に笑いかけてくる裕美は、やっぱり綺麗だった
小さいころから見慣れてるけど裕美はやっぱり美人なんだと思う
「おはよう裕美」
思わず裕美に見とれてしまうのを恥ずかしく思い誤魔化すように返事を返す
直は直接は声に出さないが頭を軽く裕美に下げたようだ
裕美には別にファンクラブがあるとかそういう事はある訳ではないが中学生のころから、友達に
「お前はいいよなー。あの“裕美”ちゃんかいて」とか言われることがしばしばあった
そのたびに否定はしていたが最近は別の攻め方もでてきてちょっと困っていた
直も美人だったのだ
もっとも直は裕美のように愛想はよくないが、それでも凛とした感じの美人だったので
時々直を紹介しろとも言われてしまう
まったく
「学校では裕美ちゃん、家では直ちゃんがいるお前は本当羨ましいよ。
本当刺し殺したくなるくらいだ」
とかいう友人がいるので本当困る
詩織さんまで見られたら本気で死にそうだ僕…
とか考えながらも学校へ歩いていく
「直、学校には慣れたか?」
裕美と僕は口数は多いほうではないが自分から話をできるからいいが、
直のほうは結構無口なのでいつも気にかけてしまう
僕としては新しくできたこの妹が心配だ
直は自分から話を振るタイプじゃないから振ってくれる人がいないとな…
って過保護だぞ僕
「うん。慣れたと思う」
「それはよかった」とりあえず兄としてはこの無口な妹に友人ができるのかやっぱり心配だった
でもなんだろ裕美って直苦手なのかな?
僕には話を振ってくるけれども直に直接話を振ることがないんだよな…
「優磨くん宿題はちゃんとやった?」
とか
「優磨くん今日の体育はマラソンだよ。私走るのあんま得意じゃないんだけどな。」
とかちょっと世話好きな面を僕には見せてくれるのに
「じゃ直昼休みにね」
学校につくと中庭のところで僕達はお別れだった
裕美はともかく学年の違う直は別の学年のげた箱に行くからだ
「わかった、兄さん」
そして裕美と一緒にクラスに行く
「おい優磨、今日もラブラブだったな。両手に華とは羨ましいぜ」
と教室につき自分の席に座ると悪友であり僕の命を狙ってるであろう須藤がやってきた。
いつものように
「お前を殺して俺がその位置に座る」とか冗談にとりづらいことをいってくる
須藤は成績はいいし頭の回転もはやいんだけど、そういうとこがバカなんだと思う
というか須藤
お前顔いいしスポーツもできるしでモテるんだから、いい加減あきらめてくれないかとか思うが、
須藤に言わせれば
「それとこれとは別」なんだそうだ
相変わらず理不尽な悪友である
と須藤とじゃれあってるうちに授業が始まりそうになる
めんどいけれどちゃんと受けないと…
二時間目は数学だった
教壇に立つのは『暴君』『皇帝』『現代に現れたネロ』とか訳のわからない異名をもつ数学教師狩野
やつの授業は説明はうまく、ちゃんと聞いてさえいれば大半のことは理解できるのだが、
要求してくることが尋常ではない
ある単元が終わりそうになると宿題をだし、それと平行して小テストをやるのだが
それが尋常ではなく難しく大学受験もかくやというレベルだった
もちろんここは進学校みたいなので出すのはわからないでもないが、
いくらなんでも受験レベルの問題はないだろって感じである
授業を聞いてればわからないでもないのだが、
聞き逃してるとわからないようなレベルの問題もあり全く授業に気が抜けない
まー須藤は頭がいいので授業は寝はしないが軽く聞き流してるみたいだ。
裕美は頭はいいんだけど数学が苦手みたいで後でよく僕に聞きにくる
もちろん僕もそのとき苦手な国語あたりを聞くのだけど、
単元の終わり頃になると皆どこかに集まりだし勉強会をやる
もちろん僕も須藤と裕美と一緒に僕のうちでやる
みんなそうでもしないと狩野の宿題でまずつまづき、テスト勉強すらできないのだ
ちなみに宿題をやってこなかったり小テストで点が悪いと評価に響くので、皆必死になってやるようだ
そして魔の数学が終わりを告げる鐘がなった時、教室中が死屍類似となっていた…
三時間目の体育は裕美が言ってたようにマラソンだった
ちなみに須藤はスポーツ万能の癖にこういう時、よくサボっている
サッカーとかになると本気でやる癖に…
あいつによれば保健室の先生が美人で、その人が呼んでいるそうな
まぁそれは方便だと思うが、須藤は実に多くの女性から人気がある
バレンタインとかはヒドかった…
須藤に渡すように女子から迫られ泣かれ脅されて、ちょっとトラウマになりそうだった
しかも何を勘違いをしたのか、いつも義理チョコを渡してくれる裕美が
「そんなにチョコもらったんなら私からはいらないよね」
とか不機嫌そうになってたので機嫌をとってチョコをもらうのが大変だったような…
あーもう今年のバレンタインもあんな風になるのかなと
グラウンドを走りながら嫌な事を思い出してしまう。
まったく癖の強い友人を持つと困るな…
昼休みになり、裕美と一緒に弁当を持って屋上に出る。
既に直がいて食べる準備をしている
そしてもうしばらくすると須藤がやってくる
直が僕らと一緒にご飯をとるんだけど、新しくできた友達と一緒に食べればいいのに
わざわざ僕にあわせなくてもいいのにな
今日の須藤の弁当誰のだろうな?
「須藤、今日の弁当は美人の保健の先生か?」
「よくわかったな。先生の弁当はやっぱり大人の女って感じがして好きなんだよな〜」
「須藤くん昨日はみーこちゃんの弁当は可愛くて好きなんだよな〜とか言ってなかった?」
「それはそれ、これはこれだ」
まったく本当須藤刺されても知らないからな…
とそこでみな適当に座って弁当をあける
須藤の弁当はちょっと凝ったような感じだが見た目もよく、
栄養も考えられてる感じで確かに大人の女性が作った感じである
まぁ僕と直の弁当も似たようなものであるが
確かに詩織さんこういうの凝りそうだしな…
昔は毎日食べていた裕美の弁当はそのころよりもますます上手になったみたいで
色彩もあざやかで確かに食欲を誘う様子である
そんな事思ってると
「優磨くん。私のお弁当食べたいの?」
とかいってくる裕美がいて
「おー優磨さんは羨ましいな。殺したくなるくらい…」
と茶化すような感じで言ってくる須藤がいて
「兄さん…」
とかちょっと恨みがましい目で睨んでくる直がいて…
いや直、裕美の弁当食べたいのなら直接言えばいいじゃないか
っというか裕美卵焼きを箸でつまんでこっちに向けないで
屋上には他にも人がいるし恥ずかしいじゃないか
どうすればいいんだよ僕
ちょっと裕美人がいるから、ちょっと恥ずかしいから僕こういうの苦手なんだから
そういうの察してよ裕美
だからほら須藤もなんかにやけた笑いをしてないで助けてくれ
いつも僕須藤から迷惑かけられてるんだからこういうときこそたすけてよ
あー教室帰ったらラブラブだねとか言われて
家に帰ったら結婚届書いて明日には役所にいくんだろうな
そして子供は男の子と女の子1人ずつで結婚記念日には毎年旅行行って
マイホームをたてて・・・・
本当どうするんだ僕
なんか何言ってるかわからなくなってきたぞ |