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姉妹日記



1

 窓から日差しが差し込む・・・・
  僕は空気を思い切り吸い込んで深呼吸した
「起きろ〜!!!!」
  布団を剥ぎ取る
「涼ちゃ〜んもう少し寝かせて・・・・涼ちゃんも一緒に♪」
  甘ったるい声を出して僕のお姉ちゃんの夏美が僕の首に両手を回した
  そして思い切り引き寄せると頬をすりすりしてきた
「ああ〜涼ちゃんだ〜♪」
「は、恥ずかしいからやめてよ・・・・」
  でも僕がいくら拒絶しても夏姉ちゃんは離してくれない
  いつもかんな感じ・・・・いつもどうやってこの抱きつき攻撃から開放されてるかって?
「こら〜、またか〜!!!!」
  大声をあげて部屋に入ってきたのは妹の冬香だ
  布団の中でもぞもぞ動く僕たちを強引に引き離して夏姉ちゃんを睨み付けた
「あ〜ん涼ちゃ〜ん離れないで〜♪」
「姉さん!速くしないと遅刻するよ!」
  強引に夏姉さんを立たせると冬香は僕の手を引いた
「どうしたの?」
「姉さんの着替え・・・・みたいわけ・・・・・」
  妙に声が低い冬香に圧倒されて僕はその部屋を出た
「あ〜〜〜涼ちゃ〜ん」
  猫撫で声で夏姉ちゃんが僕を呼んだけど冬香の威圧感に僕は勝つことができなかった

「いただきます・・・・」
「いっただっきま〜す!」
「ふか〜」
  僕と冬香それとまだ覚醒していない夏姉ちゃんの三人で朝ごはん手を付ける
「あ、お兄ちゃん・・・・口にご飯が付いてるよ・・・・」
  冬香が僕の口からご飯を取るとなんのためらいもなしにそれを自らの口に運んだ
「もう、こんなんじゃ彼女の一人もできないよ?もっとシャキっとして!」
「う、うるさいな・・・・」
  妹のくせに生意気な・・・・でも冬香のほうが精神年齢は上か・・・・悔しい
「仕方ないな〜涼ちゃんは〜・・・・ここはお姉ちゃんが人肌脱いであげる」
  ようやく覚醒したのか夏姉ちゃんがニコニコしながらそう言った
「今度の日曜日・・・・彼女ができたときにおどおどしないように姉ちゃんとデート♪」
  これで何度目かな?・・・・僕が中二の時からだから・・・・もう二年か
「あ、ずるい!今週は私の番!」
  土日のどちらかは二人のどちらかとデートに出掛けている
  二人曰く僕に彼女ができた時の予行練習らしい
  そんなこんなで僕は毎日を楽しく生きています

「あの・・・・神坂くん・・・・」
  放課後僕が帰ろうと身支度をしているろ後ろからか弱い声がした
  振り返るとそこには一人の女の子・・・・・
  この子は南条秋乃さん・・・・この学校に入学したときすぐに話題になった子だ
  確か成績優秀で品行方正・・・・これが重要なんだけどすっごく可愛い
  しかも!すごく大人しくて古きよき時代の女性って感じ
  まだ僕と同じ一年生なのにもう学校ではアイドル化されている
  実は僕も憧れてたりして・・・・・
「な、な、なにか・・・・・な」
  明らかに動揺している僕に秋乃さんはくすくすと笑んだ
「神坂くんって面白いですね・・・・ふふ」
  あれ?もしかして僕って子ども扱い?ちょっとショック
「あ、いけない・・・・私ったら・・・・あの・・・・その」
  急におどおどして身体をくねくねさせた
  か、か・・・・・・可愛い!!!!!
  その可愛さときたらもう・・・・
  普段可愛い姉妹に囲まれて免疫は付いてるはずだけど・・・・これはすさまじい破壊力です
  母さん・・・・
「ここではちょっと・・・・」
  人目を気にして秋乃さんは俺の裾を引っ張って教室から出るようにただしている
「わ、わかったよ・・・・えと・・・・屋上かな?」
  秋乃さんはこくんとうなずいた
  僕は微妙に触れる彼女の温かみにどきどきしながら屋上に向かった

「あの・・・・」
  またもじもじし出した・・・・
  可愛い・・・・
「わ、私・・・・・ずっと・・・・その!」
  勢いで秋乃さんは僕の手を握ってきた
  あ、わわ・・・・どうなってるの?今の状況・・・・
「す・・・・す・・・・・す・・・・・」
  え・・・・・なに?
  期待で胸が高鳴っていくのを感じる
「隙です!じゃなくて・・・・その・・・・・す、好きです!」
  時間が止まった・・・・
「私と・・・・付き合ってください!」

2

 結局あのあと彼女は・・・・
『あの、その・・・・その!ごめんなさい!』
  顔を真っ赤にして僕に背を向けてその場を去ってしまった
  残されたのはアホ面でボー然する僕のみ・・・・・
  なんとか気持ちを落ち着かせて僕は色々考えてみた
  秋乃さんには憧れていた・・・・うん
  恋愛感情かただの憧れか?と問われたら僕は間違いなく前者を選ぶと思う
  嬉しい半面不安な気持ちのほうが強い
「た、ただいま・・・・」
  なんか僕悪いことしたみたいだよ・・・・
  恐る恐るといった感じで僕は廊下を静かに・・・・・
「どうしたかな〜?涼ちゃん?」
「どわ!」
  思わず引いてしまう僕に夏姉ちゃんは悲しげな顔をした
「酷い・・・・涼ちゃん・・・・お姉ちゃんを化け物みたいに」
  あれ?そうだよね・・・・僕はこの家の家族なんだから
  オロオロする必要なんてないんだ・・・・
「ご、ごめんね?夏姉ちゃん・・・・・」
  今にも泣きそうだった夏姉ちゃんがにっこりと笑んだ
  変わり身が早いな・・・・まったく
「はい・・・・♪」
「え・・・・?」
  夏姉ちゃんは両手を広げてまたニコっと笑んだ
「お詫びに・・・はぐはぐ」
  しびれをきらして夏姉ちゃんが僕を引き寄せた・・・・
  あぐ・・・・大きな胸が僕の目の前にアップになって柔らかい感触が伝わる
  悲しい・・・・姉だとわかっていても欲情してしまっている
「ああん、涼ちゃん♪」

「お兄ちゃん?どうしたのさっきから上の空だよ?」
「・・・・・・・」
「お兄ちゃん!」
  はっ・・・・なんだ冬香か・・・・
「まさか、クラスの女子のことなん考えたりしちゃったりなんかして!」
  ギク!鋭い・・・・さすが妹・・・・関係ない?
「そんなことないよね〜、涼ちゃんは私のこと考えていたんだよね〜?」
  相変わらずの間延び声で夏姉ちゃんが僕に夕飯の皿を渡した・・・・
「違うよね?私のことだよね?」
  どうやら話はずれたみたい・・・・言えないよな・・・・僕が女の子に告白されただなんて
  家族だから言えないこともある
  でも、この時の為に二人は僕に色々世話をやいてくれたんだ
「えっと・・・・両方かな?」 
  僕・・・・頑張るよ二人とも
  だから一番に伝えるよ・・・・二人には
「もう、そんなんじゃ彼女なんてまだまだ先だね・・・・」
「早く涼ちゃんの彼女さんの顔が見たいわ〜」

 翌日今度は僕が秋乃さんを屋上に呼び出した
  その顔には不安が伺える
  それと期待も・・・・
「あの、僕で・・・・ほんとにいいの?」
  自分で言うのもなんだけど僕はあまり目立たないし顔だって微妙なラインだと思う
  そんな僕をこんな可愛い彼女が?
  変な妄想が頭を駆け巡る
  たとえば友達の賭けに負けて罰ゲームで僕に告白したとか・・・・
「私は・・・・神坂くんじゃなきゃ・・・・嫌」
  う・・・・可愛い
「ほんとにいいんだね・・・・僕なんかで」
「神坂くんはなんかじゃありません!」
  すごい勢いで秋乃さんが僕に迫ってきた
「私の気持ちの伝え方がいけなかったんですね・・・・なら、見てください・・・・私の覚悟を!」
  間直に近づいた彼女の顔がさらにアップになっていく
「・・・・・ん」
  柔らかな感触が唇から全身を駆け巡った・・・・
「今のが・・・・私のファーストキスで・・・・す、わかっていただけましたか?」
  小さな身体がわずかに震え彼女の顔は恍惚したかのうように熱を持っていた
「ご、ごめんね・・・・疑ったりして」
「え、あ・・・・はい」
「まだね、キミのことよく知らないけど・・・・これから知って行きたいって思う」
  彼女の顔が目に見えて期待のそれに変わっていく
「ぼ、僕のほうからも・・・・・僕と・・・・付き合ってください!」

「ただいっま〜♪」
  こんなに気分のいい帰宅は初めてかも
  いつもは疲れが先立ってたけど・・・今日は疲労すら心地いい
「お帰り〜・・・・なんだか涼ちゃんが楽しそうでお姉ちゃんも嬉しいわ〜」
  台所から夏姉ちゃんが顔だけ出してニコニコと笑んだ
「冬香は?」
「冬香ちゃんならテーブルでお腹すかしてるわよ〜」
  ちょうど良いや・・・・
「ご飯はもう出来てるわ〜あとは涼ちゃんを待つのみよ〜」
  少しどきどきしながら僕は冬香の向かいに腰掛けた
  続いて最後の料理を夏姉ちゃんがテーブルに乗せて冬香の隣に腰掛けた
「実はね・・・大事な話があるんだ」
  一番に伝えるよ・・・・二人に・・・・
「僕ね・・・・彼女が出来たんだ・・・・」
  がちゃん!夏姉ちゃんの手からサラダを盛ったお皿が落ちて割れた
「お兄ちゃん・・・・いまなんて言ったの?」
  冬香も唖然とした表情で今僕が言った言葉をまるで外国の言葉を聞いたときのように
  理解不能という感じでいる
「昨日・・・・女の子に告白されて・・・・その子と付き合うこと・・・・」
  がちゃん!さっきよりも大きな音に僕の言葉が途切れた
「嘘よね?嘘だよね?お兄ちゃん・・・・・!」
  テーブルに置いてある物をすべて床に落としてそれに構うことなく身を乗り出し涙目で僕に迫る冬香
「ふぐ・・・・えぐ・・・・・」
  夏姉ちゃんは泣き出している・・・・初めて見た・・・・泣いている夏姉ちゃんを
「嘘だ!嘘だって言ってよ!悪い冗談だよね?そうでしょ!なんとか言ってよ!」
  冬香の怒鳴り声と夏姉ちゃんの鳴き声だけの中で僕は訳がわからなくなっていた
  どうして?僕は二人とも祝福してくれると思って・・・・
  今まで僕のことを想って色々と女の子のこと教えてくれたんじゃないの・・・・

3

「冬香・・・・今日も学校休むのか?」
  ドアをノックしながら何度目になるかわからないほど言った言葉を繰り返す
  あれ?ドアが開いた・・・・
  部屋に入った瞬間ほんとに冬香か?思えるほど別人になっていた
  やつれていて・・・・
「出てけ!あんたなんか大嫌いよ!」
  罵りの声に僕は引きそうになったけど・・・・冬香のことを思えばこそだ
「学校まで一緒に行こう」
  僕と二人は違う学校に通っている
  遠いというわけではないし・・・・走ればなんとかなるはず
「来るな!バカ!」
  差し伸べた手が払われた・・・・痛い
  手の甲が赤くなってしまった
「あ、ごめんなさい・・・・私」
  急に顔色を変えて冬香は俺に擦り寄った
「嫌いにならないでね?・・・・ね?お兄ちゃん・・・・・」
  心配げに僕の手の甲をさする
  おかしい・・・・どうしちゃったの?
  こんなの僕が知っている冬香じゃない

「夏姉ちゃん・・・・?」
  今度は夏姉ちゃんの部屋に入る・・・・
  夏姉ちゃんの部屋には比較的楽に入れる・・・・でも
「遊びに来てくれたの?涼ちゃん・・・・じゃあね、夏美ね〜、おままごとがいい♪」
  そう言って夏姉ちゃんは後ろから茶碗を取り出した
「どうぞ・・・・あなた・・・・」
  ゆっくりとした動作で夏姉ちゃんが僕の前に茶碗を置いた
  茶碗にはよく小さい子がやるような泥団子が入ってる
「美味しいですか?あなた・・・・・ふふ」
  呆然とする僕を見て夏姉ちゃんが微笑んだ
  本気でやってるの?僕・・・・わからないよ
  いつも優しくて僕を包み込むような包容力を持っていた夏姉ちゃん
  口うるさいけど世話好きですごく活発だった冬香
  どこで・・・・歯車がずれてしまったのかな?
  僕・・・・・僕・・・・・

 どうしたらいいか分からないよ・・・・誰でもいいから助けてよ!
「涼さ〜ん!秋乃です〜!」
  外からの声が神様が僕に使わしてくれた天使のように思えた
  僕は階段を駆け下りて玄関を開く
「秋乃さん・・・・・」
「わ・・・・少し痩せちゃった?」
  一週間ぶりの恋人の顔に僕は今にも泣きそうな顔をしてしまったかもしれない
  優しく笑んで秋乃さんは僕を抱きしめてくた
「今は・・・・このまま・・・・・ね?」
  甘い香りと柔らかさに包まれて僕は自分の力が抜けていくのを止められずに彼女に身を預けた
「誰・・・・その女・・・・・お兄ちゃん」
「・・・・・・・・ただのお友達よね〜涼ちゃん」
  声のするほうを見るとそこには夏姉ちゃんと冬香がすさまじい形相で秋乃を睨んでいた
「初めまして、涼さんのご兄弟ですか?私涼くんとお付き合いさせ・・・・」
  秋乃さんの目が驚きで見開かれた
  瞬間冬香が僕を押しのけて秋乃さんに飛び掛った
「あんたが・・・・・あんたがお兄ちゃんをたぶらかしたのね!」
「あ・・・・・く!」 
  秋乃さんの上に馬乗りになって胸元を思い切り掴み上下に振る
  秋乃さんの小さな身体が地面に何度もぶつかりその度に小さなうめき声がした
「やめろ!」
  すぐに止めようとした僕の背後に夏姉ちゃんが回り両脇を押さえた
「離してよ!秋乃さんが!」
「二人はね・・・・プロレスごっこしてるだけよ〜・・・・・心配ないわよ」
  笑顔の奥になにか黒いものが見えた気がした
「だ・か・ら・・・・涼ちゃんは向こうで夏美とオママゴトしましょうね♪」」
  どこにそんな力があるのか
  この一週間ろくになにも食べていない細腕で僕の身体を引きずる夏姉ちゃん
「殺してやる!」
  僕がもたもたしているうちに小さな声も聞こえなくなってきた
  秋乃・・・・さん?
「消えちまえ!」
  やめて・・・・冬香!
「お兄ちゃんを惑わす泥棒猫!」

4

 小さな息が漏れる
  意識が消えかかってきたみたい・・・・なにがあったの?
  痛みもなくなってきた・・・・
「冬香!」
  誰かが倒れる音がした・・・・私はゆっくりと瞳を開くと音のした方へ視線を向けた
「離して!お兄ちゃん!私が!私が!!!!」
  もがき爪を立てる少女を涼さんが必死で押さえている
「やめてくれ!冬香!どうしちゃったんだよ!」
  急に肩を物凄い力で握られた・・・・痛む首を必死で動かすとそれは視界にすぐに入った
  大人っぽい落ち着いた感じの女の人が私の上に乗っている
  目を細めた女の人は一瞬だけど微笑んだ
  息・・・・苦しい・・・・・う・・・・・
  再び視界が霞んでいくのを感じながら私は必死で涼さんの方へ手を伸ばした
「秋乃さん!」
  私の名が叫ばれると首を絞める力がいっそう強くなった
「やめてくれ!」
  泣き叫ぶ声が私の鼓膜を通り抜けるかのように聞こえたあとに急に首に込められた力がなくなった
  温もり・・・誰だろう?
  雨でも降ってるのかな?少し冷たいよ・・・・
「秋乃さん・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい」
  白の色に包まれながら私の意識もその中に消えていった

 ・・・・ここは?
「秋乃さん!」
  視界が開くと泣き腫らした目をこすっている涼さんが浮かんだ
「ここは?」
「病院だよ・・・・」
  そっか・・・・助けてくれたのね?ありがとう・・・・
「ごめんね・・・・僕のせいで・・・・僕のせいで」
  そんなことない・・・・そう言ってあげたいのに・・・・
  私・・・・

 あれから数時間で私の意識は完全に回復した
  謝り続ける涼さんをなだめてようやく事を把握することができた
  どうやら私は涼さんのご姉妹に乱暴されたらしい
  聞いてみると涼さんのご姉妹はどう考えても精神の病気だとわかった
「ここって南条医院だよね?」
「そ、そうだけど・・・・?」
  見覚えあるはずだよ・・・・だってここは
「私のお父様が経営している病院だよ・・・・」
「え・・・・そうだったの?」
  なんか・・・・可愛いな
  驚く顔も魅了的だな・・・・いけないけいない
「たぶんね・・・・それは精神の病気だよ」
「心の病?」
「そう・・・・だからね、お父様に相談してみます・・・・」
  それを聞いて涼さんは嬉しさを表したあとすぐに悲しげに俯いた
「ごめんね・・・・僕のせいで」
「ふふ・・・・気にしない、気にしない」
  私は少し痛む手を涼さんの頬に重ねてゆっくりと下に這わした
「これでも院長の娘ですよ?そこらへんの女の子よりも理解はあると思うよ」
「でも!」
「私たち・・・・恋人ですよね」
  涼さんは私を見て少し微笑んだ
「キミが僕を許してくれるのなら」
  なんだ・・・・そんな心配してたの?
  バカだな・・・・・もう
  ああ、愛おしい・・・・この人が・・・・とても
「私の気持ちは変わらないよ・・・・涼さん」
  そう・・・・永遠に

「精神科医さんに相談してみます・・・」
「ありがとう・・・・悪いね・・・・・気を使ってもらって」
  私は首を振って気にしないでと合図を送ってにっこりと笑んだ
「将来・・・・私の義姉妹にもなるんだから」
「そ、それは・・・・・うぅ」
  ムッ・・・・なにかな、その反応は・・・・
  涼さんは結婚を遠まわしに連想させると引いてしまうタイプみたい
  男の人ってみんなそうなのかな?
  私にとって彼以外の価値観なんてどうでもいいか
「ああ、なんか胸が痛いよ〜」
「え!?え!!!」
  いかにも演技ですよって感じで私はよろめいてベットに頭を付けた
「痛いよ・・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・・あの時背中を強く打ったから・・・・・だから!」
  おどおどしながら涼さんが私の背中をさすってくれた
「私のこと・・・・好き?」
「え・・・・・う、うん」
「愛してる?」
「勿論だよ・・・・・」
  少し不思議そうな顔をした涼さんの顔が布団と私との間にある指の隙間から見えた
  優しいな涼さんは・・・・
「治らないよ・・・・」
「うぅ、どうしよう・・・・・」
「だって・・・・胸が痛いのは・・・・あなたのことでいっぱいだからだよ」
  げふ!大声を上げたあと涼さんが顔を真っ赤にしてベットに上半身を横たえた
「いつか結婚してくれますね?」
「はひ・・・・秋乃さん」
「あ、そうだ・・・・退院したらデートしませんか?」
「はひ・・・・秋乃さん」
  なんかバカップルみたいですね・・・・私たち
  幸せ・・・・

5

 不安を胸に玄関のドアを開いた
  秋乃さんが入院中彼女に無理言ってずっと病院に居た
  だから家には一度も帰っていない
  両親がいたらストッパーになってくれたのだろうけど
  二人は8年前に他界していて今は三人だけ
  きぃ・・・と音を立ててゆっくりと家の中をのぞいてみる
  真っ暗だ・・・・中に入って居間に近づいていく
  とんとん・・・とんとん・・・・料理の音?
  規則正しい包丁の音に導かれて僕はゆっくりと廊下と居間を繋ぐドアを開いた
「あら、お帰り〜涼ちゃん」
  一瞬自分の目を疑った
  どういうこと?
  その光景は僕がまだ秋乃さんと付き合うまえ・・・・あの穏やかな時間が流れていたときと・・・
  同じだった
「お兄ちゃんどこ行ってたの?私お腹ぺこぺこだよ〜」
  無邪気な笑みが僕を迎えてくれた
「こら、冬香ちゃん・・・・はしたない」
  暖かな笑みが僕を迎えてくれた
「さ、お料理できたわよ・・・・涼ちゃんも早く座って」
  料理のいい香りに釣られて僕は指定席に腰掛けた
  その後はいつもと変わらず
  間延び声で僕に甘える夏姉ちゃん・・・・
  無邪気に僕にじゃれつく冬香
  あの出来事が夢だったのではないかと思えるほど
  なにも変わらない・・・・あの時のままだった

 今日は待ちに待った涼さんとの初デート♪
  し・あ・わ・せ・・・・あぁ
  幸せに浸りつく前に私は涼さんにお二人の様子を聞いてみた
  涼さんの答えは晴れやかな笑みと思いがけない一言だった
「え・・・・そうなの?」
  私が小首をかしげると涼さんはうんうんとうなずいた
「僕もびっくりだよ・・・・でも、これで元通りだよ」
  嬉しそうな涼さんに私も思わず笑んでしまった
  よかった、二人は涼さんが以前話てくれた二人に戻ったのね・・・・
  少し痛い思いをしてしまったけど、二人とは仲良くやっていきたい
  それと謝らなくちゃ・・・・二人を病気だって決め付けちゃって
「今度、お家にお邪魔して・・・・良いかな」
「ほんと!あぁ、楽しみだな・・・・いつのする?」
  最近元気がなかったけど・・・・ようやく涼さんは本来の明るさを取り戻してくれた
  私の気持ちも軽くなって鼻歌なんてしながら私は涼さんの腕を取った
「う・・・・秋乃さん?」
「いいでしょ?私たち・・・・こ・い・び・と」
  鼻先にちょんと指を乗せて私は笑んだ
「なんだからね♪」
  恥ずかしそうに頬をかきながら涼さんは私の肩に手を回してくれた
  少し人通りの多い商店街で私たちはつい最近まで羨ましいと思えてならなかった恋人たちのように
  肩を寄せ合った
  幸せ・・・・・
 
  でも、楽しい時間はすぐに過ぎてしまった・・・・
  デートの王道の映画そのあと昼ごはんをお洒落なお店で食べて・・・・
  それで・・・・・もうおしまい、私の家に着いちゃった
「ここが秋乃さんの家か・・・・」
  興味津々といった感じで涼さんが私と家を交互に見た
「じゃあ、もう夜も遅いし・・・・帰るね?」
  しばらくして涼さんは私にそう言うと手を振って背中を向けた
「ま・・・・ま、ま、まま・・・・・・・待って!」
  いかにも動揺していますよっていう声で私は彼を引きとめた
「よ・・・・よよよよ、よ・・・・・よか・・・・ったら家・・・・寄っていかない?」
  涼さんは少し戸惑って見せてケータイを取り出した
「あ、夏姉ちゃん?僕・・・・今日遅くなるから・・・・うん、ご飯はいいよ」
  なんどか涼さんはうなずくとケータイを切った
  そして私の方を見て微笑んだ
「じゃあ、少しお邪魔させてもらおうかな・・・・」

6

 これが秋乃さんの部屋か・・・・
  じろじろ見るのも失礼だと思い僕は床に腰掛けた
「あ、今お茶もって来るね」
  僕は彼女の細い腕を握った
  振り返る彼女に首を振って見せると彼女は『いいの?』
  と、目で語りすぐに僕の隣に腰掛けた
  意図してのことなのか少し密着度が高い
  小さな肩が僕の胸に当たり少し身を預けるような体勢だ
  けど、可愛くなったな・・・・
  初めて逢ったのは中学一年のときかな?
  メガネを掛けていてあまり目立たない子だった
  話出したきっかけは些細な物だったと思う
  僕が落とした本を彼女が拾って・・・・それが彼女のお気に入りだった
  それから親しいっていうほどじゃないけど朝挨拶したりたまに本の話をしたり・・・・
  高校に入って最初彼女を見たとき正直別人だと思った
  そして・・・・イライラさせられることもあった
  彼女に・・・・ではない
  中学の頃、僕が秋乃さんと仲良くしているのを見て友人が
『やめとけ、あんなの・・・・お前ならもっと上のランクでもイケルって』
  そんな風なことを何度も言われた
  でも僕はそうは思わなかった・・・・メガネを掛けていたけどすごく綺麗な顔立ちだと僕には解っていた
  それに礼儀正しいし清楚だし・・・・憧れた・・・・
  彼女の魅力も知らないで容姿が変わった瞬間に手の手のひらを返したかのような級友に
  僕は怒りを覚えた・・・・
  もうそんなイライラ関係ないか・・・・

 気づくと秋乃さんが僕を熱っぽい視線で見つめていた
  密着してる身体も心なしか温かくなっているように思えた
「ね、涼さんHしたことある?」
「・・・・・・・」
  突然な言葉に心の準備が出来ていない僕は呆然としてしまった
  秋乃さんは身を乗り出すような形で四つん這いになって僕に顔を近づけた
「私・・・・前にお付き合いしていた女性と比べてどうですか?」
  恍惚の顔が近づき彼女の舌が僕の唇を舐めた
「僕・・・・秋乃さんが初めてだよ・・・・」
  勘違いしているようなので僕は少し恥ずかしかったけど女性歴は秋乃さんだけだと伝えた
  すると恍惚の顔に喜びが加わり色っぽさの中に無邪気さが見えて僕は一瞬でダコ状態になった
「一緒ですね・・・・私も・・・・涼さんだけですから・・・・」
  大胆に迫ってくる
  肩を少し震わせ僕の服を脱がしていく
  上半身を裸にすると僕の胸に顔を埋めた
「ごめんなさい、私・・・・これからさきは・・・・どうしていいか」
  そっか、大胆に迫ってきたけど彼女も僕と同じ・・・・初めてなんだ
  だったら男の僕がしっかりリードしないと・・・・
「いいの・・・・」
「はい・・・・涼さん」
  確認を取ると秋乃さんは顔だけではなく身も僕に預けてきた
  優しく抱きしめると秋乃さんは僕の胸に頬ずりしてくる
  そんな彼女が愛おしくてしょうがなくなり上着をゆっくりと脱がした
  下のロングスカートもゆっくりと彼女が怖がらないように気を付けながら脱がしていく
  下着だけになった彼女に僕は口付けた
「涼さ・・・・・ん・・・・んちゅ・・・・ちゅ」
  舌を差し入れると彼女は少し取り乱しそうになったけどすぐに僕を受け入れてくれた
  僕も勝手が解らないけど今出来ることをすればいい・・・・僕たちはこれからだから
  これからお互いを知っていく
  そして・・・いつか一つになる、本当の意味で・・・・
  これはその第一歩なんだ・・・・

 舌を絡ませあいながら僕は彼女の背中に置いた右手をゆっくりと下げてブラのフックを取った
  瞬間彼女が恥ずかしくなったのか身体を密着させて僕に見えないようにした
  でも、柔らかさは伝わっている
  それを彼女も理解しているようだ
  恥ずかしさを紛らわすためにか彼女は僕の首に腕を絡めてさらに深く口付けてきた
「ん・・・・くちゅ・・・・ん・・・・・・ん」
  大胆な彼女の行動に僕はさらに興奮して下の方に手を這わした
  形の良いお尻を少し揉むと彼女から自分では制御できない声を発した
「あ!・・・くふ・・・・んちゅ」
  身体が仰け反った瞬間に僕は手を胸に滑り込ませた
「あ・・・・・きゃふ!」
  驚きで唇が離れる
  すぐに視界に入ったのは顔をこれでもかと恍惚させ目をとろんとさせた彼女の「女」の顔だった
  初めて感じる直接の柔らかさに感動を覚えながら僕は下に手を伸ばし
  無防備な彼女の恥部に触れた・・・・濡れている・・・・
  胸とは違う柔らかさに僕の頭がスパークした
「秋乃さん・・・・愛してるよ」
「あ・・・・・くふ!あぁぁ!」
  耳元でささやいて耳を甘噛みすると彼女の声が大きくなり恥部から流れる愛液も増した
「わ、わたし・・・・も・・・・・く・・・・・あ・・・・・愛していま・・・・すぅ!」
  途切れ途切れの愛の言葉・・・・
  僕は彼女の想いに包まれ幸せをかみ締めながらゆっくりと彼女をベットに寝かせた
  少し離れてその美しい体を見つめる
  夏姉ちゃん並みに大きな胸・・・・形もすごく綺麗で腰も簡単に折れてしまいそうなほど細い
  それに加え可愛らしい顔を赤く染めすべてを僕に委ねる絶対的な信頼
  僕は一瞬で魅せられていた・・・・
  彼女の恥部に指を這わせながらもう片方の手で胸を揉む
「あ・・・・涼・・・・さん・・・・・あ・・・・あ・・・・きゃ・・・・く〜〜」
  快感が体中に周り彼女の雪の肌が赤くなっていく

「涼さん・・・・涼さん!涼さ〜ん!!!」
  両手を広げて僕にキスを催促してくる秋乃さん
  僕は彼女の要望に答えて深く口付けた
「あ・・・・んちゅ・・・・く・・・・ちゅ・・・・・あ・・・・・ん」
  ゆっくりと唇を離すと彼女は微笑んだ
「涼さん・・・・私を涼さんだけのものに・・・・して」
  精一杯の勇気の言葉にうなずくと僕は下半身を露出して彼女の恥部に自分のそれを合わせた
「行くよ・・・・いいね?」
  彼女がうなずくのを見て僕はゆっくりと彼女の中に進入した
「あ・・・・・く・・・・・ん・・・・・・あん・・・・」
  痛みにその顔を歪ませる彼女にキスの雨を降らしながら僕はさきに進んだ
  壁のように僕の前に立ちはだかる彼女の純潔の印
「く――」
  悲痛な声に僕は止めようとしたけど秋乃さんは首を横に振って僕の腰に足を巻きつけた
  僕は軽く彼女の唇にキスすると先に進んだ
「あ・・・・・あ――――――!!!!!!」
  膜を突きぬくと僕のそれが深く彼女の中に一気に入った
  これで僕たちは結ばれた・・・・誰も侵入できないほど深く・・・・
「涼さん・・・・・」
  痛みに耐えるその顔・・・・ごめんね
  僕が引き抜くのを見て彼女の顔が恐怖で歪んだ
「ご、ごめんなさい!私の身体・・・・良くなかったの?」
  自分に非があると勘違いした秋乃さんが不安そうにそうつぶやいた
「そんなことないよ・・・・すっごくいいよ・・・・でもね」
  これ以上痛みに顔を歪める彼女を見ていられなかった
「君が大事だから・・・・」
  髪を優しく撫でながら僕は彼女を安心させようと努力した
「大事にしたい・・・・だから、今日はここまで」
「でも、それじゃあ涼さんが満足・・・・・」
「それは・・・・また今度・・・・ね」
「あ・・・・・はい」
  そうだ、これからなんだ・・・・・僕たちにはこれからがあるんだ

7

 行為を途中で打ち切って二人で背中を向け合って服を着なおす
  悔しいな・・・・・涼さんを最後まで満足させてあげることができなかった
  彼は優しいから私を気遣ってのことなんだろうけど・・・・
  涼さん・・・・ごめんね最後まで満足させてあげられなくて
  でも、これからたくさんあなたに触りたい
  これからもっと私の気持ちを伝えたい
  私を知ってほしいもっと彼を知りたい
  心をもっと繋げたい
  もっともっと・・・・愛してあげたい
  私を・・・・見て欲しい
  私だけを・・・・・
  不意に涼さんのケータイが鳴った
「はい、冬香?どうしたの?・・・・・え?・・・・・もう、僕はそんな子供じゃないぞ」
  ご兄弟とはいえ愛し合った・・・・中途半端だけど・・・・・
  そのあとすぐに私以外の女の子の電話に応えられると私としては面白くない
  不機嫌そうな私をちらちろと伺いながら涼さんはすぐに電話を切った
「あ、はは・・・・・若い女の子の家にいつまでもいるなってさ」
  複雑そうな笑顔・・・・そんな顔しないでください
「迎えにくるとかって・・・・まったく二人はいつまでたっても僕を子ども扱いなんだから」
  子ども扱い?いつものこと?少し違うような気がした・・・・
  またケータイが鳴った
「はい・・・・もうしつこいな!大丈夫だよ!・・・・あ、ごめん怒鳴ったりして・・・・・」
  また冬香さん・・・・・かな?
  小さな泣き声が涼さんのケータイから少し聞こえてきた
  涼さんが何度か謝ると再び電話を切った
  それと同時に今度はチャイムが鳴った
  ピンポ〜ン
「涼ちゃ〜ん!」
  外からの女の人の声に涼さんは驚き窓から外を見た
「夏姉ちゃん・・・・!?」
  え・・・・どういうこと?
  二人で玄関に向かってドアを開いた
  そこには満面の笑みの・・・・・
「夏・・・・姉ちゃん・・・・・なんで?」
「近くでね・・・・買い物してきたの・・・・近くを通ったから・・・・迎えに来たのよ?」
  買い物袋を少し上げて夏美さんがはにかんだ
「あの・・・・・」
「さぁ、帰りましょう・・・・涼ちゃん」
  この間の謝罪の言葉を発せようとした私を無視して夏美さんは涼さんの腕を取った

「夏姉ちゃん!ちょっと!」
「いいから、いいから・・・・・速くしないと大変なのよ〜」
  引きずられるように涼さんが夏美さんに連れられて遠くなっていく
  少しして涼さんは観念したのか自分で歩き出す
  振り返り両手を合わせて私に謝ると涼さんはにっこりと笑んで速くと急かす夏美さんに続いていった
  ・・・・・なんか急に寂しくなった
  ん?なんだろう?変な匂いがする・・・・
  裏庭辺りからパチパチとどこかで聞いたような音がする
  音のほうへ進んでいくと真っ赤な炎が裏庭に置いてある倉庫を燃やしていた
  私はしばらく呆然としてすぐに状況を理解して近くにあるホースを握って蛇口をひねる
  水がホースから噴出し数分浴びせると炎は消えていった
  安堵の声がだして私は両親に電話しようと窓から家の中に入った
  また異臭がして私は辺りを見渡した・・・・ガスが抜けている?
  私は思わずゾッとしたもし炎がここまで回っていたら
  私の部屋は二階・・・・
  台所と玄関はドアで仕切られていたので匂いに気づかなかったみたい
  急いでガス線を閉めなおし台所中の窓を開く
「ふ〜」
  私はもうなにをする気も起きなくなって自分の部屋に戻った
「え・・・・・」
  自分の部屋の異様な光景に私は息を飲んだ
  部屋中が荒されてお気に入りの動物のお人形に針や画鋲が刺さって転がり
  タンスは倒されて服はめちゃくちゃに切り裂かれていた
  部屋の中心にぽつんと置かれた写真を私は手に取った
「嘘・・・・・・」
  何枚かの写真を見てみると全て今日の私と涼さんの写真だった
  私の顔だけ切り抜かれて写真の置いてあったところに落ちていた・・・・
  それすらもずたずたに切り裂かれて

8

 翌日、僕は放課後に秋乃さんから呼び出された
「どうしたの?」
  風で揺らめく髪を抑えながら秋乃さんは、僕に告白したときと同じように一大決心の顔した
「あのね、ご姉妹って・・・・いつも涼さんにベタベタなのかな?」
  へ?なに・・・・あまりに簡単な質問に僕はアホみたいに口を開いてぽかんとしてしまった
  ようやく平静さを取り戻して彼女の質問のことを考えてみる
  ベタベタ・・・・かな?最近は・・・・
  夏姉ちゃんは朝ちゃんと起きるようになった・・・・
  問題なのは朝起きてすぐに目に入るのは夏姉ちゃんの顔
  つまり朝起きて僕の布団にもぐりこんで寝顔をみているらしい・・・・
  冬香は・・・・前に風呂に入ってるとき乱入してきたな・・・・
  背中流してあげる・・・・なんて
  それと毎日交互に学校の校門の前で僕を待っている夏姉ちゃんと冬香
  あれ?ダメじゃん・・・・まえより悪化してるじゃん!
  今頃になって僕はそんな風に思えた
  あ、はは・・・・僕って鈍すぎ
「そうかもね・・・・二人とも年頃なんだし、僕にくっ付いてばかりだと彼氏も・・・・」
「ほんとにそう想ってるんですね!」
  ずんずんと僕に迫って白熱する秋乃さん
「あのね、私の親戚の経営するマンションで一人暮らししてる気ない?」
  パンフレットのようなものを取り出して僕に見せてくれる秋乃さん
  結構広いな・・・・それに窓の向こうの景色も申し分ない
  でも・・・・
「無理だよ・・・・一人暮らしなんて・・・・お金とか掛かるし」
  彼女はそれを聞いてニパっと笑んで僕の手と自分の手を重ねた
「お姉さん方も・・・・そろそろ、兄離れ弟離れした方がいいと思うんです、
  お二人のことを想っているなら・・・・今がそのときなんです」
  そうだ、いくら二人が僕とずっと一緒に居たいと思っていても僕たちは兄弟なんだ
  いつかそれぞれ伴侶をみつけて離れ離れにならなきゃならない
  僕も、秋乃さんと出逢ったんだ・・・・この先この先なんて言ってられない
  絶対的な信頼を僕に寄せてくれる秋乃さんの為
  そして僕と夏姉ちゃんと冬香のため
  将来のことも考えて決心しなくちゃならない
  でも・・・・
「僕もそうしたいよ、でも・・・・お金」
  一人暮らしなんてできるほど僕に蓄えはない
  それに・・・・バイトしようにもこの学校はバイト禁止なのでできない
「お金の心配なら無用ですよ・・・・私が」
「それはできないよ」
  親しき仲にも礼儀あり
  僕の信念だ、そ僕は小さい頃からずっと破らずにいた誓いだ

「お金の心配ならいりませんですよ!」
  彼女は少し口調を変にしながら僕に必死で訴えかけた
「でもね、それは出来ないよ・・・・」
「なら、私も・・・・なら良いんですね?」
  へ?私も・・・・それって
「同棲ってこと?」
  彼女は顔を真っ赤にし、うつむき、僕の手に指を這わせてもじもじしだした
  でもそれって・・・・僕ヒモじゃん!
「両親の許可はとってあります」
  そこまで進めていたのか・・・・僕を想ってしてくれてるにしてはあまりに必死だ
  なんか理由があるのかな?
  いけない、いけない・・・・前に友達が言ってた
  長続きのコツは信じる事だって
  相手を信じていれば自然と相手も自分を信じてくれる
  僕は変に納得させられた言葉を思い返した
  そうだよ、彼女は僕の恋人信じてあげなきゃ疑ったりなんてしちゃダメだ
「でも、それじゃあ・・・・」
「なら、将来会社に就職したら二人ですこしずつ返しましょ?」
  あれ?それって結婚も前提ですよね、秋乃さん?
「私の将来の旦那さまなんですから・・・・と、いうことは私の両親はあなたの両親も同じですよ」
  そ、そうなのかな?なんか矛盾しているような気がする
  以前の僕なら結婚を意識させられるとたじろいでいただろうけど今はそんなことはなかった
  日に日に僕の彼女への気持ちは大きくなっている
「涼さんは少し人に甘えてもいいと思いますよ?好意は受けていつか返せばいいんですよ」
  いい機会なのかもしれない
  僕も二人から離れて見てみたい
  自分がどこまでできるのかを
「わかったよ、秋乃さんがそこまで言うのなら」
「やった〜♪」
  飛び跳ねて喜ぶ秋乃さん
  僕は無邪気に跳ねる彼女に魅せられていた

「すっげ〜」
  再びポカンとしてしまった
  あの後彼女と一緒に下見でマンションまで来てみた
  まずその大きさに驚かされてしまった
「はやく、はやく〜」
  喜び今にもスキップしそうな勢いの秋乃さんが僕の手を引く
「秋乃、その子が噂の彼氏?」
  後ろから掛けられた声に僕は先ほどとは別の意味で驚いた
  一緒だ・・・・秋乃さんの声の生き写しだった
  振り返るとそこには秋乃さんがもう一人いた
  でも、少し違う
  秋乃さんの髪は肩くらいまででストレート
  でも、その子は腰まで長く少しウェーブが掛かっている
「あれ〜驚いてる?もしかして言ってないの?秋乃?」
「あ、いっけない・・・・まだだった」
  状況の理解できない僕に秋乃さんが慌てて頭を下げた
「この子は私の双子の妹の春乃です♪」
  双子?双子?えぇぇーーーーー!
「うっそ〜ん」
  驚く僕を見て春乃さんはくすくすと笑んだ
「そっか、そっか・・・・とうとう告白したのよね〜、中三のときからいきなり女の子らしく
なったと思ったけど・・・・これはそうでもしたくなるわね」
  どうやら秋乃さんから僕のことは聞いてるらしい
  当たり前か・・・・でも、初耳だよ・・・・
  そうでもないか、まだ中学の頃兄弟がいるって言ってたもんな
  遅いよ、今頃思い出すなんて・・・・僕の記憶って案外単純にできてるのかも
「春乃ちゃんそれは・・・・その言わない約束でしょ?」
「あ、いけない・・・・・でもいいじゃん、こんな素敵な彼氏GETできたんだから」
  品定めするかのように僕の全身に視線を這わせて春乃さんはにっこりと笑んだ
「して、どうだったの私の姉の・・・・お・あ・じ・は?」
  ぶ・・・・・・
「春乃!」
「きゃ〜怒らないで〜ただのひがみよ〜羨ましいの〜素敵な彼氏が居て〜」

9

 僕はあの時、そう・・・・秋乃さんと付き合い始めたことを伝えた時のように二人と対峙して
  僕の決意を伝える
  二人は顔の上の部分に影を落として僕を見ている
  正直怖い、この二人と離れた僕なんて想像できない
  二人にとって同じことなんだろう
  でも、いい機会だ・・・・僕はもちろんだけど二人もそろそろ自立の時だ
「あの、僕・・・・準備があるから」
  正直かなり突然だったと思う、今日話してもう明日には引っ越す
  もう少し時間をと思ったけど秋乃さんがどうしても譲ってくれなかった
  彼女曰く先延ばしにしていたらまたずるずると行ってしまうかららしい
  二人を置いて僕は自分の部屋に戻ってとりあえず荷物と着替えとゲーム類をバックに詰めた
  家具等は備え付けなのでこれくらいの荷物でいいか・・・・
  僕は引越しの準備と二人にこの事を伝えるという緊張のせいで疲れた身体を横たえた
 
  気づいたときにはもう朝だった・・・・
  まだ六時か・・・・
  僕は二人に気づかれないようにそっと家を出ようと・・・・玄関に
「なにしてるの・・・・お兄ちゃん」
  僕はまるで泥棒のように慌てて声のした方へ振り返った
  そこには夏姉ちゃんと冬香が寝間着のままで立っていて僕を睨みつけていた
  額から滴る汗を拭って僕は二人をまっすぐに見つめた
  ここだ、ここで逃げたら僕はもう二度と二人から離れられない
  それは二人にとっても同じこと
  だから・・・・・
「僕・・・・行くね」
  最後じゃないけど僕は笑顔で別れよう・・・・
  僕は笑んだ後ドアノブを握った
  冬香が駆けて来てドアノブにかけた手を思い切り握る
「行かないで!」
  後ろから夏姉ちゃんが僕に抱きつきすがる
  冬香も無理やりに僕の手をドアノブから引き離すとそのまま腕に抱きつく
  僕は折れそうになる心を必死で鬼にして自由の利く左手でドアを開いた
「出て行かないでお兄ちゃん!」
  二人を引きずるようにして僕は一歩を踏み出した
「私たちを捨てないで!お願いよ!涼ちゃん!!!!」
  悲痛な叫びが近所中に響き僕の身体にすがりつき泣き喚く二人
「私も冬香も・・・・涼ちゃんがいないと生きていけないの!!!!」
  その瞬間彼女たちが僕に抱いている感情が家族へのそれではなく男女の愛情なのだと気づいた
  でなければこんな風にすがりつき泣き喚いたりしない
  そうだとわかった以上僕はさらに決心を強めた
「僕が好きなのは秋乃さんなんだ!」
「そんなこと言わないでよ!ずっと一緒に居てよお兄ちゃん!」
冬香が僕の腕を引き抜いてしまうのではないかというほど引っ張り膝を付き体重を思いきり掛けてくる
「僕と二人は兄妹なんだ・・・・」
  二人が望むような関係なんてありえないんだよ・・・・・
「無理だよ・・・・僕は秋乃さんを選んだんだ・・・・・僕が選んだのは秋乃さんなんだよ!」
  無理やりに二人を引き離した
  さすがの二人も男の僕の力を押さえこむことなど出来ずに僕はようやく二人から解放された
  そのまま振り返らずに駆け出す・・・・
「いや・・・・いやぁぁ!!!!!!」
「涼ちゃん!涼ちゃーーーん!!!!」
  悲しい断末魔のような声が聞こえた
  そうだ、今日から僕と二人は違う道を行くんだ・・・・・
  これでよかったんだよね・・・・・

「お姉さんたち大丈夫だった?」
  ダンボール箱を開きながら秋乃さんが僕にそう問う
  少し苦笑して見せると秋乃さんは少し申し訳なさそうな顔をした
  僕は彼女を安心させるために微笑んだあと作業を再開した

「ごめんね・・・・明日には全部準備できると思うから」
  男の僕と違って女の子の彼女にとって急な引越しで生活に必要なものを全部なんていうのは
  無理だったようだ
  今日は一旦実家に帰るので、彼女との同棲は明日から・・・・
「じゃあ、また明日ね・・・・ん」
  僕の頬にキスを贈って秋乃さんはこの部屋を後にした
  秋乃さんがいなくなって急に寂しくなってきた
「気晴らしにゲーセンでも行こうかな」
  実はここに来る途中新しいゲーセンを発見してうずうずしてたんだよな
  秋乃さんは『男の子ってみんなゲーム好きだよね・・・・』
  そう言いながらも僕のお気に入りのアクションゲームに熱中していた
  秋乃さんのことを考えて寂しい気持ちを少し和らげ僕は部屋を出た

「ふぅ〜」
  一仕事終えて僕は手に持ったコンビニの袋を床に置いて自分の腰を降ろした
  袋をあさって中からアイスクリームを出して口に運ぶ
  やっぱ、ゲームのあとはこれに限るよ
  小さな幸せを味わっているとケータイが鳴った
  メール?・・・・開いて見る・・・・・
〈お帰り、涼ちゃん・・・・〉
  え・・・・
  またケータイが鳴った・・・・
〈涼ちゃん私にもお帰り言ってよ〉
  それを読みきる前にまた鳴った
〈お兄ちゃん、帰って来て・・・・あんな女なんて忘れて〉
  僕はケータイを放って近くにあった座布団を頭にかぶった
  ケータイの着信音が鳴り響き何分かするとそれは止まった
  僕は恐る恐るケータイを取るとメールボックスを開いた

 

『冬香:お兄ちゃん・・・なんで返事くれないの?』
『夏美:今日の夕ご飯うまくできたのよ?はやく帰って来てね』
『冬香:お兄ちゃん、はやく返事ちょうだいよ・・・・!』
『夏美:どうしたの?もしかしてあの女に監禁されてるの?』
『冬香;お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!』
『夏美;はやく帰ってこないとお仕置きだよ涼ちゃん♪』
『冬香:今ゲームセンターを通りました』
『夏美:あの女いまいないんでしょ?今よ涼ちゃん逃げて!』
『冬香:今コンビニを通りました』
『夏美:待っててね、今すぐ助けに行ってあげるから』
『冬香:今自転車屋を通りました』
『夏美:待っててね、涼ちゃん・・・・・』

 最後のほうの文面に鳥肌が立った
  僕の家からこのマンションまでの道のりを思い出す
  ゲームセンター・・・・コンビニ・・・・自転車屋・・・・
  僕が朝通り先ほど通った道だ・・・・
  またケータイが鳴った

『冬香:今マンションに着きました』
『夏美:もうすぐよ、涼ちゃん』
『冬香:今階段を登っています』
『夏美:あと少し・・・・』
『冬香:今あなたの傍に参りました』

ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!
ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!
ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!
  ドアを叩く音がした・・・・・
「う、うわぁぁ!!!!」
  僕は頭を抑え込んで恐怖の叫びを上げた
  まさか、二人がここまでするなんて思っていなかった
「お兄ちゃん?いるんでしょ?はやく出て来てよ〜」
「涼ちゃん、お姉ちゃんよ?迎えに来たのよ?一緒に帰りましょ」
「電気はついてるようだからいるんでしょ?」
「もう、いたずらもほどほどにしないとお姉ちゃんほんとに怒るわよ?」

10

 鼓膜の中に入り込んでくるドアを叩く音に僕は耳をふさいで聞こえないようにした
  逃げても逃げても音は僕を追いかけてくる
「どうしたの?お姉ちゃんよ?涼ちゃん?・・・・」
「まさか、近くにあの女がまだいるの!?はやくお兄ちゃんを返せ醜女!」
  ここに秋乃さんがいなくてほんとによかった・・・・僕がそんなことを考える間も
  ケータイが鳴りドアが叩かれる
  僕は早く終わってくれ終わってくれと念じながら瞳を閉じた・・・・
 
  いったいどれだけの時間が過ぎたのだろうか時計に目をやるともう深夜だった
  僕はケータイを取ってメールボックスをまた開いた

『冬香:お兄ちゃんはあの醜女に騙されてるの・・・・』
『夏美:今なら、許してあげるわ・・・・早く戻ってらっしゃい』
『冬香:お兄ちゃん・・・・・』
『夏美:涼ちゃんはなにも悪くないのよ?』
『冬香:逃がさない・・・・逃がさないから!』
『夏美:・・・・・・・・・・・』
『冬香:お兄ちゃんが戻ってこなかったら・・・・』
『夏美:・・・・・・・・・・・』
『冬香:あの女、殺してやるんだから!』
『夏美:涼ちゃん、涼ちゃん、涼ちゃん、寒いよ・・・・早く開けて』
『冬香:そうよ、全部ぜ〜んぶ、あの女が悪いのよ・・・・・』
『夏美:お姉ちゃん、涼ちゃんのためにおいしい料理たくさん作ったのよ』
『冬香:殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる』
『夏美:今持って来てるのよ?一緒に食べましょう』
『冬香:許さない、許さない、許さない、許さない、許さない!!!』

 もうこの程度の文面では恐怖を感じなくなっていた
  でも・・・・二人はこれからどうなってしまうのだろう?
  また秋乃さんの言葉が頭に響いた
  そうだ、二人と僕は兄妹なんだ・・・・どれだけ二人が祈っても望んでも結ばれる訳がない
  二人には死刑宣告に等しいほど酷なことをしている
  前向きに考えなくちゃ・・・・
  このままずっと一緒に居るなんて出来ないことを二人も解っているはずだ
  もう少し時間を置けば二人も解ってくれる
  今はそう考えるしかなかった

『夏美:二人は一緒、ず〜っと一緒♪』
『冬香:どうして!今までずっと一緒だったじゃない!』
『夏美:涼ちゃん、覚えてる?小さい頃お姉ちゃんをお嫁さんにしてくれるって約束したよね?』
『冬香:出てきなさい・・・・出てきなさいよ!!!!』
『夏美:寒い寒いよ・・・・涼ちゃん』

 僕が選んだのは秋乃さんだ
  僕が愛してるのは秋乃さんだ
  彼女の為に僕は生きているんだ
  心の中で本心を復唱する
  二人の涙を・・・・二人の叫びを・・・・忘れるために
  生暖かい空気が辺りを包み僕は息苦しさを感じ窓に近づいた・・・・
  白いカーテンを開いた瞬間僕は恐怖のあまり身を震わせた
  まず、目に入ったのは見開かれた瞳・・・・
  黒目が広がり喜びを表し目がギョッと動いた
  暗い夜の景色と部屋の間にも関わらずにその瞳だけは、はっきりと見えた
  そして僕を確認すると口元を緩めニヤっと笑んだ
  身震いし僕は後ろに下がった
  すると手がトンと音を立て窓のガラスに当たった
  なぜ行けないの?そういう顔をして影の手が窓をがんがん叩く
「あ・・・・・あ・・・・・うわぁぁぁ!!!!!」
  恐怖でその場に崩れ床を蹴り身体を引きずらして後ろに引く
「どうしたの?涼ちゃん・・・・怖いの?待ってていま助けてあげるから!」
  解りきっていたその人物に僕は絶望に似た気持ちを抱きながらただただ恐怖の叫びを上げた
「あ・・・・・あぁぁぁ!!!!!」
「待ってなさい、今すぐ・・・・助けてあげるから!!!!!」
  窓を叩く手に力が込められ窓に夏姉ちゃんの血が付着していく
  ドアを何度も力いっぱいに叩き、そして今度は窓だ
  華奢な夏姉ちゃんの手が壊れてもおかしくない
「やめて、やめてよ・・・・夏姉ちゃん!」
「心配しないで、大丈夫よ・・・・すぐにそこに行ってあげるから」
  ケータイがまた鳴った・・・・
  僕は怖くなって電源を切ろうとケータイを握った
  今度はメールでない・・・電源を押して切ろうとしたときだった
  留守番電話になる音がした

『いま、あなたの後ろに居ます・・・・』

 幽霊のような擦れた小さな声が僕の鼓膜に響いた
  僕はだらしなく口から唾を垂らしながら荒い息遣いで後ろをゆっくりと見た
「捕まえた、お兄ちゃん・・・・ふふ」
  いつの間にか夏姉ちゃんの声も聞こえなくなった
「涼ちゃん♪」
  その声に慌てて前を向くと満面の笑みの夏姉ちゃんが居た
  後ろから冬香の腕が僕の首に絡まり
  前から夏姉ちゃんの手が僕の肩を掴んだ
「あ、あ、あ・・・・あぁぁぁぁ!!!!!」

2006/06/26 To be continued...

 

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