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山本くんとお姉さん2.5 〜『ちぃちゃんのアルバム』

第1部 『ちぃちゃんの片思い』


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山本くんとお姉さん2追加シナリオ

    山本くんとお姉さん2.5 〜『ちぃちゃんのアルバム』

※前作(「山本くんとお姉さん」「山本くんとお姉さん2」)をプレイしていなくても遊べますが、
  プレイしていないと、一部キャラの行動やオチが理解できない可能性があります。
※作中時は、「2」の数日後に設定しています。(五月下旬〜六月上旬)

>でてくるひと
比良坂千草…ちぃちゃん。「2」の<6>で登場した里香の友人。三つ編みのおさげっ娘で気が弱い。
      本編では、里香の内心で「私が引き立つ」と評されていた。誰かに片想い中らしいが……。
山本秋人…山本くん。姉と二人暮らしの主人公。基本的に姉萌えだが、空気を読むのが少しだけ苦手。
藤原里香…山本くんに恋する同級生。おとなしい系だが、本音と建前はしっかりと使い分ける。
      嫉妬深い。
飯田真琴…まー子。里香と千草の友人で、体育会系の世話焼き。やはり里香には引き立て役と評された。
矢島孝輔…名前だけ度々出ていた、山本くんの親友。バスケ部所属。
山本亜由美…弟を溺愛するキモ姉。今回は脇役お姉ちゃん。「2」のラストで告白された気もするが、
       弟の様子が全く変わらないので戸惑っているらしい。……でも、その辺のお話は「3」で。
山本梓…山本くんの従妹。見かけ上は冷静だが、キモ姉への激しい憎悪に身を焦がす。今回はチョイ役。


――里香ちゃんたち、早く付き合わないかな……

――早くくっついちゃえばいいのにな……

――そうすれば……

<1>

………
……

 少女が写真を眺めている。

 飄々とした少年が、写真の中から微笑みかけてくる。
  少女は切なそうに、そっとかき抱いた。
 
「はぁ……」

 溜息。
  こみ上がる熱い吐息が、想い人の名を乗せて、呟きになる。

「こうすけ……くん……」

 その愛しい響きに、彼女は酔いしれる。
  
「すき……」
  
  
  ―――矢島孝輔は、少女に、恋い慕われていた。

 …
  ……
  ………
 
  ぺた。
  ぺた。ぺた。
 
  少女は大きい方のアルバムに、写真を戻す。
  手元に残した何枚かのお気に入りは、定期入れの中へ。
  彼女にとってはこの革ケースだって、小さな小さな――アルバムだ。
  これがあるだけで、いつでもどこでも彼と一緒……写真の中で笑う彼、想い人の矢島孝輔と。
 
 
「ふぅ……」

 写真を仕舞い終えて、また溜息。
  ――でも。嗚呼、悲しい哉。
  今度の冷めた吐息は、なんか無関係な人名を乗せて、ぼやきになる。

「山本……くんの……」

 その甲斐性なしの響きに、彼女は目を吊り上げる。

 

「まぬけ」

 

 ―――山本くんは、主人公なのに、コキおろされていた。

2

<2>
=====================================
  
「アキト、おまえさ」
『――?』
「おまえ最近、藤原と仲いい、よな?」
『―――――』
「そうかぁ? なんか、すげー仲よさげに見えるんだけどさ……」
『―――――――』
「……………そか」
『――――?』
「あ、あのな、アキト。ちょっとマジな話なんだが」
『――』
「俺な…………」
『――』
「…………いや。やっぱ、いいわ」
『――――――?』
「まー気にスンナ。……ほれ、だいぶ遅くなっちまったし」
『――――』
「ああ、んじゃな」

=====================================
―――
――

 

 日本史の太田先生は、催眠術の達人だ。

 

 見渡してみる。――生存率、30%。
  こうしている今も、必死に抵抗を続けていた川田くんが先生の魔の手に…………かかった。

 太田先生は、どうでもいい薀蓄を延々と語る事だけが生き甲斐の、おじいちゃんせんせい。
  語らせてさえおけば、滅多に怒ることもない。だから生徒にとっては、平和でとても良い授業。
  ……の、はずなんだけど。
 
  ものごとには限度というものがあって。
  何事もやりすぎはよくない。平和ボケ反対。
  ――この陽気に。
  お昼休み直後の、この時間帯に。
  先生の異様に間延びした、この口調に。
  一般的高校生の興味を喚起しようがない、このトピックス。
 
  クラスメートの魔法抵抗力を根こそぎ奪うこの環境下では、先生の催眠攻撃はあまりに強力すぎた。
  もはや教室は、お花畑咲き乱れるアッチ側の世界だ。倒れ逝く同級生達の、無言なる阿鼻叫喚……。
  先生、なんだかしあわせそうだなぁ。

 

 ――え? 私ですか?
  私は、居眠りなんかしませんよ〜。
  確かに昨晩夜更かしをしたせいで、ハッキリ言っちゃえば朝から眠かったりします。
  それでも私、比良坂千草には、とっておきの目覚ましのおまじないがあるんだから。
  ね、こうすけくん?

 教室の向こう側の想い人、矢島孝輔くんの横顔を眺める――それだけで、
  眠気など起ころうはずもない。
  バスケ部で鍛えられた、すらりとした長身。ちょっぴり色っぽい、左耳のピアス。
  少しこわいけれど、ワイルドな逞しさを魅せつける面影。
  孝輔くんは、クラスの中でもとりわけ目立つ、格好良い人なのだ。
  そんな彼の横顔を、遠くから眺めていられるこの瞬間が、私のとびっきりの幸せ。
  だから眠くなんかならないのだ。
 

 でも。
  いつも、横顔。

 ……そう、横顔。私が見ているのは、いつも彼の横顔だ。
  孝輔くんの瞳が、私を映すことはないから。彼の視線の先に居るは、私じゃないから。
  私は単なる「同級生A」でしかなくて、彼はいつも「特別な同級生」しか見ていないから。

 孝輔くんの見ているもの――思い詰めたような熱い眼差しの先。
  それが私に向けられたものならば、どんなにか舞い上がれることだろう。
  どんなにか幸せなことだろう。
  でもそれは、私の席とは正反対の、窓際の一角で。
  夢見る屍体が累々のこのクラスの中でも、これまた別種の異空間を作り上げている一角で。

 ――里香ちゃんの席で。

 藤原里香ちゃん。

 私の中学の頃からの親友。
  孝輔くんの瞳の中にいる、女の子。
  そして――――そんな孝輔くんの親友に、すっかり心を奪われている奇特な子。

 里香ちゃんは教科書でも忘れたのかな。隣りの席の山本くんに机をくっつけている。
  ……でも、明らかにくっつきすぎ。
  筆談でもしているのかな。しきりにお互いのノートに手を伸ばして、何かを書きあっている。
  ……なんかもう、好きにやってろってかんじ。
  時折楽しそうに、山本くんの胸をつついたり、膝を叩いたり、耳たぶをつまんだり。
  ……はいはい、スキンシップですか。そーですか。
 
  イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ 
  イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ イチャイチャ 

 どう見たって、ただイチャイチャしているだけだ。
  教壇からだって、イチャイチャしているようにしか見えないだろう。
  孝輔くんにだって――イチャイチャしているようにしか、見えてないはず。
  授業中とか催眠術とかもう関係なく、その一角だけは、青りんご風味の隔離地域。
  その苦笑せざるを得ない甘酸っぱい空気に、気づいていないのは当事者の二人だけだろう。
  ……あぁいや、たぶん違う。
  私の長年の経験によれば、里香ちゃんは本当は忘れ物なんかしてないはず。あれは、わざとだ。
  だから。
  それに気づいていないのは、教室中で山本くんただ一人だけなのかも。
 

 ……あ〜あ、まったく。
  どこがそんなにいいのだろうか、山本くんの。
  人畜無害。悪く言えば存在感希薄。真琴ちゃんに言わせれば昼行灯。ともかく目立たない。
  色んな意味で、親友の孝輔くんとは正反対なのだ。
  女子の側からは“孝輔くんの尻尾”という、どうしようもない評価しかされていなかった。
 
  ちなみに、私の目からコメントさせてもらうと。
  幸か不幸か、山本くんは私にとって「想い人の親友であり、親友の想い人」という立場にいるわけで。
  他の子よりは少しだけ、山本くんを意識する機会が多い。
  そこで気づいたのだが……。
  彼は意外にも(本当に意外)顔つきは精悍だったりする。
  ――ただ、そこまで観察する子は少ないけど。
  頭の方も、学年優秀者表(の最末尾)に載るぐらいには良い。――彼の名前を探す子も少ないけど。
  体育の時だって、(孝輔くん程ではないが)結構格好いい。――敢えて彼に注目する子も少ないけど。
  よく考えてみると、どうしてここまで話題にのぼらないのか……それがむしろ、不思議なひとだ。
 
  でも、だからって。
  やっぱり私はこの人に、花マルをつけてあげる気にはならない。
  いつも里香ちゃんから愚痴を聞かされている私には、まず彼の悪癖が我慢ならないのだ。
  彼の悪癖――そのシスコンっぷり。そして、鈍感っぷり。
  話を聞いていると、「まぬけかこの人は!?」と呆れる時がある……。

 不思議なひと。でも、やっぱり評価の低いひと。
  ――それが私にとっての“山本くん”だった。

………
……

 2−Bの教室に描かれた、視線のトライアングル。
  私と、孝輔くんと、里香ちゃんと。
  ……プラス、それに気づかないから多角形に加われない、まぬけな山本くんと。

 あぁ、山本くん、本当にまぬけづらだよ。
  なんで、こんなあからさまな里香ちゃんの気持ちに、これっぽっちも気づかないの……?
  どうしてはやく、里香ちゃんと付き合い始めないの……?
  山本くんさえシャキッとすれば、里香ちゃんは幸せになれるのに。

 そうすれば、孝輔くんも諦めがつくのに。
  そうすれば、私の視線にも応えてくれるはずなのに。
  はやく早く、里香ちゃんと山本くんには、くっついて欲しいよ。
  どっちからでもいいから、告白しちゃって欲しい。
  すごくお似合いだよ。早く付き合い始めて欲しい。応援する。
  だから………
  
 
  ……だから、ね。孝輔くん。
  そんな目で、里香ちゃんを見つめないで。
  里香ちゃんは、もう山本くんのものなんだよ?
  いくら見つめたって、里香ちゃんは絶対振り向いてくれないんだよ?
  あの二人は、もうすぐ付き合い始めるんだから。

 私を……見てよ。
  里香ちゃんの代わりに、私がずっとずっと、貴方を見守っているんだよ?
 
  ちゃんと……見てるから。
  いつだって、貴方を、見てるから……。
  私も……見てよ……。

 放課後。

 私は上履きを脱ぎながら、憂鬱な気分に沈んでいた。
  いつもなら体育館へ直行して、他の女子生徒達に混じってバスケ部の練習を見学しに行くところ。
  孝輔くんの活躍を見守りに行くところ。
  でも、今日は……どうしようか。
「………」 
  今朝方から気配はあった。準備もしていた。それでもやっぱり、始まると憂鬱なものだ。
  ――下腹部に、ずしりと重たいもの。
  今日は、早く家に帰った方がいいかもしれないな……。

 だから制服の胸ポケットを探って、定期入れを取り出す。
  ……ううん、違うよ。用があるのは、バスの定期券じゃないよ。
  ――中から出てくる、孝輔くんたちの笑顔。お気に入りの孝輔くんの写真。
 
  ごめんね、孝輔くん……。
  今日は私、もう帰ることにするよ……。
  ごめんね。見守ってあげられなくて、ごめんね……。
  ゆるしてね……。きらいにならないでね……。
 
  そっと、写真をおでこにあてた。
 
  ………
  ……
  …

「ちぃちゃ〜ん……」
  ブルーな気分で昇降口を出た途端、これまたどんより陰気な親友にすがりつかれた。
 
「里香ちゃん、まだ学校にいたの〜? ……山本くんと一緒に帰ったんじゃなかったの?」
  ついさっきだ。
  里香ちゃんは山本くんをつかまえて(というか、ひっとらえて)、意気揚々と教室を出て行ったはず。
 
「……つれてかれた……」
  情けないしょげ顔で、無残な戦果報告。……っていうか、また?
  思わずよしよしと、親友の頭を撫でてしまう。
 
「あのお姉さん、また校門で待ち伏せしててさぁ……」
 
  最近の里香ちゃんは、こうやって返り討ちにあうことが多い。
  よっぽど“山本くんのお姉さん”に嫌われちゃったらしいのだ。
  ……というか、学校まで迎えに来る実の姉に、ホイホイ連れていかれる山本くんもどうかしているが。
 
「いつから伏せていたのか分かんないけどさぁ、『秋く〜んっ』って、校門の影から躍り出てきてさぁ。
  ドンッってわたしを押しのけて、間に割り込むんだよぉ? 肘鉄つきで。見てよこの痣!?
  それでさぁ。『牛乳がお一人様一本限りの二十円なの』 じゃあ百円やるからそこをどけと。帰れと。
  『だから、お姉ちゃんときて』とか。“きて”じゃないよねぇ? ちぃちゃんもそう思うよねぇ!?
  それでぇ、『分かったよ姉さん』 爽やかな山本くんがこれまた可愛いんだわ〜……じゃなくてっ。
  置き去りのわたしに何か言いたそうだったの、山本くん。でもぐいぐい引っ張っていかれてさぁ〜!
  知ってる? 『姉さん、重そうだからその鞄持ってあげるよ』って、荷物持ってあげるんだよ? 
  山本くん優しすぎだよねぇ〜。だからつけあがるんだよ、『秋く〜んっ』なんて甘えてんじゃ――
 
  ―――って。
  ちぃちゃん待ってよー! あ〜ん、置いてかないでー! はなしきいてー!」

 はいはい。
  ここで咆えてないで、お姉さんの前で挑んでよ。里香ちゃん、負け犬根性丸出し……。
  ほんと、しっかりしてよ。ちゃんと山本くんと結ばれてよ。

「はぁ……。山本くんって、やっぱりシスコンだねぇ〜」
  慌てて追いついてきた里香ちゃんに、思わず本音を漏らしてしまう。
 
「や、山本くんは悪くないんだよっ!? あのお姉さんが変なのっ!!」
  里香ちゃんが、顔を真っ赤にして否定する。
  山本くんのシスコンを指摘すると、いつもこうだ。
  恋する乙女の贔屓目ってゆうのは、度を越すと滑稽というより哀れよねぇ……。
  その点、孝輔くんみたいに誰が見ても格好いい人は、これ以上贔屓のしようがないから安心。

「はいはい。里香ちゃんも、それならハッキリ言ってやればいいのに」
「はぅ?」
「お姉さんに、直接ビシッと言ってやればいいんだよ。『私達に構わないでください』って」
「…………はぅ」
「里香ちゃん、ちょっと弱気になりすぎだと思うよ?」
「そ、そんなことないもん! ちぃちゃんはあの人に会ったことないから、
  そんなこと言えるんだよ〜」
「いくら仲が良くたって、たかが姉弟だよ? 実のお姉さんに、そこまで干渉される理由ないよ」
「そ、そうだけどさぁ」
「がんばって。里香ちゃん、ふぁいと〜」
「でもさぁ……。……こわい」
「お姉さんが?」
「……ちがうよ。山本くんが、だよ」

 ……はぁ?
  山本くんなんか柔和というか柔弱というか、気弱な私でさえこわく感じないのに。
 
「少なくとも彼の目の届くところで、あのお姉さんに下手な手出しはできないよ……。
  もし万が一、あの人を傷つけたってことが彼に知れたら……」
「知れたら……?」

 里香ちゃんは、それには何も答えなかった。
  苦笑して、小さな肩を竦めるだけだった。
  ただぽつりと、少し寂しそうな顔で、まるで関係のないことを口にする。

「彼ね、頑固だから」
  ……頑固? 
「山本くんが? ぜんぜんそんな風には見えないけど……」
  というか、頑固とは対極に位置する人のように思える。
  自己主張しないというか、流されるだけというか、……優柔不断にしか見えないけどなぁ。

「ちぃちゃんはさ、彼のことよく知らないから」
  すこしだけ自慢げに、里香ちゃんが薄い胸を張った。
  想い人をあっさり拉致られといて、そんなこと言っても説得力がないよ、里香ちゃん……。

「頑固だよぉ。もう、すっごく」
  里香ちゃんが、両手を大きくぶんぶん振ってみせる。

「とても見ていられないぐらい、頑固なんだよ」
  小さな身体のそんな仕草が、どこか悲しげな風を漂わせる。

「だからね。わたしが守ってあげなくちゃって、思うの。
  わたしじゃなきゃ駄目なんだよ。わたしじゃないと、彼が大変なことになっちゃうよ。
  あのお姉さんでは、絶対駄目。あの人じゃ、このままじゃ、いつか山本くん……」
「……いつか?」

 里香ちゃんはやっぱり何も答えなかった。
  涼しくなってきた風が、里香ちゃんの短い髪を大きく揺らす。
  可愛らしく纏まっていた髪が、乱れる。崩れる。
 
「はうぅぅ、ぼさぼさ〜……。
  ま、ともかくね〜。真正面からあのお姉さんと張り合っても、勝ち目がないんだよ。
  ……っていうか、凄い疲れるし。
  だから隙を伺ってぇ、横合いから掠め盗るようにぃ ――とゆーのが、里香のやり方なのだ」

 里香ちゃん、それは悪女っぽいよ。……似合ってるけど。
  それにまだまだ時間がかかりそうだってことだよね、結局は。
  も〜、早いとこバシッとキメて欲しいのになぁ……。
  
「それにね。わたしは一生、あの人を“お義姉さん”と呼んでいく羽目になるわけでしょ?
  年賀の挨拶の時にね、わたし達の子供が、嫁き遅れのあの人からお年玉貰えないと可哀想でしょ?
  だからね、できるだけ仲良くしたいんだよ。ほんと。
  あぁ……でも、やだな、やだな。
  披露宴でマイク握り締めたまま、これみよがしにメソメソ泣き始めるんだろうな、あの人。
  それでそれでぇ、弟の思い出語りを延々と始めちゃって、場を思いっっっきり白けさせてくれてぇ。
  挙句の果てに山本くんに泣きつこうとして、式場スタッフに連れ出されていくんだろうなぁ……。
  はぅぅ、結婚式に呼びたくないなぁ……。どこか遠いお空の教会で、二人だけで挙げ―――
 
  ―――って。
  ちぃちゃん待ってよー! あ〜ん、置いてかないでー! はなしきいてー!」

 はいはい。妄想の中でお式挙げてないで。
  結婚式にはお祝儀包んであげるから、頑張って現実の山本くんを射止めてよ。
  相変わらず妄想ぱんぱんの“里香ちゃん話”を聞いてると、
  余計におなかがいたくなってくるよう……。

「ねー、一人だとさみしいよう。いっしょにかえろ〜? どっか寄っていこ〜? ねーねーねーねー」
  うるうるしながらまとわりついてくる、負け組の親友。
「わ、わかったよ、里香ちゃん。わかったから、あんまりぶら下がらないで〜」
 
  はぁ……。
  おなかいたいのになぁ……。
  私のは、結構重いのになぁ……。

 明日は本格的に、生理きついだろうな……。

2006/07/09 To be continued....

 

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