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教授と助手とロリコンの微笑み

第1部
第2部


第1話 『こんなの認めない!』

「ごほっごほっ…一体…何が?」
あたりは機械の爆発ですっかりメチャメチャになってしまったようだ。

「煙でよく見えないが…かすり傷ですんだようだ。」
あの爆発でかすり傷程度で済んだとは、運が良かったようだ。
「あ、教授と弥生さんは?」
キョロキョロと辺りを見回しても煙で全く見えない。

さてここでなにがあったのか?
そもそも事の発端は…

―――1時間前―――

「さて、今日の講義はっと…B棟2階か」
さて行くか、と思った時
ピーンポーン
ん?校内放送?

「3年生の佐藤樹くん、佐藤樹くん、稲本教授がお呼びです。至急実験棟3へ行ってください。
繰り返します…」

ゲ!次講義あるのにあの教授、なんで呼び出すかな…
でもすぐ行かないと、単位落とされるかも…

5分後―

「おー待っておったぞ、樹くん!!」
「なに言ってんですか、講義あるのに呼び出したりして…。」
「いやー悪い悪い。」
そう、この目の前にいるのが生物学の権威(?)、稲本炉利教授。
つい先日発表した「宇宙ステーションにおける性欲と幼女の関係に対しての一考察」
とかいうイタイ論文を発表して一大センセーションを巻き起こしてたっけ。

…まあ違う意味で、だけど。そして隣にいるのが
「こんにちは、樹。」
この教授の助手をしている氷室弥生さん。
身長175センチ、ボンキュッボンのナイスバデーなのですが、、

別名「氷の巨人」
なにしろ笑ったことがなく、いつもしかめっ面していてとにかく近寄りがたい雰囲気があるんだよな…

しかも下手にちょっかいかけると凄まじい蹴りが飛んでくるんで今では俺と教授しか話しかけないんだよな。

「ごめんなさいね、私は講義が終わってからでも良いじゃないって言ったんだけど、
教授がどうしても今呼ぶって言うから…。」
「いえ、弥生さんは悪くありませんし、講義の方は代返頼んどいたので。さて…」
さっきからにこにこ顔の教授をジト目で見て
「それよりも教授、一体なんの用ですか?講義はもういいですが
この後晴香ちゃんとデートなんですからね。」

それを聞いた弥生さんがピクッ

あれ?弥生さん、額に青筋が浮かんでいるような…
いつにも増して不機嫌なのかな?

「大丈夫だよ樹くん、時間はとらせないよ。」
本当かなー
「実はついに念願の発明品が完成したのだ!!で、早速樹くんに成果を見せたくてね。」
「え?発明品ってあの「どんな巨乳もひんぬーにする薬」ですか?」
「いや、あれは実験した所、ひんぬーじゃなくてチチそのものが
無くなってしまってなー、その上5分しか効果が無かったのだ。」

それもそれで凄いな
「え?じゃあなにが完成したんですか?」

すると教授はなにやら袋から液体が入った瓶をだして
「ふっふっふっ…じゃーん!若返り薬〜!」
あれ?意外とまともだ。
「説明しよう!この薬は野郎が飲んでもなんともないが、女性が飲むとアラ不思議。
なんと10歳児くらいになっちゃうのだ〜!!」

……………………は?

「え、え〜と、それ何の役に立つんですか?」
すると教授は笑顔で
「わたしがうれしい!」
だめだこりゃ

「ふむ、樹くんは私と同類だし、もっと喜んでもらえると思ったのだが…。」
「喜びません!!大体俺はロリコンじゃないです!!」
それを聞いた教授はニヤァ〜と笑って
「ほお〜、そうかね?なら君の彼女の晴香くんだっけか?彼女はどうなのかね?」
「ちょっと胸が無いこと以外は普通の女子大生ですよ。」
「そうなのか?」
「そうです!」

そう言うと教授は残念そうな顔をして
そうか…と呟いて一応は納得したようだ。

「ま、それはともかくこの若返り薬の実験も済んで結果をみるだけなんだよ」
そういうと目を輝かせてじーっと弥生さんを見て…え?

まさか!
「そう!弥生くんに飲んでもらった。…どう?気分は?」
その瞬間弥生さんのハイキックが教授の顔面にクリーンヒット!
あ、ミニスカートで蹴りなんかしたら見えちゃいますよ。
つづけざま右ストレートが放たれたが、これはかわしたー!
あ!教授がかわしたひょうしになんか機械のスイッチが入ったようだ。
たしかあの機械は漏電してて―――

そして現在――

「教授ー!弥生さーん!無事ですかー!」
「ごほっごほっ、い、樹?大丈夫?怪我は?」
煙でよく見えないけど、弥生さんは無事のようだ。

やっと少しずつ煙も引いていってなんとか周りも見えてきた。

「あ!弥生さん!!怪我とかだい…じょ…え?」
「どうしたの、樹?」
「や、弥生さん、その姿…」

次回 第二話「い、い、一緒に住むぅ?」

第2話 『い、い、一緒に住むぅ?

うふ、うふ、うふふふふ…だめだ、考えただけで笑いがこみ上げてくる。

今が3時だから、あと2時間で樹さんが講義を終えてこの門から出てくるわ。

本当は5時に講義が終わって、6時待ち合わせの予定だったのだが
待ちきれなくて2時間も早くきてしまった…。

でもこうやって樹さんのことを考えながら待っていれば
時間なんてあっというまに過ぎちゃうわ。

それに待っているのもデートのうちだし。
んふふふ、今日はどうしようかしら。とりあえず今日公開の映画を見る予定だったわね。
樹さんが見たがっていたけど、どんな映画なのかしら。

チケットを見ると「Thief cat」と書いているわね…
Catってことは猫が主人公なのね。動物映画なのかしら。
でも樹さんが言うにはサスペンスホラーらしいし…
それにチケットには女性が鋸を振り回しながら女性を追いかける絵がのっているわね…。
猫に鋸?うーん、いまいちピンとこないけど、ホラーならキャーとか言って
手握ったり、抱きついたりと怖がるふりして暗闇に乗じて色々できるわね。

えへ、えへ、えへへへ…っといけないいけない、想像したら涎が。

その後はちょっと小奇麗な所で食事をして、夜の静かな公園で
愛を語り合い、そしてその後は近くのホテルであんなことやこんなことを………。
うふふふ、今夜は徹夜ねー……っといけないいけないつい興奮しすぎて鼻血が…。

しかも今回は秘策を用意しているのよね。
最近ゴムばかりだから前回のデートの時に樹さんの財布に入っていたゴムを
隙をみてこっそりと針で穴を開けているんだから。
まあゴムに穴が開いているかなんて、私が付けてあげている限り気づかないだろうし、
生も何回かしているからその時にもしかして…って思うわね。
しかも今日は危険日というこの2つの条件が揃えばできるかもしれない。
いいえ、できてみせるわ!!
そして万が一できちゃえばこれをきっかけにして学生結婚も夢では……
学生…結婚…結婚…結婚!!!!!!
キャー!キャー!!いいわっ!!夢が現実に!!……っといけないいけないつい
暴走しちゃってアソコが濡れてきちゃった。

大体樹さんも悪いのよ。いっつも私が結婚しようよとか
いつ両親に挨拶に来てくれるの?とか聞いているのに、曖昧な返事でかわされちゃうのよね。
だからこんな方法をとっちゃうんだから。
もしかして樹さんは、結婚ということに対してちょっと引いているのかもしれないわね。
まあそれならそれで既成事実を盾に迫れば、優しい樹さんだから責任をとって結婚を了承するわね。
ふふ、バッグには私の名前と判が押された婚姻届けも入っているから、
できちゃったらすぐ書いてもらって役所に持っていかなきゃ。
…………っと気が付けばもう4時だ。時間がたつのが早いな…。
ってなんで通行人のくせに私をジロジロ見んのよ。
見せもんじゃないからさっさと行きなさいよ!!ったく……ん?
一匹の「害虫」が私に近づいてくるわね。なに?彼氏なんかほっといてカラオケにでも行こうだぁ?
なんで私がアンタみたいな「害虫」とカラオケに行かなきゃいけないのよ。
「人間」の「男性」としかお付き合いはしませんので。…まあその人は樹さんしかいないのですが。
とはいえあまりはっきり言っても可哀想なので少しオブラードに包んで言ってあげましょう。

「害虫はとっとと自分の巣に帰って下さい。シッシッ」

うん、どうやら私の言葉を理解できたようね。それぐらいの知能はもっていて良かったわ。
帰り際なにか叫んでいたようだったけどなに言っていたのかさっぱり解らなかった。
全く…巣から出てこないでほしいです。

時計を見るとそろそろ5時になりそうだ。
ああ………早く…早く来て…樹さん…。

一方そのころ………

あの爆発事故で奇跡的にかすり傷で済んだ俺と弥生さんは、
埋まっていた教授を救出して改めて部屋を見渡してみた。
機械は壊れ、壁は崩れ、窓ガラスや薬品が入った瓶などは全部割れて、
すでに原型を留めないぐらい破壊されてしまったようだ。
しかしこのへやの現状よりも今は弥生さんが大変だ。
「少し状況を整理しましょう。」
「そうだな樹くん。」
「………………………」
一回深呼吸して
「まさしく部屋は全壊、機械も薬品類も木っ端微塵なのですが、みんなかすり傷ですんだのは
幸運でした。」
「うむ、まったくだ」
「………………………」
そこでさっきから黙っている弥生さんを見て
「ただ…弥生さんが………。」
「ん?弥生くんがどうかしたか?実験は成功し、ちっちゃくなって可愛くなったではないか。
うんうん」

ブチッ

ん?今なにか紐が切れたような音が…

「こんのロリコン教授が!!死ね!!」
「や、弥生さん!!落ち着いて!」

いきなり弥生さんが教授につかみかかったので、羽交い締めにして引き離した。
「樹!離せ!人をモルモットがわりにして!許さん!」
そう、教授が作った「若返り薬」は見事に成功し、それを
(騙されて)飲んだ弥生さんは(外見は)10歳児ぐらいになってしまったのだ。

「ち、ちょっと弥生さん、教授を殺したら元に戻れなくなるかもしれませんから
乱暴はやめましょう?」
「うっ………たしかに。」
ひとまず落ち着いたところでこれからどうするか話合った。

まずこの部屋はもう使えないので、元に戻す薬の製作は別の実験室でやり、
その実験室は教授の方で探すとのことだ。そして俺と弥生さんは今日の所はとりあえず帰ることにした。
門に向かう帰り道……
「しかしあの教授、服まで持っているとは…」
「呆れてものもいえないわ」
このままでは帰れないことを言うと、教授は別の部屋からぴったりのサイズの
トレーナーとスカートを持ってきたのだ。
「でもよく似合いますよ」
「似合っちゃダメだろ!…たく」
元気をだしてもらおうと思って言ってみたが、言葉はともかく少し表情が和やかになったようだ。よかった。
「で、これからどうしますか?」
「樹はこれからデートだろ?私は当座の寝床を探さないとな。」
「え?なんでですか?」俺がそういうと弥生さんは複雑な表情で
「樹も知っていると思うが、私の家は親が道場を開いているのは知っているな?」
「ええ、たしか親父さんが師範をしてるとか…」
そう、弥生さんの親父さんは総合格闘技の師範で、年末の格闘技イベントに出場していかつい外人を
蹴りでばったばったとマットに沈めてたっけ。
「闘うことしか頭にない親父の家に娘がちっちゃくなって帰ってみたらどうなるか…わかるだろ?
なに、電話で富士の樹海に籠もるとでも言っとけば怪しまないしな」
なにげに凄いこと言いってるがそれで納得する親も凄いな。
まぁたしかに家に帰れないのはわかったけど、でも寝床っていってもホテルじゃ
お金がいくら掛かるかわからないし、泊めてくれる友人がいるかどうかも……そうだ!
「弥生さん!いいこと思いつきました。当座でいいなら俺の家にきませんか?」
「は?」弥生さんは驚いているようだ
「俺の家だったら大学にも近いし、部屋も一つ空いているから遠慮することないですよ」
「待て待て、そう言ってくれるのは嬉しいが樹には彼女がいるだろ?無用の誤解を招くことになるだろ。」
弥生さんはそう言うがやはり心配だ
「でも…」
「そんなに心配するな。寝床くらいなんとでもなるさ。それよりも自分のことを考えな。
ほれ、門の所で身を捩っている子がそうではないのか?」
見ると門の所に晴香が頭をブンブン振って奇声をあげているのが見えた。
な、なにをしているんだ?
すると弥生さんが笑顔で
「早く行ってやれ。これ以上待たせるとあれ、通報されるぞ」
そう言う弥生さんを見ると笑顔ではあるけれど、なんか淋しそうに見えた
「でも……。」
「まったく…そんなんじゃハゲるぞ。大丈夫だって、寝床も大事だがまずは
元に戻ることが先決だからな。」
それはまあそうですけど…
「このあと実験棟1にいる後藤教授にことの次第を説明して相談するから、当座の寝床も大丈夫だ。
だから安心して行ってこい」
そうは言ってもなんか一抹の不安はあるけれど、俺なんかよりもしっかりしているから大丈夫だろう。
「わかりました。弥生さんが大丈夫と言うのでしたら大丈夫なのでしょう。」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だから」
「でも約束して下さい。なにかあったら遠慮なく電話して下さい。飛んで行きますから」
「よく覚えておくわ」
そう言うと俺は門の所に向かって歩きだした。
その時後ろの弥生さんからぼそっとなにか独り言が聞こえたような気がしした。
「樹、あなたのその優しさは彼女だけに向けなさい。私に向けたら…期待しちゃうじゃない」

次回第3話「あんなヤツに遅れをとるとは…」

第3話 『あんなヤツに遅れをとるとは…』

「やはりあなたは泥棒猫だったのね…今までよくも騙してくれたわね!」
「よく言うじゃない…騙される方が悪いってね。」
今世紀最凶のホラーというから見てみたが内容は簡単に言うと三角関係のもつれによるドロドロ劇のようだ。
そんなに恐くはないが、鋸を振り回す黒髪の女性はちょっとだけ恐かったな。

映画館から出ると晴香ちゃんが
「樹さ〜ん、こ、恐かったよー。」
「え?そ、そう?」
映画が始まって終始キャー!とか叫んで手握ってきたり抱きついてきたりしていたから、
やっぱりなんだかんだ言っても、晴香ちゃんも女性ってことだな。いや、
疑ったことはないけどさ

「樹さん、お腹すきませんか?近くにオススメのレストランがありますから行ってみましょ!」
「あ、ちょちょっと晴香ちゃん、そんなに引っ張らないで。」
なんか今日は晴香ちゃんにリードされっぱなしだなー。
そういえばそろそろ弥生さんの方も終わったかな?あとで電話してどうなったか聞いてみるか。


「なるほど、よくわかったよ。しかし弥生くんも大変だったね。」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。ほかに頼る人もいなかったので…」
この人は後藤毅教授。私が入学式の時に起こした暴行事件で、正当防衛を証明してくれた恩人で、
公私ともに相談に乗ってもらったりと、とても世話になった人だ。
「さて、それで当座の寝床だが、弥生くんさえよければ敷地内の女子寮はどうだ?」
「女子寮ですか?でも寮は…」そう言うと教授は
「わかっている、取り壊しの件だろ?」
そう、寮は近日中に取り壊しの予定と聞いているが。
「近日中に取り壊すはずだったのだが、急遽予定が変わってな、無期限延期になったのだよ。」
「え?本当ですか?」
なんという幸運だろう。やはり後藤教授に相談して良かった。
「ぜひ、入寮させて下さい。お願い致します。」

10分後…………

プルル…プルル…プルル…ピッ
「……ああ、獲物が見つかった。今女子寮に向かっている。……理由は分からんが
10歳くらいになっているから……大丈夫だ、「あれ」はまだ未経験だろう。
10歳児の体に未経験、お得意さん辺りなら言い値で買ってくれるだろう……ああ、しくじるなよ。」
ピッ

くっくっくっ…これで借金も返済のメドがついたか…弥生くん
…悪く思うなよ…

女子寮についてみると建物は明かりがついてなく、辺りは街灯1つもないほど真っ暗だった。
(いくら構内の外れとはいえ、薄気味悪いな。)
僅かな不安を覚えつつも他に行くあてもないので、とりあえず中に入り教授が指示した
101号室へ行ってみた。

部屋に入り、電気をつけてみるとさすがに取り壊す予定の建物だっただけあって
壁や床などあちこちが相当くたびれているようだ。
「まあ所詮当座の寝床だから贅沢は言えないな。」
荷物を置いて座ると、急にドッと疲れてきた。
「ああ…今日は疲れた…もうこんな時間か…」
時計を見た時、ふと樹の顔が浮かんだ
(そういえば今頃デートの真っ最中だな…しかし…)
数時間前門の所で見た彼女を思い出し
(ああいうのが樹の趣味なのか?私には挙動不審者にしか見えんが…)
さて、いつまでもこんなこと考えても仕方ない。
「そろそろ寝るか。」
そう言って立ち上がったその時

パッ

急に電気が消えたと思ったら、ベランダとドアから何者かが侵入してきた!
(!)
抵抗の構えをしようと動く前に、中の一人が手に持っていた機械を体に押し当ててスイッチを入れた。

鋭い音と一瞬の閃光とともに体は動かなくなった。
(これはスタンガン…なんで…)
それを最後に全ての思考は深い闇の中へ沈んでいった

 

「ねぇ〜樹さん〜私のこと、ア・イ・シ・テ・ル?」
「い、いきなりどうしたの?」
食事が終わったらさてどうしよう、と考えていた時いきなり晴香ちゃんに
腕を引っ張られてこの公園にきてしまった。
さすがに夜の公園はカップルが溢れていて、物陰ではキスどころかエッチもしているようだ。
辺りを伺っていると、腕に晴香ちゃんが絡みついてきて甘える声で
「だって〜、いっつも樹さんったらはっきりしてくれないし、
付き合いも長いからそろそろ……ね♪」
「………」

またこの話か…自分としてはまだ早いと思うんだけど晴香ちゃ ん、ことあるごとに言ってくるんだよな…
なんて言ってはぐらかそう?そう考えていると急に背筋に悪寒が走った。
見ると晴香ちゃんの目が不気味に光っていた。
「まさか樹さん…他に女が…」
「いないいないいない!イナイデスヨ!」
いきなりなんで声が裏返っちゃったけどやばい、あの目をした時の晴香ちゃんは危険だ!!
とにかく今は誤解を解かないと!
「大体俺に女がいるわけないだろ?週に何回も会ってるし、会わない日はアルバイトしてるしで
チャンスすらないよ。」
そういうと晴香ちゃんの目が元に戻った。
「そうよね。私以外の女の匂いもしないし…、ごめんなさい疑ったりして…。」
「い、いやいいんだよ」

危なかった…あの目を見たのは久しぶりだ…。今まで何度か俺が他の女の子と話したりしている所を
見られると、あの目で奇声をあげながら女の子に襲い掛かってたっけ。
それで大人しくさせるために付き合い始めたんだよな。う〜ん、今考えるとすごい理由だな。
「それじゃあ〜そろそろ〜私たちの体で愛を語り合いませんか?」
いや、それ男が言うセリフなんですけど。…とはいえ自分も立派な男ですし、
その誘いは受ける気マンマンですよ。返事しよ うと口を開けたその時、

にくい〜あんちくしょうの〜かおめがけ〜たたけ!たたけ!たたけ〜♪
「あ、電話だ。樹さん、ちょっとすいません」
そう言うとハンドバックから携帯を取り出して
「はい…はい…何の用よ麻奈美、今日はデートだって知っているでしょ?
…うん…え?本当?…うんわかった」ピッ 「樹さん…」
「うん?どうしたの?」
見ると青ざめた顔をして
「今日実験棟で爆発があったのは知ってますか?」
ギクッ!「うん、知ってるよ。」(何しろ当事者だし)
「爆発があった部屋の真下に私が製作した、ブロンズ像と絵画を保管していたのですが…」
目に涙をいっぱいためて
「爆発の部屋の床が崩れて、私のブロンズ像と絵画が瓦礫に埋まっちゃったんですよー!」
「え!」(ああ…晴香ちゃんごめんよ…でも恨むなら教授を恨んでくれ…)
どう慰めようかとオロオロしていたら晴香ちゃんが涙を拭いて
「大丈夫です!この五十嵐晴香、この程度ぐらいではへこたれたりしませんよ。
名残惜しいですがちょっと行ってきます。じゃ!」
そう言うとうわーん!と泣きながら走って大学の方へ行った。
(あれ、たしか提出物って言ってたし、破壊されていたら単位 もやばいかも…)
するとポケットに入っていた携帯がぶるぶる震えていた。電話だ。
相手先を見ると「稲本教授」(教授がなんで?)
ピッ「教授、どうしたんですか?」
「おお樹くんデートの所すまんが一大事だ!至急私のプライベ ートルームまで来てくれ。」
「い、いきなりどうしたんですか?」
「弥生くんの身が危険なのだ!詳しくは着いたら話すから至急来てくれ!」
それを聞いた瞬間、大学まで全速力で走っていた。
(一体なにがあったんだ?弥生さん、無事でいてくれ!)


次回第4話「…ありがとう」

第4話 『…ありがとう』

これほど走ったのは生まれて初めてだろうか。足はガクガク、息は荒く、
わき腹は激痛などボロボロになりながらもなんとか大学にたどり着いた。
(確か教授のプライベートルームは…あの地下室か)
荒い息を整えつつ目的地の地下室へ向かった。



「待っておったよ、樹くん。」
ここは教授がプライベートで作ったり買ったりしたのを保管している部屋…まあ普通は物置と言うような。
「それで、一体弥生さんの身になにがあったのですか?」
「うむ、ちょっとまってくれ。」
そういうと教授はそばにあったノートパソコンを操作しはじめた。
「…よし、こんなもんだろう。樹くん、まずはこれを聞いてくれ。」
そういうと教授は「YAYOI.mp3」というファイルを開いた。
しばらくノイズしか聞こえなかったけどだんだんと何か喋っているのが聞こえてきた。

(…で、このガキどうするんだ?…ああ、なんだもう買い手が付いているのか…
しかしこのガキが俺達をぶっとばした女だってのか?同一人物には……おーそんなに貰えるのか!
4人で割っても……少ししたらお迎えが来るからそこで引き渡して終わりだ…)

ここで音声は終わっている。
「この先はノイズが酷くて全く音声が拾えなかったんだが…
どうやら実行犯は4人、それと運転手がいるな。わし一人では多勢に無勢だしまだ道具も揃っていない…
で、急だったが樹くんを呼んだ、というわけだ。」
それを聞いて1つ疑問が浮かんだ。
「一ついいですか?警察は呼んだんですか?」
それを聞いた教授は悔しそうな顔をして
「警察は…来ない。」
一瞬教授の言ったことが全く理解できなかった。
「樹くん、数時間前の実験棟の爆発でも警察が来なかったのだよ。事件性が無いという理由でね。」
そんな…………。じゃあどうすれば…だったら!
「教授!グズグズしていられません!警察がダメなら俺たちで今すぐ助けにいきましょう!!」
そういって部屋を出ようとしたら教授に肩を掴まれた。
「まてまて、落ち着けっつうの…警察の方はわしがなんとかする。それよりも」
教授は樹の目を見て
「助けにいくというがどうやって助ける?場所は知っているのか?」
うっ…。で、でもだからといってここでジッとしていては…
「まったく…少し冷静に落ち着いて考えろ。ではヒントをやろう。先月君は弥生くんに
誕生日のプレゼントをあげたといっていたが、それはなにかな?」
こんな時になに言ってんだ?そんなことより早く…と焦る心の中になにかひっかかるものがあった。
(たしか…弥生さん方向音痴っていうんで…しかも携帯の機種変をするっていうから…)
そこでピンと来た

あ――――――!そうだ、GPS携帯!」
「そう、樹くんが弥生くんに買ってあげたGPS携帯があれば、現在地はすぐ分かる。」
そういうと教授はまたノートパソコンを操作して
「ふむ…弥生くんは今ここだな」
そう言って教授が画面を向けてきた。すると、ある場所に点滅する点があった。
「ここは…女子寮?」
「うむ、間違いないな。今ここに弥生くんがいるだろう。」
よし、場所は分かった。あとはどうやって助けよう…。すると教授が
「ふふふ、私に1つ作戦があるのだよ。早速樹くんにも協力してもらうよ。作戦とはこうだ…」



(やっと見つけた…)
あれから女子寮に近づき、廊下で静かに聞き耳をたててみると、ある一室から話し声が聞こえて来た。
そ〜っと見ると犯人は4人で、なんかライフル銃やボウガンなどが見える。
(あとは教授の合図を待つだけだけど…しかし教授、なんでこんな物もってんだ?)
手には教授から渡された暗視スコープが握られてて、真っ暗でも中の様子が手に取るように分かった。
(まあ今はそんなことより弥生さんを見つけないと…あ、いた!)
部屋の隅っこの方に、手を縛られて壁に寄りかかっているのが見えた。
まずは無事を確認して胸を撫で下ろした時、犯人の一人が立ち上がった。
「そういえばまだ聞いていなかったが、おまえがあの弥生だとしてあの時はよくもコケにしてくれたな!」
「そうだ。対弥生用にここまで武装したのに無駄になっちまったぜ!」
すると弥生さんは鼻でフンッと笑って
「ナイフをちらつかせて私に絡んでくるのが悪いんだろうが。弱いくせに。」
そう言われた男は肩をブルブルと震わせて
「言ってくれるじゃねえか、このガキが!!」
すると男は固く握られた拳を高く振り上げて、そのまま弥生さんの顔面を殴りつけた。
「ぐっ!」
思い切り吹き飛ばされた弥生さんへ、さらに男が
「俺を!弱いというが!今は!お前の方が弱いだろうがっ!!」
何度も何度も暴力を振るっている内に、さすがにやばいと感じたのか、他の仲間が間に入った。
「もう止めろ!これ以上やると売れなくなるぞ!」
3人がかりで止めて、なんとか男の興奮も収まってきた。しかし弥生さんは…
(弥生さん!…くそ!)
さっきから飛び出したい衝動をなんとか抑えてきたが、弥生さんに暴力を振るわれると
いよいよ我慢の限界にきていた。すると別の男の1人が
「おい、遊んでないでそろそろ時間だぞ!裏門に移動するぞ!」
そう言って犯人たちは移動しようとしていた。
(まずい!移動されたら作戦が…仕方ない、やるか?)
しかし教授からの連絡が無い内に決行しても…。そう迷っていたその時
ブルル、ブルル、ブルル
携帯のバイブが3回鳴った。(きたっ!)
バイブが3回鳴る…それは教授の準備が完了した合図だ!
そう思った刹那、教授から渡された物を部屋に放り込んだ。
すると次の瞬間部屋が閃光に包まれた!
「うわっ!」「な、何だ!」「目、目が見えねええ!!」「く、くそ…だれだ!!」

持ってきたサングラスを掛けて部屋へ突入し、弥生さんの所へ行った。
「弥生さん!助けにきました!」
「う…い、いつきか…」
「大丈夫ですか?掴まって下さい。」
あちこち傷だらけの弥生さんを背中におぶっていると閃光が収まってきた。
それを見計らってもう1つの物を置いて部屋を出た。
女子寮をでた頃、後ろの方から物凄い煙の中からくしゃみや咳の声が聞こえて来たのを確認して
目的地へ向かった。
(無事弥生くんを救出したらここに向かってくれ)
教授に指示された場所へ走っている時、弥生さんがそういえば…と言って
「さっき部屋に投げ入れた物、あれはもしかして…」
「はい、最初に投げたのは閃光弾で、部屋を出る時に置いてったのは催涙弾です。」
おぶっていては弥生さんの表情は判らないが、たぶん呆れているだろう。
かくいう俺もなんで、いち教授がこんな物騒な物もっているかわからないが、深く考えるのはよそう。
「ところでどこに向かってるんだ?」
「えーと、ここを曲がった突き当たりです。」
(この突き当りで待機してやつらを誘き寄せてくれ。一網打尽にする…って言ってたけど、
どういう方法でやるんだろ?)
そんなことを考えながら曲がろうとしたその時、左足に鋭い痛みが走った!
バランスを崩しながらも、なんとか転倒は避けられた。
どうやら向こうから「いたぞー!」と声とともにボウガンを撃って
いて、足にかすってしまったようだ。誘導しなければいけないので早歩きぐらいで来たが、
変に疑惑を持たれても困るので、怪我の1つでもした方が油断するだろう。
「樹!足から血が!!」
見るとズボンが破れた箇所が血で赤く染まっていた。
「大丈夫ですよこれくらい。それよりもこの奥まで行かないと…」
鋭い痛みを堪えてなんとか目的地の路地奥に着いた。そこは建物と建物の間の狭い路地だ。
さて、あとはタイミング。しくじったら終わりだ。路地の奥に着いたと同時に、
入り口に男たちが追いついた。
(弥生さんをこれ以上傷つけない、とは思うけど)
ゆっくりと近づいてくる中、一人の男がライフル銃を発射した。
「ぐはっ!!」
万が一のために防弾チョッキもどきを着てたおかげで怪我はないが、一時的に呼吸が苦しい。
「樹!大丈夫か!」
「げほっ、げほっ、な、なんとか…」
すると男の1人が
「ふざけた真似しやがって…無事に帰れると思うなよ!!」
男たちがジリジリと近づいてきた。(あとはお願いします、教授!)
その時建物の窓から教授の顔が出てきて、「よく頑張ったぞ、樹くん!」
と言って男たち目掛けてなにか投げつけた!
「弥生さん、俺の後ろに!」
「きゃ!」
男たちに背を向けるのと液体の直撃はほぼ同時だった。続けざま教授はなにか粉末を撒いた。



「これは…」「すごいな…」二人が感嘆している物、それは男たちが白い液体にくっ付いて
離れなくなっているのだ!
「どうやらギリギリ間に合ったようだな」
見ると教授が近づいてきた。
「はっはっはっ、どうだね?ついさっき完成した、この私特製のとりもちの威力は?」
教授が言うには最初に投げた液体に次投げた粉末が付着すると強力なとりもちになり、
剥がすには特殊な分解液がないと絶対離れないそうだ。
「さっきやっと警察も来て、首謀者や裏門にいた車などは御用になったし、すぐここにも来るだろう。
めでたしめでたしだな。」
「そうかな?」
「教授!」
見ると男が1人教授にナイフを突き立てていた。
「おぬし、こんなことしても無駄だぞ?すぐ自首すれば執行猶予ぐらいで…」
「うるせえ!ごちゃごちゃ喋るな!!」
よく見るとこの男、弥生さんを殴った男だ! ちょっと離れていたせいで直撃を免れたようだ。
「たしかに逮捕されるのも時間の問題だろう。だがな!この男の命が惜しければ…」
「殺したらいいじゃない。」
振り向くと威圧するような目をした弥生さんが立っていた。今逆らったら殺される!近づくな!
と直感が言っている!

「アンタには随分痛めつけられたから恨んでいるけど、それ以上に樹にこんな危険なマネをする
原因を作ったその男が許せないのよ!!」

はじめて弥生さんが本気で怒った所を見た。まさしく目で人を殺せそうだ。
すると弥生さんがゆっくりと二人近づいていく。
「もちろんあんたがその男を殺したら、次は「わたし」が「あなた」を殺すわ。
さあ!早く殺しなさい!!」
冷静に考えれば10歳児の体で大の男性を殺すのはちょっと難しいと思うのだが、
あの目と恫喝の前では蛇に睨まれた蛙状態だよな。

「な、なんなんだお前は!く、来るな!この男を殺すぞ!本気だぞ!
…来るんじゃねえ!お、俺を見るな…う、うわあああああああ!!!」

エピローグ

「なんか散々な日でしたね」
「まったくだわ」
あちこち殴られて歩くのが辛そうな弥生さんを、樹はおぶって帰路につきながら話しかけた。
あのあと警察が来て、とりもちに捕まった三人は逮捕されたが、教授を人質にした男は
逃走してしまった。まあ指名手配されるから逮捕は時間の問題だろう。
「しかし弥生さん、教授大丈夫ですか?」
「手加減はしたわよ、気持ち分ぐらいは」
犯人の一人が逃走したあと、警察が来るまで怪我の治療をしている間に今までの経緯を話した時、
盗聴器とGPS携帯がばれてブチ切れた弥生さんが教授を殴ってたっけ。
「携帯は樹から買ってもらった物だから別にいいけど、あんの教授、携帯を変なことに利用して…」
「でもそのおかげで弥生さんを助けられたんですし…」
「なに言ってるの!そもそもあの教授が私に変な薬を飲ませるから…だから…樹が…」
やばい、弥生さんドンドン暗くなっている!なにか話題を変えないと
「そ、そういえば教授って警察と顔見知りなんですね。あれには驚きました!」
警察が来てくれた理由はどうやら教授が警察のえらい人に電話で連絡してくれたらしい。
ただ教授が「まあ社会に責任ある人が「あの」写真を公表したらどうなるかのー。」
って言ってたようだけど深く追求するのはよそう。
しばらく沈黙が続き、樹はふと思い出した。首謀者が、弥生さんもよく知っている
後藤教授だったというのを聞いた時の弥生さんの無表情を…。
そんなことを考えていたとき、弥生さんが
「今回のことさ…」
「はい…。」
「捕らわれていた時に私なりに考えていたんだけど、あそこに私がいるって知っているのは
後藤教授だけだったんだよね…」
「………」
「だから…首謀者の名前を聞いた時…ああやっぱり…って思ったのよね。」
弥生さん………
「あれだけ信頼していた人に…裏切られると…やっぱり私は1人なんだ…ってね」
それを聞いた俺は心に溢れる思いを、感情をそのまま言った
「大丈夫です!!ここにいます!!」
「樹?」
「なにがあっても俺だけは!弥生さんを裏切らないし、一人にもしませんよ!教授だってそうです!」
弥生さんは何も言わない。ただ鼻をすする音が聞こえた。
「全く…ロリコン教授はともかく…樹はお人好しなんだから…グスッ、そんなの知っているわよ…でも…」
そのあとは続かない。でも心の中で言った。私の精一杯の、正直な言葉

(ありがとう)

このあと弥生は、当座の寝床として樹の部屋に住むことになりました。
それが当座か、もしかしたら永久か。

                    FIN

2006/06/24 第1部完結 Go to Chapter2

 

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