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二つの世界で



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「……ついに、キタコレ。」
今俺の部屋にあるゲーム機………バーチャルオンラインゲーム『Q』
今世紀の日本のゲーム界は、頂点を極めている。もはやマウスでクリックなんていうパソゲーは
時代遅れだ!そのすべてを過去にしたゲームが、今目の前にある。
「……しかしでかい……」
ぶっちゃけゲーセンのプリクラぐらいデカい。……余談だが値段もデカかった……バイトをして一年。
やっと買えたのだ。去年入学したと思ったらもう後輩ができましたよ。
「……ふっ、だがその辛かった日々も、今報われる。」
一人部屋でつぶやきながら、ゲームの中に入る。すべてセットしてあるので、電源を入れる。
……まずはキャラの作成。名前は…
「んー………キリィ……でいいや。」
ええ、目を瞑って適当に入力しただけです。次に職業。変えられないが、クラスアップがあるらしい。
ここは慎重に……
「えぇっと〜〜……んー……忍者……かな。」
理由、むさ苦しくないから。まあ、やだったらキャラリセすればいいでしょ。次、特徴決め。
「なになに?次の質問に答えてください?」

1『忍者として、使う武器はどれ?A:短刀B:手裏剣C:鎖鎌』
まぁ、無難に……Aで。
2『忍者として、どのような任務に就きますか?A:暗殺B:諜報C:盗み』
……Aか。少し物騒だけど。
3『仕える主に、求めるものは?A:信頼B:野望C:金』
これはCで。ま、ゲームだしね。
『あなたのキャラクターがきまりました。どうぞ、Qをお楽しみください。』
そのメッセージの表示とともに、視界が光で包まれていく………
「ん……おおぉ!」
目を開ければ、そこは自分の部屋でなく、ゲームのなかだった。
目で町並みを見て、風の流れを受け、匂いを鼻で嗅ぎ、太陽の光を浴びる……
これぞまさにバーチャル世界。もう一つの世界だ。
「おろ?…これは……」
近くの店の窓ガラスで、自分の姿を確認する。忍者……といえばそれらしい格好だ。
それにしても、忍者=マフラーの定義はいつから始まったのだろうか?
顔も、自分のリアルの顔とそう大差は無い。違うといえば、目の色ぐらいだ。
真っ赤な……血に染まったように真っ赤な目だ。
そして腰には、一本の短刀が挿さっていた。

この武器もまたリアルに作られており、これまた社会問題へと発展しているが、俺は大丈夫さ。
「では……さっそく歩いてみるか!」
町の探索を始めようと、駆け出した瞬間……
「うおぁぁ!はええ!」
……驚くぐらい、自分の足が速かった。まるで陸上の選手並みだ。そういえば忘れていた。
ゲーム内のキャラの身体能力は、ステータスに比例する。だから忍者は素早さが高いため、
足も速くなるのだ。
「ふぅはっはぁっ!こりゃおもしれぇ〜〜!!!」
ゲーム開始から数分……もうドップリとこの世界にはまっていた………








「……ちゃ……ちゃん……」
「ううぅ……もうゴブリンはいいよぅ……」
「…い…ちゃん………いっちゃん!もう、寝ぼけないで!」
「おぉぅ……」
ゆっくりと目を開ける。そこにいたのは……道具屋のお姉さん………じゃない。
「ああ……おはよ、二葉………」
隣りに住んでいる幼馴染み、宮内二葉だった。
「もう、おはよ、じゃないよ。また制服のまま寝ちゃって、シワになっちゃうよ?」
まあ、このようにおせっかいなわけで。

「仕方ないだろ?昨日はいそがしかったんだから。」
レベル上げで。
「あ……そうなの?」
うーん、相変わらず人を疑わないやつだ。いつか変な人に騙されるような気がするね。
「まぁ、大丈夫だ。それより、学校にいくか。」
「うん!」
わしわしと頭を撫でると、まるで飼い主に褒められた犬のように嬉しがる二葉。
いや、決してあの髪型が犬耳に見えるんじゃないよ?
登校途中………
「よう!ワンツーコンビ!」
「おはようさん!ワンツーコンビ!」
「今日仲いいな!ワンツーコンビ!」
「うわぁぁん!お前らなんか退学しちまえぇ!」
今日も相変わらずいじめ(!?)られながら登校する。…ワンツーコンビ、それが俺と二葉の愛称。
俺の名前が霧島一哉。で、隣りのこいつが宮内二葉。ましてや二葉は俺を「一」からとって
「いっちゃん」とよぶ。
この二人の間に入れば、ただじゃすまない。これは全校での暗黙の了解だ。その理由は………
「もう、みんなそんなにからかわなくても………」
こいつの嫉妬深さだ。女だけでなく、男相手にもだ。いくら俺の親に世話を任せると
言われたとはいえ……

初めてワンツーコンビとクラスの全男子からかわれ、ぼこぼこなされた次の日、
家庭科で調理実習があった。
この時、二葉がお題のクッキーをクラスの全男子に配っていた。
「いっちゃんにはこれね。」
と、別の包みに渡されたクッキーを食べながら、二葉のクッキーに群がる男子を見ていたのだが……
次の授業、男子はトイレに列を作っていた。
男子は俺だけが出席。あとはみな欠席だ。それから三日間、男子トイレの周辺が
汚臭で包まれたという歴史が……
後で二葉に理由を聞いたところ……
「だって、いっちゃんにさわったから……」
さわっただけでその仕打ちですか。それ以降、女子はもちろん、
男子からもスキンシップが無くなった。
………その反動が、『Q』を始めるきっかけになったのかもしれない。
別に二葉がウザイというわけじゃないが、やっぱり他の人とも触れ合いたい。
だから俺がバーチャルネトゲをやってるのは誰にも教えないのだ。知られたらきっと
二葉に止められるからだ。あの世界……よいではないか!
ちなみに昨日、5回もナンパに失敗したのは忘れておこう…………

2006/09/20 To be continued...

 

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