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スウィート・スウィート・ヴァレンタイン(仮)



1

「……なあ、なんか今日皆ソワソワしてないか?」
「バレンタインデーだからじゃない?」
「……あぁ、そっか。まぁ、なんだな。俺には縁のないイベントだな」
「……そうでもないよ」
「え? なんか言った?」
「んーん。何にも言ってないよ?」
「ふうん? どうでもいいけど、何でお前のカバン、そんなにチョコ入ってるんだ?」
「え? あ、あはは! こ、これはその、祥太郎くんの下駄箱に入っていたゴミっていうか、
  その、え、えへへ。そ、それより、祥太郎くん、はい」
「んぁ? おーサンキュー。悪いなー毎年こんな冴えない幼馴染みの為にいつも作ってくれて」
「いいよ、えへへ。祥太郎くんが美味しく食べてくれるだけで、私幸せだから」
「……日向子?」
「あ、いや、あはは! じゃ、じゃあまた放課後ね!」
「おーじゃあなー」

放課後。

「うーし。帰るか……しかし、今年も日向子一人にしか貰えないとは、相変わらず寂しい人生だなぁ」
「い、石橋祥太郎君!」
「あい? あれ、委員長。どうかした?」
「そ、その! こここ、これ! き、今日友達にあげる為に作ったら余っちゃって、
  す、捨てるのもバチが当たりそうだし、だ、だからその、よ、よかったら食べて欲しいなって……
  べ、別に変な意味はないからね!? い、言うなら義理チョコだから!」
「いや、あ、うん。ありがとう」
「か、感謝しなくてもいいわよ! 捨てるのが勿体ないだけだから!」
「わ、わかったよ。でも、やっぱりありがとう。美味しく食べさせていただきます」
「あ、う、うん……じゃ、じゃあまた明日!」
「おーまたなー」
「……今の、誰?」
「うぉ!? ひ、日向子! びっくりさせるなよ」
「……折角、祥太郎くん宛てのチョコ全部回収したのに」
「え? 何?」
「ううん。何でもないよ?えへへ。ね、ね、今日祥太郎くんの家に行っていい?」
「え? あ、ああ。いいよ」
「えへへ。今日祥太郎くんに美味しいチョコの食べ方教えてあげる!」
「そんなのあるのか?」
「うん。えへへ。祥太郎くんきっと夢中でむしゃぶりついてくるんじゃないかな? えへへ」
「むしゃぶりつくって……?」
「秘密! えへへ。きっと祥太郎くん気に入ってくれるよーえへへ。楽しみー!」
「何でお前が楽しみなんだよ。ほら、帰るぞ」
「うん。えへへ」
「……あれ? うわぁ。誰だよゴミ箱にこんなチョコ捨てるやつは。なんて贅沢なやつだ!」
「……えへへ。そうだね」

こんか学園生活を送りたかったぜ……!

2

「えへへ。お邪魔しまーす」
「いらっしゃいましぇー。あ、そうだ日向子。ものはついでなんだけど、飯作ってくれー
  美味い飯が食いたいんだよー」
「んもー仕方ないなぁ祥太郎くんは! えへへ。いいよ。冷蔵庫の余り物で作るけど、いい?」
「おーサンキュー! んじゃ俺その間に風呂入っとくわ」
「ふぇ!?」
「ん? 何?」
「う、ううん! 何でもないよ! し、祥太郎くんがおおおお風呂入ってる間にパパっ! て
  作っとくから、す、好きなだけお風呂入ってて!」
「……? んじゃ飯よろしくなー」
「り、了解でありますよー!……行っちゃった。えへへ。
  も、もしかしてき、今日チョコのお返しで……!?
そ、そんな祥太郎くん! だ、ダメだよ心の準備が! で、でも祥太郎くんがどうしてもっていうなら、
  その、い……いよ?
えへへ。うわぁーうわぁーどうしよ!? 一応勝負下着だから、だ、大丈夫だよね?
えへ、えへへ。た、楽しみだよ。えへへ。
で、でもまずはご飯作らなくちゃ! よ、よーし頑張らなくちゃ! えへへ。
  えーと、まずは冷蔵庫には何が入ってる……あれ? このチョコ……確か帰り際にもらってた……」

 

「ふぁー暑ちぃー……あれ? 日向子?」
「んー? なあに?」
「何だいるなら返事してくれよ」
「えへへ。ごめんなさぁい。あ、ご飯ね、チャーハンだけどいい?」
「お、サンキュー。どれど……」
「ね、ね、美味しそうに出来てるでしょ?」
「な、なぁ日向子。チャーハンってこんな色してたっけ?」
「……そだよ?」
「そ、そうか。最近のチャーハンは赤いのか。そうかそうか」
「……食べたくないのなら、はっきり言ってよ」
「い、いや! わざわざ日向子に作ってもらったんだ!残さず食うよ!」
「……えへへ。嬉しいなぁ……ねぇ、祥太郎くん。今日のあの女、誰?」
「え、あ、えーと、委員長?」
「……仲、いいの?」
「ん、んー? ふ、普通かな?」
「普通……普通な子にチョコあげたりするかな?」
「わ、わかんないな、俺。で、でも日向子が作ってくれたチョコが一番美味いな!
  ひ、日向子は料理上手いもんな!」
「……そう?」
「おう! 最高だよ! 是非嫁にしたいくらいだよ!」
「……本当に? ほんとのほんとに?」
「あ、ああもちろん!」
「えへ、えへへ。うれしいなぁうれしいなぁ。えへへ」
「……な、なぁ日向子? お前顔色悪くないか……?」
「えへへ。ちょっと、手首切っただけだよぅ。大丈夫大丈夫!」
「無理すんなよ……手首?」
「えへ、えへへ。し、祥太郎くんがいけないんだよ? あ、あんな女と楽しそうに話してさ!
  わ、私の事無視した! 無視した! 無視した!
私を見てよ! あんな女より、私を見てよ! わ、私は祥太郎くんがいないと死んじゃうの!
  だからず、ずっと一緒にいてよ!」
「お、おい日向子、お前血が!」
「やだやだやだ! 祥太郎くん一緒にいてよ! さ、寒いよ祥太郎くん。
  わ、私のチョコだけ食べてよ……祥太郎」
「わかったからしゃべるな! あぁ、クソッ! 血が止まらないってやりすぎなんだよ!」
「えへ、えへへ。祥太郎……大好き。だ、誰にも渡さないから」
「もういいから、じっとしとけって! 死ぬんじゃねぇよ日向子!」
「えへ、えへへ。ね、ね、祥太郎。何で今日はバレンタインデーって言うか知ってる?」
「あ? 今は関係ないだろ!」
「今日はね……バレンタインさんが愛のために死んだ日なんだよ……悲しいね。えへへ」
「救急車呼んだからな! お前に死なれたら困るんだよ!」
「えへへ。う、うれしいなぁ」
「おい……起き……目……なん…クソッ……救急車…ひ……なこ…………日向子!」

そこで、私の意識は途絶えた。

2007/02/09 To be continued.....

 

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