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異世界メイドもの(仮?)



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「新角、お前メイドさん囲え」
 
  突然呼び出されたかと思ったら、こんなことを言われた。
  よって逃げた。
  しかし捕まった。畜生。
 
「……で、隊長。いきなりトチ狂った発言をしたその真意は?」
「簀巻きにされても強気なあたりお前って可愛いよな。
  まあそれはそれとして、任務だよ任務。ちとひとつ請け負って欲しいことがある」
 
  任務。
  俺――新角の所属する傭兵部隊は、様々な機関から特殊な任務を請け負うことで運営されている。
  どれもがきな臭い代物で、無事に済むものなどひとつも無いという始末。
  だが――そんな任務にこそ生き甲斐を見出す変人揃いの部隊なので、
  特に何の問題もなく、今日も今日とて楽しく過ごせているわけだ。
 
「……どんな任務なんですか? 単独? チーム?」
「単独単独。お前一人でやってくれ。他の連中は年末の大仕事の準備があるからな」
「……俺もそっちがいい」
「まあそう言うなって。かなりヤバイ仕事だから、単独で任せられる奴は限られてくるんだよ」
「……へえ」
 
  いかん。目が輝いてしまったかも。足下見られるやもしれぬ。
 
「兎に角ヤバイ任務だ。だから頼むぞ、新角」
「それはいいけど、内容教えてくれよ隊長」
「だからヤバイんだって」
「いや、具体的に」
「ヤバイくらいヤバすぎる」
「……おい」
「ヤバヤバ」
 
  真面目に答える気が皆無の模様。
  そして、先程の台詞を思い出してみる。
『メイドさん囲え』
 
「……まさか」
「あ、わかっちゃった? 勘の良い奴だな。
  ――女の子部隊の訓練頼む。複雑な立場の娘ばかりでな、
  女っ気のない童貞じゃないと難しそうなんだ。だからお前以外に適任が」
 
  逃げた。
  しかし捕まった。畜生。

 

 ――まさか本当にメイド服を着ているとは思わなかった。
  目の前には四人の少女。同じ服装――メイド服で統一されている。
  体格や体つきこそ違えど、皆同じデザインで統一されている。
  ……傭兵部隊にこんな制服着せるなよ。
  と、呆れた思考が漏れてしまったか、リーダー格らしき少女がこちらを睨み付けてきた。
 
「何か文句でもあるのですか?」
 
  うお、冷たい声。凍えるかと思ったよ。
  名前は何だっけ。確か……えっと――
 
「――雪乃(ユキノ)でいいんだっけ? 別に文句なんて無いよ。服装に呆れただけ」
「……これは支援者がデザインした制服です。私たちに言われても困ります」
「だから言ってないって。アホの子を見る目で見てただけだってば」
「……喧嘩を売ってるんですか?」
「馬鹿、弱い者虐めする趣味はないっての。
  ただ、こんな連中に色々教えなきゃいけないのか、って切なさ炸裂してたんだよ」
「…………」
 
  急激に周囲の気温が下がっていく。
  うわあ、怒ってる怒ってる。
  ――でもまあ、好都合。
 
「……ゆきのん、やっぱこんな奴に教わることないって。
  誰の紹介だか知らないけど、けちょんけちょんにして追い返しちゃおうよ」
  別のメイドが、リーダー格の少女にそう進言した。
「……でも、ココノ。ここでまた教官を半殺しにしたら、また支援者に迷惑がかかる」
  進言したメイドを窘める別のメイド。名前は翔良(カケラ)といったっけか。
  ……ふむ。部隊内で意見の統一がスムーズに行えないのか。
  少人数でコレじゃあ、ちと致命的でないかい?
  そして、あと一人は……っと。
「…………(じーっ)」
  無言でこちらを見つめている。狙いがいまいち掴めない。
  こちらの思惑でも探ろうとしてるのか、それともただ単にこちらを教官として不審がってるのか。
 
  ん、OKOK。だいたいわかった。
  それじゃ、仕事を始めるとしますか。
 
「あー。誰が誰をけちょんけちょんにするって?
  尻が真っ赤になるまで引っぱたいてやるから、被虐趣味のある奴からかかってきなさい。
  ……いや、ちょっと訂正。時間が勿体ないから全員で一気に宜しく」
 
  とりあえず、教官として為すべきことその1。
  どちらが上でどちらが下か、徹底的に教えておくことにする。

 

 

「え、ご主人様が風邪を!? 全裸で雪山に放置しても問題なさそうな馬鹿なのに!?」
「……最後のが余計じゃないか……げほ、ごほ」
「ホントに弱ってますねー。……チャンス?」
「何のだ。……あー、とりあえずユキノ、今晩は暖かいものを作ってくれると嬉しい」
「はーい。それじゃあゆっくり寝ててね、ご主人様」
「じゃあ、ボクは添い寝するねー」
「ちょっと待ったココノ! なに自然にご主人様のベッドに入ろうとしてるのよ!?」
「えへへー。添い寝ー」
「えへへー、じゃないっ! ほら、ココノも夕餉の支度を手伝いなさい!」
「やだー! めどいー! ご主人様助けてー!」
「指切るなよー……」
 
 
「……風邪は他人に移すと治りが早いと言われている。
  ――だから、ご主人様、……ん」
「いや、あの、カケラさん?
  目を閉じて顔を近づけて一体何をせがんでってちょっと待って近すぎるからマジで」
「ダメダメダメ! ご主人様とキスするなんて許しゃにゃにんだから!」
「そして落ち着けヒトヒラ。噛んでるから」
「……喋ると情けないんだから黙ってて、赤面症姉」
「ううううるしゃい! クール系気取りの妹には言われたくにゃい!」
「……頼む……静かに寝かせてくれ……」

2006/10/26 完結?

 

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