INDEX > SS > 修羅場の神

修羅場の神



1

人間なんて簡単に死ぬもんだと思う。
きっかけも簡単、たった一つの言葉……

「A男とB美、最近仲が良いな」

そんな言葉。
それが全ての始まりにして、すべての元凶。
それは偶然聞こえた誰かの独り言だった。
誰が喋ったのかはわからない、印象にも残らない。
顔も、声も、体格も、全て思い出せない。
だけどその言葉だけはしっかりと私に刻み込まれていた。
そこから先はもう何も無い。
最初は、まさか……と思った。
次に、もしや……と思った。
証拠は無い、根拠も無い、それでももう止まらない。
思考は思考を呼び、次に疑惑を産み出し、殺意を育て、狂気を完成させた。
いったいどれだけ経ったのだろうか?
最後にこんなにも明確な思考をしてから。
いったいあとどれくらいあるのだろうか?
こんなにも明確な思考をしていられる時間は。

「良い魂になったな」

あれはきっと神の声。
決して抗えない、決して逆らえない。
全てが神の思惑通り。
この世に現れた時点でもう詰んでいる。
逃げられない、避けられない、まるで運命。

「その魂……貰った」

心臓から突き出た一本の棒。
たぶんそれは神の槍。
神様にお会いできた事を喜ぶべきか、それとも自分の死を悲しむべきか。
そのどちらでもなく、私は人間なんて簡単に死ぬもんだと思った。
人間なんて簡単に殺されるもんだと思った。

2007/01/24 完結

 

inserted by FC2 system