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おいしゃさんごっこ



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嫉妬という単語を辞書で引くと、自分の愛する者の愛情が他に向けられることをうらみ嫌うと出る。
そう、この意味合いからすると、男が付き合ってる女以外の女と何らかの接触をする際に、
愛情がなければ嫉妬してはいけない。
例えば街中で見知らぬ女性に道を聞かれた時、丁寧に応対しても嫉妬はされない。
まして、食事後の支払いで釣銭を受け取る際に女性店員と手が偶然触れても嫉妬してはいけない。
何故ならそこには、愛情なんて存在しないから。嫉妬の定義に反する行為はもはや、
単なる被害妄想に成り下がる。
それはとてつもなく見苦しく、失笑を誘発するような愚行だと言って差し障りない。
勘違いすることは誰にでもある。
見知らぬ女が嬉しそうな表情をしていたと錯覚したのかもしれない。
だから俺は、彼女に明白な意思を伝えた。君以外の女性に気が向くことなんてありえない、
そういう意味の言葉を何度も、そして誠実に伝えた。
だが彼女の嫉妬深さを常軌を逸脱していた。付き合い始めた頃は多少の焼餅で片付いた。
だが今は他の女と話しただけ、いや、俺の目に他の女が入っただけで声を荒げて俺を叱責する。
何故?俺は理解できなかった。

考え抜いた結果、一つの結論に至った。
彼女の嫉妬は、ある種の幻想だ。
俺の弁明に耳を貸さず、他の女とほんの些細な接触があっただけで情緒不安定になるのは、
もはや改善できるものではない。
嫉妬妄想、ありもしない事象を無意識的にでっちあげ、本来あるはずもない不安を感じる。
無意味なことだと思う。
恋愛において一番大事なことは何だと問われたら、俺はこう答える。

「信頼関係」

どんなことがあってもお互いを信じ、欠点を相互補完できる関係。
相手のことを思いやり、高め合える関係。それが俺にとっての、恋愛の理想系だ。

残念なことに、彼女の間にはそれがなかった。
相手の立場に立ち最大限の愛情を注いだ。だが現実は、お互いを高め合うことなく、
逆にマイナスとなった。
付き合っておよそ一年、蓋を開けてみれば双方とも疲弊していた。
俺はありもしない事実を突き付けられ、それを弁明することに心身を削られ、
彼女はありもしない妄想に怯えることに心身を削られた。
一体何が悪かったというのだろうか。それはきっと、どちらかに落ち度があると
短絡的に言えるものではない。
どうしようもないことだった。運が悪いことに、俺と彼女は相性が良くなかった。それだけだ。
だから俺は別れることにした。
彼女は今までとは比べものにならないぐらい取り乱したが、お互いの将来を考えれば俺の決断は
妥当だと思う。
彼女もいつか気付いてくれるに違いない。俺は何も、間違ってはいない。





こうやって、論理的に、頭のいい奴が考えるようなことを考えてれば、自分を保てる。
たぶん、今日で七日目だ。あと、何日で、いつになったら、俺は自由になれるんだ?
ああ、なんで俺、監禁されてるんだ?なあ、誰かおしえてくれよっ!?
……腹、減った。
ずっと、飯、くってない。何でもするから、ご飯、たべたい。
……駄目だ、屈したら、俺が俺じゃなくなる。
おい、一週間も、学校行ってないんだぞ。変だと、思うだろ?
だれか助けに来いよ……

早く、来て……お願い……します……





「だいちゃん、ご飯が出来ましたよ〜」
あぁ……
「お腹すいたでしょ?ほら、美味しい美味しいごはんですよ〜」
もう……
「はい、あ〜ん」
無理だ……

ほら、やっぱり私の思った通り。だいちゃんは、ちょっとだけ厄介な病気にかかってただけ。
愛をもって看病すればすぐに良くなるんだから。
だいちゃんったら、嬉しいからってそこまで泣くことないのに。
やっぱり病気だから多感になってるんだよね。
だいちゃんが正常に戻るまでちゃんと看病してあげるからね。
……ううん、今まで以上に、私がいなきゃ生きていけないようにしなきゃ。
時間はかかると思うし大変なんだろうけど、でもね、何だか楽しそう。

 

 

……えへっ、えはっ、あはっ、あははっ何で、こんなっ、うふっ、楽しいんだろ、
ははっ、うひっあははっ!!

2006/11/08 To be continued.....

 

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