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甘獄と青 外伝 〜煌け!! 第54監獄都市学園〜



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 小鳥の声が爽やかに響く朝、部屋の中ではもう一つの音が響いていました。
師走の寒い空気を震わせるのは、目覚まし時計の電子音です。
金属を打ち鳴らしたような高音は毎秒十六回響き、凡人ならば嫌でも目が覚めてしまうでしょう。
しかしそこはネボスケの少年、タイマー式のストーブによって暖められた空気を強い味方にして
嫌でも布団から出ようとしません。
困ったものですが、しかし安心して駄眠を貪ることが出来るのはあと少しです。
  ほら、「ムニャムニャ、もう食べられないよウヒヒ」なんてふざけた寝言を言っている間に、
いつもの女の子がやって来ましたよ。優雅に足音を忍ばせて、綺麗な銀髪を翻して、
少年を起こすべく可愛いあの娘がやってきます。
「青様、御起床の時間です。起きて下さいませ」
  静かにドアを開き、女の子が声をかけてきました。それを合図に少年は漸く目を開き、
ゆっくりと上体を起こしました。ごしごしと目を擦り、女の子の姿を確認すると薄く目を開いて
笑みを浮かべて伸びをします。
  この少年がこの物語の主人公、どこにでも居る平凡な高校生の青くん(857才)です。
特徴といえば首に付いた二つの黒い金属性の首輪と青い瞳。年齢がおかしい気がしますが
青くんは不老なので問題はありません、そんな設定なのだから仕方が無いのです。

 そして青くんを起こした女の子は、幼馴染みのナナミちゃん。肩口で切揃えられた銀髪が
目にも麗しいクールビューティ、無表情なのは感情が無いからです。
何故かメイド服を着ていますが仕方がありません、そんな設定なのです。
  八百年以上の付き合いである二人は、何とも微妙な関係。いつも一緒に居るので
恋人と思われそうなものですが、そう尋ねると返ってくるのは主従関係という答えです。
「青様、学校に行きますよ」
「あ、もうそんな時間?」
  本当ならば嬉し恥ずかしのイベントが入るのですが、文字量の都合があるので省略です。
基本的には乳を揉んだりエロシーンが入ったりするのですが、
それは各自で脳内保管しておいてくれると助かります。どんなプレイかは、あなたの思うがままです。
  色々あって家を出ると、二人は駆け足で学校に向かいました。朝からハッスルしすぎたせいで、
時計で時間を確認するまでもなく遅刻寸前です。こんな状態になるのなら
十八禁なことをしなければ良いと思うのですが、そこは若い二人。エロパロ板の特権を利用して、
下品な意味でやりたい放題です。特に機械人形であるナナミちゃんは
黄金比でエロい体を設計されているので、青くんには堪らないものがあったのでしょう。

 門に着くと、鉄の風紀委員として恐れられているユンちゃんとリーちゃんの双娘姉妹が
待ち受けていました。この二人はスラム出身で、しかも身長1mにも満たない体ですが、
売春をしているという噂がまことしやかに囁かれています。
更には実年齢が一桁だという噂もありますが、きっと嘘っぱちでしょう。
十八才未満の女の子がエロシーンに使われるなんて、
世間の目や現代の法律が許してくれる筈がありません。
  そんな不名誉な噂を気にした様子もなく、二人は青くんとナナミちゃんを睨みつけ、
「お兄ちゃん、また遅刻なの?」
「……次は、許さない」
  不思議な言葉を吐きました。
  因みにこの二人と青くんは血が繋がっているという訳でもなければ、
義理の家族という訳でもありません。原作ではこう呼んでいるので、それを引き継いでいるだけです。
「悪い子にはお仕置きだよ?」
「……覚悟して」
  舌なめずりをして寄ってくる二人を見ると顔を青く染め上げ、青くんは脱兎の如く駆け出しました。
二人に逆レイプをされたのは記憶に新しく、どうも上手く接することが無理なようです。
いつかはどうにかしたいと思っているようですが、暫くは無理そうですね。
  肩で息をしながら教室に駆け込むと、幸いにもまだ先生は来ていないようでした。
軽く吐息をしながら席に着くと、クラスメイトのリサちゃんが寄ってきました。
本当の名前はフランチェスカというのですが彼女は極度のシスコンで、死んだ姉の名前を名乗り、
また他の生徒にもリサと呼ばせています。何やら姉を復活させるという電波感が溢れる秘密の計画が
有るようなのですが、その度に問題を起こして転校を繰り返しているらしいです。
また彼女はかなりの問題児でもあり、過去に3000人の人間を殺しているらしいのです。

「おはよ、おにーさん、ナナミちゃん。今日も二人仲良く遅刻ですか? うらやまスィ」
  こちらも妙な呼び方をしていますが、家族だったりすることはありません。
  リサちゃんは自分の身長程もある大剣を鳴らしながら、陽気に挨拶をしました。
こちらも身長は1mに満たず、外見は幼い子供のように見えますが、れっきとした成人(74才)です。
因みにこの剣は原作と違い刃引きをしてあるので、法に触れることは有りません。
過去に姉とお揃いで買った音叉剣をいつも持ち歩いているのはソードダンス部のエースの証なので、
疑問に思ってはいけないのです。
  そんなリサちゃん、笑顔のまま柄に手をかけ、
「本当に、羨ましいです」
  歯ぎしりをしてナナミちゃんを睨みつけ、よく見れば額には青筋をを浮かべています。
笑顔のままでこんな顔をするなんて器用なものですね。リサちゃん今にも刃を抜き放ってしまいそう、
はしたなくも嫉妬心が丸出しです。今まで家族や軍の上層部にいじめられていた反動で、
リサちゃんは優しくしてくれた青くんに首ったけ。そんな青くんと常に一緒に居るナナミちゃんが
気に食わないようです。恋する乙女(74才)は無敵ですね。
  因みに青くんはアワアワ言いながら二人を見ていました、ヘタレなことこの上無いです。
本編では無かったシーンにどう対応して良いのか分からないのでしょう、
どうやら予想外の出来事に弱いようです。全く、ナナミちゃんも大変ですね。

 数秒。
  奇妙な緊張感が空間を包み込み、ナナミちゃんはパイルバンカーを構えました。
学校になぜこんなものを持ってきているのかは分かりませんが、
青くんを守る為には仕方がないのでしょう。どう考えても無理がある部分は
『仕方がない』や『設定です』の一言で大抵乗り越えることが出来るのです、
何故ならこれはパロの世界だから。
  いつまで続くのかと思われた睨み合いですが、それは担任のサラ先生(2021才)が
教室に入ってきたことで終了しました。もはや半泣き状態になっていた青くんも、漸く安心です。
サラ先生はナナミちゃんを見て忌々し気に舌打ちをしながら教壇に着くと、吐息します。
過去に悪いことをしたせいで今まで人類総シカトをされていたサラ先生は、
普通の人間として扱ってくれた青くんにべったり依存状態なのですが、やはりリサちゃんと同じく
普段隣に居るナナミちゃんが気に食わないようです。恋する乙女(年齢が半端じゃ無いですが、
一応正ヒロインの一人なので乙女と表現します)は無敵ですね。
「今日からこの『極楽喫茶』組に新しいお友達がやってきます、皆仲良くするように」
  この言葉に、生徒の皆さんは一気に盛り上がりました。嫌われ者のサラ先生でも、
今のようなイベントでは普通に解け込むことが出来るので内心ウハウハです。
「入ってきなさい」
  長い黒髪をたなびかせ、教室に転入生が入ってきます。

「シャーサ?」
  その女の子は、何と青くんのもう一人の幼馴染みのシャーサちゃんでした。
どことなく他人を見下したような雰囲気がポイントの、お嬢様然とした女の子です。
  シャーサちゃんは約800年ぶりに青くんの姿を見付けると、
自己紹介もせずに勢い良く駆け出してゆきます。
何が何だか分からないリサちゃんとサラ先生はアホの子のように口を開きっぱなし、
呆然としている間にシャーサちゃんは青くんの胸へと抱きつきました。
そして続くのは熱いキスの雨嵐、青くんもされるがままになっています。
「な、何を」
  事情が分からないリサちゃん、見る間に青筋が浮かんできます。
  そう、何を隠そうこの二人は元恋人同士。シャーサちゃんの親戚は恋愛に厳しくて
人目を憚るように付き合っていたいたのですが、彼女のオイタの濡衣を青くん自らが被り
監獄都市に入ってしまったことで別れたのでした。そんな事情で離れ離れになったのですが、
シャーサちゃんは再び悪さをしてここに入ってきたのです。これを使うのももう三度目になりますが、
恋する乙女は無敵ですね。
  しかし無敵といっても限度が有ります。
「「何を……」」
  おやおや、サラ先生とリサちゃんがMK5ですよ。
  カウントダウン5、4……
「「何をしとるんジャーぁァッ!!!!」」

 あらら、いけないいけない。カウントを最後まで待つことも無く、
二人の怒りは沸点に達してしまったようです。サラ先生は指輪を、リサちゃんは剣を構えます。
  次の瞬間、惨劇が起こりました。
  シャーサちゃんの首から上が消失して、胴体も肋骨を全て割るように切られています。
普段ならばモザイクが入るところなのですが、間近で見てしまった青くんは
フィルターをかけていない状態だったようです。顔面蒼白、先程のプチ修羅場の比ではありません。
「青様、しっかりなさって下さい!!」
  いつの間にか感情回路をセットインしていたナナミちゃん、声にも瞳にも張りがあって、
まるで別人のようです。綺麗な目の奥にある色は、
青くんを何だかエラい状態にした二人に対する怒りの色。
本編通りならば青くんの命令で戦闘を始めるのですが、
今の青くんは本編と違い現実を直視出来る状態ではありません。
主人公を無視して三人は戦闘を始め、今や教室は地獄絵図となっています。
もうパロも何も有ったもんじゃ無いです。
  さてさて、これからどうなることやら。

続かない!!

2006/12/24 完結

 

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