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華麗なる獲物たち



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サクラ散っても春は終わらない、まだ四月だしな

俺は大学三年となり、山手線の田町にあるキャンパスへと足を運んでいた
近くは企業のビルばかりでおおよそ学生の学び舎が有る場所とは俺は思えない

とはいえ、俺としては留年せずに見事にここのキャンパスに来れた事がとても有難い

経済学部に在籍してはいるマクロ経済学など分かるほど緻密な知能を有してはいないので
留年しそうになったわけだ
しかし、何故留年しなかったかと言うと一人の同じ学部、しかもサークルも一緒の奴が居たからさ

誰か?まぁ先程から一応隣りにいらっしゃる女性、高村佳織がその人だ
「さっきからボーっとしてどうしちゃったの?」
「う〜ム、ちゃんと三年になれたのだなぁ、と感慨に耽っていたのさ」
「本当にぃ?高橋君は色々と余所見ばっかしてるからなぁ」

いや敢えて言うなら今の俺の発言は事実だぞ、それと申し遅れたが俺の名前は高橋亮介だ。
宜しく諸君。

とりあえず俺は佳織の言葉に優しさフェロモン120%(当社比)で答える

「俺は常に君の瞳しか見てないSA!」
「ならさっき電車の中で、お天気ニュースのお姉さんを凝視してたのは何でかなぁ?」
急に佳織の声が柔らかくなる!
シット!こいつはやばいぜ!

確かにお天気お姉さんの顔見て「癒される〜」なんて思ってはいたが
ボクハカオリサンシカミテナイヨ?ホントウデスヨ?
「まぁそんなの何時もの事か…」
「ソウダネ」

俺は彼女の問いにデーブ・ス○クター様な完璧な日本語を喋れることを目指してる外人の真似をする
だってこいつ怒ると怖いもん、グスン

「でもまぁ一々そんな事言うのもオカシイしね、別に彼女じゃ無いし」
「ムゥ、ハタシテソレハドウデショウカ?アナタニハオンガアリスギマスカラ
ツキアッテテモオカシクナイデショウ」

良い加減この喋り方止めるべきだろう、正直言ってる俺が自分に対してキモイと感じてるし
「そうね。先ずはノートのコピーに、昼の食事代貸したり、
  飲み屋の足りない金額分を奢ってあげたり、それに…」
「あぁ〜、それ以上言うな!耳がイタイ!」

ふっ、聞くだけで耳が痛いぜ。確かに借りが多過ぎて困るな!
これじゃこいつの命令には従順になって当然だ
ならこのパターンで行くか、こいつが恩着せがましくなったときの常套手段だが

「今日の夕飯は何が食いたい」
「奢ってくれるのぉ?」
こいつはこんな時だけ猫みたいに可愛い声だしやがる、ウザ、なんて思いません、思えないのが事実だ

「ならお寿司が食べたいなぁ〜♪」
「俺が慢性金欠で、更に昨日焼肉奢ったの忘れてないか」
「えっ?そんな事あったけぇ?」
佳織は目を逸らしてハハハっと笑ってみせる
こやつ!曲者でござる

因みに昨日もこいつに焼肉奢ってやった訳だ
佳織は「貴方にしてあげた事への対価」と言うのが言い分だ

しかしまぁ何故ここまで負い目が有るのかと、そう聞かれたら答えは一つのみだ

 

「それより、先月も含めて今月の家賃が未納だってママが言ってたなぁ」
「うっ」

そうこいつは俺の住むアパートの大家の娘さんなのだ
因みに高校生活時代から、家族の事情でこいつのアパートに住んでいる。
それゆえ実際は大学入る以前から佳織とは仲が良い

「家賃滞納するなら」
「分かった!行こう、寿司なら何だって奢るぞぉ!」
「本当?ありがとう?」

ふっ、財布の中身は一円すら残らぬは!ハハハハハハ
今、俺の涙は血が混ざってるだろう、そうとしか思えない

そんなこんなでビルの合間の小道を通り抜け、キャンパスへと近付く
ちょっと吹いた小風が思いのほか寒く

俺の財布事情を表してる気がした

2007/03/08 To be continued....

 

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