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とある娘の風景



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ひさしぶりの休みなのでお父さんはあの女と私の3人で映画館へ行こうと言い出しました。
私が真ん中の席に座れば良かったのですが、その日は混んでいて
私だけ一列後ろの席に座ることになりました。2人は並んで座っています。
それだけでも耐えられない光景でした。
内容なんて覚えていません。覚えているのは上映中ずっと重なり合っていた2人の手だけです。
いつの間にか爪が掌に食い込んで、出血していました。
映画が終わり、あの女と私はお手洗いに行きました。
用を済ませてさっさとお父さんのところへ戻ろうと思った時、あの女が話しかけてきました。
「今月中に婚姻届を出すの。式は挙げないからそれが事実上の結婚式みたいなものね。
○○ちゃんのことはパパから聞いてるわ。私、良い母親になるように努力するから、
これからもよろしくね」
どうしてお父さんは結婚することを黙っていたのでしょうか。きっと、あの女が自分の口から言う
とか言ったんでしょう。
あの女は本当に空気が読めません。私に嫌われているのに母親宣言です。しかも馴れ馴れしいです。
私を侮辱して楽しんでいるんですよきっと。人は激昂すると顔が真っ青になると聞きましたが、
その時の顔はきっとそうだったに違いません。

突然、大きな揺れを感じました。次第に激しさを増していき、立つことができなくなりました。
地震です。今まで体験したことの無い凄まじいものでした。
気がつくと辺りは瓦礫の山と化していました。あちこちにコンクリート片が散らばっています。
暗くて寒くてとても怖かったです。
幸い大した怪我はしていませんでしたが、そんなことよりお父さんのことが心配でした。
私は目いっぱい大きな声でお父さんを呼びました。崩壊したトイレの出入り口からお父さんの声が
聞こえてきました。無事のようで、私は安心しました。
私の無事を確認すると、今度はあの女の安否を聞いてきました。やっぱりあの女は要らない、
そう思いました。
お父さんに言われたので仕方なく探しました。大して広くないトイレでしたのですぐに見つかりました。
あの女は大きなコンクリートの塊の下敷きになっていました。苦しそうな声をあげていますが、
命に別状はなさそうです。私は近くに転がっているコンクリート片を拾いあげて、
そのままあの女の顔に叩きつけました。
何のためらいもありませんでした。私はただ、単純作業のように同じ動作を繰り返すだけです。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
あの女は動かなくなりました。大量の血を流しているあの女の顔は、もう人間の顔ではありませんでした。
私は震えました。もちろん、人を殺してしまった恐怖のためではありません。
笑いをこらえるのに必死だったのです。
だって、さっきまで生きていた女の小奇麗な顔が、今では判別できないんですよ?
ほんの数十秒前まで生存していたのに、
今では鼻がひしゃげて目の位置がどこにあるか分からないんですよ?
擬音で表すなら「グシャッ」ですよ?挽肉状態なんですよ!?
笑わずにはいられませんって。
でも私は声を押し殺して笑いました。お父さんに聞かれるわけにはいかないから。
とりあえずお父さんに報告しなければいけません、あの女は遠い世界へ旅立ったと。

きっとお父さんはあの女の為に涙を流し、悲しみで身が締め付けられることでしょう。
でもねお父さん、私がいます。私だけがお父さんを愛していいんです。
だからお父さん、私だけを愛して下さい。私もお父さんだけを愛しますから。
私をお父さんの愛で縛って下さい。私もお父さんを雁字搦めにして二度と解けないようにしますから。
そういうわけで、これからもよろしくお願いします、お父さん。
ああそれから、あと2年もすれば初潮が来ると思いますので、それまで性交渉は我慢しておいて下さい。
どうしても我慢できないというのなら、オーラルならできそうなので頑張りますね。

2006/05/05 完結

 

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