INDEX > SS > 生きてここに…

生きてここに…

プロローグ
本編


外伝 『記憶の中の少女』

詩織さんに東児・・・・そしてもう一人
俺には幼馴染の女の子がいた
あれは俺が中学一年の時だ
入学してから半年・・・・
季節はずれの転校生は小さな頃に海外へ行ってしまった幼馴染の少女だ
「お久しぶりですね・・・・仁さま」
青い目と金色の髪
詩織さんと並んでも見劣りしないその少女は小さく笑って再開を喜んだ
実の話俺はこの子に恋していた
大好きだった・・・・ずっと一緒にいたいと思った
けれど幼い俺の願いを現実は残酷に砕けさせた
彼女を失った心の隙間を埋めてくれたのが詩織さんと東児だった
「どうしてこんな時期に戻ってきたの?」
彼女の家は資産家で有名な旧貴族の末裔だ・・・・
そんな彼女に出会ったのはまだ俺が幼い頃
公園の前でおお泣きする彼女を見たのが最初の出会い
一緒に遊んで・・・・・家までつれて帰った
高田さんが彼女を見て驚いていた
すぐに彼女の迎えがやって来てその日は分かれた

数ヵ月後・・・・
当然彼女が俺の屋敷の近くに引っ越してきた
それから詩織さんや東児と遊ばない日は毎日彼女と遊んだ
夕暮れ・・・・彼女と歩いた夕暮れがいまも深く心に残っている
「あなたに・・・・また逢いにきたんです」
俺はこのときなぜ彼女が少し悲しそうに笑んだのかわからなかった
このとき俺がそのことに気づいていたのなら・・・・あんなふうに・・・・
終わらないで済んだのかな?
「お帰り・・・・・リース」
彼女の笑顔は俺の太陽だった・・・・・

久しぶりに再会したあの人は昔のままで私を迎えてくれた
うれしかった・・・・・そして・・・・悲しかった
夕暮れの帰り道
私は5年ぶりに彼と帰り道を歩く
でも5年の距離はできていた
手を繋ぐこともできない
この五年間は私にとってこの時間のためがんばってきた時間
だから・・・・・勇気を持とう
私は彼の手を握った
夕暮れの帰り道・・・・
これが最後かもしれない帰り道・・・・
仁さま・・・・私は今を生きています・・・・
あなたと共に・・・・

あれから三ヶ月が経った
詩織さんや東児・・・・そしてリース
何気ない時間を俺はなによりも大事に思っていた
それと同時に想いがよみがえる
彼女に対する恋心が・・・・
俺がそれを認識しだしたときだった
高田さんが俺にこう告げた・・・・
『彼女は不治の病なんです・・・・』
え・・・・・いまなんて?
彼女が・・・・病気?
そんな素振りなかった・・・・・はずだ
絶望と悲しみの中で俺は・・・・
なにもできずにただ呆然とするしかなかった・・・・

どうしてかな?彼の・・・・仁さまの私を見る目が少し変わってきた
もしかして・・・・気づかれてしまったの?
私の時間がもうないことを・・・・
本当は学校に通うなんてできない身体・・・・
でもこの五年間私は必死に耐えた・・・・
この運命を呪ってはない・・・・
だってこの短い人生になる私に仁さまは光を灯してくれたから
恋?愛?そんなものはもうとっくに超えています
私は彼の一部・・・・彼の所有物
幸せですよ・・・・あなたとの時間は私にとってどんなものよりも
慈しむを感じる時間です
ある日私は仁さまの前で倒れた・・・・
もう時間なのかもしれません・・・・
この五年間、私は一筋の希望を目指して病魔と必死で戦いました
その五年間の結果がたった三ヶ月です
こんなことなら、この病気を死を・・・・受け入れてあなたと共にいればよかった
でも・・・・この三ヶ月間とても楽しかったです・・・・

彼女は笑んでまるで枝のような細い腕を持ち上げて俺の頬にその手を重ねた
まるで生を感じさせないその手に俺は絶望と
彼女の笑顔に希望を見た
そして決心した
この気持ちを伝えよう・・・・
そう思って俺が病室に脚を踏み入れた時だった
「え・・・・・」
彼女は寝ているかのように息絶えていた
なんだよ・・・・・どうしてだよ・・・・
「俺は・・・・キミが!リースが好きだったんだぞ・・・・・俺は!」
護りたかった・・・・俺にはなにもできないのに・・・・
「ずるいだろ・・・・好きも言わせてくれないのかよ・・・・なぁ!」
返事はない・・・・
ずるいだろ・・・・俺はキミに・・・・伝えたかったんだ
好きです・・・・

 

 

 

 

FIN 『好きですが言えなくて・・・・』

2006/05/24 完結

 

inserted by FC2 system