INDEX > SS > シューティング☆スター

シューティング☆スター



第1話 『過去への旅立ち』

「女」は走った。死に物狂いで走っていた。狭い廊下に薄暗い蛍光灯の中をただひたすらに走った!
聞こえる音といえば、「女」の走る音と、けたたましく鳴るサイレンの音だった。

時々廊下に設置されているパトライトが回っているのを尻目に、「女」は一つのドアを開けた。

ドアの先にはビルの外に設置されている非常階段があった。「女」は脇目も振らずに上へ、
上へと上がっていった。

「ターゲット見失いました!」
「守備隊、半数が戦闘不能です!」

舐めてたわ!まさかここまでやるなんて……
本気……ってことね。知らない仲じゃないから穏便にしたかったけど
そっちがその気なら容赦しないわ!!

「戦闘が可能な守備隊の数は?」
「あ、はい!……およそ50!」
「重火器の使用を許可します。方法や手段も問いません。何が何でもターゲットを排除して下さい!」
「「はいっ!!」」
「それとターゲットの目的は最上階の「あれ」ですからそこを重点的に警備して下さい」

部長の激でオペレーターやその他に気合いが入った!

姉さん……逃がさないわ!!

「あちゃーここまで手が回ったか……」

「女」は非常階段を一気に昇り、目的の階に着いた。
ドアの隙間から覗いてみると、既にその階は守備隊で鼠一匹通れない有様だった。

「そうよね、たしかここには晴海がいたんだっけ」

晴海……「女」にとっては因縁浅からぬ仲であったが、彼女がいるのであれば少々やっかいであった。

「晴海がいるんじゃ、私の目的もバレバレか。」

「女」は自分の残りの武器を確認した。

「えーと、仕込み刀と……拳銃一丁弾少々……閃光弾一発に愛が無限大。うん!大丈夫!」

最後のは絶対役に立たないような気がするが、「女」はともかく突破を試みた!

「隊長!配置終わりました!この階は鼠一匹通れませんよ!」
「うむ。ターゲットは必ずここに現れるはずだ!全員油断するなよ!」

部隊長の指示のもと、部隊は「女」を迎え撃つ準備を整えた。
だが、「女」の方が一枚上手だった。
突然、1人の隊員の足元に何かが当たった。

「ん?何だこれ……まさか!」

隊員が正体を知った次の瞬間、辺りは光に包まれた!!閃光弾だった。

そして、閃光が収まった時、対処が間に合わなかった部隊に、チャンスとばかりに
「女」は突撃した!!

「りゃあああああああーーー!!」

「女」が刀を振るたびに、1人、2人と血の海に倒れ、気がつけば部隊はほぼ全滅していた。

「はあ!はあ!……ふう。何とか片付いたか」
「うう………」

だが、部隊長だけは致命傷を免れていた。

「あら、まだ息があるのね」
「お、お前……何の目的でこんな……」

あらあら無理しちゃって。邪魔しなければ何もしないのに。
……まあ愛は他人には理解されにくいからなー。

「死にぞこないに語る舌は持ってないの。バイバイ」

血に染まった廊下を後に、「女」は先へ進んだ。

「部長!!ターゲット最終防衛ライン突破しました!!目標地点まであと
10メートルです!!」
「ダメです!!「第5研究室」の電源カット出来ません!!外部からの電源を切っても
瞬時に自家発電に切り替わります!!」

先ほどからの報告で、部長は歯軋りが止まなかった。それも仕方のないことで
今「女」が向かっている「第5研究室」に設置されている「あれ」……
あそこには晴海にとって大切な思い出があった。

くそっくそっくそっくそっくそーーーーー!!
なんてこと……。守備隊が全滅なんて。あの「女」の義手義足はかなりの高性能
だけど、ここまでなんて……。まあ今はそんなことを考えていてもしょうがない!
とにかく止めないと!
「あれ」には私の声紋や瞳の光彩などでロックが掛けられているから
そんな簡単には起動できないはず。……さあどうする?姉さん。

「ああ、やっぱりロックが掛けられていたか……」

「第5研究室」に入った「女」は他の機器には目もくれず、一番奥にあった機械に向かった。
「あれ」は一つの仰々しい椅子が中央に設置されてて、その椅子を遠巻きに色んな機器が置いてあった。
その中の一つ、コントロールパネルの前で「女」は唸っていた。

うんうん、さすがは晴海ちゃんね。備えは万全だわ。お姉ちゃん感心しちゃう。
……でもね、晴海ちゃん、今貴女は部長なんていうポストにいるけど、もし自由の身だったら
私と同じことをしたと思うんだ。

私と同じ男を愛したんだもんね

「女」はコントロールパネルにパスワードを入力した。

私だけが知っているパスワード……これでいいはず。

入力した瞬間、止まっていた機械が動きだした。計器盤が回り始め、スイッチパネルが点灯し、
「椅子」にスポットライトが当たっていた。

よーし、成功!それじゃ早速データの入力しちゃおっと♪

「ぶ、部長!!た、大変です!!「シューティングスター」起動始めました!!」
「な!!!!!!そんな馬鹿な!あれにはロックが……」

一体どうやって……!!まさか「裏コード」!!
そんな物あるなんて聞いてないわ。いや、もしかしたら姉さんが秘密裏に仕込んでいたってこと?
むきーーーーー!!!

ブチ切れた晴海は手に持っていたコーヒーカップを床に叩きつけた!
こうなったら徹底的にやってやるわ!!

「オペレーター!!「シューティングスター」の動きを見張ってて!どこに
「跳ぶ」か調べておくのよ!それと、ターゲットは逃がしません。私が直接行って取り押さえます。」
「え!部長自らですか!無茶ですよ!相手は守備隊を全滅させた化け物ですよ!」
「大丈夫です。実用化前ですが「パワードスーツ」を使用します!後は頼みましたよ!」

晴海は実験室に置いてあった「パワードスーツ」を装着した。
名前は大層だけど、見た目は全身黒タイツと頭にヘルメットとゴーグルをつけただけだった。
実用化までまだ数回テストをする予定だったが、今はそんなことを言っていられない。
幸いなことにサイズはぴったりだった。

殺してでも……止める!
武器にビームライフルと超硬ブレードを手に、憎っくき姉に向かって走った!

起動を確認した「女」は起動チェック及び座標データとタイムデータの入力を終え、
中央の椅子に座った。
すると正面にモニターが表れ、メッセージが表れた

「裏マスターこんにちは。」
「はーいこんにちは。早速で悪いんだけど、急いでんだ。多分ここに誰かが向かってると思うから」
「はい、エレベーターに一人。レーザー兵器を装備した人間がこちらに向かっております。」

んもう晴海ちゃんね。殺す気マンマンだわ。残念だけどそうは問屋が卸さないわ。
ここでむざむざと晴海ちゃんの希望を叶えるわけにはいかないから。

「それでは最終確認します。目的地は「西暦2006年9月1日 日本国トーキョー都
  座標ЮГΨ、410、564」で間違いないでしょうか。」
「うん、ばっちり!それでお願い。あと、私が「跳んだ」ら一切のデータはロストしておいて。
時間稼ぎしたいから」
「了解。尚、持っていきたい物が有りましたら身につけておいて下さい。5分後に
「シューティングスター」発動します」

「女」はポケットから一枚の写真を取り出した。古ぼけたその写真には、一人の男と
3人の女が写っていた。

うっとりとした目で見ていたら、入口のドアががたがたと動いていた。

来たわね。でもちょ〜っと遅かったわね。

物凄い音とともに入口のドアが真っ二つに折れて吹き飛び、全身黒ずくめの人間が乱入してきた!
「姉さん!そうはさせないわ!」

ビームライフルを「女」にロックオンした瞬間、警報が鳴り響いた!

「警告!警告!プログラム起動中は関係者以外立入禁止です!強制排除します!」
「な!私は「マスター代理」の瀬峰晴海よ!「シューティングスター」の設計者の一人よ!!」

一瞬の沈黙ののち

「現在、本プログラムは「裏コード」によって起動しております。その場合は「マスター」か
「裏コード」を入力した本人以外は侵入者として認識します。」
「そ、そんな馬鹿な!そんな……侵入者って……」
「あーーはははははははははは!晴海ちゃん最高よ!面白いわ〜!」
「何がそんなに面白いのよ!」

足を組み、椅子にふんぞり返った「女」は醜悪な笑顔を晴海に向けて

「ん〜?だ〜って、その絶望に打ち拉がれている顔がもう……ぷぷっ」

お姉ちゃん……あなたはいつだってそう。おいしい所は全部もっていって、私にはおこぼれだけ。
お姉ちゃん……あなたはいつだってそう。何かやらかしても、
その尻拭いはいつだって私。
お姉ちゃん……あなたは、あなたは、あなたは!!!!

今までの欝憤が爆発した晴海は、自分の立場や状況、思考など全てふっとび、超硬ブレードを構えて
獣の咆哮と共に走っていた!晴海の開いた瞳孔の先には、
椅子にふんぞり返っている「女」の首しか映っていなかった!!

「強制排除プログラム起動します。」

パワードスーツを着ていた晴海さえ、まったく反応出来なかった。一瞬のうちに
手首と足首に拘束具が掛けられていた。

「な?何時の間に!だけどこんな物!ん〜〜!あ、あれ?何で?」

いくら力を込めてもびくともしなかった。いや、それどころか段々と手足の感覚
が無くなっていった。

「無理無理。その拘束具は手足の運動神経に直接働き掛けて動けないようにする代物だから。
そこでおとなしく見てて」

足掻いても藻掻いてもぴくりともしない手足に晴海は怒り心頭だった。

「くそっくそっ動け!動いてよ!今動かなきゃ意味ないよ!!」
「もう〜晴海ったらドジっ娘ね。自分で設計した防衛システムにやられるなんて。うふ♪」

ニヤニヤしながら晴海を見下ろしていると、突然ブザーが鳴り響いた!

「「シューティングスター」発動します。危険ですので跳躍者以外は椅子に近づかないで下さい。」
「それじゃ、晴海ちゃん。バ〜イバ〜イ♪」

まるで椅子の周りにエネルギーが集まっているのか、びりびりとした空気が辺りに充満していた。
そして次第に「女」自身が光だした。

「くっ……姉さん、いや、瀬峰深海!必ず!必ず追い掛けて!ブッ殺してやる!必ずよ!」

深海は何か言い掛けたが、光の渦に飲み込まれ、「跳んで」しまった。

「時間跳躍完了致しました。データ、ロストします。」

計測盤やコントロールパネルなどの電源が落ち、晴海を縛っていた拘束具も消え去っていた。

立ち上がった晴海はとりあえず司令室に連絡した。
「あ、私。ターゲットは逃がしてしまったわ。そっちはどお?……そお。
こっちもデータはロストしてしまったわ。……いえ、まだよ!「時間跳躍」したということは
空間に「ゆらぎ」が生じているはずたわ。それがどこに続いているか調べて!
私もすぐ戻るわ、それじゃ」

瀬峰深海!たとえ地の果て宇宙の果て、はたまたそれが時間の果てだろうが追い掛けて、
追い掛けて、追い付いてやる!!

第2話 『押しかけ女房』

西暦2001年8月30日 PM23:30 トーキョー都

吉倉徹(よしくらとおる)は溜息混じりにトボトボと歩き、帰路についていた。

あ゛〜〜疲れた……。さすがに合コンを三日連続したのは無茶だったかな?
でもそれで何か成果があれば気持ちいい疲れって言えたんだけど……。なんで!!
なんでなんだ!!成果無しってなんなんだーーー!!
お持ち帰り、とは言わないけどせめて携帯の番号かメルアドぐらいは欲しかった
のに、それすら無いなんて!!!
結局おいしい所は他のやつらに持っていかれたし俺は元すら取れなかったよ………。
これを綾香が聞いたら

「だから言ったじゃない!!徹がモテるわけないのよ。もういい加減合コンなんて止めたら?
無駄な努力よ」

なんて言って喜ぶんだろうな……。
だが!!俺様はこの程度で諦めたりはしないぜ!!!いつか必ず運命の赤い糸が
導く女性を見つけだすんだ!!

おぼつかない足取りで何とかアパートまで帰ってくると、二階に上がる階段の所に
誰かが座っているのが見えた。
暗くてよく見えないが、近付いて見るとそれはよく見知った、幼馴染の山名綾香(やまなあやか)
だった。

「綾香?こんな所で何してんだ?」

綾香は一瞬不安そうな顔をしていたが、徹が一人なのを確認したら勝ち誇った顔をして

「ほ、ほ〜〜ら、だから言ったじゃない!!徹がモテるわけないのよ。
もういい加減合コンなんて止めたら?無駄な努力よ」

俺が予想した通り一字一句間違わないで言いやがって……。しかも笑顔でそう言われたら
ムラムラと反抗心が湧くんですけど。

「うむ、確かに今回は成果無しだった。だかしかーーし!!「失敗は成功の母」
という言葉があるように今日の失敗を明日に繋げるんだ!」
「はあ…………。あのさ、失敗を繋いだらまた失敗しちゃうよ。そ、それよりさ……、
合コンで女の子見つけるよりさ、もっと身近な所から探してみたら?」
「うーん、身近ね……」

そうは言ってもな……。うちの大学にはロクな女はいないし、アルバイト先は男だけだしな。
後は……ん?綾香の奴、何モジモジしてんだ?チラチラと俺の顔を上目遣いで見やがって。
トイレでも我慢してんのか?

「うん、いないな」

徹は自信満々に言うと、綾香は期待から落胆、激怒へと表情を変え、手に持っていた荷物を投げ付けて

「バカ!バカバカ!!この唐変木が!!あんたなんか私が居なきゃ何も出来ないくせに!
一生独り身でいちゃえー!!」

言いたいだけ言って、泣きながら走り去った綾香の後ろ姿をボーゼンと見ていた徹だったが、
投げ付けられた包みを開けると徹の大好物のグラタンがタッパに入っていた。

「あいつ、また俺で人体実験しようとしたな?」

まったく……、幼馴染だからって俺に構い過ぎだって。いい加減彼氏でも作りゃいいものを。
俺から見ても綾香はいい線いってそうだし、ショートカットが良く似合う可愛い女の子だから
モテると思うんだけどな……

綾香の気持ちを全く分かっていない徹は投げ付けられたタッパを拾い、
二階の自分の部屋に向かった……のだが、部屋の前まで来てある異変に気付いた。

「あれ?おかしいな」

自分の部屋の窓が明るい様子から、どうやら中の照明が点いてるようた

おかしいな……確かに消して部屋を出たと思ったけど、点けっぱなしだったかな?
いや、確かに間違いなく消した!!ということは……泥棒?ってそれもないか。
大体電気を点ける泥棒もいないしお金も無いしな。じゃあ……一体……
徹は恐る恐るドアノブを回してみると

「鍵は掛かってる?ますますわからん」

とりあえず鍵を入れて、鍵を外しドアノブをそ〜〜〜っと開けてみると

「あ、徹様!!お帰りなさい」

パタン

「ちょっと!!何で閉めるんですか?」

部屋で何か騒いでいる侵入者は置いといて、状況を整理しようとした。

え〜〜っと、ここは間違いなく俺の部屋だ。それは間違いない。そしてその部屋には何者かが
侵入していた。しかもメイドの格好で。う〜〜〜ん、よし!とりあえずコミュニケーションを
とってみよう!話してみないと判らないし、もしかしたら彼女が部屋を間違えているのかもな。

意を決した徹は今度は部屋に思いっきり飛び込んだ!

「お帰りなさい。どうしたんですか?」
「え、え〜〜っと、君は誰?……ってなんじゃこりゃーーー!!」

場違いなメイド姿に気を取られて気が付かなかったが、部屋の窓と周りの壁が粉々に砕けて
辺り一面ガラスと壁の破片だらけだった

「あ、これですか?「こっち」に来た時に勢い余って……てへ♪」
「てへ♪じゃなーーーい!!どうしてくれるんだよ!!こんなにぶっ壊して……いや、
今はそれは置いといて、君は誰??」
「あ、申し遅れました。私の名は瀬峰深海。貴方の奥さんです♪」

 

「システム、まもなく復帰します。」
「プログラムに問題ありません。ただ……」
「判ってるわ。後は向こうで対処するわ」

くそ……。結局姉さんが「跳んだ」正確なデータが分からないなんて……
ある程度予想していたけど、考えてみたら先手を取られっぱなしだわ!!
まあおおよその場所と時間は割り出したから、後は向こうで発見し即始末つければいいわ。
しかし、こうなることが分かっていたら生前に徹さんの詳しいデータを集めておいとけば
こんなことには……
まさか姉さんが徹さんに関する個人データの全てを消去していたなんて、準備が良過ぎるわ!!
まさに用意周到だったわね……。でも、こんなことで諦めないわ!!
必ず殺して、首を持って徹さんの墓前に報告するんだから!
他の誰でもない、私だけが姉さんを裁けるのよ。
積年の恨み……必ず果たす!!
でも……徹さんに会えるのは嬉しいな。

「部長!!データ入力完了致しました!!」
「システム復帰完了!!起動します!!」

電源が入り、モニターや計器盤が動き出し、スイッチパネルが点灯し晴海の座ってる椅子に
スポットライトが当たり目の前にモニターが現れた。

「マスター代理、こんにちは」
「早速だけど、一応確認するわ。瀬峰深海の入力したデータは残ってる?」
「いいえ。既に消去されています」

やっぱりね……分かっていたけど

「それじゃ、既にデータは入力してあるから始めて頂戴」
「了解致しました。それでは最終確認致します。目的地は「西暦2006年8月15日 
国家不明 座標@#$、194、090」で間違いないでしょうか。」
「多分間違ってるんだろうけど、そこまでしか分からなかったからしょうがないわ」
「了解致しました。尚、持っていきたい物が有りましたら身につけておいて下さい。5分後に
「シューティングスター」発動します」

装備品を一通り確認し、深呼吸をして気持ちを落ち着かせて覚悟を決めた。

姉さん!首根っこ洗って待ってらっしゃい!!

そして、椅子の周りにエネルギーが集まりだして光り、晴海は消えていった。

「時間跳躍完了致しました。」

 

西暦2006年8月15日 PM22:00

「ここは……どこ?」

晴海が「跳んだ」先……そこは何やら薄暗い世界のようだ。一定間隔に蛍光灯が点いていて
地面にはレールとおぼしき物が……

「ここは……どうやら鉄道のトンネルか地下鉄なのかしら」

周りを見渡していたその時、遠くから警笛の音と2つのライトが迫ってきた。

「ん?……あ、きゃああああああああ!!!!」

気づいた時には電車の先頭車両が目の前にあった

2006/09/24 To be continued.....

 

inserted by FC2 system