「シ〜〜〜ンちゃ〜〜〜ん、会いたかったよ!!」
月を背に飛んでいた蝙蝠の羽を持つ少女(見た目)は、シーンを見つけるやいなや急降下し、
体当たりをしてきた。
「おっと、相変わらず猪突猛進ね。フライヤーは」
「えへへ。シーンちゃんを見たらつい、ね」
「あの〜〜、どちらさんですか??」
まったく状況についていけない亀有は恐る恐るシーンに聞いた。
「?シーンちゃん、だれこのニンゲンは」
「ああ、紹介するわ。「使い魔」のカメアリよ」
「へ〜〜、カメアリってんだ。私は「南アメリカ」担当のフライヤー。宜しくね」
俺は目の前に起きている現実を受け入れなければいけないんだろうか。
魔女っていうのも相当受け入れられないけど、この背中に羽を生やしている女の子を
どう認識すればいいのやら……
ん?「南アメリカ」担当??
「ち、ちょっと!!「南アメリカ」担当って何??」
「え?シーンちゃんその辺説明してないの?」
「そういえば邪魔ばっかりされてて、説明してなかったわね。……そうね、このあと「お茶会」
が始まるから行きながら説明するわ」
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―――西ヨーロッパ―――
「キシャアアアアアアアア!!!」
「バンプ、もうその辺にしなさい」
バンプと呼ばれたレッドドラゴンは、炎のブレスを吐いて攻撃してきた戦闘機を
撃ち落していた。そのドラゴンに跨っている魔女は面白くなさそうにその光景を見つめて
「何百年経っても「ココ」は変わらないわね。……魔女にとっての古巣、そして忌まわしい土地」
「グルル………」
「……そうね。感傷に浸ってる場合じゃないわね。そろそろ向かうか」
炎のブレスで焼かれた市街地を尻目に、ドラゴンは目的地へ向けて飛びだった。
「さっき魔女は6人召喚されたってとこまでは話したわよね。で、各地に現れた魔女は
担当区があって、その区で一番魔力が集まるポイントを探し出し、来るべき隕石撃退に備える
ってわけ。おわかり?」
「なるほど……じゃあシーンはどこなの?」
「私?決まってるじゃない〜〜。カメアリ担当よ♪うふっ」
潤んだ瞳で亀有の胸やお腹をツンツン突くシーンの手を払いのけ
「違うだろ!!場所は何処だって聞いてんの!!」
「んもうマジメね〜〜。私は「極東、東南アジア」担当よ」
「あ!シーンちゃん、着いたよ」
フライヤーが指差した場所。それは正に有りえない光景だった。
何も無い空間、所謂空中に「島」が浮かんでて、噴水や花が咲き乱れ、
その中央に丸いテーブルを囲むように6脚の椅子が置いてあった。
言うなれば「空中庭園」と言った所か。
二人はゆっくりと着地して
「もう何でもアリだな……というかすごい」
「わーーい、一番乗りぃ!!」
フライヤーが飛びつくように椅子に座り、シーンもその隣に座ろうとしたが
「皆が集まるまで暇ね……そうだ!!」
「ん?どうした?……えっとシーン、何そのにぎにぎした手つきは!!ちょっと!!
眼が不気味に光ってるんですけど!!じりじり近づくな!!……こうなったら!!」
「あ?!逃げた!!フライヤー、追うわよ!!」
「がってんだ〜〜」
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10分後
「イヤッ!!……や、やめて……おかーーさーーん!!」
「へっへっへっ。呼べど叫べど助けなんかこないわーー!!わっはっはっ」
「シーンちゃんえろえろ―――!!」
そんなに広くない庭園では、どう足掻いても逃げても無駄で結局捕まり
野卑な声をあげながらシーンは亀有の服を剥がしに掛かっていた。
抵抗空しく亀有は服をひん剥かれ、パンツ一丁で最後の抵抗をしていた。が、
いよいよという時に急に辺りが真っ暗になり
「……ちっ、あと一歩という所だったのに」
「へっ?」
シーンが見上げた先、そこにはよく映画や漫画で言うところの「ドラゴン」が
ゆっくりと降下してきて、適度な空き地に降り立った。
それを見ていたフライヤーが駆けつけてきて
「ね、ね、シーンちゃん。カメアリ見つかると面倒じゃない?「ニンゲン」の使い魔が何で
「お茶会」に参加してんだ――!!って言われるかも」
「あ、そうかも。カメアリ、コッチに来て」
「あ、ああ」
シーンがカメアリの手を引っ張って連れ込んだ先、そこはちょっと奥にある林だった。
「この姿のままじゃ多分八つ裂きにされるだろうから、暫く「コッチ」に入ってて」
そう言ってシーンが取り出したのは、コアラのぬいぐるみだ。
「え、ちょっとこれに入ってろって……どういうこと?」
「こういうことよ。えいっ!」
亀有の胸に手を当てたシーンはそのまま胸の中へ手を入れ、何やらもぞもぞしたかと思ったら、
何かを掴みそれをぬいぐるみに入れた。
「どお?感じは」
「うっ……うっ……俺って泥人形になったりぬいぐるみになったり……」
手の平サイズに戻った泥人形を片付け、ぬいぐるみを手にとったシーンは
「「お茶会」が終わるまで、ちょっとだけ我慢してね」
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コアラのヌイグルミを抱えて急いでテーブルに戻ってみると、ドラゴンに乗っていたと思われる魔女が
2人テーブルに近づいてきた。
「……………………着いた」
「さすがにドラゴンのスピードでも結構遠かったわね」
もうドラゴンぐらいじゃ驚かないが……また凄い組み合わせの魔女が来たもんだ。
一人は、所謂ゴスロリファッションに傘を持った魔女に
もう一人は甲冑を着た……騎士?いやたぶん魔女だろう。
ドラゴンをあやしている所を見ると、ドラゴンの使い手なんだろうか?
「先客がいたか……これであと2人、か」
「……………………来た」
「シ―――――――――――ン!!!!てめえ!!!殺す!!!」
下品な言葉と共に何かが飛んできたが……
「あ、あれ、と、止まらない!!きゃ――――!!」
哀れ、飛んできた「ヒト」は庭園の奥の林に突っ込んでいった。
と同時に地平線の彼方からゆっくりと何か大きい物体が飛んできた
「キャ―――!!カメアリ、何よあれ!!」
「へ?何って……ああ、あれは飛行船だよ」
「ヒコウセン?それって何よ!!ニンゲンの兵器?だったらぶっ壊してやる!!」
「ちょっと待て、あれはただの乗り物!!別に何もしないよ」
「……そうなの?」
そう、よく広告を船体に貼り付けて空をゆっくり飛んでいるあの飛行船だ。
その飛行船が庭園の上に止まると、ステップから誰かが降りてきた。
「うん、この乗り物は気に入った。コトが終わったら魔女界に持って帰ろう」
「承知致しました。お嬢様」
「ヤッホ―――!!シーンちゃん元気してる?」
「ゲ、カットお姉ちゃん?!何で!!」 |