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修羅サンタ 〜黒いサンタ編〜

第1回 第2回                
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運命の交差点編 三択の二択編 二人のサンタクロース編        
美紗の狂愛編 最後のサンタクロース編        
Grunnlegger編 起 老章 前編          


1

「オスロ発、香港経由成田着サンタ航空560便到着致しました。繰り返します……」

ゴールデンウィークも終わり、海外で休暇を満喫した帰省客で空港を満杯にしていた5月のある日。
ノルウェー発の旅客便から、一人の女性が日本の大地に降り立った。
黒いブーツに黒いミニスカート、黒いコートを着て
漆黒の黒い髪を揺らしながら周りを威圧するかの空気を醸しながら歩いた。

すれ違う人々の好奇や羨望の視線を気にする素振りも見せず、女性は空港を出て、
客待ちのタクシーに乗り込み

「お客さん、どちらまで行かれます?」
「ここまで」

懐から一枚の地図を取り出し、それを運転手に渡した。

「ふむふむ……分かった。もし急ぎなら首都高使うかい?」
「……そうね、早く行きたいから使って」
「あいよ」

揺られる車内で女性は懐から一枚の手紙を取り出した。
「推薦状」と書かれた手紙の中には
笑ってピースしている三択と、驚いた顔の卓也が写っている2ショット写真一枚と
三択が書いた添え状が同封されていた。
その手紙をじっと見ていた女性の表情は、複雑な表情をしていたがやがて目を閉じ

三択……事と次第によっては首根っこ捕まえて協会本部に連れ戻すから!!




「……であるからして、ここの問題は答えがこうなります。で……」
「うう――――………………」

同時刻の放課後、美紗は1人教室で居残り授業を受けさせられていた。
成績が芳しくなく、その上に素行不良だったためやむを得ないが
本人は―――

あのクソババア!!!
教師という立場を利用して居残り授業なんか指示しやがって!!
大体こんなことしている場合じゃないわ!!早くお兄ちゃんを探し出さないとアイツの毒牙に―――

スパンッ!!!

「痛っ!!!」
「塚本さん!!授業に集中しなさい!!」

出欠簿で思いっきり頭を引っ叩かれた美紗は呻きながら頭を押え

「塚本さん、あなた自分の成績知ってる?体育以外全部「1」よ!!
このままじゃ留年しちゃうわよ!!三択先生もそれを心配して私に居残り授業を
してやって下さいってお願いしてきたのよ。三択先生に感謝しなさい」

感謝だあ〜〜?死んだってするもんか!!!
絶対アイツは私のことなんか心配しないわ。
この居残り授業だって私を教室に足止めして、その間に何かするつもりね!!
ともかくこうなったら、こんなくだらない居残り授業なんかさっさと終わらせて―――

「よーーし、まだ時間は大丈夫ね。今日はトコトンやるわよ!!」

うわーーーーーーん!!!!




「ねえ三択さん。俺を何処に連れて行くのですか?」
「もうちょっとよ」

同じ頃、三択に放課後に呼ばれた卓也は「大事な話がある」と言われて車に乗り込んでいた。
ただ、今日の三択は朝から様子がおかしい。
授業の時も上の空、しかも終始ブツブツと呟き
こうやって車に一緒に乗ってても全然話し掛けてこない。
心做しか緊張しているようにも見えるが……

あのいつもマイペースで、ゴーイングマイウェイで軽口ばかり言っている三択さんが緊張?
だとしたら向かってる先には一体何が……

車で移動すること数十分。着いた先は―――

「着いたわよ」
「ここは……」

そこは卓也が住む街の郊外に静かに佇む、巨大なモミの木が植えてある丘だった。

「うわ――、懐かしいな……。小学校の頃此処に遠足に来たっけ。で、ここに何の用が―――」
「卓也、聞いて」

卓也の言葉を遮り、三択は何時に無く真剣な表情で卓也に語った。

「卓也……貴方はこれからある人と会うから。その人と会うことによって貴方の
未来の可能性が1つ増えるわ。ただしその未来を「是」とするか「非」とするかは
貴方自身が決めて……」
「え?え?ちょっと待ってよ!!突然そんなこと言われても分かんないよ!!」
「実は―――」
「それ以上話す必要は無いわ」

モミの木の陰から凛とした声が聞こえたので見てみると、一人の女性がサングラスを取り、
こちらに向かって歩いてきた。
卓也はその女性のつり上がった目を見た瞬間何か言いようのない、寒気みたいなものを感じた。

こ、怖ええ……、この人の目を見ていると、命を抜き取られそうだ

「……ひ、久しぶりね、黒百合……あはは」
「やっと逢えたわね……三択!!」

ズカズカと大股で三択に近付いた黒百合は、ガシッ、と三択の顎を摘んで

「一体全体どういうつもり?!去年のクリスマスから協会に無断で休んで、
しかもいきなり手紙を寄こしてきたと思ったらこんな極東の島国で教師をしてて、
「来て♪」だあ〜〜?ふざけるのもいい加減にしな!!アンタは役職者なのよ!!
好き勝手するな!!おかげで私までとばっちりを喰らったのよ!!返答如何では……」

スッ、と黒百合の目が細められ、顎を摘んでいた手が今度は首を鷲掴みにし、
抑制の無い、極めて機械的な声で

「極東アジア方面部部長 三択・ロース 410号。黒サンタの権限を行使し、拘束、連行します」
「ぐ、ぐるじい……は、はなぢをぎげ……がはっ!!」

見る見る三択の顔色が青白くなっていっても、抵抗しても一向に手を緩める気配の無い黒百合は、
このまま三択をオトそうと更に手に力を入れた瞬間

「……邪魔する気?」

三択の首を締め上げていた腕に、卓也が掴みかかっていた

「事情はよく分かりませんが、先ず話を聞いてからでも遅くはないでしょ?」
「…………」

パッ

「ガハッ……ゴホッ、ゴホッ……」
「三択さん大丈夫ですか?……え?」

先程まで三択を掴んでいた黒百合が一瞬、卓也の視界から消えた。
だが次の瞬間―――

「がっ!!!!!」

地面スレスレまでしゃがんだ黒百合は、地面を蹴り上げると同時に卓也の鳩尾に
拳をめり込ませていた。

「邪魔するなら……殺す」

数メートル先に吹き飛ばされ、倒れている卓也に近づき、髪の毛を掴み上げ

「手紙に書いてあった「候補者」か……たかが「候補者」風情が邪魔するなんて……」
「うう……」
「ゴホゴホッ……黒百合、ダメ!!」

私の卓也が……私の卓也が……このままじゃ……
卓也を失うなんて……!!!

その時、三択は思い出した。今回黒百合を呼んだ理由
黒百合に卓也を認めさせる物……

「……く、黒百合――――!!!!卓也の……その男の子の右腕を見て!!!」

今まさに卓也を手に掛けようとしていた黒百合は、三択の言葉に僅かに反応して
三択を見て

……腕?腕が何だっていうのよ。それともこいつを守るために咄嗟に言ったの?
健気ねーー。バリバリのキャリアウーマンだったアンタがたった一人の男に必死になって……
だけどね…………

左手で卓也の髪の毛をつかんだまま、右手で卓也の顔面を殴りつける―――

「ダメ――――――――!!!!」

だがそうなる寸前、黒百合の拳が卓也の顔面の手前で止まった。
目は新円を描いているかのように見開き、驚愕の表情をしていた。
その視線は、卓也が無意識でそうしたんだろう、黒百合の卓也の髪の毛を掴んでいる
左手を卓也が右手で掴んでいる、その右手に嵌めている物だった。

こ、これは!!!!




「三択、説明してもらおうか」
「…………」

気を失っている卓也の頭を三択は膝の上に乗せ、優しく撫でていた。
その様子を見ながら捲くし立てている黒百合は、明らかに狼狽していた。

「何故、何故この男が「サンタの約束」を付けているんだ?いや、「候補者」だから嵌めてても
おかしくはない。だが、それにしても純粋な銀色なんて……
しかも右頬には、既にお前の「認定」の証も……」

「認定」の証―――
そう、それは十数年前、まだ卓也が小さい頃に三択が右頬にした「キスマーク」のことだった。
当時の三択はまだ見習いだったため、ただ単に「可愛かったからキスしただけ」だったのだが、
本来その行為はもっと重い意味があるのだが―――
黒百合の目にははっきりと見えた。卓也の右頬にうっすらと写っているキスマークが……

「……十数年前、私がプレゼントしたの。「認定」の証もその時―――」
「!!!……じゅ、十数年間嵌めてて銀色を保つとは……
だったら何で手紙にそのことを書かなかった?」
「……黒百合に下手に先入観を与えたくなかったの。腕輪の色じゃない。
「卓也」その人を見て欲しかったから……」

三択がここまで入れ込むなんて……信じられないわ。
私の知っている三択は、どんな仕事も完璧にこなし、人と組むことも「弟子」を取る事もしない
自ら壁を作っている、孤独を愛する奴だったのに……

しかし、今黒百合の視線の先に居るのは、自分のせいで傷ついた卓也を優しく介抱している
三択の姿だった。

だけど……

「話は大体理解した。コイツが唯の「候補者」じゃないことや、私を呼んだのもな。
だが私の「認定」の証は渡せない」
「え?!ど、どうして?」

先程までの殺気を放っていた黒百合は、今は静かに、だが値踏みするような目で

「簡単なことだ。この卓也という名の男、資格は十分過ぎるほどあるようだが私はこの男のことを
よく知らない。「認定」の証はもう少しこの男のことを知ってからだ。
とりあえず、協会には私から上手く連絡してやる」
「え?それって……」

黒百合はそれ以上なにも言わず、静かに立ち去った。
ただ最後に

「ところで、どうして唇にも「認定」の証があるんだ?一つでいいのに……
それと男が起きたら「すまなかった」と謝っておいてくれ」





「ただいまーー。ねえねえお母さん、お兄ちゃん帰ってきた?」
「お兄ちゃん?まだ帰ってきてないわよ」
「そう……」

時間は7時。普段なら道草しても6時には家にいるはずの卓也が帰ってこない……
美紗の胸は不安と怒りで渦巻いていた。

お兄ちゃん……お兄ちゃん……
今何処にいるの?遊んでいるの?……早く帰ってきて……
電話掛けても出ないなんて……一体……
も、もしかして!!!!

美紗は一人の人物を思い浮かんだ。
無駄にデカい胸とお尻
金髪を振り回し、いつもヘラヘラと軽口ばかり叩き
卓也を手に入れようと虎視眈々と狙う自称サンタ……

ああ―――……、そうだ、そうだったわね。
私としたことが一番可能性が高いパターンを忘れるなんて……
奴が実力行使で来たなら、私もやってやる!!!!

キュッ

頭には「死」と書かれた鉢巻を巻き
右手に木刀、左手に台所にあった出刃包丁を握り締め
背中に背負ったリュックサックの中には、出所が怪しい危険物を入れ、戦闘準備が完了した。

お兄ちゃん、もう少しの辛抱だから。今私が助けるからね!!!

だが、美紗が部屋を出て、階段を下りた時―――

いっ!!イタタタタ!!……この額の疼き……奴ね。
でも、あれ?ということは……コッチに向かって来てるの??

その時、玄関先の道路で車が止まる音がしたかと思ったら、突然勢いよく玄関が開き、
家に入ってきたのは―――

「やっぱりアンタね。どの面下げてこの家に来て―――」

だが美紗の口からはそれ以上言葉が続かなかった。
三択が背負っている人物―――卓也を視認した瞬間、今まで胸に渦巻いていた不安や怒りは
綺麗さっぱり消えた。だが、どうも様子がおかしい。
目を閉じ、一言も喋らず、ぐったりとしている。

これは何かあった―――
美紗の勘がそう囁いた

だが―――――

「お兄ちゃん?ねえどうしちゃったの?お兄ちゃ―――」
「邪魔よ、退いて!!!!!!」

ドンッ!!!

「きゃ!!!!」

卓也の顔に触ろうとした美紗を三択は突き飛ばし、脇目も振らずに二階の卓也の部屋へ入っていった。
突き飛ばされた美紗は、暫く茫然自失となっていたが、やがて眦を吊り上げ、
リュックサックを下ろし、右手に握っていた木刀に力を込め、その瞳に怒りと憎しみの炎を燃やし、
ゆっくりと立ち上がり―――

「てめえーーーーーーー!!!!!」

殺意を漲らせ一気に階段を駆け上がり、卓也の部屋へ乗り込んだ美紗だったが、部屋に居る
卓也を見た瞬間全身の動きが止まった。

「お、お、お、お兄ちゃん?どうしちゃったの?もうベットに寝ちゃって……。や、やだなあ、
まだ寝るには早いよ??ねえ……お兄ちゃん?」

フラフラと、卓也に近付く美紗。だが、傍らに居た三択が

「ちょっと妹!!卓也のケガに障るから部屋から出て行って!!」

ビクッ!!

美紗の体が一瞬揺れた。

この女は何を言ってるんだ?出て行け?
そもそも何でこの女は此処に居るんだ?
……はは、何を言ってるんだ、塚本美紗。全て分かりきってることじゃないか。

卓也がケガしたのも
車に轢かれたのも
小さい頃、傷物にされたのも

全て全て全て全て全て全て全て全てて全て全てて全て全て
全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て……

 

全て!!!

膝を付いて、寝ている卓也の頭を優しく撫でていた三択の胸倉を思いっきり掴んで

「ちょっとアンタ!!お兄ちゃんに何したの!!何でケガなんてしたの!!どうせアンタが
原因なんでしょ!!もしも……もしもお兄ちゃんに何かあったら……」
「……………」
「黙ってないで何か言ったらどうなの?!」

美紗は沈黙している三択の顔面にヘッドバットでもしてやろうと、腕に力を込めた。だが―――

ポタッ、ポタッ……

「ちょっと、アンタ……泣いてるの?」

胸倉を掴んでいる美紗の手に、三択の目から流れた涙が落ちてきた。

「うっ……、うっ……、ぐすっ、わ、私だって……こうなるなんて……」
「泣くぐらいだったら……最初からするな!!!!」

更に怒った美紗は、大きく振りかぶった木刀を泣きじゃくっている三択に叩き込もうとした。

が、そこへ――――

「……美紗……」
「!!お兄ちゃん、気が付いたの?!」

ベットで寝ていた卓也の苦しそうな呼びかけに、美紗は掴んでいた三択を放り投げ、
卓也の傍らに寄り添い

「お兄ちゃん!!ケガは大丈夫?何処か痛むの?ちょっと待っててね、
今元凶を地上から消すから―――」
「美紗、三択さんと二人きりで話しがしたいんだ。悪いけど暫く席を外してくれないか?」
「な、何言ってるの?お兄ちゃんがこうなったのはアイツが原因でしょ!!
そんな奴と話なんて―――」

床にへたり込んでいる三択を指差して睨んだが、卓也は

「美紗、これ以上俺を困らせないでくれ。そんなに聞き分けの無いこと言うと
嫌いになっちゃうから……」
「お兄ちゃん……そんな……」

暫くの沈黙ののち、俯いていた美紗が顔を上げて

「……分かった。お兄ちゃんがそう言うなら。だけど!!」

手に持った木刀を三択に向け

「アンタ!!お兄ちゃんに変な事したら挽肉にして豚に食わせるからね!!」

バタン!!

部屋から出た美紗は少し寂しそうな表情で卓也の扉を見て

お兄ちゃんを裏切ることはしないから、聞き耳は立てないけど……
三択!!自分の仕出かしたことを考えろ!!
よーーーく覚えておくんだな!!





「何か一階で凄い音がしたような……まあいいや。三択さん、こっちに来て下さい」
「う…………ん」

床にへたり込んでいた三択は、ゆっくりと立ち上がり、卓也の傍にしゃがみ込んで

「それじゃ三択さん、詳しく話してもらえますか?彼女の正体を……、それに「候補者」って……」
「…………順を追って話すわ。実は…………」

三択は訥々と話した。

彼女の正体……
彼女の来日の目的……
「候補者」という言葉の意味……
「サンタの約束」と呼ばれた腕輪の正体……
そして、三択が話した「未来の可能性」という言葉の意味……

三択が話したことは、どれ1つ取っても卓也の予想だにしなかったことばかりで、
その衝撃は計り知れなかったがあえて顔には出さず、静かに聴くことに専念した。





「…………と、言う訳。……あまり驚かないのね」
「というか……理解するので精一杯ですよ」

しかし……凄いことになったな……
正直言って自分の中でまだ理解は出来てないけど、それは追々考えていけばいいことだし……
どうなるか分からないけど、このチャンスを生かすにしても殺すにしても
悔いの残らないようにしよう……

あれこれ考えていたら、三択が思い詰めた表情で

「…………ねえ、恨んでいいんだよ」
「え?」
「本当は、私のこと恨んでんでしょ?「面倒ごとに巻き込みやがって」とか思ってんでしょ?
いいの、分かってるから。皆々そうだったわ。表面上は良い顔していても、裏では罵詈雑言の嵐……」
「ち、ちょっと落ち着いて……」
「あの時だってそうよ!!遺産相続した時、顔も名前も知らない自称親戚が砂糖に群がる蟻みたいに
集まってきて、やれ遺産はいくらだの、やれお父さんに貸した借金を返せだの、
金、金、金ばかり!!!私のことなんて誰も―――」
「三択さん!!!!」

一瞬何が起きたのか、三択は理解出来なかった。

自分がパニックになった瞬間、ベットにいた卓也が飛び出してきて……

 

わ、私……抱きしめられてる……

ぽ〜〜っとしていたら、卓也が三択の背中をポンポンと叩き

「落ち着きましたか?」
「は、はひ」

イヤーー!!声が裏返っちゃったよ!!

「三択さん、俺は三択さんのことを恨んではいませんよ」
「え?……うそ……うそよ!!」
「嘘なもんですか。まあ確かに謂れのない攻撃は受けましたけど、それは別に三択さんが
悪いわけじゃないですか」
「卓也……」

三択の耳元で話し掛ける卓也の言葉……
その言葉一つ一つを聞くたびに心の奥底に封印していた、全ての人に対しての疑心暗鬼が
少しずつ薄らいでいくのを感じた

「だから三択さんは俺のことでそんなに罪悪感を感じないで下さい。俺の知っている三択さんは、
何時も明るく朗らかで、人生前向きに生きている女性ですよ」

違う、違うわ!!卓也が知っている何時も明るく朗らかで、人生前向きに生きているその三択は、
醜い心を覆い隠す為に作った仮の姿に過ぎないわ。その実、本性は……いや、やめよう。

三択は、卓也をギュッと抱きしめ静かに、静かに泣いた。

「…………うっ…………うっ、うっ…………ぐすっ」

 

卓也……貴方が居れば、何時か私も心から笑うことが出来るかも……

 

修羅サンタ「黒いサンタ編」     完

2007/05/16 完結

 

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