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修羅サンタ

第1回 第2回                
正月編 バトルチョコ編 白い日編 トナカイ恩返し編 黒いサンタ編 6月の花嫁編 水面に映る花火編 外伝 砂浜の砂時計編 壇上の決闘編
運命の交差点編 三択の二択編 二人のサンタクロース編        
美紗の狂愛編 最後のサンタクロース編        
Grunnlegger編 起 老章 前編          


1

12月24日

今宵はクリスマス・イブ
街中にクリスマスソングが流れ、ケーキを買っていくお父さんが足早に帰る、
年に一度の記念日

子供達はサンタのプレゼントを待ちながら夢を見ている、
そんな奇跡がバーゲンセールで売られている日に、一人のサンタがある街に到着した。

「ふーっ、間に合った。飛行機の乗り継ぎしても半日も掛かっちゃったわ」

彼女の名は
「三択ロース410号」(19歳 処女)
正真正銘本物のサンタだ。ただしまだ半人前だったが。

あ〜あ、私も自家用ソリがあればこんな苦労もしなくていいんだけどな〜〜。
レンタルは高いし、何で仮免の時は自腹でプレゼント配達しなきゃいけないのよ!!
……愚痴っても仕方ない、免許を取るまではガマンガマン。

彼女には目的があった。ちょうど一年前のクリスマスの日にある少年にプレゼントを届けた。

一目惚れだった。

まだ小学生の高学年ぐらいだろうか、その少年に三択はあろうことか心を奪われてしまったのだ。

だからこそ飛行機を乗り継ぎしてでも三択ははるばる日本まで来たのだ。
年に一度だけ、この日にしか逢えないから……。

「懐かしいわ……、別段変わってないわね。あの子元気にしていたかしら」

目的の少年の家に到着した三択は懐かしさに浸りながら、ゆっくりと家の周りを見渡し、
中の様子を伺った。

……どうやら全員寝静まったようね。じゃ、始めますか。

庭に侵入した三択は鳶職も真っ青なテクニックでスルスルと壁を登り、
あっという間に二階に上がった。だが――

失敗した……。ミニスカートのサンタ服なんて着てくるんじゃなかったわ。
これじゃ足が寒い上にショーツ丸見えじゃない!!……まあ誰も見ないけど。

二階のベランダに登った三択は窓の前に立つと、何やら袋をごそごそと探し、
あるものを取り出した。

えーー……っと、このテープを此処に貼って……よし。
で、取り出したるはこのハンマーで、こつんと叩けば……。

カチャン

よし、成功。鍵を外して、おっじゃましま〜〜す。

泥棒も感心するほどの早業で鍵を開けた三択はすべりこむように部屋へ入った。
そこはいかにも男の子の部屋らしくバットやグローブがあり、
クリスマスツリーが暗闇の中ネオンを輝かせていた。

そんな部屋のベットに一人の男の子が寝ていた。

「むにゃ………」
「お久しぶり。元気にしてた?……って寝てるか。………かわいい」

暫らく少年の顔を眺めていたら、枕元の靴下と一緒に手紙があった。宛名は……

「さんたさんえ」
「え?!私に手紙?……嬉しい……」

早速手紙を読んでみると

「さんたさん。一年かんいい子にしてました。てすとも100てんとりました。
やきゅうはほーむらんをうちました。だからぷれぜんとください。おながいします。

4の3  つかはらたくや」

つたない字ながらも一生懸命書いた手紙に三択は込み上げる思いが止められなかった。

「ぐすっ……うんうん。いい子にしていたのは知っているから。
よ〜〜し、お姉ちゃん大奮発しちゃうよ。まずは……」

三択は持ってきた袋の中に手を入れた。すると手には何やら物の感触が触れ、取り出した。

「ふ〜ん、今欲しいのはプラモデルか。じゃ、まずはこれと、次は……」

出したプラモデルを枕元にそっと置き、次にポケットから銀の腕輪を取り出し、少年の腕に嵌めた。

「この腕輪はね……お守り。悪い虫から守ってくれるわ。大事にしてね。ちゅっ♪」

頬に優しくキスをし、立ち去ろうとしたその時ベットの中から

「う………ん、お兄ちゃん大好き……」

三択の動きが止まった。見る見る眉毛が吊り上がり、眉間に皺を寄せた。
今……ベットの中から……

おそるおそるベットの布団を取ってみると、少年の体にしがみ付く少女が寝息を立てて寝ていた。
「んっ……………お兄ちゃん」

むか。誰よこいつ。私の少年に抱きつきやがって!!離れなさい!!

まるで床に貼りついたガムテープを剥がすかのようにベリベリッと少年から剥がした。

「はいはい、不法侵入者は追い出さなきゃ」

少女の体をかかえて、近くにあった毛布ですまきにし、寒い廊下に投げ捨て、ドアに鍵を掛けた。

「これでよし、と。それじゃまた来年ね。
待っててね、少年がもう少し大きくなったら迎えに来るから」

 

修羅場を愛する皆にメリークリスマス!!

2

「だ〜か〜ら、サンタなんているわけないじゃん!!いい年して何言ってんのよお兄ちゃん!!」
「いや、いる!!絶対にいる!!その証拠に……」
「あ――はいはい、その腕輪でしょ。それもどうせお父さんかお母さんが着けてくれたんでしょ」

この腕輪が朝、自分の腕に嵌められているのに気がついたあの時から
もう11年の時が過ぎていた。

サンタは小学4年生の時を最後に来てはくれなくなっていた。
それは多分自分が大人になった証拠なのだろう。
事実自分の周りには「サンタなんてお父さんが変装してるんだよ」とか
「サンタなんているわけないじゃん。あはは……」などなど
もはやクリスマスはただ単に「ケーキを食べる」や
「サンタに扮したお父さんからプレゼントを貰う」などのイベントと化していた。

そして今日12月25日

夕飯を食べていた僕と妹の美紗はサンタについて「いる」「いない」
などと話していたのだ。

だが僕は忘れなかった。うとうとしていたからよく覚えていないが、暗闇の中赤い服を着た人が
袋からプレゼントを出し、腕輪を嵌めてくれた所とか、それから、それから……

「お兄ちゃんどうしたの?顔真っ赤にして」
「え?!い、いや何でもない何でもない。あはは……」
「?」

危ない危ない。どうもサンタに頬にキスされたことを思い出すとにやけてしまうな。気をつけなきゃ。

「とにかく!!私はサンタなんか信じてないわよ!!だけど……」

美紗の瞳に殺意が漲り始めた。

「10年前に何者かが侵入してきて私を簀巻きにして、廊下に投げ捨てた者がいたのは確かだわ!!」

そうあの日。朝起きてみると枕元には欲しかったプレゼントがあって僕は大喜びしたが
一緒に寝ていたはずの美紗は朝ベットに居なくて、なぜか一階の階段下で血を流して倒れていた。
すぐ病院に行って診てもらった所、命に別状は無く、階段から落ちた際に鼻の骨を折り額を5針
縫う怪我を負っていたのだ。

事情を聞くと

「……夜、サンタの格好に般若のお面を被った人が……ぐすっ、私を縛って廊下に……
うっうっ……呼んでも誰もいないし、怖いし……ぞじたら急に坂をころがるように下に……
う、う、うわああああああああああ―――――ん!!!!」

後に窓のガラスが割られていたため、窃盗事件として警察を呼んだが指紋など犯人に結びつく証拠など
出なかったため、迷宮入りになっている。
ただこの事件以降だろうか。美紗がサンタの格好をしている人を見る度に
殺気を放ちながら額の傷を擦るようになったのは……

「ん?どうした?急に険しい表情をして……」
「……来る」
「来るって……何が?」
「この額の傷が疼くわ……。10年前に受けたこの恨み、100万倍にして返す時が来たわ!!!
あははははは!!!」

そう言って傍らに置いてあった木刀を握りつつ、額を擦っていた。

来るって……まさか?!

卓也はある一つの可能性を考え、頬を擦っていた。

「さあ早く来なさい、侵入者!!私の一撃で全てを終わらせるわ!!」
「それはいいんだけど……ちょっと離れてくれ」
「ダメ!!今日はこうしていないと……思い出しちゃうから」

今、二人はベットの中に潜り込んで侵入者を待ち構えていた。
10年前と同じように、美紗が卓也にしがみ付きながら……

「毎日こうしてるけど、今日だけはちょっと気分が違うわ」

あの事件以来、美紗は極度のブラコンになり夜寝る時も一緒、通学も一緒と片時も離れなかった。
卓也もあの時助けれなかった負い目があり、あまり強くは拒否できないでいた。
だからもし侵入者を美紗が倒せばブラコンも少しは改善できるかも……
でも僕は……

ミシッミシッ……

「しっ、お兄ちゃん、来たかも」

高鳴る心臓を抑え、呼吸を整え耳に全神経を集中させた。

キチキチキチ、カチャ

(あ、鍵を開けた!!)

どうやって開けたか分からないが、侵入者は鍵をいとも容易く開け部屋へ侵入した。
ちょっとだけ目を開けると、クリスマスツリーのネオンでうっすらと人影が見えるが、
間違い無く10年前と同じミニスカサンタの格好をした人だった。
耳を澄ますと何やら独り言を呟いているようだ。

「やっぱり10年も経っちゃうと部屋も変わっちゃうわね。」
(お兄ちゃん!!やっぱりあの時の侵入者よ!!)
(あ、ああ……)
暫く沈黙が続いた後侵入者が

「さってと、それじゃ熟れた果実を収穫するとしますか」

静かに、ゆっくりとベットに近付き、毛布に手を掛けた瞬間

「チェストオオオオオ――――!!!」
「きゃ!!!!」

毛布の下からの突きだったため、威力は思ったほどではないが、手ごたえはあった。

「いったぁ………誰よ!!こんなことするのは!!」
「それはこっちのセリフよ!!この不法侵入者!!」

ベットから立ち上がった美紗は持っていた木刀の先端を侵入者こと三択の顔面に突きつけ

「あの時、よくも、よくも簀巻きにしてくれたわね!!おかげで傷物にされたわ!!」
「は?!簀巻き?一体……あ、あ――!!思い出した!!
あの時少年にしがみ付いていた寄生虫ね!!」

ブチッ

「誰が寄生虫よ!!」

大上段から大きく振りかぶった木刀を三択の頭目掛けて振り落としたが―――

「あっぶなぁ……ちょっと!!殺す気!!」
「あったりまえでしょ!!大人しく死になさい!!」

殺気の篭った木刀の攻撃を紙一重でかわしていた三択だったが―――

「うふふ、遂に追い詰めたわ」
「くっ……」

美紗は闇雲に振り回しているふりをして、少しづつ部屋の隅に追い詰めていたのだった。

「長かったわ……あんたを倒すためにこの10年間剣道を習ってきた甲斐があったわ。
あの時から暗闇は怖いわ、サンタの服を見るだけで殺人衝動が起きてたけど、
全てこれで終わらせるわ」
「ちょっと!!一体あんたはあの子の何?」

突然の質問に驚いた美紗だったが

「……私はお兄ちゃんの妹の美紗。あんたこそただの侵入者なの?」
「私は三択ロース410号。本物のサンタで、あの子をスカウトに来たのよ」
「は?サンタ??冗談も大概にしてよね。せいぜい命乞いでもしたら?まあ許さないねど」

その時、三択は目ざとくある物を見つけた。

これは……

「御託はもういいわ。死ね!!!!!!」
「じょ――だんじゃないわよ!!」

三択の頭が割れ、脳漿が飛び散る様を想像した美紗だったが……

え?!

「ふ〜〜、危機一髪だったわ」

三択の頭を砕くはずの木刀は、その寸前で三択が握っているバットによって防がれていた。

……くっ

形勢不利とみたのか美紗は一歩引き、木刀を構えつつ

「しぶといわね。次で決めてやるわ」
「次があるのはどっちかしら」

薄暗闇の中、じりじりと間合いをつめ、お互いがお互いの射程距離に入った瞬間、
視界が真っ白に光った!!

「「きゃああああああああああああああ!!!!!」」

二人ともあまりの眩しさに両手で目を覆い、バットと木刀を落としたが、
それを卓也が薄目のまま拾い

「はい、ケンカはここまで。二人とも座って」
「え?!お兄ちゃん!!なんでよ!!今ここでこいつを……」
「言うこと聞かない子はお兄ちゃん嫌いになっちゃうよ?」
「ひっ、座る座る!!だから嫌いにならないで!!」

涙目で、泣きそうになりながら正座して座り

「よしよし、良い子だ。じゃ、次は三択さんも座って下さい」
「は―――い。よいしょ」
「あの……僕の膝の上に座らないで下さい」
「あ、あんた!!なにやってんのよ―――!!」

 

何とか全員座った所で卓也が

「え―、ともかく三択さんがサンタというのは免許証を見せて貰いましたのでわかりました。
じゃ、美紗を簀巻きにしたのも三択さんなんですか?」

三択はしぶしぶ

「うん、まあ」
「やっと白状したわね。あんたのせいで私は……」
「それじゃ三択さん、美紗に謝って下さい。美紗もそれで許してあげような」
「な?!じょ、冗談じゃないわ!!そんなことじゃ……」

抗議の声をあげる美紗だったが卓也は

「美紗、お兄ちゃんはなずっと後悔してるんだ。なぜあの時美紗の声が聞こえなかったんだ?
なぜあの時美紗を守ってやれなかったんだ?……てな。
確かに三択さんは美紗を傷つけた。だけど美紗を守ってやれなかった
僕にも責任がある。だから殺すなら僕と三択さん二人にしてくれ」

卓也の迷いのない真っ直ぐな瞳に、美紗は目から涙を流して

「そんな……酷いよ……そんなこと言われたら私、私……う、う、お兄ちゃ―――ん!!」

あとはもう言葉ではなく、涙で全てを語った。

「うんうん、無事解決っと。じゃ、早速スカウトの話しに……え!!」

三択は時計を見て愕然としていた。

AM12:00

「し、しまった―――――!!クリスマスが終わっちゃった!!帰らなくちゃ!!」

そそくさと部屋を出ようとした時

「それじゃ、またね」

三択が部屋を出た後には口をポカーンと開けた二人とプレゼントが置いてあった。

3日後

「あれは何だったんだろう……」
「もういいじゃない。あんなの忘れましょ」

朝の登校中、美紗に腕を組まれている卓也はふと考えてしまった。

結局聞きそびれたし、言いそびれたな……

頬を摩りながら教室に入ると、クラスメイトがざわついていた。

「お、卓也。聞いたか?今日教育研修の先生がくるんだって。それも超絶美人だって。
こりゃ美紗ちゃんにべったりのお前もくらっといくかも……」
「さ、お兄ちゃんゴミはほっといて席にすわろ」
「…………」

血の海に沈む友人に合掌しつつ席に座ると、間もなく担任の先生が入ってきて

「え〜〜、すでに聞いてると思うが、今日このクラスに新しい先生が着任します。
それじゃ、入ってきて下さい」

入ってきた先生を見た生徒はあまりの美人にすっかり興奮していた。
ただ卓也は「うそ……」
美紗は「な、なんでよ!!あんた帰ったんでしょ!!」

「え〜〜、ただいまご紹介に預かりました、「三田・宗Ε蹇璽此廚任后
日本とノルウェーのハーフですがよろしくね♪」

まだざわめくクラスの中、最前列に座っていた卓也の耳元のそっと口を近づけ

(サンタは24,25日だけ。今日からは一人の女性よ。これからもよろしくね)

そう囁き、卓也の口に熱くキスをした。

 

美紗との壮絶な戦いはまだまだ続く……

修羅サンタ  完

2006/12/26 完結

 

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