お姉ちゃんを────馬鹿だと思いました。
だだの強がりで、和人さんとのキャンパスライフを捨てるなんて……愚の骨頂です。
しかも、そのせいで私に和人さんを奪われ、逆恨み、そして嫉妬し、和人さんを奪おうとしたのです。
呆れるのと同時に、激しい怒りが湧いてきました。
あの時素直に同じ大学を選んでいれば良かったものを、自分で選ばなかったのに、
正しい選択をした私を恨むなんて……何処まで自己中心的なんでしょうか？
今日お姉ちゃんに、｢和人さんを諦めてくれて有難う｣の意味を込めて送ろうと思っていたプレゼントを
勘違いして、お姉ちゃんは私を嫌いになりきれず、殺せなかったようです。
しかも、私を殺そうとした罪悪感で、心が死にかけているようです。
────チャンスです。
今、お姉ちゃんを自殺に見せかけて殺せば、唯一絶対最大の恋敵、もとい泥棒猫を排除できます。
精神が死にかかっているお姉ちゃんは抵抗できないですし、しないでしょう。
更に、さすが一卵生双生児といったところでしょうか、
私とお姉ちゃんの筆跡に違いなどほぼありません。
だから私が遺書を書きましょう。
そうすれば完全犯罪の完成です。
和人さん以外の人間にバレるはずなど無いです。
え？なんで和人さんには分かるか？ですか？
そんなもの、和人さんが私とお姉ちゃんを声、容姿、気配、
筆跡にいたるまで完璧に見分けられるからです。
そこも私達が和人さんを好きになったポイントでしょう。
そう言えば、この間和人さんが、
｢優美ちゃん(お姉ちゃんの事です)にイタズラ心で優里って声を掛けたら怒らせちゃった｣と
言っていました。
もしかしたらそれが切欠なったのかも知れませんね。どうでもいいですけど
お姉ちゃんが死ねば、和人さんは深く悲しむでしょう。
お姉ちゃんが『自殺』するのを何故止められなかったのか、と自分を責めるでしょう。
そこで、私が優しく、許しを与えます。
そうすればきっと、和人さんは私に依存するでしょう。
────それも、二度と離れられないくらいに。
そこまで考えて、自分が笑顔になっていることに気が付きました。
仕方がないでしょう。
こんな素晴らしい、完璧な、完全の計画を思い付いたんですから！
｢あは！あははっ、うひ、ひひひひひぃ！｣
駄目だ───
｢ははははは、ひひひひひひ｣
笑イが───
｢ぐふ、ひはひゃはあひゃあひ｣
────止まラナい。
笑いが止まったのはそれから三十分ほど経ってからでした。
それでは、早くお姉ちゃんを『処分』しなければいけません。
どうやって殺そうか思考を巡らせた結果、お風呂場で手首を切ってもらう事にしました。
余り苦しまない殺し方にしたのは姉妹としての最後の情けです。
足元に落ちている包丁を拾い上げ、お姉ちゃんの手をとり立ち上がらせました。
やはり精神が壊れ掛けているからか、なんの反応もありません。
お風呂場まで引っ張ってきました。
湯船にお姉ちゃんの右腕を沈め、左腕に包丁を握らせます。
包丁の刃を右手首に当てて────
｢おやすみ、お姉ちゃん｣来世まで
────引いた。
happyend？
|
