調教一日目(後編)
「……ねえ、遼くん」
「……」
「遼くん?」
遼くんは答えない。
って言うか、激痛の余韻で、まだそれどころじゃないみたい。
でも、分かっていても、ボクは少しカチンと来た。
「遼くんっっ!! お返事はっっ!!?」
「はっ、はいっ!」
あわてて遼くんは、こっちを振り向く。
そう、それでいいの。
キミはそうやって、24時間ボクの事だけ考えていればいいの。
まったく、何度言っても分からないんだねキミは
「ごっ、ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!!」
とっさにボクの不機嫌な空気を読んだのか、こっちが何かを言い出す前に、ひたすら謝る遼くん。
そんな遼くんを見て、ボクは少しばかり安心した。
「……まあ、いいわ。そんなに急ぎすぎなくとも」
まだ初日なんだもんね? そういった反省点は、これからじっくり躾ていけばいいんだもんね。
そう、時間はまだまだあるんだもん。
そう思いながら、ボクは真っ赤になった遼くんのお尻をなでなでした。
「〜〜〜〜〜〜!!!」
遼くんの顔が激痛で歪む。
「あはっ? 痛いんだ遼くん。お尻やっぱり痛いんだ?」
「うんっ! 痛いっ、痛いからっ、さ、わ、ら、な、い、――あぎゃぁっ!!」
そんな叫びを無視して、ボクはその赤い山に、じんわりと爪を立てる。
「ぃぎぃぃぃ!!! やめっっ!! おねがっ いっ! あっ! あぁぁぁ!!!」
「んふふふふ……そっかぁ、やっぱ、痛いんだぁ。――ったく、仕方ないなぁ……」
ボクはおしめスタイルの遼くんを、そのままひっくり返し、うつ伏せにする。
後ろ手で縛られ、おむつスタイルのままひっくり返された遼くんは、お尻を後方に突き出し、
顎と両膝を支点に重心を支えるという、これまた淫らさ満点の格好になった。
……すごい、すごいよ遼くん……イヤらし過ぎて、気が遠くなりそうだよ……。
ボクは気を抜くと、つい彼に見惚れてしまいがちになる自分の瞳を、無理やり戻し、
「さぁて遼くん、次は何をして遊ぼうか」
「しっ、静香っ……」
んふふふ……怯えてる怯えてる。
ああ、また、見てるだけでイっちゃいそう……。
でもね、遼くん、もう安心していいよ。痛いのは、ここまでだから。
鞭の時間はもうおしまい。これから始まるのは、あまぁ〜い、あまぁ〜い飴の時間なんだから。
「ねえ、遼くん」
「なっ、なに?」
「遼くんは痛いのが好きじゃないんだよね?」
「……静香?」
「痛いのが嫌いなんだよね?」
「あ、う、うん」
「じゃあ、気持ちいいのは?」
「えっ?」
「気持ちいいのは、好き?」
「そっ、そりゃあ、痛いのよりは、好きだよ」
「……じゃあ、気持ちよくなりたい?」
「うっ、うん……」
「そっか。――本当にしょうがないなあ、遼くんは……じゃあ、痛いのはコレが最後だよ」
ボクは、遼くんのベッドの上に乗ると、彼のお尻のほうに回り込んだ。
眼前にそびえる、二つの赤い山。
それを、そっと手に取る。
「いっっ!!」
「……ああ、ごめんね遼くん、まだ痛いんだったね」
そう言いながらも、お尻から手を離す気は無い。
熱い。
まるで、肌の下にマグマが詰まっているようだ。
気が付けば、ボクは全く自然に、その丘に舌を這わせていたんだ。
――れろり。
「ああああああ!!!!!」
遼くんが悲鳴をあげる。
あれ、おかしいな。遼くんたら何を騒いでるんだろう?
折角ボクが、お口を使って、遼くんの痛いところを消毒してあげてるのに。
「どうしたの遼くん?」
「しっ、沁みるっ! 静香っ! それ沁みるよぉっ!」
「痛いの?」
「痛いっ! 痛いよっ!!」
「遼くん、わがまま言わないの。キチンと消毒しないと、後で“痔”になっても知らないよ」
「でっ、でもっ、終わりだって! 痛いのは終わりだって言ったじゃないかぁ!?」
「大丈夫だよっ。あと5分も続けてりゃあ、気持ち良くなってくるさ」
「ごっ、ごふんっ!?」
「あああ、もう、うるさいなぁ遼くんはっ!! 男の癖に、そんなにキャンキャン騒ぐんだったら、
騒げないようにしてやるっ!!」
ボクは、ベッドから飛び降りて、ギャグボールを捜したけど、
次の瞬間、もっとイイ事を思いついたんだぁ……。
――じゅるる。
ボクのエッチなおダシで、もうじゅくじゅくになってる、このショーツ。
それを、湿った音と一緒に脱ぎ捨てる。
せいぜい、遼くんの眼に、ボクの姿がいやらしく映るように。
「しっ、しず……んがぐぐ!!」
そして、彼の口の中に、その濡れた下着を無理やり捻じ込む。
「どう遼くん、ボクの特製スープのお味は?」
「んんんん……」
「力いっぱい噛んで、飲み込むんだ……」
そう言いながら、ボクが遼くんの頭をなでなでしてあげた瞬間、
彼が、ごくりと“おダシ”を飲み込むのが見えたんだ。
「おいしい……?」
そして、そう訊いたボクに、お尻と同じくらい顔を真っ赤にしながら、遼くんは、
こくりと恥かしげに頷いたんだ。
ああああああああ!!!!!!!
遼くんが! 遼くんが! 遼くんが!!!
おいしいって!!!!
ボクの“おダシ”、おいしいってぇぇぇぇええええ!!!!
有頂天っていうのは、こういう時に使う言葉なんだね!!
ボクはまさしく、天にも昇らんばかりの心地で、遼くんをもう一度おむつスタイルに戻した。
だって、さっきのポーズだと、遼くんがボクの“おダシ”を味わってくれてる表情が、
全く見えないからねっ!!
その代わり、もう意地悪はおしまい。
次はボクが、今度こそ、キミを本当に気持ちよくしてあげるっ!!
「遼くん、ありがと……。キミがそうやって味わってくれて、ボク、本当に嬉しいよ」
そう言いながら、ボクは、真っ赤に腫れ上がったお尻ではなく、
その間の溝にあるすぼまりに舌を伸ばしたんだ。
「んぐぅっ!」
あはっ、遼くんがびくってなってる。
ボクはそんな遼くんの反応が嬉しかったので、なおもちろちろと、舌先でアナルをほじくる。
無論、舌だけじゃないよ、特別サービスの一環として、
そのアナルから伸びたローターのコードの先にあるリモコン。そのつまみを最強にしてあげたんだ。
「んががががが!!!」
いきなりの刺激に、遼くんが激しくもがき始める。
でも、逃っがさないよぉん。
だって、ボクは決めたんだもん。これから遼くんを徹底的に感じさせてあげるって。
んふふふ、覚悟してね。それに、これはキミが言ったんだよぉ。気持ちいいのが好きだって。
そうだよねぇ?
「遼くん、気持ちいい?」
「んがぐぅぅ!!」
「気持ちよかったら、頷いて」
遼くんは、半ば必死になって首を縦に振る。
「んふふふ……そう、気持ちいいんだ……」
そう言いながらも、ボクは眼前の遼くんのとろとろになった表情に、眼を奪われていたんだ……。
うわぁぁぁ……すごぉい。
気持ちよさそうになってる遼くんの顔って、こんなに、イヤらしいんだぁ……。
いいよ、遼くん、感じちゃってさ。
苦痛の後の快感。
快感の後の苦痛。
これを何十回、何百回と繰り返すと、人は自然とその虜になる。
快感だけじゃない。その苦痛に対してすらも、その対象は、耐えがたい渇きに似た
常習性を憶える事になる。まるで麻薬常用者が常に麻薬を欲するように、
それらの刺激無しの社会生活を、もはや送れなくなる。
――つまり、これこそが、世間一般に言われるところの……調教。
とまあ、これがボクが一番最初に勉強した、調教の知識の基礎の基礎。
要は反復。
スポーツの練習と同じ。何度も何度も繰り返し努力すれば、それは必ず報いがある。
ボクは、性科学書の研究序文を読んで、むしろ安心しながらそう思った。
だって、スポーツと名の付くもので、およそボクの苦手な分野は無いからねっ。
でも、違う。
反復とか、努力とか、そんな次元の話じゃない。
だって、だって、一番冷静にならなきゃだめなはずのボクが、全然自分を抑え切れないんだもん!!
ああああああ、おいしい!!
遼くんのアナル、超おいしいよぉ!!
ボクは、何かに憑かれたように、アナルの奥深くに差し込まれたローターのコードを、
ぐいっと引っ張った。
「んんんんんんん!!!!!!」
――ぶぶぶぶぶぶ、ぶぶぶぶぶぶぶぶ……。
やや、小ぶりなローターが、遼くんの菊座から転がり落ちる。
ちょっと、茶色い物体が付着した、そのローターは、もうボクには小さ過ぎて、
一人遊びにすら使わなくなった一品。
んふふふ……大丈夫だよぉ遼くん。すぐにキミのここも拡張してあげる。
こんな“子供だまし”じゃ、満足出来ない身体に、すぐにしてあげるからねえ。
それと、それと、あああああ、このローターについた遼くんの、ああああ!!
何て、おいしそうなんだろう!
いや、いや、いや、いや、おちつけ、おちつくんだ、ボクっ!
分かってる、このローターに付着してるチョコレート色の物体が一体何なのか、
そんな事は百も承知。
でも、でもぉ……ああ、だめぇ、手が止まらないっ!!
――ぱくっ!
……ああああああああああ、おいしい、おいしいよぉぉぉぉ!!!!
……死んじゃう……こんなにおいしいの食べたら……ボク、死んじゃうよぉぉぉ……!
――ああああ、いや、危なかったぁ! このまま意識が飛んじゃうところだったよ。
んふふふ、そうだよねえ、これからもっともっとおいしい、メインディッシュが
待ってるっていうのに、オードブルのチョコレートのおいしさで眼を回すバカもいないよねえ?
ボクは名残惜しげに、口の中のローターを取り出すと、おもむろに、遼くんのオナホールを
睾丸で固定しているベルトを外し始めた。
オナホールの中は、もうすごい事になってた。
真っ白い粘液が、それこそミルクの缶を引っくり返したようにどぼどぼと、こぼれ落ちた。
あああ!! 勿体無い!!
ボクは、オナホールから流れ出る遼くんのスペルマを、ごくごくと、一気に喉に流し込んだ。
おいしぃぃぃ!!!!
さっきのチョコレートもおいしかったけど、このミルクはそれ以上だよぉぉ!!
でも、ああ、もう無くなっちゃう! さっきベッドに流れ出ちゃった分が、ああ勿体無い……!!
いや、いや、どっちにしろ、こんな程度の量なんかじゃ足りるワケはないんだ!
ボクは彼のペニスにむしゃぶりついた。この甘露を一滴でも多く貪り尽くすために。
「んんんんんん!!!!、んんんんんんん!!!!!!」
その時、ボクははっとなった。
遼くんのペニスの硬度が、若干ながら軟らかくなっている気がしたんだ。
そうだ。こんなところで、遼くんの大事なミルクを無駄遣いさせるわけにはいかない。
ボクにとっての今宵一番のご馳走。調教一日目の記念すべきメインディッシュ。
すなわち、遼くんの童貞。
それこそが、この、ああ、この……!!!
いやいやいや、待てボク! クールだ。クールになれ。“計画”を忘れちゃだめだっ!!
「遼くん」
ボクは、彼のペニスから口を離すと、息も絶え絶えになっている遼くんの口から
ショーツを引き抜いた。
「今から、ボクたちは一つになる。いいかい?」
「……」
遼くんは、頬を真っ赤に染めて、眼を逸らし、静かに頷いた。
ボクはロープをほどき、手錠と足枷を外し、彼を完全に解放すると、遼くんの隣に横たわった。
「静香……」
「いいよ、遼くん」
その瞬間、今までの遼くんとボクの立場が、完全に入れ替わった。
遼くんは正上位の体勢で、獣のようにボクに襲い掛かり、最後の体力でボクの股間に、
自分のペニスをあてがおうとする。が、童貞の哀しさ、何度も上手くいかずに
ペニスが膣孔を上滑りしてしまう。
でも、でも、その上滑りに焦らされる感覚すら、気持ちいいぃぃぃ!!!
「あああっ!! 落ち着いてっ! 落ち着いてよっ 遼くんっ、もっと下を見て、そうそう、
そのまま――あああっ!!!」
はいった。
そのまま、腰を振り続ける遼くん。
ボクは、両足を遼くんの腰に回して、がっちりロックして……あああああっ、気持ちいいっ!!
ボクっ、ボクっ、遼くんの腰の一振りごとにイっちゃってるよぉぉ!!!
何も、何も、何も考えられないっ!!!
あああああっ、遼くん!! 愛してる!! あいしてるよぉぉぉ!!!!
「あはっ!! だめだよっ!! 遼くん、そんな、うんっ! 程度の腰使いじゃ、ひぐうぅっ!!
全然気持ちよくなんか……
あああああ!! もっと、もっと、ひふっ! ひゃひぃぃぃ!
そぉ、そぉやって!! んんんん!!!」
ああ、遼くん、気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!
気持ちいい!! 気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!気持ちいい!!
気持ちいい!!きも――
「――かはっ!! ダメだよ遼くん!! そんなんじゃ……くふうううっ!!
全然、先輩に、かなわないよぉぉぉ!!
……ぁぁぁぁぁ……せんぱいの、おちんちんは、ふぐっ!!
もっともっと、気持ちよくてぁぁぁぁ……もっともっと、太くて、堅くて、
おおきく――あがぁぁっ!!」
「――何だと……何だと静香ぁ!!」
あはっ、遼くんの顔色が変わったぁっ!!
そう!! そうだよっ!! 遼くん、その眼だよっ!!
もっともっと嫉妬してぇっ!! もっともっと、もっともっと怒り狂ってぇ!!
「オレが、オレが、キャプテンに……黒崎さんに負けてるってのかぁっっ!!」
「だめだよぉぉ! あはっ! 負けちゃってるよぉ遼くんっ!! このままじゃボクっ、
先輩の事忘れられないよぉぉ!! ……くぅぅぅ……遼くんが、ひはっっ!!
遼くんがへたくそだから……あああああああ!!! せんぱいのことわすれられないよぉぉぉ!!」
ああっ、遼くん!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!
愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!愛してる!あい……
「やめろぉっ! キャプテンの、黒崎の名前なんか出すんじゃねえ!!
いま、オマエとやってるのは、アイツじゃなくてオレなんだっ! この柴田遼太郎なんだぁっ!!」
……そう、それでいいんだよ遼くん……。
絆っていうのは……一方通行じゃダメなんだ……。
ボクがキミに近付くメスネコに嫉妬するのと同じように、キミもボクの周りの男に
嫉妬しなくちゃいけないんだ……。
そしてキミの瞳に、その嫉妬の光が無くならない限り、ああああ!!
キミは永久に、永遠にボクのものなんだ!! |