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ベッドの上から



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 休日の午後。二段ベットの上で横になったまま、文庫本に目をやる。
  ベッドの下から小学生の弟が連れてきた友達とワイワイやっている声が聞こえてくる。
相手は二人の女の子。
  一人は隣の住んでいる子。同い年なので物心ついた頃から一緒に遊んでいるので自分にとっても
妹のような子だ。もう一人は――今まで見たことのない顔だ。
この間女の子が転校してきたからと言ってたから多分その子だろう。
  やがてベッドの下からは「私がまー君と結婚するの」とやら可愛らしげな話題で盛んになっていた。
  ああ、こんな事が僕も昔に……経験してないな……
  そんな無駄な感慨にふけっていると下からの言い争いはケンカじみてきた。
ここは年長者として二人を嗜めるべきだろうと思い、上半身をおこし、ベッドの下へ顔をやった。
  声をかけようと思った時には既に二人の少女は既に取っ組み合いのケンカとなっていた。
小さな少女の体の動きは猫科の肉食動物の動きには見えた。
ついでに助けを求める弟の視線がこちらに飛んでくる。
「ふ、二人ともケンカはよくないよ」ようやく出てきた声は自分でも情けないぐらい上擦っていた――
ようするに小学生の女の子の気迫にびびっているのだ。しかも自分に向かってきていない気迫に。
「お兄さんは黙ってて!!」二人の少女は声をそろえてこちらに向かって叫ぶ。
間違いない、二人の体こそ小さいものの大型肉食動物の気迫だ。気を抜けば喉元を食いちぎられる。
  携帯オーディオをつけボリュームを最大にして布団に潜り込む。
こうしていれば少なくとも自分にはこれ以上危害は及んでこない。
  許せ弟よ。情けない男となじりたくばなじれ。
兄は所詮お前より少しばかり早く生まれてきただけに過ぎない一人男に過ぎないのだ。

2007/01/04 完結

 

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