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妖狐の想い(仮)



1

 とある高名な妖狐一族の末娘として生まれたテンコ
  妖術の才能に恵まれたテンコは、史上最少年齢で、偶発的に人化の術を為しえてしまった。
  しかし。
  術は完璧なものではなく、いくつもの代償を支払う羽目に。
  記憶を失い、元に戻る術も知らず、人里に出てしまったので助けも来られず。
 
「……ここはどこですかー? 貴方は誰ですかー?」
「――!? おまえ、狐か!? こんなところで何やってるんだ!」
「ふにゃ?」
「……? 人化に失敗してるのか? 人間に見つかったらまずいかもな……」
「……? あのー……」
「なんだよ?」
「……おなか、すきましたー」
「…………あー。とりあえず美味いもん食わせてやるからウチに来い」
「わーい」
 
 
  テンコは運良く、人に紛れて生活していた鬼の少年に拾われた。
 
 
「白くてあったかいの、いっぱいくださいー。えっと、ぎゅーにゅーです、ぎゅーにゅー。……確か。
  ……? コノオ、おかしな顔してますけど、どーしたのですかー?」
「風呂上がりに抱きついて変なこと言わないでくれ……。頼むから……!」
「コノオはたまにヘンですねー。でもそれはどうでもいいですー。
  にゅーぎゅー! にゅーぎゅー! いっぱいくださいー!」
「ぎゅうにゅう、な。牛はまだ早いだろ。牛は」
 
 
  次第に打ち解け合っていく狐と鬼。
  狐はだんだんと記憶を取り戻していくが、鬼との暮らしが心地良いため、隠しておくことに。
  鬼の方は、諸事情により山や里との連絡が困難な状況のため、狐の出自を調べられず、
  放り出すわけにもいかないので、ずるずるとそのまま居座らせるしかなかった。

 

 

 そんな、ある日。
 
 
「コノオー! おかえりなさいー!」
「うわ!? テンコ、いきなり抱きつくな――っと、それはそれとして」
「? どうしたのー? いきなりテンコをだきあげてー」
「すまん、ちょい隠れててくれ。あとでいなり寿司作ってやるから」
「いいよー。でも、どうしてー?」
「いやな、ちと雲永さん……えっと、クラスの友達なんだけど、
  その人が勉強教えてくれるとのことでな」
「?」
「あー。えっと、その、つまりだな、まあ千載一遇のチャンスをふいにしたくないので」
「コノオが何を言いたいのかわからないー」
「要するにアレだ、いなり寿司10個!」
「らじゃー」
 
 
「おしいれの中はせまいですねー。
  しかしこれもコノオのいなり寿司のためー!
  ……お、あれがクモナガサンかー…………………………
  ………………………………………………おんなのこ、ですか」
 
 
 
 
「あー、悪かったなテンコ。狭かっただろ。
  約束通り、いなり寿司たくさん作ってやるから――」
「――コノオは」
「ん?」
 
「コノオは、よーかいですよね?
  わたしと、いっしょですよね?」
 
「? そうだけど、何を今更」
「じゃあ、ニンゲンといっしょにはなれませんよね?
  コノオはよーかいだから。ニンゲンとなかよくしちゃ、だめですよね?」
「は? お前、何を――」
 
「だめ! ニンゲンのオンナとなかよくしちゃだめ!
  コノオはよーかいなんですから! ニンゲンじゃなくて、ニンゲンじゃなくて!」
 
 
「――わたしじゃなきゃ、だめ!」

2006/12/19 完結?

 

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