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攻撃的思慕謀略



1

僕は学校へ来てすぐに剣道部へ入った。
部員は数名ほどいる。その中に学校でも有名な鈴木主将がいた。

「おはようございます、主将」
「ああ、おはよう、遠藤」

僕は鈴木主将に挨拶した後、更衣室へ行き剣道着に着替える。
僕は剣道の才能は無いのだが、鍛錬をすることで身が引き締まるような思いがするので好きだ。
卒業まで続けていきたいと思う。
いつものように鍛錬をしていると試合が終わった主将が声をかけてきた。

「遠藤、今日の…その…昼飯を一緒に食べないか?」

正直、びっくりした。
鈴木主将が声をかけてくることは、叱責以外ではそうなく、ましてや僕なんかを昼に誘って貰えるなんて…。
早くなる鼓動を、抑えながらなんとか答える。

「ぼ、僕なんかで良ければ喜んで!」
「良かった…ありがとう。断られるかと思った…」
「こ、断るなんて!そんな勿体無い…それより僕なんかで本当にいいんですか?」
「あの女がいない遠藤じゃなきゃ駄目なんだ…。それより今日は購買部へ行かないでくれるか?」
「え?」
「あ…い、いや!何でもない!とにかく購買部へは行かないでくれよな!」

主将は何か慌てて念を押すように言うと、ついさっき来たばかりの部員に試合を申し込んだ。
どうしたんだろうか…?体調でも悪いのかな?

「おーい、遠藤!お前いつの間に主将と付き合ってたんだ?羨ましいぃ!
クッソゥ…俺にもあんな美人の彼女がいてくれたらなぁ…」
「!? ち、違うって!そんな関係じゃないよ。ただ、誘われただけさ」

いつも試合する武田がとんでもないことを言ってきた。
いくらなんでも、剣道部のエースと才能無しのおまけじゃあ、差がありすぎだって。
それに、主将だってあれだけ美人なんだから彼氏ぐらいいるとおもうけどなぁ。
今回の誘いだって、きっとたまたま目に留まった部員が僕だっただけなんだろう。
僕なんかが目に留まったことを幸運に思うべきだ。

「そういえば、思わず返事しちゃったけど明美に今日の弁当は要らないって言っておかないといけないな」

僕はその説得の難しさを思い浮かべてため息をついた。
アイツ、今日もおそらく持ってくるんだろうなぁ。
一生懸命やっているアイツには悪いのだが、味が少々濃かったり薄かったりする。
それはこれからは私が作る!と言い出した一年前から変わっていない。
僕は、再びため息をつくとまた鍛錬を再開した。

今日、勇気を昼に誘った。
いつもいつも一緒にいるあの女はいないので、思わず声をかけたら了承してくれた。
嬉しかった…。しかし、思わず本音を言いそうになってしまった。危ない危ない。

「主将、何か機嫌よさそうですね?何か良いことでもあったんですか?」

試合が終わったらしい部員がそういってきた。
やはり、顔に出ていたのだろうか?
まぁ、それもしょうがないか。
やっと、勇気を誘えた。いつも邪魔するあの女はいつも料理がうまくないくせに、勇気に食べさせて処理させている。
まったく、幼馴染といえど図々しいにもほどがある。
中学のころ見たときは、ただの幼馴染だったから歯を食いしばって耐えたのにこんなことをしているなんて…。
やはり、殺してしまうべきだろうか?
勇気も迷惑しているようだからそれがいいかもしれない。
殺るときはどうしようか?
人気のないところで殺るのは確実だとして…

「あの?しゅ・・・主将?どうしたんですか?」

っといけないいけない。
あの女の始末方法を考えていたら知らずに無視してしまったらしい。
正直、勇気以外の部員などどうでもいいのだが、これも勇気の憧れの存在であるためだ。我慢我慢…。

「ああ、すまんすまん。少しボーっとしていたらしい。それで何の話だったか?」
「いえ。な、なんでもないです。すみません!」

何故か謝られてしまった。
また、顔に出してしまったのだろうか?
こんなでは、頑張って勇気の憧れの存在になっていたのに崩れてしまう。もっと練習せねば。
大会に出た時に、対戦相手をあの女だと思いながらやっていた時だって顔に出ていなかったのに…。

いつもカバンに持っている、勇気の匂いつきタオルを嗅いで気分を直そう。
そしていつものように、勇気を思いながら練習をしよう。
うん。今日はせっかく良いことがあったのだし、あの女のことなんか思い浮かべる必要はない。
今朝早く起きて、手作り弁当を作ってきた。
自慢じゃないが料理は得意だ。自身がある。
昼休みになって、勇気に美味しい!と言って貰えるのが楽しみだ。
今度は、出来るだけ顔に出さぬようにしよう。

2006/02/19 完結

 

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